【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第10分科会 貧困・格差社会の是正とセーフティネットの再構築

 税、公租公課の滞納原因は大きく2つに分けられます。払いたいけど払えない(経済破綻型)のか、払えるけど払いたくない(人格破綻型)のか、この原因を見極めることが重要です。
 本レポートでは、これまでの伊万里市の取り組みを事例を交えながら紹介していきます。



滞納原因別滞納整理対策
―― 収納率向上に向けた伊万里市の取り組み ――

佐賀県本部/伊万里市職員労働組合 丸田 大暁

1. はじめに

 佐賀県伊万里市では2008年から滞納者の多重債務問題を解決するため、市内弁護士・司法書士と連携して債務整理の体制作りに取り組みました。
 まず、多くの滞納者の中で誰が借金を抱えているかを把握する必要があります。本市では、システムのデータベースに過去の折衝記録がすべて記録されていますので、システム上にキーワード(「サラ金」「消費者金融」「借入れ」「借金」「返済」等)で検索をかけ、最新の交渉記録の記事に載せなおすことで、担当の徴税吏員が来庁した滞納者の借金を把握することができるようになりました。また、多重債務問題の解決について納税相談に来庁される方に限らず、広く周知を行うために、市税催告書や納税相談を促す通知等に債務整理を促すチラシを同封したり、広報にこの取り組みを掲載したりしました。
 過払い金が発生した場合、本市では滞納者本人の同意を得て、弁護士・司法書士が本市に直接納付をすることができるようにしています。また、市から依頼した滞納者については、進捗状況をその都度報告していただいています。
 この取り組みの結果、2008年6月頃から2009年12月までの間に下記の効果を上げることに成功しました。

紹介者数

整理前債務額

整理後債務額

返還された過払金

滞納税の充当額

162名

161,290,259円

27,164,579円

69,201,580円

26,786,730円

 2010年1月以降は、弁護士に誘導して過払金請求を指導することが職員にとって当然の手続きとなり、数が増えすぎて集計をとっておりません。
 ここまでが、多重債務問題に注目した2010年までの伊万里市の取り組みです。

2. FP(ファイナンシャルプランナー)相談とは

 本市では2008年より主に消費者金融の過払い金問題に取り組んできました。その中で当然ながら解決困難な事例がでてきました。例えば、銀行からの借入れや住宅ローンの負債過多等です。徴税吏員の知識だけでは整理のしようがありませんでしたが、多重債務問題に取り組む過程で知り合うことになったFPより具体的な解決策を教授していただく機会がありました。このFPによる手法が滞納整理に非常に有効であり、また滞納者にとって根本的な問題解決に向かう手法であることがわかり、2010年よりFPと契約しFP相談を実施することとなりました。
 税、公租公課が支払えない原因は大きく2つに分けられます。払いたいけど払えない(経済破綻型)、払えるけど払いたくない(人格破綻型)、この2つです。この原因を見極めることが重要です。このうち人格破綻型については、差押等強制的な徴収で対応する以外方法はありません。しかし、経済破綻型に人格破綻型と同じように強制的に徴収すると、一時的に滞納が解消したとしても、滞納者が抱える問題自体が解決したわけではないので、滞納を繰り返すことが目に見えています。唯一の解決策は問題点が何かを聞き取りその解決を図ることです。
 FP相談では現在の収支と今後のライフイベントから先を見越した生活設計が出来るのが大きな特徴です。また、FP相談では以下の相談に幅広く対応することができます。
 ・借金の悩み……借り換えによる一本化、年金担保借入、民事再生法等の活用によるプラン作成、放置(リスクが少ない返済を後に回し、納税及びリスクが高い債務を優先する。)
 ・生命保険の悩み……保険の掛け過ぎ等
 ・相続の悩み……保証人が抱えるリスクを減らす対策後に、主債務者の債務整理を実行
 ・税金の悩み……節税対策等
 等々これらの悩みを市民の立場に立って具体的な解決策を中立的な第三者の立場から提示できるため、専門家によるFP相談は非常に有効であると考えています。
 さて、ここから、本市が契約するFPがどのような手法を用いて顧客の問題解決にあたっているか事例を交えながらご紹介させていただきます。

3. FP相談解決事例

  (事例1)
   滞納者  女性 59歳 (娘二人と同居、夫とは離婚している)
   仕事内容 飲食業経営 
   滞納額  本人……国民健康保険税ほか 481,700円
        娘2……住民税 150,000円
   世帯構成

本人  女 世帯主
59歳

営業所得
  89,286円

扶養親族:無し
国保

年間課税額
国保 166,200円

娘1  女
31歳

給与収入
2,219,528円

扶養親族:無し
社保

年間課税額
住民 74,600円(特徴)

娘2  女
29歳

給与収入
1,800,000円

扶養親族:無し
国保

年間課税額
住民 93,300円(普徴)

 営業所得は0に近く例年ほぼ赤字状態で、生活費等は娘の収入にほぼ頼りきっている状況でした。夫と数年前に離婚後、国保税の滞納を続けていたため、2009年から資格証明書扱い(医療費10割負担)としたところ、本人には継続的に治療が必要な持病があり、なんとか保険証を交付してほしいとの陳情がありました。
 国保税の滞納でよくある、滞納者本人が無資力なのに世帯主であるため課税されているケースです。差押により徴収すると言っても本人に全く財産は無く、自動車等も娘名義でした。捜索差押を執行して残りは執行停止で不納欠損かと判断していました。
 このようなケースでも、過払金の調査は有効な手段です。このケースでは過払金調査の結果、過去に消費者金融との取引があり、約22万円の過払金が発見されました。しかし、それを滞納市税に充当したとしても、残りの滞納は世帯合計で411,700円あります。財産は全く無い状況なので、残った滞納税については執行停止以外の選択肢が無いように見えます。
 この状況をFPから見るとどうなるでしょうか。
 このケースでは、FPはまず本人の年齢に着目しました。59歳ということは、1年後に年金が受給できる可能性があります。年金がどれぐらい出るかで今後の市税納付の計画が立てられることになります。
 しかし調査した結果、滞納者は年金を277カ月しか掛けていないことが分かりました。年金は最低300カ月掛けないと1円も支給されません。つまり、60歳を過ぎても年金は一切支給されず、滞納市税の納付はおろか自身の生活は困窮したままです。将来娘が結婚などで世帯から出て行けば、生活保護すら検討せざるを得ません。これでは一時的に過払金を滞納市税に充当したとしても、根本的な問題の解決にはならないと判断しました。
 ここで、FPと徴税吏員が協議して以下の対策を打つこととしました。

(1) 対策1. 本人が年金を受給できるようにして自立させる。
 過払金を国民年金保険料の不足月の支払いにひとまず充て、足りない分を娘達に援助してもらうよう依頼することを検討しました。年金不足月23カ月×14,660円=約33万円となり、過払金22万円を差し引き、残り11万円を娘に援助してもらうこととなりました。納税より先に後納制度を活用すれば、本来得られなかった年金収入を得ることができ、今後の納税と生活の安定の両方を得られるようになります。長女もこれに強く理解を示し、協力を仰ぐことができました。
 滞納国保税の支払方法については、本人の今後の年金支給額に注目しました。

 2010.2 60歳 2012.2 62歳  2015.2 65歳
 ※本人は厚生年金期間があったため60歳から支給が開始される。
 ここで、年金担保借入(銀行を通して独立行政法人 福祉医療機構に申し込む)を活用しました。年金担保借入金額240,000円(当時は年間支給額の1.2倍まで借入が可能。現在は1.0倍になっています。)これを滞納税に充て、残りを月1万円の分割払いとすることとしました。本来得ることができなかったはずの年金から借り入れて納付することで、本人の生活状況変化無しに市税完納への見込みが立つこととなります。後2年間は現状の生活を続け、その後は年金で生活するよう計画しました。
 その他にも、以下の点で本人の収支改善の提案を行いました。

(2) 対策2. 本人を過去に遡って娘2の税上の扶養に入れさせる。
 娘達が母を税上の扶養に取って無いことが判りました。娘2が母を扶養に取るよう税務署で過去に遡って修正申告してもらい、所得税還付金は市税に充てることにより、娘2の滞納していた住民税(普通徴収)も解決しました。

(3) 対策3. 今後、本人を娘1の社会保険の扶養に入れさせる。
 社会保険の扶養制度とは、扶養に入る者の年間所得が65万円未満であれば基本的に社会保険の扶養に入れることができます。本人が娘1の社会保険の扶養に入れば、国保課税額が無くなり保険証の心配をする必要も無くなります。
 これらの対策を打つことにより、滞納税の完納と共に本人の生活不安が解消され、「今後はちゃんと払っていけます。ありがとうございました。」との感謝の言葉を述べられました。
 どうでしょうか? 解決に導けたのは、FPであれば熟知している「年金制度」、「社会保険制度」、「税制度」の知識があったためであり、このスキルが滞納整理にも役立ちました。
 通常の徴税吏員の知識だけで見ると明らかに執行停止の案件でも、各種制度の知識があれば徴収の幅が広がり、さらには市民の生活再建にも役立つこととなります。
 事例1で紹介したケースは、FPの知識があれば解決に結びつけることができます。しかし、時として、FPの知識だけでは解決できない問題もあります。

  (事例2)
   滞納者  男性 47歳 (家族8人と同居)
   滞納額  本人……住民税 30万円、固定資産税 30万円、下水道使用料 20万円
        母……介護保険料 10万円
        合計 90万円滞納
   住宅あり 固定資産評価額 460万円 (築15年)
   世帯構成 8人世帯

本人 男 世帯主
47歳

給与収入
3,000,000円

扶養親族 1
社保

年間課税額
住民 63,600円
固定 84,600円

妻  女
47歳

給与収入
2,400,000円

扶養親族 無し
社保

年間課税額
住民 91,600円(特徴)

母  女
70歳

年金収入
 440,000円

扶養親族 無し
本人の社保扶養

年間課税額
介護 52,900円

長男 男
22歳

給与収入
1,400,000円

扶養親族 4
社保

 

長男の妻 女
22歳

無職

扶養親族 無し
長男の社保扶養

 

長男の子 3人
(3歳、2歳、0歳)

 

長男の社保扶養

 

 当世帯は過去より滞納をし続け、その都度預金差押、生命保険差押等を行っていたが完納に至らず、2008年に捜索差押を執行し動産を差し押さえました。これで意識が変化するかと思われましたが、2009年当時相変わらず滞納を続けていました。住宅は抵当残高が評価額を大幅に上回っているため換価価値無し。給与収入は家族の多さから差押できませんでした。
 家計の実態を把握する必要があるため、来庁して家計の収支を話すよう指導し、下記の情報を聴取できました。

(収入)
・本人……手取り20万円(保険料等控除後)
・妻……手取り17万円(保険料等控除後)
・母……年金一月あたり手取り 3万5千円    合計40万5千円
(支出)
・住宅ローン 月15万円  残1,200万円  住宅金融支援機構(信用金庫が窓口)
・妻の会社  月3万円  残30万円  給与前借
・日本信販  月2万3千円  残50万円  過払い無し
・信金カードローン 月1万5千円 残30万円
・次男(学生)への仕送り 5万円     合計26万8千円

 収入405,000円-支出268,000円=137,000円(生活費)

 長男は他の自動車ローン等で家計を援助する余力無く、残り13万7千円で家族8人の食費、水道光熱費等の生活費を賄っており、税を支払う余裕が全く無いことが判りました。
 このケースでは過払金はありません。通常の徴税吏員の判断であれば、「本人の財産は全て取り立て済み。他は反対債権過多により換価価値ある財産無し。執行停止とする。」といった判断をしがちな案件に見えます。
 しかし、ここで、本市が契約するFPの金融機関の経験が生きました。金融機関の知識があれば解決策は見えてきます。
 まず、住宅ローンの支出が大きすぎるのが問題です。以前より住宅ローンの負担が重荷で、ローン契約がステップ償還方式(借入れ当初は元金少額返済だが、将来収入が増えると仮定し後々元金返済額が増える契約)になっており、数年前より月15万円に返済額が増額になったのがそもそもの滞納の原因でした。
 ここで、住宅金融支援機構の借り入れであれば下記の特例措置が使えることに着目しました。
 住宅金融支援機構の住宅ローンの返済条件変更の概要 (住宅金融支援機構HPより)
 以下のa、b、cに該当する人は住宅ローン返済期間の延長(最大15年)が申請出来る。
a 最近の不況による倒産などの勤務先の事情により返済が困難になり
b 以下のいずれかの基準を満たす方で
 ・収入倍率(年収/住宅金融支援機構の年間総返済額)が4倍以下
 ・収入月額が世帯人員×64,000円以下
 ・住宅ローン(住宅金融支援機構に加え、民間等の住宅ローンを含む)の年間総返済額の年収に対する割合(返済負担率)が、年収に応じて一定の率を超え、収入減少割合が20%以上
c 返済方法の変更で、今後の返済を継続できる場合
                    ↓
 返済期間を最長15年延長することにより、毎回の返済負担を軽減できる。
  これを本人の世帯に当てはめてみると、
・特例基準:世帯人員数8人×64,000円=512,000円
・実収入 :本人200,000円+妻170,000円(共有名義のため二人分を合算)=370,000円 
 特例基準512,000円>実収入370,000円 となり、特例基準の条件を満たすことが確認できました。
 上記特例を使い、返済期間を5年延ばすリスケジュールをした場合。
 残額1,200万(利率4.3%)の返済方法の変更
・当初契約 残年数8年 月返済額147,951円 2018年(55歳)まで
             ↓
・変更契約 残年数13年 月返済額100,550円 2023年(60歳)まで
 リスケジュールにより、本人の生活を変えずに毎月5万円を滞納市税に納付することができます。早速信用金庫窓口でローンの延長を申請してもらい、月5万の分割納付を継続した結果滞納市税は完納に至りました。
 このケースでは、住宅ローンが返済困難との相談を受けた場合に、銀行が持つ具体的な救済策を知っているかどうかがポイントとなります。なお、住宅金融支援機構以外の銀行ローンについても、同様に解決できました。

(事例3)
 滞納者  男性 64歳 (妻、娘との3人暮らし)
 仕事内容 ラブホテル経営
 滞納額  本人 市県民税・固定資産税・国民健康保険税  3,000,000円
 当案件はラブホテル経営者であり、売上はほぼ現金で管理していました。預金等の動きは殆ど無く、借金返済用の口座があるのみでした。本人が保有する不動産(ラブホテル、自宅等)は複数の銀行から高額の抵当権が設定されており、明らかに換価価値が無い状況でした。給与所得者でしたが、自身の会社からの給与収入のため差し押さえても効果は期待できません。しかし、現金商売のため申告では高額の所得が申告され、固定資産税と合わさり毎年120万円程の課税がされ、現年相当額の分納を続けていた状況でした。毎月分納されているものの、滞納繰越分の納付に至らず延滞金が膨らみ続けている状況でした。
 FPより、決算書で明らかに所得があるのにお金が無いのは決算の仕方に問題があるのではないか。経費はちゃんと計上されているか、決算は税理士に頼んでいるのか、決算書を確認させてほしいと伝え、決算書2期分の提出をしてもらいました。
 提出された決算書を確認すると青色申告で税理士に依頼していました。会社の債務、経費、減価償却等も適正になされており、減価償却分(申告上は経費だが、実際は現金がある状態)まで含めると、毎年900万円の現金が手元にある状態でした。FPの初期判断ではお金をタンスに隠し持っているとしか思えないとの話がありました。FPと一緒に滞納者宅を訪問し、決算は適正であり即時完納するよう指導に向かいました。ラブホテルの事務所で三者面談し、900万円の収入がどこに消えているのかを事情聴取しました。そこで明らかになったのが、決算書に現れてない債務の存在でした。 
 滞納者が負っていた債務は以下のとおりです。
 (債権者)   (当初借入額)(返済額/月)(担保)
① 信用金庫 …… 7,000万円  30万円   自宅、ラブホテル
② A銀行 ……   550万円  10万円   滞納者、滞納者の弟三男(死亡、相続人は三男の妻)
③ B銀行 ……  2,600万円  20万円   自宅とは離れた場所の貸し店舗
 ①の債務についてはラブホテル経営経費のため申告書にも上がっていましたが、②、③については滞納者個人の債務として決算上計上されていませんでした。この個人債務の内容を聞き取りました。
 滞納者は3人兄弟で、滞納者は長男、次男は左官業、三男は会社員の構成です。左官業を営んでいた次男が多額の負債を抱え廃業。その後始めた喫茶店もうまくいかない状況に陥り、次男の再三の懇願により、滞納者、三男は次男の②、③の債務に対する保証人となりました。次男は結果的に返済しきれなくなり、保証人の滞納者、三男に保証請求が来ることとなりましたが、所得の状況から長男が全て被ることとなり、さらに次男の店舗を確保するために滞納者が次男の喫茶店の住宅ローンを借り換えして負担することとなりました。次男の店舗を確保したものの、次男の金銭感覚は破綻しており、サラ金にも手を出した上、自己破産して東京へ転出していました。結果、滞納者、三男に保証債務だけが残ることとなっていました。三男は病気で死亡し、その保証人の立場は妻に移っています。
 当初は、貸し店舗がどうにか任意売却できないか、リスケジュールできないか等模索しましたが、残念ながら買い手は見つからず、リスケジュールもできませんでした。ここで、FPがこれらの債務のうち、滞納者が返済をやめた場合のリスクを検討しました。
①……滞納者が経営するラブホテルが担保に取られているため、滞納者にとって一番リスクが高い。
②……滞納者が返済を止めると滞納者自身は救われるが、死亡した三男の相続人である妻に保証請求がいきます。 妻は年収が200万円以下の収入であり、とても返済能力は無いが夫名義の自宅を相続していました。滞納者にとって親族を生活困窮に貶めることになり、それはどうしてもできないと申し出がありました。
③……担保に取られているのは滞納者に全く関係の無い次男がもともと経営していた店舗です。他人に貸しているが、家賃収入月7万円に対してローン返済月20万円と明らかに返済が上回っている状況でした。
 FPより③の返済をストップするとどうなるか説明がありました。当然B銀行は一括請求し、競売に移ります。ただ、結果として担保不動産を手放したとしても滞納者本人に全く損害は無く、競売されて残債があったとしても、B銀行にとっては無担保債務であり、滞納者に全くリスクは無いことを説明しました。後はサービサーに流れれば交渉して有利な条件を勝ち取れば良いだけです。自身の生活に直結する税を滞納し続けるのと、債務を返し続けるのではどちらが滞納者にとって大切なのかを考えてもらいました。
 また、本人の給料が借金返済のために高額になっているような状況であったため、本人と税理士と協議をし、給料を下げてもらい娘の社保に入ってもらうよう話をしました。
 この結果、高額だった現年発生国保が無くなった上、今までの月20万円のローン返済を納税にまわしてもらうこととなり、完納への道筋ができました。

 ここまで上げた事例は、いずれも基本的な手法です。
 徴税吏員だけで状況を考えていると、その知識が無いために問題解決のアイディアが浮かばず、徴税吏員は税金を取れない、滞納者は継続的に差押を受けるなど、お互い不幸な状況が続きます。これを解決するため、FPと金融の知識を持った人を納税相談に活用すれば、滞納者の生活改善を図ることができるようになります。

4. 第三者相談員のメリット

 以前、徴税吏員自身がFP資格を取得して家計相談に取り組んだことがありました。日常的に相談に当たっている徴税吏員がFP相談を行えば、より多くの滞納者の問題解決ができると考えたからです。しかし、この方法は全くうまくいきませんでした。なぜなら、我々徴税吏員は、滞納者から見るとどこまでいっても「債権者」だからです。滞納者からすると我々はただの取立て屋に見えるため交渉はうまくいきませんでした。
 また、金融の問題を抱えている滞納者が、返済している金融機関に自ら相談すればいいじゃないかという意見もあるかと思います。しかし、その方法もうまくいきません。何故なら銀行も滞納者から見ると「債権者」だからです。債権債務がある関係では、中立的に市民の為のアドバイスはできないのです。
 これが、FPなどの第三者の相談員を入れるとどうなるでしょうか。

 この構図から、FPは中立的な第三者で何も債権債務は無いことが分かります。我々には教えてくれなかった情報があっても、滞納者にとっては教えやすい環境となりえます。これまで以上に滞納者の状況を正確に把握して最適な解決策を提案することができるようになるというわけです。
 本市では、現在FP相談に活路を見出していますが、別にFPに限る必要はありません。FPという資格が各種制度の広範な知識を取得しているため、納税相談に非常に役立つことは確かですが、大事なのは「市民側に立って」「具体的な解決策を持つ」第三者の力を借りることです。例えば、金融にも詳しい弁護士・司法書士、金融機関を退職した人、会計士、中小企業診断士、中小企業再生支援協議会等々は、ここで述べたような問題に対して市民側に立つ第三者になれる可能性があります。

5. まとめ

 2008年より多重債務問題に取り組み、2010年からFP相談を実施しているところではありますが、当初は徴収率が思うように伸びませんでした。それはなぜかというと、滞納処分を強化せずに相談のみを重点的に行っていたからです。当然ながらFP相談の実施により解決できる案件は増えましたが、差押可能な財産を差し押さえることなく滞納を放置していては納税に繋がりません。まずは差し押さえ可能な財産を差し押さえ、その後の出口対策としてFP相談を受けていただくということが大事だと考えています。滞納者の問題点が何かを聞き取り、その解決策を具体的に提示し、問題の根を断ちきり、生活サイクルを良い方向にもどし、安定した納税に繋げることが重要です。
 本市では、特に2012年以降捜索差押を中心に差押件数を増やし、滞納処分を強化しています。徴収率は差押件数に比例して伸びているところです。滞納処分を強化し、FP相談を実施した結果は収入未済額の減少につながっていると言えます。
 本市は、今後もさらなる滞納処分の強化とFP相談の充実による滞納者の生活再建に向けて取り組んでいきます。