【要請レポート】

第35回佐賀自治研集会
第7分科会 ワークショップ「自治研」 楽しく学ぶ自治研活動

 多額の累積赤字により存廃の危機が訪れ、様々な機関の努力により、回復傾向にある「ホッカイドウ競馬」。
 今後も景気一つで予断の許さない状況が続きますが、馬産地の自治体として何が出来るかを様々な視点により検証しました。



馬産地日高から「ホッカイドウ競馬」を考える
―― 観る・知る・参加する ――

北海道本部/日高地方本部

1. はじめに

 日高管内は北海道の南西部に位置し、太平洋と日高山脈に囲まれた温暖で雪も少ない地域です。 
 管内は7つの町で構成されており、面積は約4,800平方キロメートルで和歌山県に匹敵するものの、人口は約75,000人で北海道の中では少ない地域です。
 基幹産業は農業と漁業が盛んです。特に農業においては、江戸時代に本州より馬が持ち込まれ、駅馬の配置や軍馬など、さまざまな用途として馬が利活用され、今日の日高地方における軽種馬生産に大きな影響を与えました。

2. 経 過

 近年、競馬産業は中央競馬の売り上げ減少、地方競馬の廃止や入場者減少傾向など、将来に向けて不安が高まり厳しい状況が続いております。
 このような状況のなか、日高管内では全ての自治体で数多くの競走馬を生産・育成する牧場が点在し、各首長が北海道軽種馬振興公社の役員を担うなど、日高の自治体にとってホッカイドウ競馬の存廃は、大きな影響を受けることになります。
 2013年3月25日に日高地方本部の第1回自治研推進委員会を開催し、第35回地方自治研究全国集会に向けて、テーマを決めてレポート作成を取り組むことを確認しました。第2・3回の推進委員会により、日高地本としては共通的な課題をテーマにした方が良いということになり、TPP問題や子育て等様々な意見が出ましたが、日高地方本部の自治研方針として、ホッカイドウ競馬の存続問題について取り上げていることや前述に記載のとおりホッカイドウ競馬が日高管内の自治体に与える影響が大きいことから、「ホッカイドウ競馬を考える」というテーマで実施することが決定しました。

3. ホッカイドウ競馬運営の歴史

 ホッカイドウ競馬は、北海道庁が1948年に競馬法のもとで始められました。当時は戦後復興の時期と重なり、娯楽が少なかったこともあり、大勢の人たちが詰めかけました。1991年にバブル全盛期と重なり、史上最高の454億円を記録し売り上げがピークに達しました。この間、北海道に対して約290億円を一般会計に繰り出しすることにより、北海道財政に対し多大な貢献をしてきました。しかし、1992年以降はバブル崩壊の影響を受け単年度収支が赤字になり、逆に一般会計から毎年繰り入れて運営するという状態になりました。運営主体の北海道においても、多額の借金を抱える中、お荷物的な存在になったのが現状であります。
 1999~2000年の存廃議論を経て、2001年から赤字脱却に向けて、
 ・組織改革として北海道農政部競馬管理室を廃止し、競馬事務所と軽種馬振興公社事務所の統合
 ・魅力あるレース開催ということで、民間の施設を利用した認定厩舎(外厩制度)制度を導入することにより、レースの頭数の確保や市町村名を使用した協賛レースの実施
 ・売り上げの増進を図るため、ミニ場外を設置し、北海道内を網羅するとともに、その他の地方競馬の馬券販売
 ・職員の削減や賞金等の削減により、大幅な経費の削減及び合理的経営の実施
 以上の4つの課題を取り組んできました。
 運営改善の成果としては、赤字額を縮減させた効果はありましたが、依然として赤字経営からの脱却ができない状態が続きました。道財政も危機的状態が続いていたことから、2005年11月開催の道議会において、知事より、「赤字のまま競馬を続けていくことは困難であるが、競馬は雇用や地域経済への寄与、生産地を支える役割を果たしているため、地域社会に与える影響は大きい。そのため3年を限度として競馬を存続させるが期間途中でも収支均衡の見通しが立たない場合は廃止せざるを得ない」との答弁がされました。

4. ホッカイドウ競馬と日高

 日高管内(7町)の軽種馬農家戸数は2012年で815戸、生産頭数や繁殖頭数は12,780頭で、全国シェアの約80%を占めており、国内有数のサラブレットの故郷です。2006年の軽種馬の農業産出額は約300億円となっており、管内のサラブレットの生産や育成、牧草や飼料等の販売等の軽種馬に携わる就労人口は5,000人以上とも推計されます。また、近年、個人牧場が高齢化や経営難により廃業し、一牧場の大規模化が進んできています。
 日高管内日高町はホッカイドウ競馬唯一の門別競馬場を抱えており、競馬場関係者約300人が生活しているため、日高町での経済波及額は相当なものになります。中央競馬にだけ出走できればいいと考えている生産者はいますが、特にサラブレットにおいては、血統を重視することから、全てが中央競馬に出られるものではありません。そのため、受け皿となるのがホッカイドウ競馬を含めた地方競馬であり、全ての地方競馬、中央競馬に対する影響は大きくなります。

5. ホッカイドウ競馬を考える

 日高地本自治研推進委員会では、2013年第3回の推進委員会において第35回自治研全道集会および全国集会へレポート報告するには、どのような取り組みが必要かという議論になり、各単組・総支部選出の委員から場外馬券場アイバでの地場特産品物販や各単組・総支部単位での協賛レースの実施についての意見が出されました。
 また、日高地方本部の自治研集会の日程を日高地方本部定期大会の翌日に決定し、講師の選定を行いました。
 第4回の推進委員会までの間に馬産地日高から「ホッカイドウ競馬を考える」のテーマに沿った取り組みや工程表、そして管内の自治労組合員に対するアンケートの設問項目について各推進委員とメールでやりとりを行い、たたき台を作成し、第4回の推進委員会で最終確認をした上で各単組・総支部でアンケートを実施してもらいました。第5回の推進委員会においては、アンケートの集約状況や地本自治研集会当日の役割分担を行いました。
 サブテーマでもある<観る・知る・参加する>ということでこの部分について工程を計画しました。
 第1期(2013年7月から10月)として実行委員会を立ち上げアンケート集約・地本自治研修会の開催
 第2期(2013年11月から2014年3月)として、アンケート結果の議論および内容に対しての関係者への聞き取り
 第3期(2014年4月から6月)として、レポート作成のための情報収集、ホッカイドウ競馬場のバックヤードツアー、ホッカイドウ競馬での実践、第2回目のアンケート実施
 第4期(2014年7月から8月)として、アンケートの検証とレポート作成、日高地本自治研集会の開催、管内各単組・総支部における協賛レースの実施やビールパーティー等の参加を計画しました。
 第1期において、実行委員会を一般住民にも呼びかけて立ち上げようと考えましたが、日程の関係上、地本の自治研推進委員会が実行委員会を担うことにしました。アンケートは管内の自治労組合員1,237人を対象に実施し、867人から回答があり、約70%の回収率でした。その結果、競馬場へ行ったことがないという人が約45%という反面、ホッカイドウ競馬の馬券を購入したことがあるという人は、約70%でした。これは、競馬場まで100km以上離れている単組もありますが、最寄りの場外馬券場までは30分圏内なので、場外で購入したことがあるという人が多いためと推測されます。また、購入したことがない人の15%が、「購入の仕方がわからない」ということなので、この点を解消できれば、売り上げ増につながると考えられました。そして、「ホッカイドウ競馬の存廃問題について知っていますか」という設問に対して、約80%の人が「知っている」という回答でしたが、ホッカイドウ競馬が廃止された場合の影響についての意見は確認できず、少し残念でした。
 自治労日高地方本部の「2013自治研集会」を37人の組合員参加のもと開催しました。内容は、地本自治研のレポートテーマである、馬産地日高から「ホッカイドウ競馬を考える」としました。ホッカイドウ競馬の現状について、北海道競馬事業室より齋藤主幹を講師として講演を頂き、理解を深めました。また、馬券の購入方法を知らない人のための、マークカードの記入方法についてレクチャーするなど、参加者はホッカイドウ競馬を「知る」ことに繋がったと思われます。
 第2期は、ホッカイドウ競馬が開催していない時期において、アンケート結果の議論及び内容に対しての関係者への聞き取りを予定していました。この期間において早い段階で第2期中に実施すること及び第3期に向けてのスケジュール確認のために、12月に第1回の推進委員会を開催し、アンケート結果や今後何が出来るかを検討しました。アンケート中の「ホッカイドウ競馬の売り上げ増に向けてどのような取り組みをしたら良いか」という設問には、約150件の回答がありました。「赤字で解消できないのであれば、早くやめた方が良い」という回答も少なくありませんでしたが、私たちは前述したとおり、ホッカイドウ競馬は今や全国的なものになっていることから、何も策を講じないまま終わらせてはならないという思いを持っています。そこで、建設的な意見も多数あったことから、この部分をピックアップして関係者へ提案するということで、推進委員会の中でも議論しましたが、時間的な制約もあり、この部分は次期以降で検討することにしました。
 第2回の推進委員会を3月に開催し、アンケート結果については、日高地方本部として出来ること出来ないことを分けて首長や北海道競馬振興公社等に提案することが良いのではないかという意見が出ました。また、工程表の中で第4期において協賛レースの実施を計画していましたが、レポート提出に間に合わないことや協賛レースを希望するには、3月末までが期限であったことから、各単組・総支部において協賛レースの実施の有無を確認しました。
 第3期においては、「観る・参加する」を実践することにより、第2回の推進委員会での検討事項について確認を行ったところ、協賛レースを実施するためには8万円が必要であり、単組からは、年度当初から予算を確保していないため、単独では協賛金が捻出できないが、日高地本管内全体であれば、1単組あたり1万円の拠出なら出来るという意見が出され、ホッカイドウ競馬の協賛レースを日高地本として実施することになりました。第3回の推進委員会において、協賛レース日が5月28日に決定したことを報告し、レース名を自治労北海道日高地方本部協賛「全国地方自治研究日高特別」とし、開催日当日において推進委員会で何が出来るかを様々な議論により準備してきました。その結果、推進委員会の活動を多くの人に知ってもらうために、北海道本部のホームページにレースの記事を掲載依頼し、馬券の購入等を呼びかけることにしました。また、管内の単組・総支部の組合員に対して、開催当日に競馬場へ足を運ぶか、最寄りの場外発売所で購入してもらえるよう、数回にわたり日高地本の教宣紙により広報をしました。さらに、自治研の取り組みを理解してもらうため、競馬場の見取り図が載った教宣紙やティッシュを当日競馬場入場者に対して配布することにしました。
 第4回推進委員会において、協賛レース当日の最終確認を行ったところ、当初教宣紙やティッシュを入場者に配っても、捨てられてごみになるだけと、競馬場担当の職員に言われたことから、当日の対応については、競馬場に参加して頂いた組合員のみに配布することにしました。
 開催日当日は12レース中11番目で、メインレースの前に組まれました。
 天候は1レース目から快晴で、幸先の良いように思えましたが、日が沈むとこの時期特有の霧がかかり、段々とレースが見えづらい状況になってきました。霧による視界不良で例年、何日も中止になることがあることから気にかけていましたが、何とか無事行われ、組合員の参加者と全員で記念撮影も行いました。
 第4期においては、各場外発売所でのビアパーティーの参加や、例年実施している日高町職員組合の交流レースでの家族交流会への参加を呼びかけます。また、自治研集会を門別競馬場で開催し、バックヤードツアーや坂路コースの体験ウォーキングを行う予定です。

レース前の記念写真   表彰式後の集合写真
レース後の明暗を分けた写真

6. 今後の課題と取り組み

 2013/2014の2年間でどこまで取り組めるかということで、推進委員全員で10回以上に及ぶ推進委員会を開催して議論してきましたが、2年という期間では、そう簡単に結果が出るものではないということを実感させられました。ただし、私たちが今行っていることは小さいことですが、この行動が少しずつ大きいものになり、北海道のみならず全国の人に浸透していくことが出来れば、必ず結果に結びついていくことになると思います。
 2013年度のホッカイドウ競馬は21年ぶりに黒字になりました。これは、北海道軽種馬振興公社が経費節減を実行し、競馬場や場外発売所での様々なイベント等を行ったこと、販売方法の多様化(ネット販売)や、場外発売所でのJRA馬券の発売の手数料収入が伸びたことが要因となっています。現在アベノミクスの影響で景気が回復傾向であることも後押ししているようです。しかし、景気の浮き沈みは必ずあるので、再び悪化したときのことも考えた運営を北海道軽種馬振興公社に望みます。
 競馬場本場の売り上げは全売り上げの3%程度しかありません。しかし、昔と比べて家族で競馬場に訪れる方が増えてきています。そのために、ファミリー層をターゲットにしたイベントの開催が今後重要だと思います。まず競馬場に来てもらい、ホッカイドウ競馬の魅力を知ってもらうことが、更なる発展につながると考えています。
 アンケートの結果の中には、本当にホッカイドウ競馬を考えている意見も多くあり、その中からできることをピックアップして提言していくとともに、2015年以降においても継続して取り組みを行っていくつもりであります。

ホッカイドウ競馬についてのアンケート集計表

設問1. あなたの性別 設問2. あなたの年齢
 
     
設問3. 門別競馬場に行ったことがあるか   設問4. ホッカイドウ競馬の馬券を購入したことは
 
     
設問5. 馬券購入「ある」の回答者の理由   設問6. 馬券購入「ない」の回答者の理由
 
     
設問7. ホッカイドウ競馬の存続・廃止問題につい
て知っていますか