【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第8分科会 男女がともにつくる、私たちのまち

 合併後10年が経過し、合併特例債の期間終了にともなう地方交付税の減額を見越した様々な経費削減が進められてきたなか、子ども・子育て新制度導入に向けた取り組みを紹介する。



新制度における公立幼稚園の立場と役割


大分県本部/豊後大野市職員連合労働組合・幼稚園部会

1. 豊後大野市の公立幼稚園を取り巻く状況

 2005年に7町村が合併して誕生した豊後大野市は、2014年度で10周年を迎える。同時に合併特例債の期間も終了となる。地方交付税の減額を見越して、様々な経費削減が進められてきた。その影響は当然公立幼稚園にも及んでいる。
 まず、職員定数の見直しのため新規職員の採用を抑えていること。幼稚園職場では合併以降8人が退職しているが、新規採用はなく嘱託職員で不足を補ってきた。クラスを担任する嘱託職員は正規職員と同等の責任、業務を負いながらその処遇は決して良いとは言えず、大きな課題となっている。そして、公共施設の整理縮小が進められていること。この数年間で小学校や給食調理場の統合・廃止、保育所をはじめとする福祉施設などが指定管理・民間移譲となっている。
 特に保育所の民間移譲にあたり、幼稚園も当然そうなるだろうという議員の声もあり、厳しい状況にある。一方で2015年度から実施予定の新制度におけるニーズ調査では、公立幼稚園の存続を求める意見も多数上がっており、教育委員会もこの意見を尊重すべきだとの考えを示してくれている。
 幼保の一元化を図る新制度においては、予算の一本化に伴い事務窓口も同じく一本化していく方向である。豊後大野市では社会福祉課が新制度の主管となる。その際、幼稚園も社会福祉課の主管下に編成されるだろうといわれている。しかし、幼稚園は学校施設としての位置づけであり、小1プロブレム解消に向けた取り組みの中心的役割も担っており、小学校との連携は不可欠である。社会福祉課に編成された場合に、これまでどおり小学校との密接なつながりが保障されるかどうかが小学校側からも懸念されている。
 2014年6月10日、幼稚園のあり方を検討する教育審議会が開かれた。それに先立ち、公立幼稚園の方向性について教諭の思いをまとめ事務局へ伝えるため、教育長、学校教育課長、教育総務課職員と協議の場を設けた。
 ○就学前教育としての機能を十分果たすための定員の見直しが必要であること
 ○保護者の強いニーズに応えるための預かり保育の実施に向けて前向きな考えであること
 ○職員の資質及び幼児教育の質の向上を図るための研修の核となり、公立幼稚園の教育を発信していくこと
 教育委員会事務局からは、教諭の意向も踏まえて審議するとの回答が出された。今後、教育審議会で議論された答申案をもとに教育委員会で協議することになっている。
 すでに3回開催された豊後大野市子ども・子育て会議では、公立幼稚園の動向に委員(私立幼保関係者)の関心が集中している。適正な規模や配置について、早急な方向づけが迫られているところである。

2. 新制度にかかわるこれまでの経過(◎は部会の取り組み)

 2010.10.16 ◎幼稚園・保育所部会合同学習会(大分県自治研センター共催)
         ~子ども・子育て新システムの動向と課題について~
           講師 吉田 正行 氏 
 2011.01.17 ◎幼稚園・保育所部会合同学習会
         ~自治労運動から見た新システムの課題~
           講師 熊本県本部熊本市職労執行委員長 峯 潔 氏
 2013.09.26 新制度に係る社会福祉課との意見交換会
    10.31 第1回豊後大野市子ども・子育て会議開催
    12.24 社会福祉課、教育総務課、学校教育課組織協議
    12.26 教育総務課内協議
    12.27 学校教育課内協議
 2014.02.17 新制度に係る学校教育課との協議
    03.13 第2回豊後大野市子ども・子育て会議開催
    05.22 第3回豊後大野市子ども・子育て会議開催
    06.10 教育審議会
       *私立幼稚園連合会が主催する「幼児教育行政研修会」に毎年教諭代表が参加

3. 幼稚園としての課題

(1) ニーズ調査から……1号設定の供給余剰

*公立幼稚園9園中3園は休園中
*公立保育所は保育所型認定こども園
*私立幼稚園うち1園は幼稚園型認定こども園

(2) 学校種としての位置づけ
① 幼保連携型認定こども園の主管課は社会福祉課である。幼稚園型も全国的にその傾向が強い
② 社会福祉課主管となった場合、学校との連携が希薄になるのではないか
③ 幼児教育の指導に関しては教育委員会からの意見を聴取することになっているが、これまでのような教育課程研究の充実が図れるかどうか。

(3) 子育て支援
① 利用者負担の幼保公私すべて統一~同等のサービス提供が求められる
  預かり保育、長期休業中の預かり、子育て支援
② 教諭としての質・専門性が問われる

4. 今後の取り組み

 新制度が始まるにあたり、いくつかの課題に直面している。どれも担当課との連携なくして解決することは困難で、公立幼稚園が存続できるかどうかは、今この時期をどう乗り切るかにかかっているといえる。豊後大野市の就学前教育・子育て支援の中に公立幼稚園をしっかりと位置づけ、その意義を明確にしていく必要がある。そのためには、まず私たち自身がその意義を共通理解し、常に前向きな取り組みを続けていかなければならない。
① 学校種としての位置づけ、学校・教育委員会との連携の必要性を訴える
  ・幼・小連携をリードする
② 教育課程ほか就学前教育にかかわる諸研究の拠点となる
  ・幼稚園教育要領に則った幼児教育のスタンダードであることを明確にする
  ・『研究する幼稚園(教師)』として情報を発信する(※豊後大野市がめざす幼児教育)
③ 関係諸機関との密な連携を活かした、特別支援教育の充実
  この3つを中心に公立としての機能を果たしていくこと。その取り組みの中で、幼稚園を主管するのは教育委員会であることが望ましいと教育委員会、社会福祉課に理解してもらうことを最優先に取り組んでいきたい。