【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第13分科会 自治体からはじまる地域教育へのチャレンジ

行政と地域で繋ごう環境の輪
ウミガメもかえる町・廃油回収取り組み報告

福岡県本部/岡垣町職員労働組合・現業公企評議会

はじめに

 岡垣町は北九州市と福岡市の中間に位置し、人口約32,000人のベッドタウンです。玄界灘に面し、ウミガメが産卵に来る自然に恵まれた町です。そのため環境保全にも積極的で「自然との共生」を目的にごみの収集等に前向きな姿勢で取り組んできました。
 私たち岡垣町現業評議会は、長年の組合運動の一環として、住民サービスの向上に繋がるためには何が必要なのかという視点での取り組みをめざし、議論を進めました。その中で、現業職場の活性化の取り組みの一つとして、各家庭から出る廃食油の回収を行い、その油を使って固形せっけんを作成し、住民に配布する、という資源循環を確立することができました。
 そして、岡垣町現業評議会では、行政職員としてこの豊かな故郷(ふるさと)の自然を守るため、また、給食調理員としての教育的観点から自然の大切さと給食への関心を高めるために、せっけん作りや廃油回収の取り組みを継続してきました。

1. これまでの経緯

 岡垣町給食調理員は、1980年まで合成洗剤を使用していました。その頃の調理員の手は、手荒れやあかぎれは当たり前だったと聞いていましたが、当時の先輩方が合成洗剤の有害性と環境問題について学習を重ね、まず粉せっけんの使用に踏み切りました。同時に、給食現場から出る廃油を使用して、リサイクルプリンせっけんを作成する取り組みも進めていきました。リサイクルプリンせっけん作成のきっかけは、隣町の調理員が「合成洗剤追放全国大会」に参加した会場で、天ぷらの廃油を利用した手作りプリンせっけんの作り方を聞いてきたのがきっかけでした。その後、教育的観点と行政職員としての立場からの取り組みとして、リサイクルプリンせっけんに5年の期間をかけて移行しました。
 その間、小学校の子どもたちにリサイクルの大切さや環境問題について学ぶ機会を作り、環境啓発や意識の向上にも努めてきました。
 リサイクルプリンせっけんの本格的な使用が始まり、せっけん作成用の機械を教育委員会の予算で購入することができました。その結果、今までの手作業を機械化したことで作業軽減となり、更なる取り組みとしてリサイクル固形せっけんの作成に取り組みました。
 せっけん工場の視察や研修会を行い、質の高いせっけん作りをめざして学習会を開催しました。また、町内公共施設5箇所での無料配布を開始しました。町主催のイベントにも積極的に参加し、そこでの環境啓発や手作りせっけんの無料配布を行いました。住民の方々には「油汚れの落ちが良い」「手荒れがない」と好評な意見を聞くことができました。
 同時に教育現場では、授業のゲストティーチャーとして児童に廃油のリサイクルの話をしたり、社会教育の一環として「せっけん作り教室」の講師を務め、せっけん作りを通して地域の方々と環境問題について考えました。
 リサイクル固形せっけんの配布も定着し、さらに一歩進んだ取り組みを組合員で協議し、せっけん作りには欠かせない廃油を家庭から回収してはどうかという未知の取り組みに辿り着きました。実施にあたり、廃油の回収量、回収方法、回収場所、回収時期等々、全く想像もつかない中、できる方策を探しながら論議を重ねてきました。当初は、小学生の家庭からの回収に限定することや、回収方法はキャップの閉まるペットボトルでの回収とし、場所と時期は、学期末に小学校と連携し、子どもたちが給食室へ直接持参することとしました。
 回収量が安定してきた時期から、取り組みを町全体に拡大することとし、回収時期等は、町の広報誌に掲載して住民に呼びかけました。各家庭から廃油を持参いただいた方には、廃油で作成した固形せっけんと交換するという「リサイクル」を確立するということで、私たちのめざす「環境の輪」を完成することとなりました。
 組合活動として当初は調理員だけで廃油回収を実施していましたが、地域住民のニーズと町が取り組む環境衛生推進、そして私たち現業評議会が取り組む環境政策が一致し、教育委員会の事業として認められることとなりました。2013年に町の政策事業として町内各公共施設、スーパーなどに廃油回収ボックスを設置して、現在では町全体で廃油リサイクルに取り組んでいます。

2. 取り組みの現状

 年3回町内5箇所の小学校において、回収期間は学期末終業日から3日間実施しています。町発行の広報誌やホームページで目的・日時・回収場所を住民全体に知らせています。当日持参された廃食油は、調理員が受け取り、回収された廃油で作成されたリサイクル固形せっけんと交換してリサイクルの意義を伝えています。
 回収量は、1回で最大約1,200リットルまで達したこともあります。リサイクル固形せっけんの作成に使用しきれなかった廃油は、廃油業者に引き取ってもらっています。引き取り業者については、業者工場の視察を行い、廃油がどのように処理され、リサイクルされているかを確認した上で選定しました。工場に渡した廃油は、不純物を取り除き再度精製され、印刷用のインクなどに再利用されています。
 2014年10月にも、地域の食進会の方から、食進会のイベントでぜひ岡垣のリサイクル固型せっけんを配布したいという、手作りせっけん提供の協力依頼がありました。そのため、2013年秋に作成した固型せっけんを乾燥させているので、2014年10月上旬に袋詰めを行い完成させます。
 先輩調理員の方々の想いを受け継ぎ、2014年で35年の取り組みとなっています。これまですべてが順調だったわけではありませんが、その都度、組合や当局と話し合い、今の段階で満足して終わるのではなく、さらなる発展を求め続けるという姿勢で今日に至っています。「合成洗剤追放」を前面に掲げた運動ではありませんが、リサイクルせっけんを作成し使用することで、人と自然に優しいせっけんとはどんなものなのか、人と自然に優しいせっけん濃度はどのくらいなのか、ということを少しでも多くの人たちと共有できればと思いますし、リサイクルせっけんの使用によって環境保全とゴミの減量に貢献できていると考えています。

3. 今後の課題

 町内全域からの廃油回収を始めて14年が経過しました。廃油が大量に出る給食現場からの回収は、確実にリサイクルされています。地域住民の方々からの回収量も回収場所の常設もプラスに働き、確実に回収量が増加しています。
 大人がリサイクル意識を持ち、行動する姿を見せることが岡垣町の将来を担う子どもたちにも伝わります。幼少期からのリサイクル意識の育成が今後の課題です。引き続き、各家庭からのリサイクル意識を高め、自治体と住民の方との橋渡しこそが、私たち現業職員が果たすことができる役割だと考えます。未来永劫、ウミガメもかえる故郷(ふるさと)を残すこと。未来の子どもたちのために私たち大人ができることを行政職員の一員として啓発を続け、住民ニーズに応じることのできる職場の1つとして、今後も地道に取り組んでいきたいと考えています。

【回収の実績】
 廃油回収の開始から14年目。2014年の夏で40回目の回収となりました。私たちの単組では、11年前の「自校直営を守るたたかい」で、残念ながら民間委託を止めることはできませんでした。しかしながら、わずか10人足らずとなった組合員数で、細々と今日まで継続して取り組んできたことに自信と誇りを抱いています。これまでの実績を一覧表にしています。

 

回収日

山田小

海老津小

吉木小

内浦小

戸切小

合 計

第1回

2001.7.26

30

25

45

0

0

100

第2回

2001.12.25

50

50

50

0

0

150

第3回

2002.3.28

32

6

20

7

0

65

第4回

2002.7.24

26

25

11

35

4.3

101.3

第5回

2002.12.26

60

57

39

0

0

156

第6回

2003.3.27

0

0

11

51

0

62

第7回

2003.7.22~24

0

0

40

0

0

40

第8回

2003.12.24、25

0

0

25

0

0

25

第9回

2004.4.5~7

0

0

0

0

0

0

第10回

2004.8.2~6

0

0

50

22

0

72

第11回

2004.12.27、28

27

20

40

30

0

117

第12回

2005.4.8、11

0

0

17

0.5

0

17.5

第13回

2005.8.1~5

0

0

50

7.3

0

57.3

第14回

2006.1.5、6

3

0

20

17

0

40

第15回

2006.3.22~24

0

0

57.3

10

0

67.3

第16回

2006.7.18~20

0

0

67.1

0

0

67.1

第17回

2006.12.20、21

0

0

51

0

0

51

第18回

2007.3.22、23

25

25

48

0

0

98

第19回

2007.7.19、20

18

1.6

50.5

6

1

77.1

第20回

2007.12.20~22

54

5.2

208.1

0

0.35

267.65

第21回

2008.3.21~24

9

11.5

10.4

6

5

41.9

第22回

2008.7.17、18

15

20

63.3

15

3

116.3

第23回

2008.12.22~24

60

20

33.5

1.8

10

125.3

第24回

2009.3.19、23

198

26.4

38

0

22

284.4

第25回

2009.7.16、17

83

13.3

27

50

13

186.3

第26回

2009.12.22~24

51

33.5

74.1

34

23

215.6

第27回

2010.3.23、24

13

10.6

17.3

0

1.5

42.4

第28回

2010.7.20、21

102

24.5

19.6

19.5

29.5

195.1

第29回

2010.12.22、24

260

233

233.05

46

44.5

816.55

第30回

2011.3.23、24

369

178.05

178.65

61.5

33.3

820.5

第31回

2011.7.19、20

208

133

160.4

25

23

549.4

第32回

2011.12.20~22

340

280

247.7

91.2

43

1,001.9

第33回

2012.3.21~23

188.5

154.8

154.8

36

15

549.1

第34回

2012.7.18~20

150

151.2

143

79.2

29.5

552.9

第35回

2012.12.

226

270

234

28

7.8

765.8

第36回

2013.3.19~21

206

297

264.5

4

25

796.5

第37回

2013.7.17~19

213

257.4

187.3

1.8

27.8

687.3

第38回

2013.12.

471.4

375.3

361

7.2

17

1,231.9

第39回

2014.3.

314

288

98.7

3.3

21.5

725.5

第40回

2014.7.16~18

296

267

303.5

20

44

930.5

*詳細が不明な時期もあります(単位=リットル)

【住民環境課による廃油回収実績】
 2013年度(平成25年度)より町の事業として町内各施設、スーパーなどに廃油回収ボックスを設置してリサイクルに取り組んでいます。回収実績一覧表です。

2013年度(平成25年度) 廃食油回収ボックス実績表(単位=リットル)

回収年月

東部公民館

中央公民館

西部公民館

イオン岡垣

合計量

H25年

4月

108 56 8 172

5月

144 138 10 292

6月

80 77 8 165

7月

109 86 19 214

8月

58 59 16 133

9月

46 68 0 114

10月

118 80 27 225

11月

56 46 0 102

12月

137 107 25 269

H26年

1月

90 88 0 11 189

2月

59 60 0 141 260

3月

63 44 46 125 283

合 計

 

1,068 909 159 277 2,418