【論文】

第35回佐賀自治研集会
第10分科会 貧困・格差社会の是正とセーフティネットの再構築

 地方自治法第244条の2は、地方公共団体が条例で定める「特に重要な公の施設」の廃止又は条例で定める長期かつ独占的に利用をさせようとするときは、出席議員の3分の2以上の同意を条件としている。      
 その規定をないがしろにされ、脱法的に廃止された国保病院がある。世界一「企業が活動し易い国」をめざす政権のもと、自治体の特に重要な公の施設が、容易に廃止やその運営が民間に渡ることにどう対処するか。



重要な公の施設。脱法的に廃止した町の物語
―― 禁じ手行政は議員を戒飭する ――

岩手県本部/政治連盟会員(前金ヶ崎町議) 小原 正好

1. はじめに

 2012年12月総選挙は、自民党が294議席を獲得、単独過半数を超える勢力となった。政権に返り咲いた自民党は再び安倍晋三総裁を選び、第2次安倍内閣が誕生した。
 第2次安倍内閣は、「戦後レジームからの脱却」をとなえて「自主憲法制定」を顕わにしたが、世論とマスコミの支持が得られず、むしろその意図に疑念が広まった。「憲法改正がたった3分の1の国会議員が反対することで、3分の2の議員が国民投票に付して憲法改正の議論ができない、と言うのはおかしい」と語り、改憲手続き条項96条の改正ハードルを低くすることにまで言及している。"貧すれば鈍する"首相の資質が疑わしくなる話だ。
 ところが、改正ハードルが高くて試合に負け、ルールを低く変えて再試合で勝った首長がいる。岩手県胆沢郡金ヶ崎町である。安倍晋三(※1)先祖の地での出来事である。

2. 国保病院廃止 無床診療所化との闘い

 金ヶ崎町には、1951年開設し地域医療計画で一般病床65が認められている国保病院と、水道事業施設を、地方自治法244条の2で定める「特に重要な公の施設」に定めていた。その国保病院廃止に至る闘いの顛末を振り返る。
 その国保病院の経営は楽ではなかったが、町の経営姿勢に起因することも多く、廃止は1万6千町民の納得の得られる政策選択とは思われなかった。地方自治法244条の2に定める「特に重要な公の施設」を脱法的に『病院廃止無床診療所化』を押し通した当局の法治感覚は、民主主義と住民自治がまるで顧みられていない実際のことだ。
 国保金ヶ崎病院の経営見直しについては、行政改革の項目には取り上げられていたがそれ程の具体性も示されていなかった。ところが、町は総務省地方公営企業経営アドバイザー派遣事業を導入、2005年10月6日総務省地域企業経営企画室課長補佐、岩手県市町村課主任が同行するアドバイザーが現地を視察・調査され、翌7日には講評・助言を受けた。あまりにも手回しのよい講評・助言は「アドバイザーからの意見と断って」口頭で行われている。ちょうど、隠密に全国を行脚する水戸黄門の印籠の下に行われたようなものだ。(議会側に提出された講評、助言文書は事務方の記録メモ。アドバイザーからの講評、助言等の文書の開示を議会で求めたが「文書では受け取ってない」との回答。総務省や県が係った事業に報告文書がないとはとても信じがたい)アドバイザー事業が無責任なのか、住民・議会に対する国・県が係ったというアリバイ作りなのか、職員が同行したことの意味が理解できない。
 アドバイザーである日本医療文化化研究会主宰茨則常氏の発言「国立療養所では人件費3割下げた。労働組合とは一切手を切った。組合と馴れあって病院経営はできない」は、いったいこの町の労使関係の何を知っていて言うのか傲慢と言うべき言動だ。労使間に何の問題も起きてないのに、荒っぽく語られる雰囲気は、昔、乱暴な物言いをする外科医を名医と錯覚した時代もあったような。この時の講評・助言によって当局は思考停止に陥り、助言をなぞる様に「病院廃止、無床診療所化」に向かわせたと見られる。
 当局は、助言・講評から僅か18日後の10月25日、記者会見を開いて病院廃止の具体的方針について発表した。現在ある診療科目、内科、外科、婦人科、眼科、歯科をそのままとし、入院施設はすべて廃止し2006年4月から無床診療所にする、というもの。
 病院廃止無床診療所化の町の方針はこのときから表面化した。議会への町の説明は記者会見から2週間遅れの11月10日、町長の要請により議員全員協議会を開催、国保病院の無床診療所化の方針について説明された。議会は同日臨時会を開催、全議員による「国保金ヶ崎病院問題調査検討特別委員会」を設置。2006年1月16日までに8回の委員会を開催して次のように議長報告をまとめた。

国保金ヶ崎病院問題調査検討特別委員会報告(抜粋)

 ……町当局から全員協議会において説明を受けた国保金ヶ崎病院の無床診療所化の方針について、町民の生命と健康に関わる重要な問題であることから、国保金ヶ崎病院問題調査検討特別委員会を設置した。
 本委員会の目的は、国保金ヶ崎病院についての現状と今後のあり方について調査、検討を進め……病院の無床診療所化について各委員の意見を集約することにあります。……(調査検討の経過は省略)……意見を集約する過程において、特に出された意見・ 要望は以下の通り。
・ 医師の確保は責任を持って行うこと
・ 経費の見直しを行うこと
・ 町民に信頼され、利用される医療体制の構築に努めること
・ 地域包括医療システムの構築をはかること
 本委員会として……結論を出さず…………。
 なお、平成17年12月5日付けで金ヶ崎病院を考える住民の会から「金ヶ崎病院無床診療所化に係る請願書」が議会に提出され……本特別委員会は4,994筆の署名とともに提出された請願の重みを尊重し、慎重に調査・検討した。

 この議会特別委員会の纏めは、議会の内向きの調査・検討だけで、地域に出て民意を問う方策は取られなかった。また、委員個々の意見を集約しなかったのには、後日委員の賛否の態度が懐柔を誘うことを嫌った議員心理が働いたもの。
 一方、この件に関する国保運営委員会は11月24日に開催されている。議題は、17年度国保金ヶ崎病院補正予算(第2号)と「国保金ヶ崎病院の無床診療所化に係る金ヶ崎町国民健康保険関係条例の制定について」であった。委員会は、国保関係条例制定(病院廃止、診療所設置及びその関連条例)について結論に至らず、委員の発言要旨を添えて即日答申している。(議会の動向が判らないので委員会の意思が先行するのを嫌った)
① 国保金ヶ崎病院の無床診療所化については、町議会特別委員会において調査中であることからその結果を踏まえ慎重かつ広く町民の意見を聴くべきであること。
② 国保金ヶ崎病院の財政状況から判断するに……一刻の猶予も許されない。
 他方、このような当局の動きに対して、金ヶ崎町職労を中心に自治労岩手県本部、平和環境胆沢労組センター、連合胆江地区協などの共闘で「金ヶ崎病院を考える住民の会」を結成。人口16,000世帯数5,500の町内全域から反対署名5,000筆を目標に運動を展開した。
 くわえて、町職労と住民の会は「金ヶ崎病院無床診療所化を考えるシンポジューム」を開催した。講師に宮城県塩釜市立病院医療福祉情報企画室室長山本邦夫さんを招き、「地域医療と介護保険」と題した基調講演があり、豊富な知識と経験、現場からの視点が好評を博した。署名運動に触発された住民ら320余名の参加でシンポジュームは盛り上がった。

3. 戦術的に配置された審議日程

 2006年1月18日臨時町議会が招集され次の4議案が提案された。
 議案第1号 金ヶ崎町国民健康保険金ヶ崎病院事業の設置等に関する条例を廃止する条例
       提案理由 =金ヶ崎町国民健康保険金ヶ崎病院を廃止しようとするもの。
 議案第2号 金ヶ崎町国民健康保険診療施設設置条例の一部を改正する条例
       提案理由 =金ヶ崎町国民健康保険金ヶ崎病院を廃止し、金ヶ崎国民健康保険金ヶ崎診療所を設置しようとするもの。
 議案第3号 金ヶ崎町国民健康保険条例の一部を改正する条例
       提案理由 =金ヶ崎町国民健康保険金ヶ崎診療所の設置に伴い、関係条例を整理しようとするもの。
 議案第4号 議会の議決に付すべき公の施設の利用及び廃止に関する条例の一部を改正する条例
       提案理由 =金ヶ崎町国民健康保険金ヶ崎病院の廃止に伴い、特に重要な公の施設の長期かつ独占的な利用及び廃止についての議会の特別議決を要する施設から病院を除外しようとするもの。
 議案第1号が否決された。そのことにより、2号から4号までの議案は、提案者の申し出により撤回された。
 この臨時議会招集日程には巧妙なカラクリがあった。議案第1号は地方自治法第244条の2によって保護されている重要な公の施設としての国保病院を廃止する議案である。成立要件は出席議員の3分の2以上の同意を要するもの。また、1月18日の議会招集は3月18日に町長選挙が予定されているので、反対運動は法的制約を受ける60日前に当たる日である。
 議案第1号の審議は質疑のあと反対討論4、賛成討論3が行われ、採決は記名投票で行なわれた結果賛成13、反対7。3分の2以上の同意が得られず否決となった。地方自治が首長と議会(議員)が直接選挙で選ばれ行政権と議事機関として二元代表制で成り立っていることからも重い判定である。
 これが地域医療という目的のための協調の始まりでなく、医療を蔑ろにする執行権者とのたたかいの始まりとなった。否決から12日後、1月30日臨時町議会が招集され「議会の議決に付すべき公の施設の利用及び廃止に関する条例の一部を改正する条例」が提案された。これは自治法244条の2に定める「特に重要な公の施設」に金ヶ崎町は国保金ヶ崎病院と水道事業施設を条例で定めていた。その条例を改正して、特に重要な施設から国保金ヶ崎病院を過半数で排除しようと議案である。これは過半数議決議案である。反対・賛成それぞれ4名の討論が行われ、審議は翌日にまで持ち越され、起立採決の結果、賛成11で可決された(定数20、うち議長、反対8)。
 国保金ヶ崎病院を「特に重要な公の施設」から除外して1週間、2月6日臨時議会が招集され、国保金ヶ崎病院を廃止し国保金ヶ崎診療所を設置する条例が提案され、起立採決により賛成11(反対8)で原案通り可決した。

4. 民主主義を蔑ろにした戦術

 以上述べた一連の流れを振り返ると、計画は周到に、巧妙に組み立てられていた。議会で一度否決となった事案については、地方自治が首長と議会の直接選挙による二元代表制で成り立っている事から、文字通り丁寧に時間をかけた解決の道を探るべきである。不可逆的政策選択であれば、それぞれの価値意識に妥協の余地は小さいと思われるが、「病院廃止と診療所化」の問題は「財政と医療・福祉」の問題である。協議に馴染むテーマであり、間髪を入れる時間も与えず組まれた計画は、筆者の考えでは多分に総務省から派遣されたアドバイザーの助言をなぞって行った〈水戸黄門の印籠効果〉と思っている。
 自治研運動の視点で問題を整理して見る。
1. この事案は、不可逆的な政策選択ではない。つまり、価値観が正面衝突して膠着するようなものではない。協調、妥協など折り合いを探り次善の方策を採ることが住民自治に馴染む。
2. 住民自治の原則は二元代表制にある。議会の3分の2議決条項で否決となった事実は重い。会派制のない町村議会では、議長と議事運営委員会が担うべき任務の活性化が図られるべきだ。執行当局と議会は虚心坦懐に方策協議の場を設けるべきである。
3. 首長は現役引退を表明してからの議会提案である。次期選挙で信を問われることがない時機を狙った戦術的匂いが濃い。首長としての矜持こそ守られるべき価値。
4. 町選挙管理委員会から、次の町長選挙は3月18日と発表されていた。地方自治法第74条は条例の制定又は改廃の請求とその処置を定めている。第1項に「……政令の定めるところにより、その総数の50分の1以上の者の連署をもって……制定又は改廃の請求をすることができる。」5項は「地方公共団体の議会の議員若しくは長の選挙が行われることとなるときは、政令で定める期間……署名を求めることができない。」と期間中の署名運動を禁じている。政令は「任期満了による選挙 任期満了の日前60日に当たる日」と定めている。国保病院廃止の議案を提案した臨時議会は1月18日、町長選挙の日はそれからちょうど60日になる。
 住民・有権者の参政権を閉ざしたやり方は大きく行政の信頼を失うことになる。
5. この事件の最大の不正義は、意図して脱法的手段を弄して「特に重要な公の施設設置条例」の改正を行った事と、地方自治法74条に定める有権者の権利の手を縛って反対運動を牽制している事にある。病院・診療所の切り替えを、年度の切り替え日に行うというのに、議会手続き等の日程配置の1月18日はあまりにも遅すぎる。その証拠に実際の診療所開設は予定から60日も延びて6月1日となっている。反対運動を封ずるためのものであることは自明である。

5. 町長が議員を戒飭(かいちょく)※2

 国保金ヶ崎病院が廃止されてから5年、平成23年5月病院退職者同窓会を開く事になった。
 同窓会は実行委員会を開き地域紙に広告を出すこととし、実行委員会から文案を一任された筆者は、病院廃止の寂しさ、悔しさ、無念さなど元職員の思いをユーモアとウイットで纏め4月1日を掲載日と指定して出稿した。
 ところが、広告掲載後2カ月もしてから、町長から『「国保金ヶ崎病院の廃止は行政が脱法的手段で行った事実は一切ない」、「議会の議決の軽視ともとれる広告をされた」「議会議員である貴職の行為として疑問だ」、その「真意を伺いたい」』という抗議の文書が送達されてきた。筆者は、広告を「病院退職者有志の会代表」の私人として掲載している。
 議員が嘗ての職場の同窓会代表として新聞広告したことを、首長が「内容が怪しからん」と戒飭する文書を議員肩書きにして送り付けることは、地方自治体の二元代表制の根幹を無視する許されない行為である。以下は町長からの文書の要旨と筆者の回答である。
 文書は、発遣番号を付した公印のある町長名のものである。宛名は町議会議員の筆者宛である。

 表題は「金ヶ崎病院生誕60周年没後5周年を偲ぶ会に係る新聞広告について」

 ……さて、平成23年4月1日付胆江日日新聞に掲載された「金ヶ崎病院生誕60周年没後5周年を偲ぶ会」の新聞広告中、「行政の脱法的手段により」という記載がありました。この記載は、新聞広告を見た人に誤解を与え町政への不信感を与える恐れがあります。ついては、下記の内容について速やかに回答されるよう通知します。

 当町では、法令に従い町議会の議決のうえ適正な事務手続きで行政運営を行い、金ヶ崎病院の廃止と金ヶ崎診療所の設置の際も同様であり、新聞広告に記載の「行政の脱法的手段により」という事実は一切ありません。貴職が「金ヶ崎病院退職者有志の会」の代表として、金ヶ崎町議会の議決の軽視ともとれる内容の広告をされたことは、金ヶ崎町議会議員である貴職の行為として疑問に思います。何によりこのような不適切な記載をしたものか真意を伺います。とある。
 以下筆者の回答である。
 はじめに、(1)この広告は「金ヶ崎病院退職者有志の会」が、エープリルフール(万愚節)の4月1日を掲載日と指定して、表題にウイットを楽しんで広告出稿したものです。(2)金保福第543号は、議員に戒飭を意図して出された文書と受け止めています。まことに民主的地方自治の道理にもとる不当なことであります。(3)本来であれば、政党(社民党)に所属する公認の身であるので、上部に照会して、回答することの有無、回答の方法、文案等の確認を得て然るべく回答すべきですが、小職の一存で回答するものです。
1 「行政の脱法的手段」によりという事実は一切ありません、について
 金ヶ崎病院が廃止に至った経過は次の通りです。
① 平成18年1月18日町臨時議会が招集されます。議案は「国保金ヶ崎病院事業設置等に関する条例を廃止する条例」。この条例は、地方自治法(以下自治法)244条の2第2項により金ヶ崎町が条例で定める重要な公の施設として、水道事業と金ヶ崎病院を規定している条例で、その廃止を議決するには出席議員の3分の2以上の同意を要件とする特別議決条例です。記名投票による表決の結果賛成13、反対7で否決されました。
② 僅か12日後の1月30日臨時議会が招集されます。議案は「議会の議決に付すべき公の施設の利用及廃止に関する条例を改正する条例」。この条例改正の意図は、金ヶ崎病院が重要な公の施設として設置が自治法の特別議決条項で保護されているので、病院廃止の為のハードルを低くする条例変更の提案です。加えて、この議案の表決は、自治法第116条の規定による一般議決として出席議員の過半数で議決できる議案。審議未了により延会となります。
③ 翌30日町議会審議再開します。反対討論4、賛成討論4、後に起立採決します。結果は、賛成11、反対8で原案どおり可決されました。
④ 6日後の2月6日町臨時議会が招集されます。議案は「金ヶ崎病院事業の設置等に関する条例を廃止する条例」。審議は反対討論2、賛成討論2、あり起立採決の結果、賛成11、反対8、で原案どおり可決されました。
 以上が「行政の脱法的手段」と論難されている経過です。1月18日開催の臨時議会では、5,000筆もの病院廃止反対請願署名の行方を見守ろうとする多くの町民が詰めていました。その眼前で病院廃止条例は否決されました。それから、僅か12日後の1月30日、更にその6日後の2月6日に臨時議会の招集です。曰く、町民が主人公の町政、町民目線の町政、町民対話の町政と。執行権者の言葉に命が宿されていないようです。町民世論が高揚するのを恐れたのか、抜き打ち的臨時議会の招集です。
 18日否決以降町長には、町民座談会、懇談会、説明会等を開催できない合理的理由は見当たりません。それができないのであれば、議員が支持者、町民に説明に回る時間的余裕を配慮するのが地方自治の常道と思います。
 従って、違法とは言わないが、行政が脱法的手段を弄したことは明らかです。
※『脱法』・法律に触れないような方法で、実際は法律が禁止していることを犯すこと。
       広辞苑第3版第4刷 昭和61年10月発行 岩波書店
     ・直接には違法でない方法で、悪い事をすること。法の網をくぐること。「脱法行為」形式的には強行法規に違反してはいないが、実質的にはその法規の趣旨に反する行為
       大辞林1989年1月10日発行 第3刷 三省堂
2 「金ヶ崎町議会議員である者の行為として疑問に思います」について
  身に覚えのないことです。私的ことで議員として回答を求められたことは、まことに奇異なことです。議会軽視は、執行権者と行政当局であって、金ヶ崎病院廃止に至る経過を法理に従って読み解けばそれは明らかです。
3 「不適切な記載をした真意を伺います」について
  「このような不適切な記載」の文意がわかりません。

6. おわりに

 7月1日の安倍政権による、集団的自衛権の容認閣議決定は実質的に「解釈改憲」である。このことが、自治体の執行権者の間に遵法の気風が緩むことにならないか。政権は「世界一企業活動のし易い国」をめざすという。TPPの思想は経済のアメリカ化であり「公は限りなく小さい方がよい」と聞く。
 自治法第244条の2第2項に定める「特に重要な公の施設」を条例で規定している自治体がどれ程あり、またどのような施設が規定されているのか掌握していないが、公の施設が指定管理者の手で運営されている例は多い。
 経済合理主義が先行する政治潮流が目立つとき、自治体には運営を指定管理者に委ねてならない公の施設や、民意に背いて廃止される施設の保全に自治研の智恵が求められている。




※1 平安時代 奥六郡(現在の岩手県内陸部)を支配した土着豪族安倍頼時の子、宗任の44代末裔。「前九年の役」で陸奥守兼鎮守府将軍源頼義に敗れ、蝦夷の俘囚として都に送られた。
※2 戒飭(かいちょく)注意をあたえて慎ませること。