【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第6分科会 セーフティネットとしての公共交通

 佐賀市内では、鉄道やバス、タクシー、自家用車、自転車等が市民の移動手段として利用されており、その中で中心的な役割を果たしているのが路線バスである。
 そこで、佐賀市内を中心に運行する公営交通(佐賀市営バス)の現状について、特に佐賀市の福祉、環境等の施策と連携した取り組み内容について紹介する。



自治体の施策と連携した公営交通の取り組み
―― 乗り継がれて78年の市営バス ――

佐賀県本部/佐賀交通労働組合 真島 武司

1. はじめに

 佐賀市は、九州の北西部の佐賀平野の中央部に位置し河川、クリーク等が縦横に発達している地方田園都市である。2005年10月と2007年10月の二度の合併により、北部は脊振山麓で福岡市と隣接し、南部は筑後川下流域で福岡県大川市と接するようになり、旧佐賀市の約4倍の面積を有する広域化した地方都市である。
 県庁所在地ではあるが、マイカーが第一の移動手段であり、また平坦地でもあるため自転車の利用が多く、他県に比べバス離れが進んでいる。
 佐賀市の公営バス事業は、恒久財源の捻出と秩序ある市民交通体系の確立を目的に、1936年10月に佐賀市営バスとして事業を開始した。当初は民間事業者の路線を買収することで、順次路線網を拡大し、1952年10月には地方公営企業法の公布と同時に適用を受け、公営企業体として本格的に事業展開を行い、昭和40年代にはほぼ現在の路線網を確立した。
 市営バスの運行形態は、JR佐賀駅バスセンターを中心に放射線状になっており、周辺の住宅地や農村部から佐賀市街への通勤・通学・買い物等の片道輸送が主体を占め、市内中心部では都市間輸送の民間バス3社と一部区間を競合している。

2. 佐賀市内のバス路線の状況

 佐賀市の公共交通は、バスが中心的役割を担っており、佐賀市内を4つのバス事業者が運行している。
 佐賀県内は、事業者ごとに運行エリアの棲み分けができており、県東部は「西鉄バス」、県西部は「祐徳バス」、県北部は「昭和バス」、県南部は「市営バス」が運行しており、佐賀市内は民間バスの都市間輸送路線が乗り入れている。
 市営バスは、佐賀駅バスセンターを起終点に路線バスを運行しており、営業路線は182キロ、運行路線は25路線、年間260万人が利用している。利用人員は、最近5年間は横ばいで推移しているが、1989年度の530万人に比べると半減している。

【佐賀市内のバス路線網図】 【市営バスの運行路線網図】
 

【市営バスの利用人員の推移】

3. 佐賀市の施策と連携した取り組み

(1) 福祉施策との連携
① ノンステップバスの積極的導入
  交通バリアフリーを推進するために、2000年度に佐賀県内で初めてノンステップバスを導入し、その後も国県市の補助を活用しながら計画的に導入し、現在(2014年9月)の導入率は52%(69台中36台)である。
  ノンステップバスの普及に合わせて、バス停上屋やベンチも計画的に設置しており、障がい者や高齢者等が移動しやすい環境整備に努めている。

【ノンステップバス導入の推移】
区 分 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度
ノンステップバス台数 18台 21台 27台 30台 33台
導入率 28.1% 32.8% 40.9% 45.5% 50.0%

② ワンコイン・シルバーパス事業
  高齢者の外出支援を目的に、従来の無料の敬老パス制度を変更し、2004年度から一部受益者負担を取り入れた制度に変更した。この制度は、75歳以上の佐賀市民は年間16,000円のワンコインシルバーパスを自己負担1,000円で購入し、1乗車あたり100円(ワンコイン)で市営バス全路線に乗車できるものである。
  2014年4月からは、対象年齢が拡充され70歳以上となり、市営バス利用者の約3割を占めるようになった。
③ 高齢者運転免許証自主返納支援事業
  65歳以上の高齢者が運転免許証を自主返納した場合に、市営バスの全路線が1乗車あたり半額で利用できる「高齢者ノリのりパス」を発行することで、高齢者のバス利用への転換と交通事故防止を目的としたもので、2014年10月から実施予定である。

(2) 環境施策との連携
① ノーマイカーデー割引の実施
  佐賀市は、毎週水曜日は「エコアクションデー」として通勤時のマイカー抑制などの環境に配慮した行動を行っている。市営バスもその運動に呼応して、毎週水曜日は運転免許証を提示した場合は、市営バスの全路線が半額で乗車できる「ノーマイカーデー割引」を実施しており、環境意識の啓発とバス利用の促進を目的としている。
② バイオディーゼル100%燃料の路線バス
  佐賀市は、2010年2月に「環境都市宣言」を行い地球温暖化対策の中で、家庭などから出る廃食用油をバイオディーゼル燃料とするリサイクル事業を実施している。市営バスでも環境部門と連携し、現在3台の路線バスにバイオディーゼル100%燃料を使用しており、環境保全と市民意識の啓発に取り組んでいる。

【バイオディーゼル使用車両】   【バイオディーゼル燃料】

(3) 子育て施策との連携
① 小中高生ノリのりきっぷの発売
  中高生を対象に夏休み、冬休み期間中に一定額で市営バスが乗り放題になる「ノリのりきっぷ」を発売し、保護者の子育て費用の負担軽減と新たなバス利用者の掘り起こしに取り組んでいる。2014年度からは小学生も対象とすることで、利用の拡大を図っている。
② 学生デー割引の実施
  毎週水曜日は学生証を提示することで、市営バスの全路線が半額で乗車できる新たな割引制度「学生デー」を2014年9月から実施しており、水曜日の「ノーマイカーデー」との相乗効果を図っている。

4. まとめ

 公営バス事業は、自治体の行財政改革等により事業廃止や民営化が急速に進んでおり、最近10年間で10団体が公営バス事業を廃止し、現在では24団体となっている。地方都市は、圧倒的に高齢者の利用が多く、バス路線がなくなれば外出そのものができなくなり、生活に支障をきたしている市民も多いと聞く。マイカーが第一の移動手段である地方都市にとっては、バス事業の経営は容易でなく、財政負担がなければ事業経営が成り立たないことも現実である。
 佐賀市の公営バス事業も、行財政改革により民営化の議論はなされていたが、紆余曲折はあったものの、最終的には公営バスとして維持する方針が出され、現在に至っている。
 公営バスは単なる移動交通手段ではなく、市民サービスの一部であることを理解していただく必要がある。そのためには市の施策と連携した取り組みを積極的に行うことが重要であり、また自治体の街づくりのツールとして公営バスを活用することができれば、自治体が公営バスを経営する意義を見出すことが可能となり、ひいては市民サービスの向上につながるものと考える。