【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第8分科会 男女がともにつくる、私たちのまち

 2015年4月に施行される「子ども・子育て新制度」に対応するため、多くの自治体においても地方版「子ども・子育て会議」が設置・開催されており、制度全般が大きく見直されるなかで、私たちは市民福祉の向上をめざす自治体労働者として対応していかなくてはなりません。短期間で対応しなければならない状況下において、私たちが思考錯誤しながら進めてきたこれまでの取り組みについて報告します。



子ども・子育て新制度に対応した公立保育所をめざして
―― 職場と組合の連携で見えたもの ――

大分県本部/大分市職員労働組合 利光 吉広

1. はじめに

 住民ニーズに即した保育の"量的拡大"と"質の向上"をめざして進められている「子ども・子育て新制度」では、幼稚園(教育)と保育所(保育)を併せた"乳幼児期の子どもの育ち"が大きく見直されており、自治体(幼稚園・保育所)においては、公立・私立を問わず"子ども達のための教育・保育"を充実させていくことが求められています。
 しかし、職場に目を向けてみると、正規職員の減少や業務量の増加により、新制度に対応するために動く余裕がなく、「何かしたいけど、どうすればいいんだろう」と感じていた方も少なくないのではないでしょうか。私もその一人でした。
 そのようななかで私たちは、まず、公立保育所で働く組合員(保育士、保健師、調理員)と執行部との連携方法を模索し、相互に状況を共有することからはじめました。
 本レポートでは、これまでの経過について、担当した執行部の役員(事務職)の立場から報告します。

2. 現 況

(1) 大分市の状況
 ・人 口  478,179人(2014年4月末現在)
 ・保育施設 認可保育所    68(2014年4月1日現在)※うち、公立14
       認可外保育施設  62(2014年4月1日現在)
       事業所内保育施設 11(2014年4月1日現在)
 ・正規職員配置基準(2014年4月1日から労使で確認した配置基準となる)

0歳児 1歳児 2歳児 3歳児 4~5歳児
3:1 5:1

6:1

20:1 30:1
  ※上記に加え、各保育所に所長1人、主任1人、フリー1人(1保育所を除く)
※別途、休日保育加配1人、障がい児加配4人、2階建て加配1人
 ・公立保育所の正規職員数 153人(2014年4月1日現在)
  ※内訳は、保育士122人、保健師5人、調理員26人。保育士5人が欠員

(2) 組合の概要
 ・組合員数 1,956人(2014年4月1日現在) ※幼稚園は組織外
 ・執行部  20人(うち、専従役員5人)
 ・分会組織 25分会
 ・職場委員 14人(保育所毎に1人の職場委員を選任し「職場委員会」を随時開催)
 ・県本部保育所部会幹事 1人

(3) 公立保育所の民営化
 2011年4月の大分市長選挙において、推薦候補が掲げたマニフェストに複数の行政改革項目があり、そのうちの1つの項目で「保育所の民営化」が示されていました。その後、市長(当選後)から、項目ごとに協議を進めていきたいとの内容で提示されたため交渉を配置し、協議が整うまで一方的な実施はしないことを確認のうえ、項目ごとに協議を行うこととしました。
 当時、大分市では、待機児童数が増加傾向にあるなか、公立保育所の児童定員も拡大していたものの、施設の老朽化や正規職員が不足(14人)している状況でした。
 その後の協議で当局から示された具体的な考えは「公立の15保育所のうち新桜町保育所を民営化したい」というものであり、「待機児童の解消」と「保育の質の向上」(特別保育等の充実)をめざすとともに、正規職員の不足(欠員)を解消し、保育の質を向上していくための体制を整備したいとしていました。私たちは、職場委員会をはじめとして、さまざまな議論を交わしながら当局と4回の協議を行いましたが、最終的に以下の点が確認できたことで、改めて「新桜町保育所の民営化」提示を受けることとし、市長との交渉においても同じ内容が確認できたため妥結しました。
 これにより、2014年4月から民営化が実施されています。
<確認した内容>
 ・他の公立保育所と職員の身分を守っていく
 ・新桜町保育所の正規職員は、人事異動により他の公立保育所へ配置する
 ・協議で確認した正規職員数を労使で確認した配置基準とする
 ・組合員の意見を聞きながら、公立保育所が担う役割を見出す

3. 新制度を考える

(1) 当初に起きた問題点を振り返る
① 情報不足による問題点
  →公立保育所の代表者を「地方版子ども・子育て会議」のメンバーとして参加させるという自治労方針が示される前の段階で、すでに「大分市子ども・子育て会議」が設置(2013年10月1日)されていた
  →当局の考え方として、「大分市子ども・子育て会議」の委員に労働者代表(連合大分大分地域協議会事務局長※)が選出されていた
  ※大分市職労副委員長が兼務
  執行部・分会いずれも、新制度に対する危機感を感じていなかった。
② 連携不足による問題点
  →県本部保育所部会幹事・分会・執行部の三者が個別に情報交換するなど連携していたが、時間を要するうえに確実な情報伝達になりにくい
  焦り始めるものの、必要な情報を精査できなかった

(2) 生じた課題を整理する
① 分会(組合員)、執行部(担当)が新制度を学習する必要がある
② 県本部保育所部会で得た自治労(中央本部保育所部会)からの情報をスムーズに伝達できる流れをつくる必要がある
③ 県本部保育所部会幹事・分会・執行部の三者が情報を共有し、同じ方向をめざして対策を練る必要がある
④ 「大分市子ども・子育て会議」に意見反映できる体制をつくる必要がある

(3) 課題の解消へ
① 学習会
  ・分会主催「子ども・子育て新制度学習会」(2013年12月3日)を開催
  ・県本部保育所部会主催「子ども・子育て支援新制度学習会」(2013年11月23日)に参加
  ・九州地連主催「介護・福祉集会」(2014年1月25・26日)に参加
  確実な情報収集をめざした
② 連携体制の整備
  ・県本部保育所部会幹事・職場委員(分会)・執行部の三者が集まる場をつくり、必要な情報を職場委員が持ち帰り、各保育所で組合員全員に周知できるようにした
  確実な情報伝達をめざした

<連絡体制のイメージ図>

<情報共有の流れ>
① 三者(県本部保育所部会幹事・職場委員・執行部)のいずれかに情報が入る
② 連絡を取り合って三者が集まる場を設定する
③ 情報を精査し、職場委員を通じて分会(各職場)の組合員へ
<主な役割>
◆県本部保育所部会幹事
 ・県本部保育所部会からの情報収集、意見反映
 ・職場委員への報告
 ・職場委員(三役)との連絡調整 など
◆職場委員
 ・各職場への情報伝達(必要に応じて意見集約)
 ・県本部保育所部会幹事との連絡調整 など
◆担当執行委員
 ・県本部執行部からの情報収集、連絡調整
 ・執行部への情報提供、連絡調整
 ・当局との連絡調整
 ・「大分市子ども・子育て会議」の委員である副委員長との情報交換 など

4. 具体的な対策

(1) 2014当初予算闘争
 1月15日に交渉を配置し、現在策定中の「子ども・子育て事業計画」については、地域の実情に即し、公立保育所の役割を踏まえたものとすることや、保育の質の向上にむけた体制を整えられるよう、労使で確認した職員の配置基準を守ることを確認しました。

◆要求内容と回答

1. 大分市次世代育成支援行動計画(新すこやか子育て応援プラン)及び大分市特定事業主行動計画の後期計画の目標達成に向けた取り組みを推進すること。また、市民ニーズを十分調査しながら、公立保育所での新規事業の実施等については組合と十分協議するとともに、施設の維持・整備に必要な財源及び労使で確認した配置基準による正規職員を確保すること。
(回答)大分市次世代育成支援行動計画では、7つの基本目標と21の基本施策を掲げ、これらを達成するため、185の事業を実施することとしている。
 計画の推進にあたっては、これまでの「大分市次世代育成支援行動計画推進協議会」から、新たな条例により設置した「大分市子ども・子育て会議」に引き継いだ上、計画の実績の評価を行うとともに、基本目標の達成に向けて各事業に取り組みたい。
 また、公立保育所の新規事業の実施に係る勤務労働条件については、必要に応じて組合と十分協議するとともに、施設の維持・整備に必要な財源や正規職員は確保していきたい。
2. 子ども・子育て支援法に基づく子ども・子育て事業計画の策定にあたっては、大分市子ども・子育て会議の議論を踏まえ、地域の実情に即し、自治体の責任が十分に果たせる計画を策定すること。
(回答)新しい計画は、大分市子ども条例に基づく推進計画と、子ども・子育て支援法に基づく子ども・子育て支援事業計画を一体としたものを策定することとしている。
 また、計画の策定にあたっては、市民ニーズを反映させ「大分市子ども・子育て会議」の意見も聞きながら、自治体の責任が十分果たせる内容といたしたい。
3. 保育所の入所基準は地域の実状に即したものとするとともに、待機児童の解消や保育サービスの充実にむけた保育施策と予算措置をはかること。
(回答)保育所の入所については、「大分市における保育の実施に関する条例」に基づき行っており、入所基準の具体的運用にあたっては、地域の実情に即し、適正な実施に努めていきたい。
 待機児童の解消や保育サービスの充実については、保育所入所希望者は大幅に増加していることから、大分市次世代育成支援後期行動計画に掲げている数値目標の達成はもとより、一人でも多くの申込者の受け入れができるよう、保育所の増改築や分園設置等の取り組みを進めるとともに、保育サービスの充実のため必要な予算確保に向け努力していきたい。

(2) 担当課を招いての学習会
 自治労の行動要請に基づき、2月21日に担当課の管理職を招いての学習会を開催し、新制度の概要や大分市においての今後のスケジュールなどの説明を受けました。

(3) 2014春季生活闘争
 自治労が示した"モデル要請書"を参考にして、大分市職労としては「2014春闘要求書」において、新制度に関する要求項目を追加し、3月5日の交渉で、「子ども・子育て支援事業計画」については、公立保育所の責務と役割を踏まえ策定することを確認しました。

◆要求内容と回答

1. 「子ども・子育て支援法」において、新制度の実施主体である市町村の権限と責務が法定化されたことから、「子ども・子育て支援事業計画」の策定にあたっては、公立教育・保育施設が子ども・子育て支援の専門機関及び行政機関であることを踏まえ、その責任と役割及び責務を明確にすること。
(回答)保育の量的拡大・確保を行う上で、公立の教育・保育施設は重要な施設であり、責任を担っていると考えている。また、すべての教育・保育施設における幼児教育・保育の質的改善を図る上で、従事者に対する指導・助言や研修に対する支援等は、公立の専門機関及び行政機関としての役割であると考えている。
 このような公立施設の役割を踏まえ、子ども・子育て支援法に基づく実施主体としての責務を果たしてまいりたい。
2. 保育の実施等にあたっては、すべての子どもと子育て家庭への支援の拡充、質の高い保育・教育の提供、子どもの健やかな育ちを重層的に保障すること。
(回答)すべての子どもと子育て家庭への支援の拡充、質の高い保育・教育を提供するため、現在の利用状況や潜在的なニーズを含めた利用希望を把握した上で、教育・保育及び地域の子ども・子育て支援事業の量の見込み並びに供給体制の確保の内容及び実施時期などを盛り込んだ「子ども・子育て支援事業計画」を策定し、その計画に沿って、子どもの健やかな育ちを重層的に保障できるよう、質の高い教育・保育及び地域子ども・子育て支援事業を展開してまいりたい。

(4) 子ども・子育て会議
 会議の前後には、委員である副委員長と担当の執行部が情報を交換しており、会議の場でも委員が必要に応じて発言することとしています。また、傍聴としてもできる限り参加しています。

(5) 担当課との意見交換会
 機構改革(2014年4月から実施)によって担当課が新設された「子ども保育課」に変わったため、県本部保育所部会幹事・分会三役・執行部の三者と担当課による「意見交換会」(2014年6月)を行いました。

(6) 2014人員要求闘争
 私たちは、新桜町保育所の民営化の際、公立保育所の「職員配置基準」を労使合意のもとでつくりましたが、新制度の実施に伴い現在の児童定員そのものが見直されることとなれば、結果として配置基準に影響が生じることは避けられないため、非常に危機感を持っています。
 このため、退職による"欠員"を正規職員で補充することや、新制度による国の法定数(職員配置)改善を見据えた正規職員の配置をめざし、「2014人員要求闘争」(2014年6月)に取り組みました。

5. 今後の課題は「公立保育所が担う役割」の明確化

 大分市では、民営化協議の際に当局から、「公立保育所は特別保育事業などにより、保育の先駆者として民間の指導的役割を担っている」との答弁を引き出したうえで、「組合員の意見を聞きながら、公立保育所の担う役割を見出す」ことを当局と確認しており、2014春闘交渉においても「従事者に対する指導・助言や研修に対する支援等は、公立の専門機関及び行政機関としての役割である」との回答を得ていますが、新制度の実施に伴い、さらに明確にしていく必要があると考えています。また、新制度により国の法定数(職員配置)が改善されても、正規職員で配置するかどうかは自治体の判断になります。このため、私たちは労使合意の下でつくった正規職員の配置基準を守る取り組みを進めていく必要があります。しかし、"配置基準があるから"という既成の事実だけでは、当然ながら守ることはできません。
 自治労はモデル要請書のなかで、公立教育・保育施設の役割について「子ども・子育て支援の専門機関および行政機関の一部であり、新制度全体およびニーズ調査の結果を踏まえて、市町村と同様の責務を担う」としています。つまり、公立は園だけでなく、その地域の子育てを支援するということです。
 自治労の考え方を参考にしながら、私たちは、市民に胸を張って説明できるような、新制度に対応した(住民ニーズに沿った)"公立保育所の担う役割"を明確にしていかなければならないと考えます。そうすることが、新制度の実施に伴う民営化をさせないための大きな一歩になると思っています。

6. おわりに

 私が執行部の担当として新制度に携わり感じたことは、子どもたちのためにより良い教育・保育環境を整備していく方法を考え、その実現のために何をするべきかを議論していくことが大切であり、そうすることが結果として、民営化から職場を守ることにつながるのではないかということです。そして、このような活動自体が、まさに"自治研"だということを皆さんに再確認してもらいたいと思いました。
 現状の多忙な職場環境のなかで、自分たちだけでこれを進めていくことは容易ではないと思いますが、組合活動の原点とも言える"人と人との連携"に改めて目を向ければ、できることがあると思います。職場内での連携はもちろんですが、そこに執行部が加わることで労働組合としての運動に結びつけるための第一歩を踏み出せると思いますし、執行部としても職場の実情を把握するきっかけになります。
 新制度の議論も、いよいよ最終段階に入ります。今後も、より一層の連携をはかりながら、新制度に対応した公立保育所をめざして取り組んでいきたいと思います。