【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第13分科会 自治体からはじまる地域教育へのチャレンジ

公共図書館の障害者サービスと視覚障害職員の仕事
~京都府立図書館のサービスを例にして~

京都府本部/自治労京都府関係職員労働組合 仁科 豪士

1. 図書館の障害者サービスとは

(1) 図書館の障害者サービス
 「図書館利用に障害のある人々へのサービスの一般的な呼び方として使われている用語。
 すなわち、図書館利用の権利を有するすべての人に対して図書館が対応できるだけのものを持っていないことにともなうサービスの不均衡を克服するためのサービスである。利用対象者としては、①心身障害者、②入院患者、③在住外国人、④非識字者、⑤刑務所等への入所者などが挙げられ、
 (中略)
 図書館サービスにおける「障害者サービス」の「障害」は、決して医学的な意味での「障害」ではなく、すべての人への図書館サービスを行う際に、そこから疎外される人々、不利益を被る人が存在しているという意味でとらえていかなければならない。「障害」は人の側にあるのではなく、図書館の側にあるのである。
 (以下略)」(※1.

(2) 図書館利用の障害
① 物理的障害
  心身障害のほか入院、施設入所などの理由で来館できない
  来館できても書架の間を自由に移動できない、高いところにある資料をとることができない 等
② 資料をそのままでは利用できない障害
  視覚・聴覚・上下肢障害やディスレクシア(読字障害)などにより、そのままでは図書館の資料を利用できない 等
③ コミュニケーション障害
  図書館職員とのコミュニケーションが困難 等

2. 京都府立図書館の障害者サービス

(1) 沿 革
 2001年5月  新館オープン、対面朗読室2室を設置
 2002年6月  視覚障害がある職員を配置(担当業務:障害者サービス)
    11月  対面朗読の利用促進などを図るため、利用制限の緩和など制度を見直し(「視覚障害者サービス規定」の制定)
        点字版・拡大文字版の利用案内作成
 2003年4月  近畿郵政局長から「盲人用録音物等発受施設」(現在は「特定録音物等発受施設」)の指定を受け、視覚障害者に対する郵送での音声資料の貸出し開始(郵送料無料)
 2004年    市販のDAISY(※2.)資料の購入、貸出開始
 2007年    図書館ホームページに所蔵DAISY資料一覧の掲載開始
 2009年3月  DAISY版、墨字版の「所蔵音声資料目録」作成。府内の市町村図書館・読書施設、府立盲学校、視覚障害者施設等に配付
    4月  府立盲学校への連絡協力車の運行開始
 2011年10月  音声資料貸出対象者の拡大について検討開始
 2014年3月  「所蔵音声資料目録」(DAISY版、墨字版)の更新、配布
    4月  「視覚障害者サービス規定」の改正、音声資料の貸出対象を「視覚障害等のため活字による読書が困難な人」(以下「視覚障害者等」)(※3.)に拡大

(2) 現在実施している障害者サービス
 詳細は図書館ホームページの「障害のある方へのサービス」参照。
 http://www.library.pref.kyoto.jp/syougai_1.html
① 図書館ホームページのユニバーサルデザイン化(ウェブ・アクセシビリティ支援ツールによる文字拡大・音声読上げ・表示色変更 ふりがなつきページの掲載等)
② 施設・設備の整備(視覚障害者用誘導ブロック、誘導鈴、多目的トイレ、車椅子用閲覧席等の設置)
③ 車椅子の貸出
④ 貸出冊数、期間の配慮(身障手帳等所持者は10冊、1ヶ月間)
⑤ 対面朗読
⑥ 点字資料の提供
⑦ 音声資料(DAISY、カセットテープ、CD)の貸出(対象は視覚障害等のため活字による読書が困難な人。通常の図書館カードの交付に加え、サービスの利用登録が必要。)
⑧ 大活字本の貸出(障害の有無に関わらず誰でも利用可)
⑨ 国立国会図書館学術文献録音サービス申込み受け付け(対象は音声資料貸出と同じ)
⑩ 拡大読書機、音声読書機の設置
⑪ 音声化ソフト対応インターネット閲覧端末の設置
⑫ ファックスによる調査相談の受付

3. 私の担当業務等について

(1) 担当業務
① 対面朗読に関する業務(音訳者の選定、日程調整、資料の準備、実施起案、実績報告等)
② DAISY資料の購入、整理に関する業務(選書、購入起案、目録への登録、装備等)
③ ホームページに掲載のDAISY資料一覧の更新
④ 音声資料の貸出業務(相互貸借による貸出を含む)
⑤ 音声資料目録(DAISY版、墨字版)の作成、提供に関する業務

(2) 業務遂行に必要な配慮等
① 業務用パソコンへの画面音声化ソフト、点訳ソフトなど視覚障害者用ソフトのインストール
② 点字ディスプレー、点字プリンターの設置
③ 職場介助者(ヒューマン・アシスタント)の配置

4. 他館で行われている障害者サービスの事例

① 点字、録音資料の製作
② 点字絵本、触る絵本、布の絵本の製作
③ 拡大写本の製作
④ 障害者用冊子小包を利用した墨字資料の郵送貸出
⑤ 自宅配本(宅配)サービス
⑥ 視覚障害者を対象としたデイジー再生機、パソコン等読書支援機器の利用講習
⑦ 盲聾者(視覚と聴覚の障害を併せ持っている人)を対象としたパソコン講習
⑧ 聴覚障害者用字幕付きビデオ(DVD)の製作・貸出
⑨ 視覚障害者等を対象としたDAISY資料の配信サービス

5. 公共図書館で働く視覚障害職員の会(通称:「なごや会」)について

 発足:1989年9月、公立図書館で働く視覚障害者を中心に結成。
 活動内容:障害当事者としてまた専門職員として、公共図書館の障害者サービスの発展・向上をめざす取り組みを行うとともに、公共図書館への視覚障害者の雇用促進を求める活動を展開。
 会員数(2014年1月末現在):47人(うち24人が17自治体の公立図書館で勤務)
 会の詳細は、以下を参照
 なごや会ホームページ http://homepage2.nifty.com/at-htri/nag-index.htm
 『見えない・見えにくい人も「読める」図書館』 公共図書館で働く視覚障害職員の会/編著 読書工房 2009.11 ISBN:978-4902666-22-9




※1. 「最新図書館用語大辞典」 図書館用語辞典編集委員会/編 柏書房 2004.4
※2. DAISY:「Digital Accessible Information System」(アクセシブルな情報システム)の略称。デジタル録音図書製作のための国際標準規格。CD1枚に最大50時間程度の録音資料の収録が可能、聞きたい箇所への移動やしおり付けが容易。
※3. どのような人が「視覚障害者等」にあたるかについては、日本図書館協会障害者サービス委員会ホームページに掲載の「図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン」参照
http://www.jla.or.jp/portals/0/html/lsh/index.html