【レポート】

第39回静岡自治研集会
第1分科会 自治研入門 来たれ、地域の新たな主役

 コロナによる長引く自粛ムードの中、自治研部として少しでも津和野町に貢献できることはないかと考え、活動しています。2020年は職員の福利厚生に繋がり、なおかつ町内の飲食業界に役立つことができると思い、厚生部と協力して"お弁当の日"を設けました。2021年は、保育士部会、調理師部会と協力して、家で過ごす時間が増えた子育て世帯に対し、楽しく子育てができるような活動はできないかと考え、計画しています。



コロナに負けるな
―― 厚生部・保育士部会・調理師部会と連携して ――

島根県本部/津和野町職員組合 石村 直子

1. はじめに

 現在、津和野町職員における組合組織は、一般職からなる津和野町職員組合と、学校・保育園給食調理師、公用車運転手、上下水道業務に携わる職員、公設民営化された病院の運営に携わる職員、さらには保育士、調理師等からなる津和野町公企現業職員労働組合で構成されています。今回は、津和野町職員組合及び津和野町公企現業職員労働組合の自治研部、厚生部、保育士部会、調理師部会が中心となって取り組んだ活動を二つ報告します。

2. お弁当配布活動について

(1) 活動に至った経緯
 2020年、津和野町職員組合の厚生部と協力して行ったお弁当配布活動について紹介します。
 活動を行った当時は、全国的な新型コロナウイルスの蔓延や、それに伴う緊急事態宣言など、日本全国において強い自粛ムードがあり、通常の会食や旅行はもちろんのこと、津和野町職員組合として例年行っていたメーデーでの交流会や厚生旅行などの福利厚生に関する活動、また、人を集めたイベントなどの自治研活動を行うことが極めて難しい状況でありました。このような状況のなか、何か少しでもできる活動はないかと考え思いついたのが、この月一回のお弁当配布活動でした。
 この活動を思いつくきっかけとなったのは、組合活動予算の使途でした。例年、厚生旅行や学習会、交流会などで使用していた予算が、この年はコロナ禍の影響もあり全く使用することが出来ず、組合員に対する福利厚生の観点からも、何かこのコロナ禍でも行える代替的な活動がないかと考え始めたのがきっかけです。当初は、旅行や会食の代わりとして、少人数ごとにグループを分けた町内宿泊旅行や、同様に少人数ごとにグループを分けた会食などが候補にあがりましたが、感染防止という観点や、外部からの視線などを考えると、実現は難しいのではないかということになりました。そのように意見を出し合う中で、あくまで同じ職場だけで完結し、外部と接触しない為感染防止にもつながり、なおかつ地域経済にも貢献できるとして、昼食をお弁当という形で配布してはどうだろうという意見が出ました。実際に、町内の経済活動推進キャンペーンも、テイクアウトなどの感染防止策を考慮したものにシフトしてきている時期でもあった為、今の流れに丁度良い案だとして、この活動を行う事を決めました。

(2) 活動内容
 活動の具体的な内容としては、毎月15日のお昼に、町内の飲食店に注文したお弁当を組合員に配布するというシンプルなものでした。毎回、違った飲食店に満遍なく注文することで、町内業者に対し広く地域経済を支える取り組みが行え、またその他にも、お弁当の内容を毎月変え、様々な美味しい料理を食べることで、コロナ禍で蓄積された組合員のストレスを少しでも軽減するための福利厚生の取り組みが同時に行えるのではと考えました。
 さて、活動を行うにあたり、まず、通常の厚生部員および自治研部員の中から、お弁当配布チームを結成しました。現在の津和野町は、旧日原町と旧津和野町が合併して出来たという事もあり、二つの庁舎が離れたところに位置しているため、毎月全員で集まって内容の検討を行う事は、感染対策の観点からもあまりよくないという事になりました。そこで、まず第一回の会議で、活動の大まかな方向性(注文先の飲食業者が重複しない事、一回の注文はおおむね1,000円程度、など)のみを確認した後は、それぞれの庁舎ごとにチームを配置し、細かい内容については毎月各チームの裁量で活動することとしました。各チームの裁量でそれぞれ案を出し合った結果、一方のチームでは地域に飲食店が多いこともあり、毎回複数の業者から数種類のお弁当を注文し、組合員各々が好きな料理をチョイスできる仕組みを作ったり、また一方のチームでは、お弁当だけでなく、洋菓子屋やスーパーなどで注文したお菓子やデザートをセットで配布したりと、地域ごとの特色を生かしたお弁当選びができ、また、町内の飲食店に対して偏りの少ない活動ができたと思います。
 また、この活動を行うにあたり、必ずこうしようと決めたことが一点ありました。それは「お弁当を受け取る際に、必ずその場で現金による一括支払いを行う」というものです。コロナ禍の影響による客足の低迷など、各飲食店で売り上げが減少している中、地域で利用できる食事券の販売や、給付金や支援金など、行政としても様々な取り組みで地域経済を支援していましたが、実際に飲食店の方にお話を伺ってみると、「すぐに現金化できないため、資金繰りが厳しい」や「できれば食事券よりも現金でお支払いしてもらった方が良い」といった声をよく耳にしました。手続きの関係上、どうしても現金化までのタイムラグが発生してしまい、それ自体は仕方のない事ではあるのですが、実際にそういった声を聞いていた為、少しでも町内飲食店に負担の少ない方法として、通常の請求書による伝票払いではなく、現金によるその場での一括払いという方法を選択しました。これにより、一部の方から「いつもこうしてくれればいいのに(笑)」といったお声も頂き、わずかではありますが、地域経済に貢献できたのではないかと感じました。

(3) 反省と課題
 活動を終えてみて、組合員からは、美味しいお弁当が食べられてよかった、等の肯定的な意見から、庁舎ごとのお弁当の内容に差異があり公平性に欠けたなどの声もあり、当初の活動の意義を全うできたと感じると同時に、一部反省点なども確認出来ました。また、注文を受けて頂いた町内業者の方からも、定期的にこういった活動を行ってほしいといったお声も頂き、コロナ禍という、平常時と比べて大きな制限が掛かった状態で行った活動としては、十分に意義のあるものになったのではないかと感じました。
 一方で、課題として考えられることもいくつか残りました。それは、この活動は現時点では組合員と町内飲食店のみを対象としたものでしかなく、またあくまで、通常の自治研活動や福利厚生活動の代替的な活動でしかない為、あまり拡張性を持った活動ではないという点や、自治研活動で最も大切だと思っている「地域や住民に触れ、直接声を聞く」という事があまり行えていなかったという点です。例えば、実際にお店に出向き、今、何に一番困っているかを聞き取りし、本当にお店の方が求めているものを、自治研部と協力して実現するといったことや、感染対策には気を配ったうえで、組合員や飲食店だけでなく、その他の地域住民も巻き込んで大きくなっていくような活動が、本当は必要なのではないかと感じています。具体的な案については今のところありませんが、皆で話し合いアイデアを出し合う事も、ひとつの自治研活動になるのではないでしょうか。


3. 保育士部会・調理師部会との活動について

(1) 活動に至った経緯
 津和野町は、旧津和野町と旧日原町の2町が合併し、2005年9月に誕生しました。合併時における町内の保育園数は公立保育園が5園、民間保育園が1園でした。しかし、園舎の老朽化などが原因で民営化・民間委託が進み、2021年現在では公立保育園が2園、民間保育園が5園となっています。そんな状況の中、いつか自分たちの職場がなくなってしまうのではないだろうか……と不安を抱えている、という保育士たちの声を聞きました。
 そこで、自治研部は、「公立保育園の良さを町民にアピールし、自分たちの職場を守っていきたい」という保育士部会の思いに賛同し、調理師部会にも協力してもらい、一緒に「保育イベント」を企画することとなりました。2018年に保育イベントを開催し、町内の親子に楽しんでもらうことができました。内容は以下の通りです。
① 各保育園が用意した手作りおもちゃコーナーであそぶ。
② 保育士による人形劇を鑑賞する。
③ 調理師部会が用意した軽食を食べる。
 当日はとても温かい雰囲気で、親子の楽しそうな表情が多く見られる会となりました。参加した保護者からも好評で、「今回のようなイベントにまた参加したい」「お弁当がとても美味しかった」「子どもとゆったり遊べた」などの感想がありました。主催した保育士側の感想でも、大変さや反省点はあったものの、「親子の楽しそうな姿が見られて良かった」「公立保育園の良いアピールになったと思う」「またこのようなイベントをしたい」など前向きな意見が多くありました。好評だった保育イベントを1回で終わらすのはもったいない、続けていきたい、という思いはあったものの、コロナウイルス感染症の影響で前回のような保育イベントを行うことは難しい状況になりました。そこで、こんな状況の中でも町内の親子に元気を与えられることはないだろうか……と、保育士部会、調理師部会と協力して考えることにしました。

(2) 活動内容
 まずは、保育園に子どもを預けている保護者さんに、コロナの影響で休みの日の過ごし方など、変化した点や悩みなどがないか聞いてみました。「あまり以前と変化はない」「家で遊べる工夫をしている」「親子でクッキングをする機会が増えた」という声があった反面、「自由に出掛けられなくなってストレスを感じる」「メディアの時間が増えた」「外食が減った分、自炊が増え、献立に悩む」などという声もありました。そういった意見を参考に、どういった活動をしていけば良いか話し合いを行いました。話し合いで出た意見は以下の通りです。
① 手作りおもちゃのキットを用意して、町内の子どもたちに配布する。
② 紙面で手作りおもちゃや、親子でできるクッキングを紹介する。作り方を撮影し、動画で流す。
③ メディアに関わる時間は同じにしても、パネルシアター、人形劇などをして町のケーブルテレビで放送してもらい、質の良い番組を観てもらう。
④ 町内在住の音楽家に依頼し、音楽活動をプロデュースし、町立保育園で実施する。
⑤ 飲食は伴わず、人形劇イベントを開催。
⑥ 土曜日に公立保育園で、人形劇を披露したり、手作りおやつを提供する。
⑦ 身近で遊べるスポットを取材し、紹介する。
⑧ 園で人気の給食やおやつレシピの紹介をする。

 いろいろな意見の中、2021年の活動として行うことは以下の通りです。

【ねらい】
① コロナ禍で、家で過ごす時間が増えたので、身近な物を使った手作りおもちゃを提供し、親子で楽しく遊べる時間をつくってもらう。
② 園で人気の給食やおやつのレシピを紹介し、家での献立や親子クッキングの参考にしてもらう。
③ 私たち公立保育園の良さをアピールする。

【活動内容】
① 牛乳パックを使った人形を作り、町内の園児に配布して家で遊んでもらう。いろんなバージョンの人形が作れるので、作り方の紹介もする。(保育士部会中心)
② 園で人気の給食やおやつレシピをいくつか紙面で紹介する。(調理師部会中心)

 どちらの活動も8月ごろに配布を予定しています。その後、アンケートをとったりして保護者の意見をしっかり聞き、今後の活動に活かしていけたら良いと考えています。

(3) 課 題
 コロナ禍で自粛も多く、ストレスを感じやすい日々が続いていますが、子どもたちが伸び伸びと過ごせるように、また保護者が子どもたちとの触れ合いを楽しめる時間が少しでも多くなるように支援をしていきたいと思います。また、自分たちの職場を守る為に、どんなことをしていけば良いのか常日ごろから考え、行動していきたいと思います。


4. その他

 紹介した2つの活動以外にも、2021年度の活動として、コロナ禍でも実施でき、町民の皆さんの役に立てることはないだろうか……と部員で話し合い、新たに始めた活動があります。
 1つ目は、町内の小中学校のアルミ缶回収に協力することです。小中学校では、アルミ缶回収の収益を体育祭等の活動資金にしたり、学校環境の整備等に充てています。役場で飲んだ空き缶を洗って乾かし、ある程度集まったら学校に持って行くようにしています。
 2つ目は、町の社会福祉協議会が行っている「緊急食糧支援事業」に協力することにしました。これは、家庭で眠っている食品を寄贈し、生活に困窮している方へ無償で提供するボランティアです。早速第1回目を計画し、34点の食品を寄贈しました。今後も定期的に行っていく予定です。

5. 終わりに

 発生した時点では、一年もすれば収束するだろうと考えていた新型コロナウイルスの影響も、既に一年以上が経過し、未だ収束する目途が立っていない状態です。このような状況下において、今まで行ってきた活動を継続することが難しい中、「今できること」や、「今だからこそできること」に着目し、いかにして自治研活動を継続していくか、また、職場で働く私たちや、地域の住民の方々にとって、より良い環境を作っていけるかが、今後の大きな課題だと考えています。つらい時代だと嘆くのではなく、つらい時代だからこそ、より良い方向をめざしていこうという気持ちで、今後も自治研活動を続けていきたいと思います。