【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第13分科会 自治体からはじまる地域教育へのチャレンジ

学校給食提供体制の充実に向けた取り組み


島根県本部/安来市職員労働組合

1. はじめに

 現在、全国で実施されている学校給食は、飢餓児童救済のための食事提供が根源になっています。その後、学校給食は教育としての重要性が認められ、1954年に「学校給食法」が制定されました。このことにより全国の児童生徒が学校給食を受けるに至り、学校教育における重要な教育活動となって半世紀が経過しようとしています。その後、学校給食の内容も歴史を重ねると共に、質や量の充実が図られ食生活の改善はもとより、児童生徒の体位の向上に貢献してきたところです。
 現在は、「飽食の時代」と言われるように、多種多様な食材が氾濫する食事環境の中で、児童生徒の健康面に変化が生じていることは社会的責任として避けることはできません。家庭や外食産業での偏った食事内容から来る栄養のアンバランスによる微量栄養素が不足し、肥満児童が増加したり、生活習慣病で悩んだり、アレルギーやアトピーの症状で困っている児童が増加傾向にあることは十分認識しなければなりません。
 これらの問題を個人の問題というだけでなく、社会全体の問題として捉え、抜本的な対策としての食育を推進し、国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育むことを目的として「食育基本法」が制定され、2005年7月15日から実施されています。特に、第20条においては、学校、保育所等における食育の推進が掲げられています。「学校給食法」についても、学校における食育の推進や、学校給食を活用した食に関する指導の充実を図ることを目的として改正され、2009年4月1日より施行されることになりました。
 また、国においては、「食育基本法」の規定に基づき設置された食育推進会議において、2006年3月31日に食育推進基本計画が決定されました。地方自治体においても食育推進会議の設置、食育推進基本計画の作成をするよう努めなければならないとしています。
 食育とは、生きる上での基本であり、健全な食生活を実践することができる人間を育てることでもあります。「食育基本法」の成立により、学校給食の持つ意味はますます重要となってきているといえます。

2. 安来市の学校給食を取り巻く状況

 安来市の学校給食は18施設(うち2施設は臨時職員のみ配置)を単独自校方式で運営しています。
 合併時に、給食未実施の中学校への提供方式や、各施設における人員配置の考え方など、刷り合わせておくべきだった事項が未調整のままであり、調理員(臨時職員含む)の配置については合併前の旧1市2町の体制を引き継ぐ形で配置されてきました。
 調理員の配置基準については、施設の状況・除去食の有無・幼稚園等への給食提供など単純に食数だけでは測れない要素もあり、安来市及び教育委員会としての基本構想がまとめられていないのが現状です。

3. 安心で安全な学校給食を提供し続けていくために

 現在、中学校給食の提供開始を検討する議論の中で、当然の如くセンターの建設が視野に入れられているところですが、コスト論を抜きにして考えれば、美味しくて安心で安全な給食を提供する方式は単独自校方式であることは疑いの余地がありません。
 また、命を育む食を提供する仕事だからこそ、正規が責任を持って担っていかなければならないと考え、人員確保を最終的な目標として取り組みを進めてきました。
 しかし、現業職場の置かれている近年の状況において、調理職員の退職があったからといって単純に新規採用を求めていくだけでは採用を勝ち取ることは容易ではありません。
 そこで、まずは人員確保に向けた土壌作りから着手することにしました。

(1) 食育推進基本計画の策定に向けた取り組みについて
 国においては、「食育基本法」の規定に基づいて設置された食育推進会議において、2006年3月31日に「食育推進基本計画」が策定されました。また、島根県においても、2006年9月に庁内に横断的な組織として「島根県食育・食の安全推進会議」を設置し、2007年2月には議員提案により「しまね食と農の県民条例」が制定され、2007年3月に「島根県食育推進計画」が策定されました。
 食育を国民運動として推進していくためには、全国各地においてその取り組みが進められることが必要であり、このことからも、国の「食育推進基本計画」の中では、「食育推進計画を作成、実施している都道府県及び市町村の割合」を2010年度までに、都道府県は100%、市町村は50%以上とすることを目標に掲げています。また、「島根県食育推進計画」の中でも、市町村においては、食育推進計画を策定し食育推進体制の整備を図ることとしています。
 安来市職員労働組合においては、給食の提供を通じて食育の推進をしていくための体制を検討することを目的とした給食提供体制検討委員会を設置し、検討を重ね、2009春闘時に給食提供体制検討委員会の独自要求として食育の推進をめざし、①食育基本法及び学校給食法の改正内容について研修を実施し周知を図ること。②食育推進会議を設置し、食育推進基本計画を作成すること。③学校給食法の改正に伴う規則の整備を速やかに行うこと。④食育の推進に向けて給食提供体制及び運営体制の充実を図ること。以上の4点を要求してきました。
 この結果、食育推進基本計画の作成に向けて安来市食育推進計画策定委員会を設置させることができ、2011年3月に『安来市食育推進計画』が策定されました。また、給食提供体制及び運営体制の充実に向けて継続的に労使で協議していくことも確認することができました。

(2) 適正な人員配置に向けた取り組みについて
 今後、人員要求していく際に、臨時職員のみの配置で給食を提供し続けている施設を残したままでは、正規の必要性を訴えていくことが困難であると考え、合併時に未整備であった調整事項の整理に着手しました。
 合併当時、教育委員会として全施設に正規を配置していく動きはあったものの、該当施設からの強い反対があったため配置を断念した経過があります。一度反対にあったためか、教育委員会として正規の配置に向けた積極的な動きもされなくなり現在に至っています。また、米飯給食時の臨時職員の加配についても旧安来地区のみであり、その必要性も含め配置について検討していく必要がありました。
 全施設に正規を配置していくためには事務折衝では該当施設からの強い反対があれば当局は同じことを繰り返すだけなので、より実行性を高めるために要求書を提出し交渉することにしました。そこで、2010現業・公企統一闘争において、『住民ニーズに即した給食提供体制の確立のため、学校給食職場の職場実態を把握し、人員を適切に配置すること』を要求してきました。その結果、臨時職員も含めた調理職員の各施設への配置を今後は労使で決めていくことになり、配置交渉を毎年行っていくことを確認することができました。

(3) 給食提供体制の充実に向けた配置交渉について
 合併以降、学校給食職場の人員配置については教育委員会が決めていたところですが、その配置人数についての明確な基準も無いため、合併前の体制を引き継いだままで人をそこに当てはめているだけの人事しかされていませんでした。しかし、それでは同じ安来市の中でどこの地域でも同じ質の給食を提供していくための体制としては不十分であり、改めて見直す必要がありました。
 そこで、2011年度の配置に向けた交渉から学校給食調理員全員で議論をしながら配置交渉を行っています。配置交渉は職員の総数を変えない範囲の中で各施設に配置していくことを前提に進められ、結果として正規が配置されていなかった3校のうち1校に正規を配置することができ、引き続き正規職員が未配置となる2校についても今後の正規職員配置に向けて労使で検討することを確認しています。米飯給食時の臨時職員の加配についてもより必要があるところに配置していくことができました。

(4) 学校給食職場の取り組みについて
 学校給食職場を守っていくためには、直営堅持を当局に訴えるだけの運動を続けるだけでは守ることができない難しい時代になってきました。これからの運動は、住民から必要とされる職場作りは当然のこととして、それを外部に発信していくことが最も重要となってきます。
 今後も、地域住民に愛される職場作りと地域住民を巻き込んだ取り組みを引き続き進めていきます。

① PR活動について
  学校給食を市民により良く理解してもらうために、色々なPR活動を継続してきました。
  例年、学校給食調理員全員で出展参加している「やすぎ刃物まつり」では、揚げパン販売に併せて「学校給食人気メニュー集」の配布や「学校給食の一日の作業の流れ」を展示するなどしてPR活動を行っています。
  安来市主催で開催されている「食育フェスティバル」、「農林業祭」、組合独自で開催した「学校給食フェア」では配布物や展示の他、学校給食で提供しているメニューの試食を行いました。「学校給食フェア」では、実物の給食や地元食材の展示、広報誌の配布等を行いました。当日行ったアンケートからは学校給食に対する関心、期待の高さが分かり今後も学校給食のPRを進めていき食育を推進していかなければならないと感じました。
② 地場野菜について
  安全で安心な新鮮野菜を生産者の畑からまっすぐ子供たちに届けるために、校区内の生産者グループと話し合いながら、地場野菜の調理に取り組んできました。今後も、地元で採れた野菜の美味しさを積極的に伝え、単独自校方式でしかできない『地域に開かれた給食』を展開していきます。
③ 広報活動の推進について
  学校給食職場の問題を市職労全体で共有し一丸となった取り組みをめざすために、他の組合員に対してもPRしていく必要があると考え、組合員向けの広報誌を市職労の定期大会などで配布してきました。現在は、広報部会を中心に誌面の充実を図り市民向けに広報誌を発行し、各種イベント等で配布しています。

4. おわりに

 正規が配置されていない残り2校についても、正規を配置していく考えがあることを教育委員会とも確認ができていますが、正規の絶対数が足りないためこれ以上の配置を進めていくためには新規採用が必要不可欠です。近年は退職者完全補充には至っていないものの新規採用を確保することが出来ていますが、近い将来、大量退職も想定されることから、人員確保闘争に向けた取り組みを今後さらに強化していきます。