【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第10分科会 貧困・格差社会の是正とセーフティネットの再構築

 平成27年4月1日より生活困窮者自立支援法が施行されます。この法律に基づく新制度では、福祉事務所を設置する自治体が主体となって、生活困窮者の自立を促すべく、様々な事業を包括的に実施していきます。しかし、この法律の趣旨を実現させるためには、福祉事務所が抱える多くの課題を克服しなければなりません。本レポートでは、福井市の現状を踏まえた上で、新制度を実効性あるものにするための提言を行います。



生活困窮者自立支援法の実効性を
どのように確保すべきか
福井市の現状と地域性を踏まえて

福井県本部/自治労福井市職員労働組合

1. はじめに

 日本経済は1990年代以降の長期にわたり低迷し、特にリーマンショック以降、長期の失業者や若年の失業者が増えています。併せて、全就業者の中で非正規労働者(契約社員・パート等)の占める割合が増えており、年収200万円以下で生活せざるを得ない「ワーキング・プア」と呼ばれる人たちが顕在化してきております。
 福井市においても生活保護受給者は年々増加傾向です(図1参照)。福祉事務所(地域福祉課)に来る相談者の中には、生活保護を受給する状況には至らないが、その一歩手前まできている人たちも見受けられ、潜在的な生活困窮者は、より多いものと考えらます。
 このような中、「生活困窮者自立支援法」に基づく新制度は、生活困窮者の自立を促進することで、生活保護制度の手前の新たなセーフティネットとしての機能を果たすことが期待されています。
 しかしながら、現時点における福祉事務所は、相談内容の複雑化、業務量の増大、人員の不足、関係部署との連携不足など多くの課題を抱えており、新制度に対応するためには、これらの課題を一つずつ解決しなければなりません。
 本レポートでは、福井市の現状を踏まえ、福祉事務所が抱える課題を整理し、解決のための提言を行います。

2. 福井市の現状と地域性

 ここでは、福井県および福井市に関連する統計資料等をもとに、福井市の現状と地域性を示します。この中では、福井県としての資料等も扱いますが、福井市の実態からも大きく外れてないと考えています。尚、数字には可能な限り(市)または(県)と表記します。
【福井市の地域性】
 ・低い失業率(県)完全失業率 H23年 3.3%(全国2位の低さ)総務省統計局「労働力調査」より
 ・平均寿命が高い(県) H22年 80.47歳 男性(全国3位)
                 86.94歳 女性(全国7位)
 ・三世代世帯割合の高さ(県)H22年 17.6%(全国2位)「国勢調査報告」より
 上記の数値はごく一部でありますが、福井は元々地域の支え合いや結びつきが強く、健康で豊かな生活をおくるのに適した土地柄であるといえると思います。
 生活保護の受給については、郊外の地域コミュニティーがしっかりした場所ではそれ程多くなく、中心市街地周辺等で生活保護受給する人が多いという傾向があると考えられます。

(1) 生活保護受給者の増加
(図1)(市)

 しかし、上記のグラフで示したとおり、福井市における生活保護受給者の数は年々増加しているのが実態です。
 平成20年まで、受給者の数は1,000人代前半を維持していましたが、リーマンショック以降、倍近い2,000人を超える状況となっています。

(2) 有効求人倍率
 福井労働局が発表した平成26年4月の「雇用失業情勢」によりますと、福井の有効求人倍率は1.25倍であり、全国1.08倍を上回っています。ちなみに福井県としては1.48倍であり、全国で3番目の高さです。(愛知県1.56、東京都1.53)
 このことは、福井では比較的に仕事を得やすい環境であることを示しています。つまり、仮に職を失って生活が困窮しても、適切な支援やサポートがあれば、自分の力で生活を立て直せる可能性が高いといえます。

(3) 生活保護世帯別類型・「その他世帯」について
 生活保護を世帯別類型にみますと、「高齢者世帯」、「母子世帯」、「障害者世帯」、「傷病者世帯」、「その他世帯」と区別することができます。
 前者の4つの類型は保護を受ける際に明確な理由があります。一方「その他世帯」は4つの類型のいずれにも、当てはまらないカテゴリーであり、この中には、若年失業者や自立の意志や能力を持つ人がいる可能性が高いと考えられます。
 福井市では、この「その他世帯」の数が、平成21年から平成25年にかけて2.3倍に増えていることから、如何に「その他世帯」の受給者の自立を促すことができるかどうかが大きな課題です。

3. 福井市における福祉行政の課題

 生活困窮者自立支援法に基づく新制度の実効性を確かなものとするために、現在の福祉行政に「ワンストップサービス」が必要です。なぜなら、新制度は「自立支援」、「住居確保」、「家計相談」、「学習支援」など包括的な事業を含んでおり、「ワンストップサービス」がなければ相談者はどこに行けばよいか分からない状況が生じるからです。この態勢が強化されなければ新制度は有効に機能しないものと思われます。

(1) 関係部署との連携(ソフト面)
 これまでの福祉行政は複雑な業務内容に対応するため、福祉の部署を整理・細分化してきました。このやり方は相談者に対して、個別に丁寧に対応するためには合理的でありましたが、一方で相談者がどこの部署に行けばよいか分からない、複数の部署を回らなければならなくなる、等のジレンマを抱えることになっております。
 それを打開するために「ワンストップサービス」の実現が不可欠であり、福祉関係を含む部署がもっと連携しなければなりません。具体的には、以下のとおりです。
・担当者会議を定期的に実施すること
・定期的に福祉関係の部署への人事ローテーションを行うこと

(2) 人材の確保と育成(ソフト面)
 新制度において、充実した福祉行政を行うためには、それに適した人材の確保と育成が欠かせません。求める人材と育成については以下のとおりです。
【求める人材】
・コミュニケーション能力があり、相談者と信頼関係を築くことのできること
・福祉関係の部署を複数経験し、幅広く且つ専門的な知識を有すること
・部局横断的に行動し、マネジメントできること
【育成について】
・職員の採用段階から上記の項目を目標にして、採用を行うこと
・リーダーシップを身につけることができる研修を行うこと
 人材の育成は手間と時間がかかる作業ですが、計画的かつ継続的に実施していかなければなりません。なお、上記を実行するためには、職員課(人事当局)の理解を得ることが重要です。

(3) 分散配置されている関係課の統合(ハード面)
 上記で述べた(ソフト面)の課題の克服に加え、市役所庁舎のレイアウト(ハード面)の改善が必要です。現在の福井市役所の構造と関係部署の配置は(図2参照)のとおりです。

(図2)

 現在の配置状態では、仮に複数の問題を抱える相談者の場合、移動の負担が大きいものとなります。これは高齢化社会の中、バリアフリーを促進する観点からも改善が必要です。
 福祉関係部署だけでも一つのフロアに集約配置できれば、相談者の負担は大きく改善されると思います。庁舎の建設や改修の際に実現しなければなりません。

4. まとめ(提言)

~生活困窮者自立支援法を実効性あるものにするために~
 生活困窮者自立支援法の趣旨を現実に反映させるために、これまで述べた課題を克服しなければなりません。最後にこれまで述べたことをまとめ、提言といたします。
・市役所の庁舎を建替えする際は、福祉関係の部署がまとめて配置できるよう、必要な面積を確保し、適切な配置をすること
・人材の確保と育成を促すため、計画的かつ継続的な取り組みを行うこと
・新制度の包括的事業に対応するため、関係部署の連携を強化するべく担当者会議を実施すること