【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第13分科会 自治体からはじまる地域教育へのチャレンジ

 私たち給食調理師は、調理施設での業務となり地域住民との接点はほとんどありません。しかし、調理師だからといって調理だけすれば良い時代ではありません。公共サービスの担い手として、給食を通じた食育はもちろんのこと、調理施設の外で生産者や地域住民との交流を進めることにより、子どもたちに安全でおいしい地元の食材を使った給食を提供することが必要だと考えています。



地域と子どもたちにできること


島根県本部/津和野町職員組合(公企現業) 大谷  高

1. はじめに

 津和野町の小学校・中学校・保育園の給食調理業務は、町の職員が行う「直営方式」により運営されています。学校給食を提供する施設は「津和野町学校給食センター」と「日原共同調理場」の2施設で5つの小学校と2つの中学校の子どもたちに給食を提供しており、保育園給食は4つの保育園でそれぞれ給食調理業務を行っています。
 現在の津和野町は、旧津和野町と旧日原町が合併し2005年9月に誕生しました。旧津和野町においては、給食調理業務は以前から直営方式で運営していますが、旧日原町では学校給食は日原町学校給食会に委託し、保育園は直営方式で運営しており、旧町間で運営体制に違いがありました。しかし、合併を機に学校・保育園の給食調理業務は直営方式に統一され、日原町学校給食会の職員は非正規職員として津和野町に採用されました。
 給食調理業務を行う正規職員は、津和野町公企現業職員労働組合に加入し活動していますが、旧日原町学校給食会の職員は、合併以前から日原町給食職員労働組合として単独で組織されていた経過もあり、合併後もその組織が引き継がれ「津和野町給食職員労働組合」として活動しています。
 さて、津和野町公企現業労働組合は学校・保育園給食調理師、公用車運転手、上下水道業務に携わる職員(環境生活課)、2009年から公設民営化された病院の運営に携わる職員(医療対策課)、天文台職員、さらに同じ現場で働く職員という位置づけで保育士を加え、33人の組合員で構成されています。2008年には調理師、保育士でそれぞれ部会を立ち上げ、日ごろ目の届きにくい出先職場の課題を自分たちの視点で改善すべく、話し合いや学習の場を設け取り組みを行っています。
 今回はその中で、調理師部会が取り組んだ活動について報告します。

2. 夏祭りを通じた地域住民との交流

 調理師部会では、部会の活動について話し合っているときに、今までは「田舎ではありえない」と思っていた給食調理場の統合、民間委託、PFI、指定管理者制度の導入などの実態を聞き、「ありえない話ではない」ということを再認識しました。自分たちの職場でも起こり得る身近な問題としてとらえ「どのようにしたら自分たちの仕事を理解してもらい、職場を守ることが出来るのか。」幾度となく話し合いを重ねる中で、普段の業務のほとんどは施設の中で行うため、地域住民との交流がないことが問題として上がってきました。そこで、毎年開催される「町の夏祭りに出店してみては?」という意見があり、「地域住民との交流」「給食のアピール」の2つをテーマに調理師部会として夏祭りの出店に取り組むことにしました。また、合併してから交流が少なかった津和野町給食職員労働組合にも取り組みの趣旨を説明し、協力していただけることになり、この機会に2つの組合が初めて一緒に活動することになりました。
 出店にあたり「どのようにしたら給食をアピールできるか」、「どのような給食メニューを提供するのか」「衛生管理はどうするか」など、課題はありましたが、初めての取り組みでもあり、初年度は試験的に取り組むことにしました。メニューは昔も今も人気のある「揚げパン」に決定し、「きな粉味」、「ココア味」さらに今までの給食で出ていない「レモンティー味」の3種類の揚げパンを販売することにし、350個とハードルの高い数を設定してみんなで協力して販売することにしました。試作も重ね、パンの大きさも実際に給食で子どもたちが食べている大きさで販売することにより、「給食のパンの大きさはこの大きさですよ」や「小学生でもこの大きさのパンを食べますよ」と住民の方と会話をするきっかけになればと思い決定しました。
 夏祭り当日は、メイン会場から離れた場所に出店となったため、かなり苦戦をしましたが、完売することができ、地域住民とも交流でき、充実した取り組みとなりました。津和野町給食職員労働組合はもちろん、保育士部会にもポスター作りや販売の手伝いなど協力してもらい現業労組全体での活動ができました。一方で、たくさんの課題も見つかったため、メニュー決め、販売数の見直し、求めやすい価格設定などしっかり話し合い、2010年から本格始動することにしました。
 本格始動した2010年からは、昔の給食では頻繁に使われていた「鯨の竜田揚げ」や幅広い年齢層の方に食べていただけるという思いから「炊き込みご飯」をメニューに加えました。とくに「鯨の竜田揚げ」は現在の給食では使用する機会が少ないですが、年配の方から「懐かしいね」「今でも使っているの?」「美味しかったよ」などたくさん声をかけてもらえ、納得のいく取り組みができました。また、年々販売数を増やしたことにより、住民の方との触れ合いも増え参加した組合員全員が喜んでいました。
 一方で、本格始動した2010年の取り組みからは、津和野町給食職員労働組合と連携した取り組みには至っていません。その背景には、津和野地域と日原地域それぞれで開催されている夏祭りにおいて津和野地域の夏祭りのみの出店になっていたことや単組間の日ごろの取り組みに温度差があることなどが挙げられ、今後の取り組みにおいても課題を残すかたちとなりました。
 この間の取り組みで得た収益は、町内の図書館や保育園さらには東日本大震災で被災した宮城県気仙沼市の小学校などに寄付することとしました。寄付に当たっては直接現地に行って品物を手渡し僕たちの思いを伝え、津和野町出身の安野光雅先生の絵本と学校で自由に使いやすい図書カードを寄贈しました。被災地の様子や被災された小学校の先生のお話など組合員に報告すると「今後も被災地のためにできる限りのことをしたい」とみんなが口にし、来年以降も被災地に寄付をしていくことを確認しました。

年度

メニュー

食数

収益

寄贈先・品物

2008

揚げパン
・きな粉
・ココア
・レモンティー

350

10,000円

町立図書館
・食に関する絵本
「ルルとララのカップケーキ」
「ルルとララのおしゃれクッキー」
「ルルとララのキラキラゼリー」 他

2010

揚げパン
・きな粉
鯨の竜田揚げ

100

100

28,000円

町立保育園
・「食育」関連グッズ
・エプロンシアター
・絵本 他

2011

揚げパン
・きな粉
炊き込みご飯

286

100

33,120円

被災地へ寄付(現金)
・津和野町を通じて

2012

揚げパン
・きな粉
炊き込みご飯
鯨の竜田揚げ&
フライドポテト

150

100

70

28,525円

気仙沼市立唐桑小学校
・図書カード
・安野光雅先生の本
「はじめてのすうがく」
「もりのえほん」 他

2013
(予定)

野菜ラーメン
炊き込みご飯

100
100

 

津和野町内の福祉施設
10月 岩手県内小学校予定
2014年3月
 被災地の小学校(未定)

3. 地域と子どもたちのために

 津和野町の学校給食では「地産地消」に取り組んでいますが、保育園の給食ではその取り組みが行われていませんでした。そこで、私が働く保育園では子どもたちのために安全で新鮮な食材を給食に取り入れておいしい給食の提供に取り組むことにしました。さらに農家の方の「やりがい」に繋げていければとの思いから農家の方に直接お話しをし、地元の新鮮な食材を納めていただくことができました。昨年の後半から試験的に行い始めた取り組みですが、現在では3軒の農家のご協力により子どもたちに毎日新鮮な野菜を使用した給食を提供しています。また、毎朝届いた食材を写真に撮り、生産者の名前と食材の掲示も行っています。給食を食べる前には子ども達に写真を見せて、「今日給食で使用した食材は、○○さんの○○です」と報告しています。今では子どもたちは、生産者の名前や食材の名前を覚え、生産者の方が納入するときには「いつもありがとう」や「今日の野菜は何?」と声をかけ話をしています。生産者の方も声をかけられてとてもうれしそうに話しておられます。このような取り組みが地域に根ざした公共サービスにつながると確信しました。
 しかし、この取り組みを行っている保育園は1園のみで、他の保育園では行われていません。納入する量の問題や単価・納入方法などいろいろな課題がその園ごとにありますが、この取り組みを通じて地域に根ざした公共サービスに繋げていきたいと思っています。

4. 食育の取り組み

 津和野町の食育活動は県内でも進んでいるとはいえません。しかし、町内で飲食店を経営されている方々は「子どもたちに食の大切さ、生産者の気持ちを知ってもらいたい」という思いからでボランティアで食育の授業を行っています。現在津和野町内で授業を行っている方は5人おり、その中で私も一緒に活動を行っています。
 授業の内容は「味覚」が中心ですが、みんなで食べる楽しさや、親や生産者に感謝の気持ちをもって食事をいただくことも教えています。県内の小学校、中学校で授業を行ってほしいと申し込みが殺到していますが、残念ながら町内の学校からの申し込みは少ないようです。学校の温度差によって子どもたちに大切な話を聞くチャンスが無くなるのはとても悲しいことに思います。
 今までは小・中学校の児童、生徒が対象でしたが、少しでも多くの子どもたちに話を聞いてもらいたいという思いから、昨年は町内にある保育園の園児に対しても授業を行いました。子どもたちの評判も良く、保育士からは「またやってほしい」、「今度は保護者向けの授業をやってほしい」といった声も上がり、とても好評でした。
 この活動は民間の方が主導で行っている活動です。私たち給食調理師もこのような活動に積極的に参加し、官民問わず地域で働く調理師と子どもたちとの交流を今まで以上に進めていく必要があると感じています。

5. 課 題

 現在は津和野町公企現業労働組合単独の活動になっていますが、津和野町給食職員労働組合と協力して活動できるように取り組んでいかなければいけません。しかし、雇用体系の違いや、賃金、労働条件の違いなどさまざまな課題があり、連携した取り組みに至っていません。給食調理業務に携わる者として、地域の子どもたちにより良い給食を提供したいという気持ちは同じだと思います。時間はかかるかもしれませんが、2つの組織が一丸となって地域貢献に取り組んでいくことで、給食の良さをアピールすることにつながり、さらには、自分たちの働く職場を守ることにもつながると考えています。
 そして、組合員だけではなく、子どもたちに「食」を提供するすべての労働者と力を合わせ、地域の方と連携をして子どもたちの成長にもっとも大事な「食」をさらに発展させるように取り組んでいくことが重要だと考えています。