【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第9分科会 平和と共生のために、自治体は……

 西海市労働者協議会は、2005年、西彼地区労の発展的解消による長崎地区労との統合によって、西海市地域で反戦・平和・地域運動に取り組む拠点にしようということで発足しました。長崎地区労では校区単位の勤労協活動を活性化しようと取り組んでいますが、市単位で、反戦・平和運動、政策要求、市議会対策などを重点に取り組んでいます。毎年、8月には「戦争と原爆展」を開催し、地域住民に平和を訴えています。



西海市労働者協議会の取り組み
―― 10年目を迎えた地域労働運動 ――

長崎県本部/自治労長崎県職員連合労働組合 生越 義幸

1. 西海市労働者協議会とは

(1) 若干の経過
 
いわゆる「平成の大合併」について、金子原二郎長崎県知事は全国のどこよりも推進し、79市町村より23市町になりました。旧西彼杵地区労働組合会議は、長崎市をまたいだ西彼杵郡15町を構成対象にしていましたが、市町合併により西彼杵郡は時津町・長与町の2町になり、西海市が大瀬戸町・西彼町・西海町・大島町・崎戸町の5町の対等合併で誕生しました。

(2) 西海市労働者協議会の発足
 旧西彼杵地区労働組合会議では、各町単位で勤労協活動に取り組んでいました。西海市の誕生に伴い、組合員の減少、構成組織の支部再編等により西彼杵地区労働組合会議を維持することは困難になることが予想されたことから、西彼杵地区労働組合会議の発展的解消による長崎地区労働組合会議との統合という道が選択されました。
 結果、2005年、西海市における反戦・平和・地域運動の拠点が必要だという思い、「地域運動の灯を消さない」という思いが結集して、西海市労働者協議会が発足しました。構成人員は約400人、自治労(西海市職員組合、長崎県職員連合労働組合)、長崎県教職員組合、退職教職員協議会で構成されています。


2. 西海市労働者協議会の取り組み

(1) 反戦・反核・脱原発の取り組み
 西海市労働者協議会は、この10年、平和運動を中心に活動してきました。2013年8月3日には、非核平和行進宣伝カーキャラバンに取り組み、大瀬戸町を中心に「核も戦争もない平和な21世紀」を市民に訴えました。
 8月11日、第9回西海市戦争と原爆展を大瀬戸町で開催し、パネル展示、クイズラリー、シール投票、映画上映等を行い、核実験の禁止、核兵器廃絶、戦争の悲惨さ、福島原発事故の実相を訴え、40人を超える市民とともに再び過ちを繰り返さない決意を新たにしました。

 特に、上映した「ひまわり~沖縄は忘れない、あの日の空を~」は、沖縄復帰40年を機に企画され、西海市労働者協議会も製作趣旨に賛同し、支援を行った作品です。2つの米軍機墜落事件を題材にし、沖縄の人々の基地に苦しむ現実に多くの市民が真剣なまなざしで観ていました。最後に、映画のエンドロールに刻まれた「西海市労働者協議会」の名に歓声があがりました。また、チャリティバザーを行い、収益金は高校生1万人署名活動の資金に寄付し、若者の平和活動への支援に引き続き取り組みました。なお、2011年度から西海市労働者協議会は、高校生平和大使・高校生1万人署名活動支援団体として登録し、若者による平和運動への協力と支援を引き続き行っています。
 不戦の日の取り組みとして、12月9日、平和学習会を開催し、25人が参加しました。元佐世保市議会議員の三浦正明さんを講師に「佐世保港での原子力艦船事故とLCACを考える」と題して講演していただきました。佐世保市に隣接しながらも、原子力に関する防災計画がないことなどの問題について指摘されました。また、かつて佐世保市から西海町横瀬への移転反対運動に取り組んだLCACについても、佐世保港が全体として軍事基地になっている実態を海上からの写真で確認するとともに、モニタリング体制の充実と情報公開の必要性について学びました。
 県・西海市が主催した「被爆体験講話者派遣事業」に企画段階から参画するとともに、3月5日には多くの組合員が参加し、講話を聞き、あらためて原爆被爆の惨状と平和の尊さについて理解を深めました。
 「9の日反戦・平和ニュース」を復刊し、毎月9の日に継続発行しました。現在のところ、内部だけの配布にとどまっていることから、市民・地域住民へどう広げていくのかが課題です。
 また、県平和運動センター・長崎地区労等が開催する各種集会に積極的に参加しました。今後も、「戦争と原爆展」の継続開催、ビキニデー等の独自集会の追求、独自学習会の開催、各種集会等へ積極的に参加することをとおして取り組みを強化していかなければなりません。

(2) メーデーの開催
 毎年5月1日にメーデー集会を継続開催しています。2013年は「すべての働く者の連帯で、自由で平和な世界と希望をもてる安心で豊かな社会をつくろう」をスローガンに、5月1日、働く者の祭典である「第8回西海市メーデー」を開き、市民へ核兵器廃絶と「STOP THE 格差社会」を訴えました。今後、連合地協との合同開催や屋外での集会・デモ行進が検討課題になっています。

(3) 政策要求
 より良い地域づくりのために地域に根ざした働く者の要求を吸い上げ、西海市に対し政策要求に取り組みました。とりまとめた「政策要求書」は2013年11月29日に西海市に提出し、提出にあたり市長が対応しました。その後、1月7日に政策要求の回答を総務部長が行いました。回答内容は一定評価のできるものでしたが、その後の分析と対応が不十分だったことを反省しなければなりません。また、回答をもとに、2月17日に教育委員会との折衝を行いました。(資料1・9の日反戦・平和ニュースNo.6)

政策要求に対する回答書(抜粋)

1. 勤労者の立場に立った市政及び地方財政確立に関すること
(1) 現場でのノウハウが充分に発揮できる職員体制の整備及び人員の確保に努め、地域を支える公共サービスを充実させること。また、そのためにも再任用制度を確立すること。
 <回答> 職員体制の整備及び人員の確保については、事務事業の見直しや民間委託、非正規雇用の配置も含めコスト削減の検討を十分行った上で、市民サービスに支障が無いよう適切に対応してまいりたい。また、再任用制度については、条例は既に制定しているところであり、4月1日からの運用に向けて準備を進めています。
(2) 国に準じた給与減額支給措置については、地方自治の本旨を蔑ろにするなど問題が大きいことから、今年度限りの措置とすること。
 <回答> 西海市職員等の給与の臨時特例に関する条例の適用期間は、附則のとおりとしたい。
(3) 地域経済の活性化や雇用対策の取り組みを実施するための措置として設けられている「歳出特別枠」について減額を行わないよう、関係機関に働きかけるなど最大限の努力を払うこと。
 <回答> 地域経済活性化や雇用対策推進を目的とした地方交付税措置である「歳出特別枠」については、減額をしないよう国等に要望を行うなど、最大限の努力に努めてまいります。
(4) 地方財政計画における別枠の加算について拡充するよう、関係機関に働きかけるなど最大限の努力を払うこと。
 <回答> 地方財政計画における地方交付税別枠加算については、減額をしないよう国等に要望を行うなど、最大限の努力に努めてまいります。
(5) 合併特例法による市町村合併の算定特例の段階的終了を踏まえ、新たな行政需要(合併市特有の行政需要)の把握について必要な対策を講じるよう、関係機関に働きかけること。
 <回答> 合併特例法による市町村合併の算定特例の段階的終了を踏まえ、国等に対し小規模な合併自治体にあっても自立的な行財政運営が維持できるよう、合併算定替の期間延長や合併算定替に替わる新たな補正の創設など、実情に即した地方交付税制度の見直しを行うよう要望してまいります。
(6) 交通弱者の解消を図るため、公共交通網を整備するよう、関係機関に働きかけること。
 <回答> これまでも関係機関との連携を図りながら、交通弱者対策に取り組んできており、今後も、関係機関との連携を密にして交通弱者の解消に努めてまいります。
2. 平和行政に関すること
(1) 平和行政の基本を日本国憲法、「自由と平和のまち宣言」とし、教育予算を含む平和関連予算を拡充すること。
 <回答> 西海市は、平和な社会の実現を願って平成17年10月7日の「西海市自由と平和のまち宣言」を行い、その中で、被爆県長崎の一員として、地球上から戦争や紛争がなくなり全ての人々が自由と平和を享受できる世界の実現に努めることを誓いました。今後もこの宣言の趣旨を生かして、様々な平和祈念事業を推進していく中で、平和の尊さを市民に周知するとともに、平和なまちづくりを進めるために弛み無い努力を続けていきたいと考えております。また、学校教育の中で平和について学習することは非常に重要なことであり、学習指導要領の趣旨に則って、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う教育活動を推進してまいります。
(2) 内外にむけた平和の発信のために、あらゆる核実験に対し抗議声明を行うこと。また、「戦争と原爆展」の共催について検討すること。
 <回答> 本市は、日本非核宣言自治体協議会に加盟しており、加盟自治体とともにあらゆる核実験に対し抗議声明を行っています。また、「戦争と原爆展」の共催については、貴職の意見を拝聴し、開催方法等も含め前向きに検討してまいります。
(5) 住民の命と暮らしを守るため、脱原発・クリーンエネルギー政策を推進すること。
 <回答> 住民の生命・財産を守る首長の責務を自覚し、安全な社会を実現するため原子力発電所をなくすことを目的とする「脱原発を目指す首長会議」の会員として、同会議が目的とする「新しい原発は作らない」、「できるだけ早期に原発をゼロにするという方向性を持ち、多方面へ働きかける」ことに努めてまいります。
(6) 玄海原発から50㎞圏内に入ること及び佐世保港が隣接していることを踏まえ、原子力防災計画を策定すること。また、LCAC基地の横瀬移転を踏まえ、寄船埼等に放射線の測定を行うモニタリング局を設置するよう、関係機関に働きかけること。
 <回答> 長崎県地域防災計画では、玄海原子力発電所から半径30km円内の地域を含む市町以外の市町については、必要に応じて、避難者の受入れ、緊急時モニタリングへの対応、その他必要な対策を市町地域防災計画の適切な箇所に記載するものと記載されており、現在のところ原子力に係る防災計画を策定する考えはありません。また、8月末、関係機関に横瀬地区にモニタリングポストを設置するよう要望したところです。
3. 教育に関すること
(2) 義務教育の実質無償化を実現するため、保護者負担金の実態を把握し、その縮減に必要な財源措置を行うこと。
 <回答> 関係機関と協議し、実質無償化を実現できるように努力してまいります。
(3) 「義務教育諸学校における新たな教材整備計画」や「学校図書館整備5か年計画」等に基づく地方交付税措置について教育予算に充当し、その整備を図ること。
 <回答> 本市における地方交付税措置状況を確認するとともに、教育予算の確保に向け努力してまいります。
(4) 就学援助制度の拡充と条件整備を一層推進すること。
 <回答> 西海市は、県内の他の自治体と比較した場合、就学援助判定基準等において条件的には上位に位置しており、今後も他の自治体との情報を共有しながら維持してまいります。
(6) 学校における安全の確保について国と自治体の責任を明確にした「学校安全対策基本法」の制定を進めること。また、地域と一体となった学校防災組織の担当者として学校用務員を位置づけること。
 <回答> 「学校安全対策基本法」については、重要な法案であると考えております。地域との連携強化を考慮した学校防災組織を編成するに当たっては、学校用務員の重要性を認識し、その位置付けは必要に応じ検討してまいります。

(4) 市議会対策
 勤労者の意見を議会に反映させるために、中野良雄市議(民主党)と連携して市議会に対し、意見書採択に取り組みました。2013年9月議会に提出した「地方財政の充実・強化、歳出特別枠の堅持を求める意見書採択願」は、全国市町議会議長会が提出した「地方税財源の充実確保を求める意見書」が採択され、不採択になりました。
 また、2014年3月議会に提出した「特定秘密保護法の撤廃を求める意見書採択願」は、県内市町で採択したところがないなどの理由で不採択になりました。保守地盤の強い地域ですが、今後も引き続き勤労者が主人公である社会の実現を求めて取り組みを続ける必要があります。