【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第7分科会 ワークショップ「自治研」 楽しく学ぶ自治研活動

 広島県職連合自治研推進委員会では、自治研の若手リーダーを養成する目的で2007年から「担い手」講座を隔年開催しています。2013年度は、呉市豊町での農業体験や現地の方たちとの交流を通して、島が抱える課題を知り、今後の島の活性化について考えました。本レポートでは、現地に飛び込み、一緒に考える自治研活動について、課題も含めて取りまとめました。



自治研担い手講座について


広島県本部/自治労広島県職員連合労働組合・自治研推進委員会

1. はじめに

 自治労広島県職員連合労働組合(以下「広島県職連合」という。)は、NPOをはじめとする民間団体や地域住民との協働による「新たな公共」の創造と、若手組合員の参加拡大を目標に、自治研活動に取り組んでいます。
 自治研の若手リーダーを養成する目的で2007年から隔年開催している「担い手」講座もその一つで、2013年度は、大崎下島(呉市豊町)での農業体験や現地の方たちとの交流を通して、島が抱える課題を知り、今後の島の活性化について考えました。

 

これまでの自治研活動

広島県職連合がめざす自治研活動

参集範囲

近い職域の組合員同士

多様な組合員、外部の協力者

形  態

デスクワークが中心

職員以外の人々と交流しながら活動

時 間 帯

平日の5時半以降

土日も利用

目  的

当局の合理化攻撃に対する職域防衛的な側面も

住民目線で考え、その一方で公務員の置かれた状況も理解してもらう


2. 体験型講座

 前々回、前回(2009、2011年度)と体験形式の担い手講座を取り組んだところ、「いつまでも記憶に残る」「住民の方の話を聞けたことが一番の勉強」など、受講者に好評であったことから、今回も現地に出向き、地域の活動等を手伝いながら、地域の置かれた状況を考えていくこととしました。


3. 単組支部への協力要請

 広島県職連合呉支部は、大崎下島のみかん農家と知り合いの役員がおられた関係で、その方を中心に6年前から農業体験(みかんの収穫の手伝いなど)に取り組んでいました。
 また、農業体験を通じて親しくなった方々を夕食会にお招きし、みかん農家の現状や島に住まわれている人の思いを聞くなど、地域の課題についても学習を重ねてきました。
 こうした経緯もあり、今回の担い手講座は呉支部の案内・協力のもと、大崎下島での体験活動も含めて実施することとしました。


4. 講座の実施(企画・運営)

 今回の講座には、広島県職連合の若手組合員7人(全員男性、年齢23~40歳)が参加しました。受講者(以下「担い手」という。)の職域は、農林、土木、健康福祉、職業訓練、研究と様々で、自治研活動は初めての方ばかりでした。
 なお、講座は、次のスケジュール及び内容で実施しました。

回 次

内  容

第1回
(2013/10/28)

 ・顔合わせ
 ・DVDと内部講師による学習会「自治研とは何か?」

第2回
(2013/11/5)

 ・呉市豊町に関する事前学習
(単組支部長による講演、ワークショップ)

第3回
(2014/1/11)

●現地学習
 ・大長みかんの歴史
 ・御手洗「重要歴史建造物保存地区」を散策
 ・御手洗自治会「住民マニフェスト」
 ・町内会関係者、呉市職員との意見交換

第4回
(2014/3/2-3)

●現地学習(一泊)
 ・農業体験
 ・柑橘試食会
 ・夕食会で現地の方と交流
 ・講座に参加してみての感想、意見交換


5. 大崎下島の印象

 受講者のうち4人は大崎下島に行ったことがなく、残る3人も「よく知らない」ということで、まずは全員で島のことを調べました。
 県の統計資料、呉市のホームページや観光案内のデータを持ち寄ってワークショップを行いました(成果品:下図)。

6. 体験学習その①(島内散策)

 大崎下島の名産である「大長みかん」の歴史や、御手洗地区のまちづくりについて、呉市の職員と町内会の方に現地を案内いただき、話を伺いました。
 事前学習では「何となく暗いイメージ」と語っていた受講者からも、「思ったよりも、高齢の方々が元気で驚いた。」「美しい自然や観光スポットが多く、うまく情報発信すれば賑わうのでは。」との感想が聞かれました。
 ただ、大長みかんについては、1970年代の価格暴落以降、担い手が減少して耕作放棄地が急増している様を目の当たりにし、業として存続させる厳しさを痛感しました。
 その後、案内いただいた方々と、昼食を兼ねて意見交換をしました。

豊支所の前で、呉市の職員の方に大崎下島とみかん栽培の歴史を説明してもらう。
左端は、市の職員の方と親交があり、この講座を手伝ってくださった呉支部役員(当時)。

島の高台にある「歴史の見える丘公園」で、多島美をバックに記念撮影。

「歴史の見える丘公園」の眺望板。眼下の御手洗(みたらい)地区には、名所・史跡が多い。

山肌を縫う農道。往時は山全体がみかん畑だったが、今は右側中央に僅かに残るのみ。
「大長みかん」も、厳しい局面に直面していることが分かる。

御手洗「重要歴史的建造物保存地区」へ。
案内してくださるのは、前自治会長(右から2人目、御年78歳)。ちなみに、地区の70歳以上人口率は52%で、40歳台以下は2割
重伝建地区を散策しながら、気付きをメモする。
江戸時代後期の町並みがそのまま凍結保存されたような、全国でも珍しい地区。

島の生活様式も変わる中、重伝建地区では、住居の内装は自由にして良いが、外観はなるべく往時を再現するとの方針を皆が守っている。
往時の栄華を思わせる「ともえ瓦」。結構高価なものらしい。
街並み通りから海岸方向と山手に伸びる、自転車がやっと通れる細い路地。各建物とも、奥行きが深い「鰻の寝床」であることが分かる。
地区婦人会による「すだれ一輪挿し」。
ほとんどの玄関先に飾られ、島を訪れる人に「おもてなし」の心を届ける。
幕末期ゆかりの建物も多く残るが、家主が市への譲渡に応じず、保存が思うようにならないケースも。
案内いただいた方々を交えての感想交流。
右手前が、文化財保護を担当する呉市教育委員会の職員の方。(御手洗に在住する数少ない若手)

意見交換(1月11日)

当方(質問、印象)

回答(町の実情)

思ったより年長者が元気。
数字で見るほど暗い雰囲気ではなかった。

都会と比べて気持ちが充実しているのかもしれないが、70歳台までは何とか動けても、それを過ぎると難しくなる。
独居高齢者の面倒をどう見ていくかも喫緊の課題。

老人から子どもまで全員が関わることのできる町内会になっている。

平成6年に「重伝建」でまとまった後、いろいろな人の理解と協力で今の自治会組織がある。
各世代で様々な考え方があるが、自治会で全体を見通す話し合いができるのはいいこと。

とは言え、町内の人口も減っており、町内会の存続も困難になるのでは。

自治会も昨年ようやく代替わりしたが、会長は60歳台後半。次の世代も頑張ってくれているが、若者の絶対数が少ない。

橋がかかって変わったことはあるか。

様々な面で影響が出ており、一言での評価は難しい。
いずれまた、時間が取れる時に。

「島の人は閉鎖的」とよく言われるが、御手洗の皆さんはそうでもないと感じた。

架橋後は、そうでもなくなった。
大学の先生が学生を引き連れて来ることが増えたが、高齢の方も若い人と話ができて喜んでいる。

大学生(研究室)の来訪は多いのか。

自治会で町おこしのワークショップを定期開催しており、ゼミのテーマとして取り組む学生もいる。
若者のアイデアをいただくだけでなく、御手洗が、若い世代を通じて広まることに期待している。

若者の定住促進について、どう考えるか。

地域のコミュニティー維持のためには必要と思う。
空き家の紹介活動では、重伝建の素晴らしさを理解し、地区の取り組みに協力してくれる人を募集している。

呉市は、文化財保護に協力的との印象を持った。

自治会は、全然そう思っていない(笑)。
黙っていて何かしてくれるわけではなく、自治会としての思いを言い続ける中で、少しずつ進んでいるというのが本当のところ。

島には病院がないので、大変ではないか。

以前は高速船(呉、竹原)があったが、架橋後に廃止され、今は呉まで車で1時間以上かかる。以前より厳しくなった。

みかん栽培は、今後どうなってゆくのか。

従来の「大長みかん」では採算が取れないので、特産品種にシフトすることになるが、担い手が足りない。
耕作放棄地をどうするかも含め、新たな発想が必要。
(都市住民向けに「みかんオーナー」を募るなど)

以前、呉支部が家族交流事業で実施した「みかんの食べ比べ」を本土でもできないか。

できなくはないが、島に来てみかんを食べ、みかんの木を見てもらったことに意味があると考えている。

建築物を当時のままの姿で残すのは、大変な作業と思う。

地元の業者に技術継承等で協力いただいている。
こうした歴史保存活動は、地元に技術が根付いていないとダメなので、外部を頼ってはいけない。

「まちづくり」の中で、集落毎のエネルギー自給を掲げる地区も出ているが、歴史保存地区ではソーラーパネルはNGなのか。

重伝建の意義を考慮し、自粛いただいている。
住居の内装や生活様式までは立ち入らないが、外観は別。

小型エコカーの導入は。道幅が狭いので需要はあると思う。

そういうのは問題ない。
先日、軽自動車の消防放水車が導入された。

他の観光地に比べ、食事処と休憩所が少ない印象だが。

自治会でも検討したが、誰かに頼むにも採算が合わない。住民が減る中で、地元の人を対象とした商売は難しくなっている。
新規の飲食店(3軒)は、いずれも島外から来た人が始めたもの。観光客次第では増える可能性はある。


7. 体験学習その②(柑橘試食会・農業体験・夕食会)

 呉支部の自治研チームと合同で、泊まりがけの農業体験に参加しました。
 急斜面での作業に苦しみながら、山を開拓してきた先達と、今もみかん作りに従事する農家の方たちに思いを馳せました。

農業体験の事前説明。
(当然ながら)受講者全員が、みかんの収穫は初体験。
柑橘試食会で、地元のみかん研究家の方が栽培した交配種(非売品あり)をいただく。
「こんなに美味しいみかんは初めて」と、あちこちで感嘆の声が上がる。
収穫したみかんは「モノラック」に乗せて麓まで運ぶ。これがなかった時代の苦労はいかばかりであったか。
30度を超える急傾斜地での作業。みかん栽培に適しているとはいえ、働く者にとっては辛い。(トリック写真ではありません。)
この農園のみかんは、枝の広がりが大きい。すべて収穫しようと思えば、頭も使う。
時には、籠ごと木に上がることも。
みかん1本当たり1,000個、手摘みで収穫しなければならない。
売り物にならない小さい実はすべて摘果するが、味は売っているものと変わらず美味しい。
受講者の一人は「心が痛む」と嘆いた。
収穫しきれず、放置されたみかん。(点線部)
農家に転出や不幸があれば、こうして耕作放棄地が広がっていく。
地元の方が、「ここが一番好きだ」と言って連れて行ってくれた石垣。
車両も重機も使わず石を運び、岩肌にこれだけの垣を作った先人の執念に感動するという
麓の入り江には、既に3隻(全盛期は数百隻)を残すのみとなった農船が浮かぶ。
往時は、耕作地を求めて名もなき島を開拓し、多くのみかんを栽培したという。
船の接岸を助ける「雁木(がんぎ)」。(点線内)
島の歴史・文化を伝えようと、県の建設局職員の提案で復元された。
農業体験後の夕食会では、地元のみかん農家の方や商店主、農協職員、県職員OBの在住者が集まり、思い思いの話題で盛り上がった。


8. 受講者の感想・まとめ

 企画終了後、受講者全員に感想報告をしてもらいました。
主な意見は下表のとおりですが、担い手講座の目的であった「自治研の面白さ、地域活性化に対する県職員の役割の考察」については、一定の評価はできるものの、課題も明らかになりました。(下表)
 今回の受講者には、この講座で学んだ(と言うより、感じた)ことを活かして、今後の広島県職連合運動や自治研活動に積極的に参画してもらうよう取り組んでいきます。

受 講 者 感 想

① 自治研の理解

○地域住民の皆さんが要望されていることを聞き、公共サービスの提供を検討することで、仕事へのやりがいを見出すことができる。そのための組合活動の一環であると理解した。
△民主的な地方自治を実現するための自治研活動なのか?
○県民に対して、身近な問題として対応することがいかに大切か理解できました。
×数ある活動の中で、今これを優先しなければならないか疑問に思う。

② 知的好奇心、
労働意欲の向上

○広島県には様々な場所があり、特有の地域について大変わかりやすく学習することができました。地域特有の問題や情勢を知ることの大切さを学ぶことができ、広島県職員の必要な知識の習得にも大いに役立ちました。
○大変良い経験ができ、今後の仕事や経験に繋げていきたいと思います。
○県民が暮らしやすいよう、行政として何ができるか、日々考えていかなければならないと感じました。
×あまり繋がらなかった。(半分程度しか参加できなかったので)

③ 地元の方の印象深かった言葉

△「何で組合が農業体験をするの?」と言われ自分もあまり理解していないことに気付いた。
○町の活性化・交流のためには援農をはじめとして、町外の人に来てもらう、来られた際の受入に対するシステム化が必要。個人対応では継続的にできない。
○自分たちの住んでいる土地が大好きであり、何とかしてこの土地をみんなに知ってもらいたいという情熱が大変印象に残りました。
○「俺はミカンマイスター(匠)になりたいんだよ」という農家の方の言葉が大変印象に残りました。あの年齢を迎えられても、まだまだ意欲的にみかんづくりに取り組んでおられる姿に、とても感銘を受けました。

④ 農業体験の感想

○やることはたくさんあり、年間を通しての仕事量が不安定であることが分かった。収穫は、つらくも嬉しい作業であり、モノ作りが好きな方でないと農業はできないと思いました。
○今回の体験で、農家には自然の偉大な力を制御できる方がたくさんいて、いろいろな知恵が伝承されていることを知りました。
○最初は、ミカン狩りのようなイメージを持っていましたが、実際に現地に行ってみると、圃場は断崖絶壁のような所で、高齢の方々が作業するのは危険なのではないかと思うくらいでした。

⑤ 地域で頑張る人へのアプローチ

○県は地域住民の声を広く拾っていると思われる市町の担当者と連携が密に出来る状況が必要であると感じた。定期的な意見交換会などができると良い。
○今回のような体験を通して、実際に問題に触れ、色々な立場で出来ることを持ち寄り、対応していくことではないかと思います。住民ができること、市町村ができること、県や国ができることと対応は多々あるとは思いますが、「なんとかせにぁいかん」という気持ちがあれば何でも実現すると思います。
○県職員とはいえ、一個人として今回の体験で見たこと感じたことを一人でも多くの人に伝え、豊町に足を運んでもらうことは十分可能なことではないでしょうか。そういった県民に情報を発信する役目を私たちはもっているのではないかと思います。