【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第11分科会 「生活者の多様性に根差した災害への備え」をめざして

 東北大震災から3年が過ぎました。自然災害が及ぼす影響は計り知れないものがあります。2008年8月末豪雨は岡崎市に多大な被害をもたらし今後の防災に対する考え方を見直す機会になりました。前回の自治研で市従労組から、災害ごみ、一般土木での対応をレポートしましたが、今回は庁舎の被害・対応をレポートし、8月末豪雨の被害を教訓に「災害に強い庁舎をめざして」と題しレポートします。



災害に強い庁舎をめざして それは日頃の危機管理体制
災害対応に必要な自治体職員(現業職員)

愛知県本部/岡崎市従業員労働組合 鈴木 郁夫

1. 岡崎市に及ぼした2008年8月末豪雨概要

 2008年8月26日、前線を伴った低気圧が九州地方の南部に接近しました。これに伴って、翌8月27日にかけて西日本太平洋側を中心に南から暖かく湿った空気が流れ込んで大雨となりました。この低気圧は、8月28日から31日にかけて日本の南の海上を進み、本州付近に停滞していた前線に向かって南から非常に湿った空気が流れ込み、大気の状態が不安定となりました。この影響で、岡崎市では29日未明に特別警戒級の豪雨に見舞われたほか、日本の広い範囲で短時間に非常に激しい雨が降りました。
 岡崎市では8月28日、午後9時風水害第1非常配備体制が解除され、災害対策本部も解散されました。その数時間後の2008年8月29日午前0時6分、愛知県西部地方へ大雨洪水警報が発令されました。この日、気象庁岡崎観測所では、午前1時から2時までの時間雨量146.5ミリの雨が観測されていますが、この雨量は8月としては気象庁の観測史上最大であり、岡崎市で447.5ミリを記録しました。年間を通じても史上6番目の観測値との発表がされています。「ゲリラ豪雨」とも報道された短時間局地的集中豪雨は、岡崎市に死者2人、床上・床下浸水3,365棟というまさに未曾有の被害をもたらしました。
 また岡崎市は、2000年9月に発生した東海豪雨においても甚大な被害を受けています。東海豪雨は、著名災害降雨として自治体の水害対策の基準とされるところでありますが、本市でもこれまでに治水や浸水対策のバロメーターに用いられてきました。2008年8月末豪雨での降水量は、時間最大雨量、24時間雨量ともに東海豪雨を遥かに上回っています。中でも、午前0時からの3時間雨量は240ミリに達し、東海豪雨時の1日の雨量に匹敵します。水害対策の抜本的見直しが必要になりました。

2. 2008年8月末豪雨で庁舎対応した業務内容

(1) 岡崎市役所各庁舎建築経歴
 1958年10月北館新築、1969年10月北館増築、2008年1月解体
 1971年11月西庁舎新築
 1975年3月北駐車場新築、2006年6月解体
 1992年東駐車場新築
 1994年6月福祉会館新築
 2007年7月東庁舎新築
 2008年12月西駐車場新築
 ※ 東庁舎は、2007年7月1日市政記念日に市民に内覧会を開催して東庁舎が供用開始されました。

(2) 2008年8月29日(金)ゲリラ豪雨経過
① 東庁舎・福祉会館の被害状況
  午前1時頃西庁舎水害被害発生、電気室に水が浸入したため、西庁舎用受電を開放するように連絡が入りました。(西庁舎は改修工事中で西庁舎北側の北館、十王公園に隣接する北駐車場は解体され、西庁舎北側は掘削された状況でした。)午前1時15分頃市役所東庁舎に到着。西庁舎の被害状況を確認する前に、東庁舎の被害状況を確認しました。当時、私は東庁舎・福祉会館・東駐車場の建物担当で東庁舎5階財産管理課に勤務していました。(空調運転:東庁舎は委託業者、西庁舎は職員)
  東庁舎宿直室から地下1階に行くと通路に5センチ以上の水が溜まっており、東庁舎の地下1階が浸水しているのを確認しました。地下1階中央監視室に入り、被害状況を確認しようとして扉を開けると監視室の中にも浸水していました。何が原因で浸水したか、どこまでの被害があり、どのような対策があるかなどを考える余裕も無い状況の中、しかし、現在の浸水被害状況を把握するために計装盤にて状況把握を試みました。計装盤で庁舎全体の被害状況を確認し排水を試みました。排水ポンプが作動しているか確認しましたが、ポンプ起動は無く、なぜ作動していないか疑問でした。
  財産管理課職員が応援にきたため、隣の一段低い発生機室・ポンプ室、電気室の被害状況を確認しました。グレモンの扉を開放すると発生機室・ポンプ室が浸水する恐れがあったので、地下駐車場脇にある雑誌、新聞の束を土嚢のかわりに積み上げて、扉を開放するように指示しました。開放しましたが、発生機室・ポンプ室の浸水はありませんでした。その奥の電気室に入り被害状況を確認しました。駐車場から機器を搬入するグレモン扉の下から水が浸入して電気室に水が溜まりかけていました。衣装ケース、バケツなどでその水を受けて水の浸入を食い止めました。また、扉の隙間に雑巾を置いて水の浸入を防ぎました。その奥の非常発電機室は水の浸入形跡はありませんでした。その奥のポンプ室は駐車場からグレモン扉の下からの浸水があり、15センチほどの水が溜まっていました。この水を排水する対策を考えました。そこで一番奥のポンプ室にあるマンホールを開放し雑排水槽に水を落とすことを試みました。マンホールを開放し地下の雑排水槽に水を落とすことに成功しました。続いて、地下駐車場が30センチほど浸水していて庁舎に入ってきたので地下1階駐車場下にある180トンの雨水槽に水を入れることを試みました。これは地震で庁舎屋外に汚水を排水できなくなった時にバルブを屋外排出から屋内槽に手動で操作して地下槽に汚水を溜めることができるように設計してあり、その設備を利用して試みました。水は、180トン用雨水槽に溜まり地下1階駐車場の水は引いていきました。水は引いていきましたが、地下1階エレベーター下のピットに水が入り、エレベーターが上下するためにシースルーエレベーターのガラス越しに水が降っているのを目撃したため、エレベーターを高層階で停止しました。
  東庁舎は、水の浸入にとりあえず対応できたので、東庁舎の隣に接する福祉会館の地下1階にある電気室を確認しました。発生機室・ポンプ室への浸水はありませんでした。その奥にある電気室は、天井に設置してある電気用ラックや空調用ダクトをつたわって蓄電池用キューピクルに水がかかっていたのでブルーシートで水がかからないようにくるみ対応しました。変圧器用キューピクルにおいても同じように水がかかっていたのでブルーシートでキューピクルをくるみました。道路を挟んで東駐車場の被害状況を確認にいきました。地下道を通じて東駐車場へ確認にいくと被害はなさそうでした。しかし、エレベーターが動き何か音がしていることに気づきました。エレベーター下のピットに水が入り上下するたびにエレベーター籠が水を上に運び、その水の音がすることに気づいたため、東駐車場のエレベーターも高層階で停止をかけました。
② 西庁舎の被害状況
  午前1時前後 西庁舎電気室、機械室、ボイラー室で集中豪雨に伴う浸水被害発生。
   西庁舎守衛室より地下浸水の連絡入電。
  午前1時30分過ぎ 先着職員が電気室浸水確認。危険なため現場離脱連絡有り。
  午前2時過ぎ 担当職員が現場着。報告どおり冠水しており手の施しようのない状況。
  午前2時30分頃 電気室浸水にも関わらず受電状態で危険と判断し停電操作実施。
   エレベーター停止後情報ネットワークセンター電気室にて受電開放操作。合わせて自家用発電機起動を手動開放停止。西庁舎完全停電。消火栓ポンプの起動を開放。
  午前3時30分頃 建築課、小原建設等協力会による水中ポンプによる排水作業。
  午前9時30分頃 発電機起動による低層階給電。衛生動力等給電。

3. 本庁舎(西庁舎・東庁舎・福祉会館)浸水対策について

(1) 浸水原因
① 西庁舎
 ・ポンプ容量が降雨量の許容排水量(86.4m3/h)以上の降雨により既設排水管(φ200)で排水ができなかったため雨水が溜まり、その一部が電気室・ポンプ室及び地下通路・倉庫・売店・会議室等に流入した。
② 東庁舎
 ・駐車場スロープより雨水が流入し、既設ポンプ排水量(300リットル/min)以上の降雨によりポンプにて排水出来ない雨水が溜まり、その一部が地下駐車場・地下通路・中央監視室・ガスガバナー室・倉庫・防災備蓄倉庫・更衣室に流入した。

③ 福祉会館
 ・東庁舎駐車場より雨水が浸入し、地下倉庫に流入した。
 ・玄関に雨水が歩道より浸入し1階に流れ込んだ。その一部が地下電気室・ポンプ室・通路・車両管理室に流入した。

(2) 問題点及び対策
① ハード面
 ・西庁舎電気室・ポンプ室の扉が止水扉でないため、雨水流入が防げなかった。
  →重要施設(電気室・ポンプ室)の扉は止水扉に取り替えた。(西庁舎2ヶ所)
  →西庁舎北側に雨水排水ポンプを設置し、基準排水量を超えた場合に自動で強制排水出来るようにした。
 ・東庁舎地下雑排水ポンプ排水量が年平均降雨量で算定していたため、予想以上の排水が不可能であった。(被災後の対応)
  →東庁舎雑排水ポンプの排水量を能力の高いポンプに取り替える。また排水先の変更を行った。
 ・電話設備の本体が西庁舎地下1階に設置してあったため、東庁舎7階へ移設した。
  →西庁舎電話PBXを東庁舎へ移設した。(西庁舎→東庁舎)
 ・東庁舎地下駐車場から地下通路入口への雨水浸入の可能性があった。
  →東庁舎地下駐車場入口に雨水浸入を防ぐマウントを作った。
 ・西庁舎地下日直室入口から通路への雨水浸入の可能性があった。
  →西庁舎地下日直室入口に雨水浸入を防ぐ堰を設けた。
② ソフト面
 ・庁舎危機管理マニュアルが作成されていなかった。
  →庁舎緊急対応マニュアルの作成をした。(風水害・地震)
 ・現場連絡用に無線機の準備がなく携帯電話も不通になり連絡体制が不十分であった。
  →連絡用無線機を購入して、連絡体制が取れるようにした。
 ・委託業者が不在のため、緊急対応に時間を要した。
  →管理委託業務を見直し、緊急時の対応について仕様書に特記した。

4. まとめ

 災害は、いつ発生するかわかりません。常日ごろの業務の中で危機管理体制を意識して業務を遂行することは職員として必要です。管理委託されている場合は、仕様書に緊急時の対応も記載することは必要です。しかし、緊急時の対応は何より市職員として自覚を伴う知識、技術こそ非常時においてどれほど必要で有効に作用するかと考えます。日ごろ培ってきた高い技術で初動体制や本体制の対応をして被害を最小限にとどめることが重要で私たちの役目です。
 8月末豪雨を教訓にハード面やソフト面において改修工事やマニュアルの作成などをして対応してきましたが、緊急時はやはりマンパワーが必要です。庁舎においては、現在委託業者と職員の併用で建物管理をしていますが、本庁舎は建物ごとに設備が異なり特色がいろいろあります。緊急時などにおいては特色ある建物をいかに有効に活用するかが職員として求められます。その対応をするには高い技術をもって、常日ごろの業務の中で危機管理を意識して業務をすることが必要で重要です。