【論文】

第39回静岡自治研集会
第3分科会 高齢者に優しい各自治体・地域の取り組み

 少子高齢化が進む中、少子化対策のみ、高齢者対策のみでは解決しきれない課題が山積している状況です。そして、市民の日常生活の広域化・多様化に伴い、一つの自治体内だけでは解決できず、広域での対応の必要性が高かったり効果的な場合も多くあります。そこで、RPA、IoT等のデジタル技術も利活用し、広域で効率的・効果的に進めた具体的な2つの事例を紹介し、今後さらなる改善・効果拡大につながることをめざします。



金沢市認知症高齢者地域見守りネットワーク事業
―― デジタル技術と広域連携の活用 ――

石川県本部/金沢市役所職員組合 初道 正巳

1. はじめに

 金沢市は、2022年3月に県政・市政の長が交代し、新県知事・新市長のもと、県政では「誰一人取り残さない温もりのある社会づくり」を4本柱のひとつに、市政では、多様な意見を集約して市政を進める「親和力(ハーモニー)で奏でる金沢」をテーマに掲げ、その具現化に向け、「市民の安全安心のための『親和力』」、「市民のくらしを守る『親和力』」、「子どもたちへつなげる『親和力』」、「文化都市金沢としての『親和力』」、「まちなかの再生に向けた『親和力』」の5つの柱により取り組みを進めています。例えば「市民の安全安心のための『親和力』」では、安心して暮らせる福祉社会の形成に向け、災害時に自力避難が難しい高齢者や障害者ら一人一人の避難支援を行う者や避難先等を記載した「個別避難計画」を、介護支援専門員ら福祉専門職が作成するモデル事業の実施により、災害時に備えて対応力を高める取り組みを進めています。
 今回は、自身が関わってきた、保育所の待機児童未然防止に向けた取り組みと、待機児童対策を進める中で直面した、認知症高齢者家族を支える取り組みについて紹介したいと思います。この二つの取り組みには関連がないようにも思われますが、取り組みの手法に、デジタル技術の活用と広域連携の活用の面において共通する部分があるのです。

2. 金沢市の待機児童未然防止に向けた取り組み

(1) 待機児童未然防止対策の必要性
 私は2016年度に異動で福祉局こども政策推進課の利用支援係長に就きました。当時は、『保育園落ちた日本死ね』の匿名ブログの投稿直後であったことからも分かるように、全国的に待機児童問題が深刻な時期でした。この問題は、大都市圏のみの問題ではなく、中核市の金沢市においても喫緊の課題として取り組む必要がありました。
 金沢市は、国の定義での待機児童はゼロの状況でしたが、4月利用開始の一斉申込における利用調整の結果、入所先が決まらず再調整となる児童数が年々増加している状況が続いており、第一希望の自宅近くの保育園には入所できず、保護者の勤務地や通勤経路の保育園を利用してもらうという世帯が多くありました。私自身の娘が1歳のタイミングで近所の保育園に当然の様に入所ができていた2008年当時とは、全く状況が変わっていました。2015年度からの5年間の金沢市子ども・子育て事業計画では、保育所の利用者数は年々増加すると見込んでいたことから、その保育必要量に対応し、待機児童を未然に防止するためには、様々な角度からの対策を実施する必要がありました。
 こども政策推進課は、幼児教育保育の無償化対応等もあり、保育幼稚園課に名称変更し幼稚園の無償化等も担当しましたが、保育需要の多いエリアに2つの保育園を新設した他、施設の増改築や、保育士の確保、利用調整方法の改善等さまざまな施策で待機児童未然防止に全力を投入した5年間でした。

(2) 出生児童数の減と保育利用率の上昇
 全国的な少子化は、金沢市においても同様であり、毎年の出生児童数は高止まりから、少しずつ減少する傾向にありました。一方で、2015年4月の、子ども・子育て支援新制度開始に伴い、保育を必要とするすべての家庭が利用できる支援をめざし、就労世帯のほか、保護者が求職活動中の場合や、下の子の育児休業中の場合も上の子が継続入所できるようになったことに加え、子を保育所に預けて働く世帯の割合が毎年上昇していました。これは、企業の理解や努力の結果、多様で柔軟な働き方が進み、ワークライフバランスが確保されてきたこと等により、女性が働きやすい環境、職場復帰しやすい環境が充実してきたことが背景にあると考えられます。
 結果として、出生児童数が減少する一方で、子を保育所に預ける保育利用率が上昇し、保育所を利用する子どもの数、保育需要が増加し続ける状況でありました。

(3) 保育需要の増と保育利用の低年齢化
 保育所を利用するには、保育事由(保育の必要性)が必要ですが、保育事由には、就労、求職活動、妊娠・出産、育児休業取得中の継続利用、保護者の疾病・障害、介護・看護、就学等があります。以前は、2歳児頃から保育園に入所することが多かったのですが、近年は1歳児クラスや0歳児クラスからの入所が増えています。保育所利用の仕組みとしては、まず在籍児童が継続利用し、次に定員に余裕のある範囲で新規入所児童が決定します。全国的に待機児童問題が深刻化する中、2歳児の段階で希望する保育所に新規入所できないのではないかとの懸念があるため、育児休業を早めに切り上げ、0歳児クラスや1歳児クラスから保育所に入所し、仕事に復帰する世帯が増加傾向にあります。加えて、介護・看護等の事由で保育所を利用する世帯も多く見受けられる状況です。
 次ページに示す資料は、金沢市内の児童が、どこで日中を過ごしているのかを年齢毎に割合を示した資料です。上段の資料は『2018年5月1日現在』の状況、下段の資料は『2022年4月1日現在』の状況です。資料の白色の部分は、保育所・認定こども園、幼稚園に在籍せず、家庭で保育を受けている世帯の割合を示しています。
 2018年は、1歳児は55.4%が、2歳児は63.1%が保育所・認定こども園に入所しているのに対し、2022年は、1歳児は62.7%が、2歳児は71.5%が保育所・認定こども園に入所しています。1歳児も2歳児も、各年齢に占める保育所等の入所割合が上昇している状況で、毎年保育所を利用する世帯の割合が増加し、年々低年齢化が進んでいることが数字でもわかります。なお、保育所は、年度途中での入所も多いことから、4月以降もどんどん入所児童数・割合が増加していき、1歳児クラスも年度途中に70%に到達します。
 この傾向は小学生も同様で、2018年は、小学1年生は44.8%が、小学2年生は39.0%が放課後児童クラブを利用しているのに対し、2022年は、小学1年生は48.3%が、小学2年生は43.1%が放課後児童クラブを利用しています。こちらも、両親が就労の世帯、祖父母と同居をしていない等、子の保育ができる保護者が日中不在の世帯が多く、放課後児童クラブも待機児童対策が求められている状況であることを表しています。

(4) 利用調整結果発送時期短縮に向けたAIOCR・RPAの活用
 金沢市の場合は、翌年4月入所の申込は、例年10月の1カ月間で1次申込を受け付け、その結果を1月末に発送し、1次申込で入所先が決定しなかった場合等は、2月上旬に2次申込を受け付け、その結果を2月末に発送をしてきました。しかし、保護者自身にとっても、保護者が勤務する職場としても、4月から勤務可能となるのかどうかを、より早く確定したいとの声が、以前から多数寄せられていました。
 以前から多く要望があったにもかかわらず、申込受付から結果発送までに時間がかかる事には、次のような理由がありました。金沢市の場合、約130ある保育園の中から入所を希望する保育園を2施設選択し、保護者は申込書を第1希望の保育園に提出していただきます。受付期間終了後に、各保育園から市役所に約2,000人の申込書一式が届き、その後、記載内容のチェックや保育事由の確認等を経て、申請内容や世帯の状況等を職員が手作業でシステムに個別入力する必要がありました。実は、この入力作業にとても多くの時間を費やしていました。
 そこで、2019年に、手書き申請書を高精度にデジタル化可能なAIOCRの技術と、今ではよく耳にするようになったRPAの技術を導入することとしました。RPAは、これまで職員が、他の業務と並行しながら手作業でシステムに入力していた作業を、疲労を感じないロボットが朝から夜まで、場合によっては土日も自動で入力を続けるのです。このように、申請書の読み取りから、システムへの入力までの作業をデジタル技術の活用により、大幅に時間短縮と職員負担の軽減を実現することにつながりました。
 その結果、1次申込の結果を1月上旬に、2次申込の結果を2月上旬に発送するまでに短縮することが可能となり、保護者からも企業からも、そして保育園からも高い評価の声を多くいただきました。この保育園側からの高評価は、うれしい誤算でした。実は保育園側としても、早く1次、2次申込の結果が出ることで、次年度のクラス編成に向けた準備に、早期に取りかかれる他、他の保護者からの追加入所の相談にも対応が可能となるという効果もあったのです。結果として、待機児童未然防止の面でも効果があったのです。AIOCR・RPAの活用により、市民と企業の利便性が大きく向上することを身をもって実感した具体例です。

【児童の居場所(2018年5月1日現在)】



【児童の居場所(2022年4月1日現在)】

(5) 保育士確保に向けた広域連携の活用
 1人の保育士が保育できる子の人数は、0歳児クラスであれば3人、1歳児クラスであれば5人等のように保育士配置基準があります。そのため、保育所の定員や面積に余裕があっても、保育士の数が足りなければ、児童を受け入れることができません。一方で、全国的に保育士不足が叫ばれる中、産休・育休取得中の保育士も多く存在し、その方々も自分のお子さんの保育所等の預け先が決まらなければ育休から復帰できませんし、保育園の方も、自分の園の保育士が育休から復帰できる確約がないと、入所申込のあった児童を、保育士確保ができず受け入れることができないという、負の連鎖が生じます。
 これを解消するために、保護者が保育士、幼稚園教諭として金沢市内の保育所・認定こども園に勤務する場合を、子の保育所優先入所の対象に加えました。この制度導入を発表した当初は、「特定職種の優遇」ではないかと、他の職種の保護者から苦情もありました。この苦情に対しては、育休からの復帰や、保育士として働き始めようとする1人の保育士の子を優先入所させることで、1歳児クラスであれば5人の受け入れ枠拡大につながることになり、広い目で見れば、みなさんにもメリットがある制度なのだと説明し、納得をしてもらっていました。
 結果、この保育士の子の優先入所制度導入により金沢市内の保育園の受け入れ枠拡大に一定の効果がありました。が、まだ足りませんでした。実は、金沢市に住民登録がある保護者は、金沢市の保育園に預けますが、隣の市町に住民登録がある保護者は、その市町の保育園に預けることが原則なのです。そのため、たとえば、隣接する白山市に住民登録があり、金沢市内の保育園に勤務する保育士の場合、住民登録のある白山市の保育園に自分の子どもの入所を申し込み、入所先が見つからなければ、勤務する金沢市の保育所に保育士として復帰することができないという問題が残りました。当然、白山市内の保育園の入所に関しては、白山市の制度で入所先を調整することになるからです。
 そこで、石川中央都市圏の構成市町(4市2町)の保育所担当課に順番に相談に行き、4市2町が協力をして、足並みをそろえて保育士の子の優先入所を実施できないか提案をしました。当初は、そもそも保育士の子の優先入所の制度がないことや、他市に勤務する保育士の子を優先入所の対象にしても、自市の保育園の受け入れ枠拡大にはつながらないという理由で、賛同が得られない市町もありました。しかし、環状道路網も整備され、勤務地や生活圏が広域化している現状と、金沢市単独での実施にとどまらず4市2町で足並みをそろえることで大幅に効果が増し、4市2町全体の待機児童発生の未然防止につながるのだということを粘り強く説明することで、最終的には全市の了承を得ることができました。結果的に、石川中央都市圏全域で保育士の職場復帰につながり、石川中央都市圏全域で子の受け入れ枠の拡大につながりました。広域連携の必要性と大きな効果を身をもって実感した具体例です。
※ 石川中央都市圏の構成市町(4市2町):金沢市、白山市、かほく市、野々市市、津幡町、内灘町

3. 金沢市認知症高齢者地域見守りネットワーク事業

 認知症高齢者地域見守りネットワーク事業は、行方不明となった認知症患者を、IoT(モノのインターネット)を活用して捜す事業です。この地域見守りネットワーク事業では、認知症の人に無線通信の機能を備えたタグを着用してもらい、街中に設置した感知器や、スマートフォンに専用アプリをダウンロードした人に近づくと位置情報が記録され、家族に居場所を伝える仕組みです。2019年2月に金沢市内で運用を始め、2022年4月1日現在、みまもりタグを利用する認知症患者は31人、アプリをダウンロードしたボランティアは1,043人で、設置済みの感知器は274基に上ります。見守りネットワークで発見に至った事例は、これまでに何件もあります。
 このネットワーク事業は、2020年8月の石川中央都市圏首長会議で金沢市長が中央都市圏での運用拡大を提案し、5市町側に前向きに検討していただき、2021年度、運用エリアを石川中央都市圏(金沢市、白山市、野々市市、かほく市、津幡町、内灘町)の4市2町に拡大し、圏内一体となった認知症患者の見守り体制を構築しています。この件は、2020年12月定例月議会でも取り上げられました。当時の金沢市長の発言のとおり、「認知症の方が『自分は金沢市民だから隣の市町に行かない』などということはない」はずであり、6市町で協力して運用していくことで、効果が大幅に高まると期待されています。
 厚生労働省の研究や推計を当てはめると、本市における認知症の方の数は2万人を超えると推計され、2025年には、全国で65歳以上の約20%以上、本市では約2万5,000人と推計されるなど、認知症の方に対する対策の強化が求められています。石川中央都市圏での共同運用により捜索範囲を拡大するなど、今後とも、認知症の方とその家族を支えるため、認知症サポーター養成など、認知症への理解の普及、啓発、認知症初期集中支援チームの活動による早期発見、対応、認知症カフェの充実による地域支援体制の強化など、多方面に施策を推進していく必要があると考えられます。

(1) 事業の目的と効果
① 利用者
 在宅で生活をしている認知症高齢者等のご家族に、IoTを活用した見守りシステムを利用していただくことで、認知症の方が安心して外出できる環境を整備し、ご家族の負担を軽減します。
② ボランティア
 認知症の方が住み慣れた地域で安心して生活できるよう、認知症の方を地域ぐるみで見守るネットワークづくりを進めています。スマートフォンまたはタブレットをお持ちの方ならどなたでもボランティアになれます。

(2) 対象者
 徘徊行動のおそれのある以下の方
① 65歳以上の在宅の方
② 40歳以上65歳未満の在宅の方で、認知症と診断されている方

(3) 利用できる方
 対象者のご家族(親族等)で、対象者と同居している方
① スマートフォン等で専用アプリケーションのダウンロードや、メールの受信が可能であることが必要
② 『みつけてネット(※)』に登録していただくことが必要
※ みつけてネットとは
 行方不明になる可能性のある方の名前や特徴、写真などの情報を、ご家族や本人の同意を得て、金沢市地域包括支援センターにあらかじめ登録しておき、早期発見に役立てる事業です。事前に登録しておくことで、速やかに捜索が開始され、発見及び保護された時の身元確認が早くなるとともに、家族にとっても安心に繋がるなどのメリットがあります。

(4) サービスの内容
① 対象者の外出通知
 自宅に設置した感知器と対象者のみまもりタグが離れると、その情報が利用者(ご家族)のスマートフォン等に通知されるため、対象者が外出したことにすぐ気づくことができます。
② 対象者の位置履歴の確認
 ボランティアの方のスマートフォン等や建物などに設置された感知器と接近することで、対象者の位置情報をキャッチし、位置履歴が確認できます。

(5) 利用の流れ

① サービス利用を希望する方は、対象者がお住まいの地区を担当する地域包括支援センターへ申請します。
 (その際、みつけてネット未登録の方は、登録も同時に行っていただきます。)
② 市が利用を決定し、委託事業者から利用者(ご家族)へ設置の日時等の連絡が入ります。
③ 利用決定から概ね2週間で、委託事業者が対象者の自宅を訪問し、感知器の設置や専用アプリケーションのダウンロードその他の設定等を行います。
④ タグを持った対象者が行方不明になった場合に、利用者(ご家族)は、ボランティアの方に協力依頼を行います。
 (ボランティアの方へは、個人情報は提供しません。)
⑤ ボランティアの方のスマートフォン等で感知した対象者の位置情報は、サーバーに蓄積されるので、利用者(ご家族)は、位置履歴を検索することで、対象者のおおよその居場所を特定することができます。リアルタイムでの位置情報を表示することは難しいため、位置情報の履歴から現在位置を推測することが必要です。

(6) 費 用
① みまもりタグ購入費       2,420円(税込)
② 見守りシステム利用料(月額)  300円(利用者(ご家族)が生活保護世帯の場合は無料)

(7) 使用機器
① みまもりタグ

 Bluetooth®無線技術を利用した、ボタン電池で約1年間の動作が可能な物で、充電の必要がなく、特別な操作も不要で小型軽量な端末です。  
 認知症高齢者等に携帯してもらいますが、高齢者が持ち歩いても負担とならないように、小型で軽量なタグとなっています。携帯方法は、杖やキーホルダーに取り付ける等の他、普段持ち歩くカバンに入れたり、靴の中に入れて持ち歩くことができる程のサイズと重さのため様々な方法があります。
② 感知器

 みまもりタグと離れたことを利用者に通知し、外出を知らせます。認知症の家族が、今現在自宅にいるのか、外出をしているのかがわかり、安心です。
 また、みまもりタグと接近した際、感知器の位置情報をシステムのサーバーに送ります。みまもりタグは、GPS機能を有していませんが、みまもりタグが発するBluetoothの電波を街中に設置してある感知器で捉えて、位置情報の履歴を確認します。
③ みまもりタグアプリ

 みまもりタグの位置履歴をスマートフォン等で確認したり、ボランティアに捜索協力依頼を行うためには、専用アプリ「みまもりタグアプリ」のインストールが必要です。みまもりタグは、GPS機能を有していませんが、みまもりタグが発するBluetoothの電波を、専用アプリをインストールしたスマホが捉えて、位置情報の履歴を確認します。

(8) ボランティアの流れ

 行方不明者が発生した場合に、ボランティアの方に協力依頼のメールが届きますので、専用アプリをインストールしたスマートフォン等のGPS機能(位置情報)とBluetooth機能をONにすることで、そのスマートフォン等が行方不明者の持つタグを感知する感知器の役割をはたし、行方不明者の早期発見の手がかりとなります。
① 協力依頼のメールを受信。
② GPSとBluetoothをONにする。
③ ボランティアの方がタグを持った行方不明者と接近。
④ 行方不明者の位置情報をキャッチ。
⑤ 行方不明者のご家族の方が位置情報履歴を確認。
⑥ ご家族の方が位置履歴情報をもとに行方不明者を捜索し保護。
※ 行方不明者が発見された場合は、捜索終了のメールが届きます。

 ※ ボランティアの方のスマートフォンから送信する位置情報は匿名なので、ボランティアの方の個人情報が知られる心配はありません。
 ※ 行方不明者の個人情報についても、ボランティアの方には配信されません。
 ※ ボランティアの方に積極的に捜索を依頼するものではありません。
 ※ GPS機能とBluetooth機能を常時ONにしておくと、電池の消費が早くなります。

(9) 運用エリアの広域化
 認知症の方でも、足腰が元気な方も多く、徒歩や自転車、電車等で遠くまで移動することも多いです。そこで、先述した通り、2021年度、運用エリアを石川中央都市圏(金沢市、白山市、野々市市、かほく市、津幡町、内灘町)の4市2町に拡大し、圏内一体となった認知症患者の見守り体制を構築しました。
 認知症高齢者の中には、スマートフォンや携帯電話を携帯しない方もいて、探す手がかりがなく困っている家族も多い。特にそのような方に、みまもりタグは有用な仕組みですが、これの普及を推進している自治体に住んでいないと効果は低い。みまもりタグは、GPS機能を有しておらず、みまもりタグが発するBluetoothの電波を専用アプリをインストールしたスマホや街中に設置してある感知器で捉えて、位置情報の履歴を確認する仕組みで、リアルタイムでの位置情報を表示することは難しく、位置情報の履歴から現在位置を推測することが必要です。そのため、街中に専用アプリを入れたボランティアのスマホや、みまもりタグの感知器がどれほど多く、広く存在するのかがとても重要となってきます。みまもりタグアプリを利用している人が、行動範囲の地域に多ければ、行方不明の高齢者を探す大きな武器となります。

【認知症高齢者地域見守りネットワーク事業の広域運用状況 2022年4月1日現在】
 みまもりタグを利用する認知症患者は31人、アプリをダウンロードしたボランティアは1,043人で、設置済みの感知器は274基に上ります。

4. おわりに

 認知症の親の介護のために、お子さんの保育所入所の相談に来庁した保護者に対し、入所先の調整や案内をする中で、次のような発言がありました。「認知症の親は、少し目を離すと一人で外出をしてしまう。夫は仕事であり、自身は子どもの面倒だけで精一杯であるのに、毎日気を休める暇がないんです。」ちょうど、当時の課長から、前所属課で始めた認知症高齢者見守りタグの制度を聞いたところだったので、これを紹介すると、是非登録したいとのことでした。その方自身も、認知症の親族がいるにもかかわらず、制度の存在を初めて聞いたそうです。
 今後、少しでも認知度を向上させ、一人でも多くのボランティアにダウンロードしていただけるよう、機会を探して周知をして行きたい。行動範囲が広範囲化していることから、観光都市金沢としては、県外からの誘客も多い利点を活かし、県外の方にも是非登録していただき、金沢・石川に旅行の際に、もし通知が届いた際には、すぐにアプリ機能をオンにしていただき、一刻も早い発見にご協力をいただきたいと思いますし、今後、全国に広がることを期待します。
 高齢者支援のみならず、子育て世帯の支援も併せて、一体的に、広域的に行い、地域全体で支えていくことが求められていると考えます。自治体職員は、常にそういった意識のもと行政施策を実施していかなければなりません。