【レポート】

第39回静岡自治研集会
第6分科会 災害に強いまちづくり ~みんなで守る いのちとくらし~

 2020年7月6日から7日にかけて日田市は豪雨に見舞われ、市内の中心部を流れる三隈川が氾濫しました。その日の状況や、保育士の対応など、自分の思いを交えつつレポートします。



2020年7月の豪雨から感じたこと


大分県本部/日田市立高瀬こども園 高瀬 美紀

1. はじめに

 2020年3月末で天瀬保育園が閉園し、日田市の公立園は4園となりました。各園とも園児数は減少傾向にあります。このうち2園は市街地に、2園は熊本との県境の山間の町に存在します。日田市はちょうど1年前の2020年7月に豪雨災害に見舞われました。広い範囲で川が氾濫し、土砂崩れが起きました。

2. 7月6日⇒7日

 大雨が予想され、高瀬こども園では保護者に対しどのような対策をするのかの話し合いが行われました。この時点で民間の施設は休園を決めたところも多いようでした。公立の園は余程のことでないと休園にはできません。これまでにも何度か豪雨災害にあっている日田市。過去のことを思い出せば不安は大きくなるばかりです。それでも園は開園し、子どもが登園するか休むかどうかの判断は保護者に任せられます。
 翌日7日もずっと大雨が続いていました。出勤すると園児の家庭から欠席連絡の電話が次々と鳴りました。登園した園児は数人で、出勤した保育士はニュースやSNSで状況をチェックしつつ、登園している子どもたちが不安にならないよういつもどおりに明るく接していました。園児は全員午前中のうちに保護者がお迎えに来られました。全員が保護者と一緒に過ごせていることに心底ほっとしました。
 各方面からの連絡やニュースでは、公立の光岡こども園が浸水した、中津江・上津江方面の道で土砂崩れや倒木があり道が通れなくなっている等の知らせが多く、不安でいっぱいいっぱいでした。
 一方で、光岡こども園では、早番の保育士が園に着いた段階で危険を感じ、避難し、職員と連絡を取り合って休園を決意したそうです。すぐに緊急連絡網で各家庭に連絡を入れ、園児・職員全員の無事を確保しました。しかし、園舎は150センチもの浸水で電子機器や玩具、保育室に置いてあった子どもの物など9割の物品が使用できなくなり、翌日からの保育はできなくなりました。関係機関の話し合いの結果、豪雨の翌々日、9日から同じく公立の園である高瀬こども園が受け入れ、光岡こども園の職員・園児と一緒に保育をすることになりました。

3. 合同保育のはじまり

 光岡こども園の職員は人数を分けて、高瀬こども園で保育に当たる職員と光岡こども園で園舎の片付をする職員に分かれてそれぞれ出勤することになりました。
 コロナ禍で特別広くもない保育室で2園分の園生活が営まれていたということは事実で、きっと初めは保護者も子どもたちも不安があったことでしょう。夏場だったということもあり、水遊びの時期でもありました。各クラスで密にならないように工夫をしながら行いました。日が経つごとに合同の園生活に慣れていき、お互いの園の保育の良さを学び、アイデアを出し合うことができました。「お友だちが増えた」と嬉しそうに話してくれる子もいました。ピンチの中にも学びがあり、助け合いの場面が多く見られたことは良かったと思っています。光岡こども園の再開は予定より少し早まり、約1ヵ月半の合同保育は終了しました。
 このような緊急事態で助け合うことは当然のことだという思いがありました。私事ですが、採用されてから2年は光岡こども園で仕事をしたので、子どもたちやその保護者、保育士への思いもありました。

4. おわりに

 日田市ではこの10年で夏季に起こった大規模な水害で何度も大きな被害を受けています。今年も7月が近づき、いつまたこのような豪雨に見舞われるかわかりません。昨年のこともあり、今年度6月から緊急連絡用としてスマートフォンアプリの運用を始めました。また、緊急時に備えて、園の非常用品を見直し、ハザードマップの確認をするなど、災害に備え、訓練や話し合いをすることが大切だと思います。