【要請レポート】

第35回佐賀自治研集会
第10分科会 貧困・格差社会の是正とセーフティネットの再構築

佐賀市における生活困窮者支援の
取り組みと課題について

佐賀県本部/佐賀市職員労働組合 青柳  勝

1. はじめに、佐賀市の生活保護の状況について

 佐賀市(人口約23万6千人)での生活保護受給世帯の状況は、平成25年度では、2,219世帯・2,759人・保護率1.17%で、保護率としては、全国平均よりは低いものの県内平均より高くなっております。医療機関が多く立地することや県庁所在地ということもあってか近隣の他市町からの流入や、級地区分が2級地1と高いことも要因の一つではないかと考えられます。人員体制としては、ケースワーカー25人(内嘱託職員4人)・査察指導員4人の体制で生活保護業務を行っています。

2. ハローワークと一体となった就労支援の取り組み

 平成24年8月1日より、市役所内にハローワーク窓口を設置し、福祉事務所と一体となった就労支援を行うようになり、就労支援が必要な被保護者に対する支援が容易になりました。この年の4月からは、就労支援を行う嘱託職員を2人から4人に増員をしており、新規申請の調査など業務が多忙となっており、就労指導に十分手が回っていなかったケースワーカーの負担が軽減されました。リーマンショック後の景気低迷により職を失った生活困窮者からの申請が相次ぎ、就労支援が必要な被保護世帯が急増していましたが、ケースワーカーの増員が追い付かず、就労指導が行き届かないことや求人倍率も現在ほど回復しておらず、仕事がなかなか見つからないことから、保護受給期間の長期化に伴い、就労意欲を失った人も見られるようになっていました。この取り組みの結果、平成25年度は、保護を受給していた延べ190人のうち、相談件数は、新規137件・再相談1,879件あり、66世帯、114人が生活保護からの自立といった成果が出ています。そして、現状の課題として、景気回復による求人数の増加にもかかわらず、就職に至らず支援が長期化した被保護者への支援が求められています。また、就職したものの仕事が長続きしない、そして、就職をし、一旦は自立をしたものの安定した雇用でなかったために、再び相談に来所するケースがみられ、いかに雇用の継続を支援していくかの課題もあります。

3. 生活困窮者自立支援法のモデル事業を行っている現状から

 平成25年の10月からNPO法人スチューデントサポートフェイスに事業委託を行い、市内中心部に、生活自立支援センターを設置しています。センターでは、キャリアコンサルタント、臨床心理士、教員免許、精神保健福祉士等の資格を持つ職員を配置し、運営がなされており、平成25年度には、142人の相談者があり、内71人を支援対象者として、支援を行っています。
 センターの存在自体があまり知られていないことなどもあり、相談件数もそれほど多くはないように感じられますし、相談者は行政からの紹介を受けた来所者が大部分を占めるようですし、また、相談から個別の支援計画を策定し、自立までつなげる一連の流れが短期間で終了することがまれであると考えれば、事業の評価を行うにはまだまだ時間が必要ではないかと考えます。
 また、平成25年4月から、若年者就労意欲喚起事業を始めており、同法人に委託し、被保護世帯の引きこもり等で就労を行っていない概ね40歳までの20人を選定し、ケースワーカーとともに、支援を行う事業を開始しています。長年の引きこもり生活を送るなどしていただけでなく複数の問題を抱えている人が少なくないため、まずは外出をする等小さなステップから求めていますが、2人の一般就労を目標としていましたが、短期間での成果を出すのはやはり難しいようです。生活保護受給世帯として育った子どもが大人となり、保護受給となるケースが少なくないなど貧困の連鎖が言われており、特に若年者への働き掛けは重大な課題といえます。

4. 生活困窮者自立支援法の課題について

 平成27年4月から法律が施行となると、すべての福祉事務所で事業を行われることになります。
 各福祉事務所では、人員配置など大丈夫でしょうか? 特に小さい自治体では、事業開始当初は相談等も少ないでしょうし、他の機関との連携が重視されると考えるとすると、適切な人材が配置できるか、直営、委託問わず一番の課題ではないでしょうか。自治体職員の削減が進められている中で、嘱託職員等非正規での配置が考えられますし、委託するにしても、同様ではないでしょうか。また小さい自治体単独では難しいのであれば、複数自治体での広域での取り組みも検討が必要ではないか。地方自治法が改正されたことから、比較的大きい自治体にその役割が見込まれるかもしれません。
 必須事業となっている自立相談支援事業と住居確保給付金事業については、すべての福祉事務所で行われることとなるでしょうが、任意で行われる事業がなされないとすると、法が予定した十分な支援が難しいのではないでしょうか。
 また、特に委託する場合として、支援を必要とする人をどこで見つけるかです。行政サイドでは多くの情報を持っていることから、行政内外での情報の共有体制がどれだけとれるかが課題ではないでしょうか。生活保護に至る前の段階であれば、国保の滞納をしており、納税相談を受けている部署の持つ情報が重視されるかもしれませんし、就学援助を受けている世帯の情報を持つ教育委員会部局と学校現場での子どもの状況から問題点がないかといった把握という部分もあるかもしれません。
 なにも、経済的自立をめざすことだけが、困窮者支援ではないと思います。就職により、経済的自立ができたとしても、家計の管理ができなければ問題の解決にはなりません。そういう意味では、家計相談など、重要な支援と考えますが、どれだけの自治体で取り組みが行えるか気になるところです。すでに、九州内いくつかの自治体で、納税相談に合わせて、ファイナンシャルプランナーによる家計相談を行っており、実際に滞納整理において、成果が上がっていますが、今回のモデル事業として、家計相談事業を行っている自治体はあまり多くないようです。
 また、グリーンコープ生協が家計相談事業と貸付事業を行っていますが、佐賀での現状として、失業手当等数か月先にはお金が入るが、今すぐ必要な生活費の貸付を受けたいといった相談に対する窓口がありません。社協の貸付など制度はありますが、保証人が必要性など利用することはなかなか難しいものがあります。いま現にわずかなお金に困っているという相談者に対する対応が求められると思います。スピードを要する援助への対応について、仕組み作りが必要ではないでしょうか。
 また、経済的自立以外の支援となれば、支援の長期化ということも考えられます。

5. 経済的自立以外の支援を行う団体として、佐賀県地域定着支援センターの取り組み

 地域定着支援センターとは、高齢者や障害者で罪を犯し、矯正施設を出所後に福祉を必要とする人に支援を行う機関として、設立されております。佐賀県では、平成21年12月に設立され、佐賀県社会福祉士会が佐賀県の委託を受け、運営を行っています。全国的には、社会福祉士会と社会福祉協議会が受託している県が10県ずつ、ほかにはNPO法人や社会福祉法人等が受託しているとのことです。
 相談件数や支援対象者は年々増え、平成25年では、計53人となっており、累計では、200人を超えています。現在4人の専任職員を中心に、兼任職員2人で支援を行っています。
 犯罪を繰り返し、刑務所への入所と出所を繰り返している対象者が大部分である中で、支援を行うことで、再犯による支援中止となったケースは、10件程と少なく、支援を行う成果は十分出ています。保護の相談を受ける中で、刑務所を出所したが、行くところがなく福祉事務所を訪ねる人が増えてきているように感じられており、一時入所施設の確保など含めて、さらなる支援ができないか今後も検討する余地がありそうです。
 定着支援センターが、支援者の半数以上が60代以上の高齢者であり、高齢者以外では障害を持つ人が多いとの特徴があります。経済的自立につながる対象者が少ないことから、生活保護へつながるケースも多く、福祉事務所をはじめとする行政機関との連携が増えております。
 また、他の機関への支援をつなぐ、支援の必要性がなくなるなど、支援終了までに1年半から2年以上といった時間がかかっているそうです。特に調整を開始から、支援を開始して半年から1年の期間はケースによるものの、ケースによっては毎日のように訪問する場合もあり、支援対象者が増えている中で、職員の多忙化も課題とのことでした。現在、職員一人で、調整中の対象者を5~8人、フォローを行っている対象者を15人くらい担当しているとのことでした。また、県を超えた支援を各県のセンターとでやり取りを行っていることから、調整の難しさや移動に時間が取られるとの課題もあるようです。

6. まとめとして、今後の課題

 平成26年5月時点で、生活保護数が最多となったとの発表がありました。受給世帯は、160万3,093世帯となり、前月から2,852世帯が増え、過去最多となり、受給者数は、215万9,852人となっています。特に65歳以上の高齢世帯が前月と比べ、1,993世帯増となっており、全体でも75万世帯を超え、47.1%を占めています。ここ数か月は、景気回復の影響で受給者数は横ばいでしたが、無年金や年金受給額が少ない、また、家族の死亡により単身世帯となったことによる要因など、高齢世帯の増加につながったとのことでした。今後も高齢世帯の増加は見込まれており、生活保護受給者数全体の増加はこれからも続くことが予想されています。現に、佐賀市においても、高齢世帯の伸びが顕著であり、県内の鳥栖市では、ハローワークとの一体の取り組み以降、就労支援の成果と人口増加により、保護率の低下もみられるとのことです。
 私が担当している単身世帯40代の受給者がいます。彼は、自動車関係の工場で派遣労働者として長年働いていたものの、仕事がなくなり、平成22年生活保護受給しており、平成24年7月にようやく就職することができました。時給に換算すると680円であり、一日8時間で、月に21日間働いたとしても、11万5千円程度の収入にしかなりません。また、社会保険料等を差し引かれるので、手取りの額は9万円を上回る程度であり、保護の要否判定を行うと要保護状態となっています。最低賃金の上昇に伴い、時給も少し上がりはしましたが、今の仕事を続けて保護から自立するには、大幅な時給アップがなければ、難しいのが現状です。就職から2年が経ち、今の仕事を続けるのがいいのか、それとも、ほかの仕事を探すことも検討すべきかと考えているところです。彼の場合、厚生年金の保険料をかけていますが、掛金が低いですし、将来受け取る年金も少ないものとなるでしょう。全国の有効求人倍率が1.10倍となるなどしていますが、正社員に限ると0.68倍とまだまだの状況です。また、老後の生活まで見通せる仕事があるとは言えないと思います。
 平成26年6月に行われた佐賀県社会福祉士会主催の社会福祉セミナーで厚生労働省社会・援護局地域福祉課生活困窮者自立支援室室長熊木正人氏の記念講演の中で、景気が回復したとしても、非正規雇用が3分の1を超えるまでに劣化した雇用環境が以前のように戻ることはないだろうと述べられました。生活困窮者自立支援法が必要とされる現状ではありますが、労働組合という組織された労働者である私たちの役割として、自らの賃金労働条件だけでなく、未組織労働者の雇用改善を行う取り組みも必要とされているのではないでしょうか。

福祉・就労支援事業

 平成24年8月1日からハローワーク佐賀と協力して本庁1階に「福祉・就労支援コーナー(愛称:えびすワークさがし)」を開設し、主に福祉サービスの対象者に就職の相談や職業紹介を行っています。

(1) 相談件数

(単位:件)
年 月

新規相談件数

再相談件数

合 計

 

支援対象者

 

支援対象者

 

支援対象者

平成25年4月

35

(19)

189

(154)

224

(173)

平成25年5月

26

(10)

201

(175)

227

(185)

平成25年6月

33

(18)

206

(181)

239

(199)

平成25年7月

18

(9)

237

(201)

255

(210)

平成25年8月

23

(12)

200

(181)

223

(193)

平成25年9月

18

(9)

193

(173)

211

(182)

平成25年10月

17

(11)

172

(165)

189

(176)

平成25年11月

37

(8)

173

(156)

210

(164)

平成25年12月

16

(12)

150

(131)

166

(143)

平成26年1月

19

(7)

149

(125)

168

(132)

平成26年2月

21

(13)

151

(131)

172

(144)

平成26年3月

22

(9)

134

(106)

156

(115)

合 計

285

(137)

2,155

(1,879)

2,440

(2,016)

※ 支援対象者=生活保護受給者、児童扶養手当受給者等の福祉サービスの対象者

(2) 支援対象者の就職者数

(単位:人)
年 月

生活保護
受給者

児童扶養手当
受給者

住宅支援給付
受給者

生活保護
相談段階

合 計

 

HW

 

HW

 

HW

 

HW

 

HW

平成25年4月

9

(8)

8

(5)

2

(2)

 

 

19

(15)

平成25年5月

23

(18)

16

(15)

5

(4)

 

 

44

(37)

平成25年6月

17

(13)

5

(5)

2

(2)

 

 

24

(20)

平成25年7月

15

(9)

6

(6)

1

(1)

 

 

22

(16)

平成25年8月

11

(9)

11

(9)

1

(1)

 

 

23

(19)

平成25年9月

22

(8)

14

(12)

6

(5)

 

 

42

(25)

平成25年10月

18

(8)

22

(16)

1

(0)

 

 

41

(24)

平成25年11月

27

(16)

20

(14)

1

(1)

 

 

48

(31)

平成25年12月

13

(7)

10

(10)

1

(1)

2

(1)

26

(19)

平成26年1月

18

(15)

10

(10)

3

(3)

 

 

31

(28)

平成26年2月

8

(6)

10

(10)

1

(1)

 

 

19

(17)

平成26年3月

9

(6)

3

(3)

1

(1)

 

 

13

(10)

合 計

190

(123)

135

(115)

25

(22)

2

(1)

352

(261)

※ HW=ハローワーク佐賀紹介分、受給の重複がある方は、左側を優先しています。

佐賀市の被保護世帯・人員の推移

年度 被保護世帯 指 数
(%)
被保護人員 指 数
(%)
保護率(%)
佐賀市 佐賀県 全 国
13 907 100 1,191 100 0.71 0.60 0.87
14 933 103 1,206 101 0.70 0.63 0.94
15 979 108 1,260 106 0.74 0.64 1.01
16 1,030 114 1,328 112 0.77 0.66 1.09
17 1,138 125 1,484 125 0.82 0.69 1.14
18 1,278 141 1,680 141 0.79 0.71 1.17
19 1,376 152 1,786 150 0.83 0.72 1.19
20 1,487 164 1,929 162 0.79 0.73 1.22
21 1,656 183 2,137 179 0.85 0.77 1.30
22 1,873 207 2,413 203 0.96 0.85 1.47
23 2,040 225 2,598 218 1.08 0.90 1.58
24 2,215 244 2,784 234 1.12 0.91 1.65
25 2,219 245 2,759 232 1.17 0.94 1.69
   指 数= 各年度 ×100    保護率= 被保護人員 ×100
  13年度   推計人口
※ 被保護世帯・人員については年度平均値。保護率については各年度4月分

保護率の推移
(人口100人当たりの比率)