【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第7分科会 ワークショップ「自治研」 楽しく学ぶ自治研活動

 各単組が行っている地域活動があまり住民に認識されていないといった現状から、「自治体・職員に対しどのようなイメージを持っているか」を、直接、住民から聞き取り、その内容をもとに、私たちが理想とすべき自治体・公務員像を改めて考えることとしました。そこで、公務員をめざす学生と現役自治体職員との意見交換会を実施し、彼らが何を思い、どう考えているかを探りました。この学生との意見交換会から見えたものとは……



理想の自治体、理想の公務員像とは
―― 学生との意見交換会から見えたもの ――

北海道本部/石狩地方本部・自治研グループ検討会議

1. はじめに

 石狩地方本部では、毎年次ごと、2年間をかけて自治研活動を行っています。今年次は、1年目に各単組・総支部から自治研推進委員を選出し、調査・研究するテーマを議論してきました。2年目は、新たに検討会議を設置し、グループメンバーを募って、1年目で議論したテーマについて調査・研究を行ってきました。
 検討にあたったグループメンバーは多種多様で、組合役員だけではなく、青年部員や一般組合員からも募りました。これは、どうしても組合活動とは賃金・労働条件闘争や、政治闘争についてばかり注目され、組合役員に任せておけばよいとも思われているところがあるので、組合はみんなで活動するものということを改めて確認するためでもあります。


2. テーマの選定

(1) まずは現状分析から
 1年目の2013年度は、まさに地方交付税が一方的に削減され、各自治体での賃金の削減がまったなしの情勢でした。研究テーマを議論するため集まった自治研推進委員からは、「なぜ、私たち公務員はこんなにバッシングを受けなければならないのだろう」「なぜ、こんなに一生懸命働いているのに賃金を削減されなければならないのだろう」といった意見がありました。そこで、各単組の地域での取り組みを確認したところ、それぞれの単組がボランティア活動等何らかの地域活動を行っていることがわかりました。町内会と一緒になってボランティア活動を行っている単組の委員からは、「町内会長からは、毎回感謝されているものの、住民にどこまで知られているかわからない。」という話がありました。また、せっかく活動していても市町村の活動として行っていると思われていて、労働組合の活動と認識されていない場合があることもわかりました。そのような中、ある民間企業の取り組みについて報告があり、そこでは地域の大学とコラボレーションした活動を行っていて、それが上手くメディアに取り上げられているとのことでした。私たちが取り組んできた活動は、ある意味、内輪で完結してしまっていてあまり外部にアピールできていないということがわかってきました。

(2) 学生とコラボ
 「私たちの活動があまり知られていないこと」、「内部の議論で終わってしまっていること」等の反省から、今回の自治研では次の二つの視点で研究を行うこととしました。
 一つ目は、私たちは常日頃、地域・住民のために仕事をしているが、住民は果たしてどういうイメージで私たちを見ているのか調査してみるということです。二つ目は、道庁・市役所・役場等の内部ではなく、外部の人たちとコラボレーションして研究するということです。これらの視点から、今回の自治研では、地方自治や行政について学び、自らも官公庁への奉職をめざしている学生と、意見交換を行うことしました。あえてこのような学生を対象としたのは、地方自治に関する一定の知識があり、なおかつ、率直な意見を聞くことができると考えたからです。
 そして、研究のテーマは「学生との意見交換を通じ、私たちが追い求めるべき理想の自治体・公務員像を改めて考える」としました。


3. 意見交換会の準備

(1) 何を聞く?
 テーマの選定までは自治研推進委員会で議論してきましたが、意見交換会の具体的な内容や進め方、研究・分析は、新たにメンバーを募り、グループ検討会議を設置して議論していきました。
 検討会議ではまず学生に何を聞くかを議論しました。理想の自治体像を探るため、「北海道庁のイメージ」「市役所・町村役場のイメージ」を率直に聞いてみることとしました。次に、理想の職員像については「道職員のイメージ」「市町村職員のイメージ」を聞くこととしました。これらの現状を分析することにより、私たちが追求するべき理想の姿が浮かび上がると考えました。

(2) 学生を探そう
 学生との意見交換を行うにあたり、肝心な「学生」については、まったく当てがありませんでした。そこで、公益社団法人北海道地方自治研究所に相談したところ、研究所理事長である北海学園大学法学部佐藤克廣教授が学生募集について快く引き受けてくださいました。一番の難関と考えていた参加学生の募集がなんとかクリアされ、意見交換会に向けての議論も過熱していきました。

(3) アンケートを実施しよう
グループ検討会議では活発な議論が行われました。
 意見交換会の中で私たちが聞きたいことについては、事前にアンケート形式で回答してもらうこととしました。これは、回答の内容によっては自らの自治体の取り組みについて調査する必要があること、また、限られた時間の中で意見交換会をより良いものにすること等の目的によるものです。また、意見交換会の参加者は、公務員をめざしている学生としたため、どこの官公庁を受験したいか、公務員になったらどのような仕事をしてみたいかも聞くこととしました。この設問で、学生が何を考え、どのような理想をもって公務員をめざしているのかを探りました。あわせて、公務員の労働組合についてもどう考えているか聞いてみることとしました。私たち労働組合が行う自治研としてはやはりこの視点は外せないと考えました。最後に、参加者から私たち現役職員に聞いてみたいことについても自由に記載してもらうこととしました。公務員をめざす参加学生のためという意味もありますが、このような部分にこそ、考えるヒントが隠されているのではとも考えました。

(4) 事前アンケートの分析
 当初設定した意見交換会の日程が、札幌市や江別市の採用試験の日程と重なっていたというハプニングがあり、一時は開催が危ぶまれましたが、佐藤教授のご協力もあり、なんとか開催に漕ぎつけることができました。
 アンケートの回答の集約も、意見交換会の一週間前となってしまったため、グループメンバー各自でアンケートの内容を検討してくることとしました。アンケートの回答には、かなり専門的な政策に踏み込んだ内容のものや、海外での事例との比較、私たち公務員に対する目を覆いたくなるような厳しい意見等がありました。
 最終的にどのように意見交換会を進めていくかを議論できたのは当日の午前中であり、果たして円滑な意見交換ができるのか、メンバー一同、不安を抱えたまま意見交換会に臨むこととなりました。


4. 意見交換会

(1) まずは自己紹介からスタート
 意見交換会は、2014年7月6日(日)に開催しました。冒頭、事務局から今回の意見交換会を開催するに至った経緯や趣旨等を説明し、まずはお互いの自己紹介から意見交換会をスタートしました。グループメンバーから始め、次に参加学生の自己紹介を行いました。グループメンバーの参加者は7人でしたが、それぞれ今までの職場や職員をめざしたきっかけ、組合の役職等を話しました。一方、参加学生は5人で、出身地や学部・学年、今回の意見交換会に対する意気込み等を話していただきました。この時点では、まだお互い固さが見えました。

(2) 自治体・職員に対するイメージ
 初めに、『市役所・町村役場、北海道庁に対するイメージ』とそれぞれの『職員に対するイメージ』について意見交換を行いました。この項目に対する事前アンケートにおいては、比較的肯定的な意見からバッシングにも近い意見まで様々な回答がありました。
意見交換中の一コマ~お互い最初はまだ緊張しています。
 座長から一通りアンケートの回答を読み上げたあと、まずは道庁に対するイメージについて、メンバーより回答しました。道庁・道職員に対しては、『10%の給与削減』『北海道全体の産業を考えた政策を計画、実行している機関』『道庁で具体的に何かをするというイメージがうすい』『債務が多く、身動きが取れない』『北海道を国内外にアピールし、常に道民全体のことを考えた政策や判断を求められる重要な職務ないし使命を背負っている』『低水準の給与で頑張っている』『基礎自治体職員を見下している』といった意見が出されていましたが、「まずは否定的な意見が出されていることについて、率直に道職員全体が反省していかなければならないと思う。」と話し、続いて「給与削減については、以前は10%の削減だったが、組合が交渉を重ね二十代以下の若年層は2.0%まで圧縮させてきている。仮に他の自治体と北海道庁の試験の両方に受かった場合は、是非、道庁を選んで欲しい。」と積極的にアピールしました。

左が副座長の古山さん 右が座長の渡邊さん

 次に、事前アンケートの中にあった『お役所仕事をしている』という回答に対し、座長から何か具体的な事例があったのか尋ねたところ、参加学生より「母が市役所に行ったときに対応した職員があまりわかっておらず、さんざん待たせた挙句、市役所ではなく税務署に行くようにと言われた。母からその話を聞いたとき、お役所仕事だなあと感じた。」と説明がありました。これに対しメンバーからは、「私の今の職場は市民からの市に対する意見を受け付ける部署で、よくある苦情がいわゆる『たらい回し』についてである。最初に応対した職員が的確に担当に繋げられればよいのだが、あまり調べないで回してしまい、結果的に何か所も電話を回してしまう。これもよく『お役所的』と言われている。」と話しました。また、別のメンバーからは、「私の勤めている市役所では、役所に届けられた意見や苦情は全職員が見ることができるイントラネットで定期的に周知されている。」と自分の市役所の事例を紹介するとともに、「セクションが細かく分かれていて、住民のみならず、職員でも担当部署がわかりづらい。」と現状を報告しました。このことについて、参加学生から「市の部署や業務全体を把握し的確に案内を行う『コンシェルジュ』的なものを置くことができないか。正確に案内するだけの部署でも市民サービスのという意味では仕事になると思う。」という意見が出されました。これを受けメンバーは、「役所はまだ『サービス』を提供しているという意識が低いと思われているかもしれない。私は以前、直接市民に応対する部署にいて、その時は真摯な接客を心掛けてきた。そういう職員がいるということも知っておいて欲しい。」と自らの思いを伝えました。

(3) 自治体職員になったらやってみたい仕事
 次に、『自治体職員になったらやってみたい仕事』について聞いていきました。『観光』に関する仕事に就きたいと回答した学生が多く、それについてメンバーが回答しました。恵庭市から参加したメンバーからは、「『観光』についてはどの自治体も力を入れている。その際必要になる『武器』をどうするかが一番重要で、私のまちは『花のまち』としてガーデニングの分野に力を入れ、売り出そうとしている。また教育、特に読書にも力を入れており、市立の図書館は小さな子どもから高齢者まで誰でも来られることをコンセプトにしている。ぜひ一度、機会があったら訪れてみて欲しい。」と話しました。道職員のメンバーからは、「北海道新幹線が現実味を帯びてきており、札幌に来る観光客をどう近隣に呼び込むかが重要である。少し足を延ばしてでも来てみたいと思わせる情報発信、魅力づくりが必要で、役所だけではなく民間企業とも連携していかなければならない。」という意見が出されました。また、参加学生から「北海道の売りは? 大自然とおいしい食べ物はあるがそれ以外はあまり思い浮かばない。」といった意見が出され、それに対し、「大自然やおいしい食べ物以外に何かあるかと言われれば他にはないかもしれない。しかし、『当たり前すぎて自分たちが気づいていない魅力』というものが実はある。小さなまちや田舎でも、そういったものがウケて、観光客が来ているケースもある。いかにその魅力に気づくことができるか。運の部分もあるが、気づくことができたまちは強い。」と話しました。地元愛、特に『コンサドーレ札幌』について強い思い入れを持った参加学生からは、「もっとコンサドーレ札幌を道民のチームにしたい。全道各地より選手が入っている。サポーターとしてできることにも限界があると思うので、道庁の職員になってもっとアピールしていきたい。」といった意見もありました。そのほか、「情報収集や資料作成が向いていると思うのでそういった仕事をしてみたい。」といった意見や、「『教育関係』『労働行政』を学んでいて興味がある。」という意見があり、職員になった後の具体的なイメージを持ってめざしているということがわかりました。

(4) 現役自治体職員に聞いてみたいこと

今回ご協力いただいた北海学園大学学生の皆さん

 最後に、参加学生から『私たち現役自治体職員に聞いてみたいこと』について聞いていきました。まず、「全部のまちが観光に力を入れる必要がないのでないか。」という意見に対し、メンバーから「観光はある意味入口であり、それをきっかけに移住・定住者を増やしていくことも重要である。」「定住者を増やすためには働く場所が必要であり、観光以外、例えば農業でもよいが、自分たちのまちの特性にあったもので、地域の住民と協力しながら行っていくことが必要である。」と答えました。また、「給与や人員が削減され大変な状況となっているが、仕事に対するモチベーションは維持できているのか。」といった質問に対しては、「すべてがお金の問題ではないが、長く給与削減を続けられており、多少モチベーションが下がってしまうのは仕方がないと思う。組合としても一刻も早く削減を終わらせるよう取り組んでいる。また、人員の問題についても、新規採用の抑制により、年齢構成がいびつになってきており、さらに定年退職者の再任用の問題もあり、人事制度についてもしっかり取り組んでいかなければならない。」と回答し、別のメンバーからも、「私は下水処理場に勤務しているが、雨水の処理は市民の安全に直結する問題のため、日々緊張感を持って仕事をしている。」と実際の現場の状況を交えながら回答しました。労働行政について学んでいる参加学生からは、「地方公務員とその労働組合の今後の方向性は?」という質問がありました。この問いについては、「一番大事なことは、私たちは住民のために仕事をしているということであり、どんな職場・仕事でもどこかで住民とつながっている。今回、厳しい意見が出されたが、どこかでこのことを忘れているのかもしれない。」と自らを振り返りつつ答えるとともに、労働組合についても、「組合は組合員のためのものであり、役員は組合員の勤務・労働条件が少しでも良くなるように努力しているが、今は役員に任せきりで遠い存在になってしまっている。組合員全員で活動していくということを改めて確認していかなければならない。」と話しました。最後に、単組役員でもあるメンバーから、「組合活動は給与の増減のことだけを見られがちだが、お金のためだけではなく、『どうしたら社会が良くなるか』といった公共政策についても議論している。一つの自治体や首長だけで変えられないものもあるので、全国の仲間と団結して活動しているということも覚えて帰って欲しい。」と話し、意見交換会を終えました。


5. おわりに

 「理想の自治体・職員像とは何か」を考えるため今回の意見交換会を開催しましたが、「一人でも住民に対する思いが欠けた対応をしてしまうと全体がそう見られてしまうこと」や「役所の内部にいると思いつかないような考えを外部の人たちは持っていること」等を改めて確認することができました。また、公務員をめざす学生の「どうしたらこの北海道、住んでいるまちがよくなるか」といった自分なりに考えた思いに触れることで、私たちが職員になったときに抱いていた熱い思いを再確認することができました。
 人員削減や職場合理化により、日々の仕事に追われ目の前の業務をこなすことで精一杯というのが実情ですが、理想の自治体・職員像は、地域のため、住民のためにこれからも追い求め続けていきたいと思います。
 最後に、今回の『外部の人たちと一緒に何かを行う』という初めての試みは、日程の調整や準備等、苦労した部分もありましたが、これからも地域の住民と一緒に考え、実践する自治研活動に取り組んでいきたいと思います。