【レポート】

第39回静岡自治研集会
第7分科会 まちおこし ~持続可能な地域づくりの取り組み~

田辺公園スケートパーク


京都府本部/京田辺市職員組合・建設部・施設管理課 住井 祐介

1. スケートボードについて

(1) 歴 史
 スケートボードの発祥については1940年代頃のアメリカとされていますが、あまり定かではありません。
 従来のスケートボードは木の板に鉄の車輪がついているもので、グリップもなければトラック自体固定されているだけで、傾斜角も付けられないような状態でした。その後試行錯誤の下、丁度今の台車のようなイメージで車輪が多少可動するようなタイプになったり、鉄製の車輪がラバー製や粘土製になったりと徐々に進化していくことになります。
 カリフォルニアのサーファーの間でも波のない日にスケートボードを乗り、街中の『足』としてよく利用されていました。
 1970年代に入ってくると、技術革新によって色々とパーツに変化が出てきます。1つの大きな変化はウレタン製のウィールが開発されたことです。これによりグリップ力が生まれたスケートボードはより一層サーファーの間で人気が出てきます。
 これによりサーフィンのスタイルでコンクリートを滑るというスタイルが確立されていき水を抜いたボウル状のプールでスケートボードをするものが現れます。
 1980年代には『トリック』と呼ばれる、様々な技(飛んだり、スケートボードを回したり)を多彩に出し、街中の公共施設などを利用してトリックを混ぜながらスケートボードをするという、『ストリート・スタイル』が始まり、現代のスケートボードへと進化していきました。

(2) スケートボードの魅力
① 挑 戦
 スケートボードのトリックができる過程には、技術を磨くこと、恐怖心を克服することが必要です。目標に向け楽しみながら努力することを体感することができます。
② 尊 重
 スケートボードは幅広い年齢層から親しまれており、スケートパークでは幅広い年齢層の人たちが時間を共有して楽しんでいます。未就学児が一生懸命練習してできたことを見知らぬおじさんが一緒に喜ぶ、こんな光景が日常的に繰り返されています。
③ 創 造
 スケートボードを楽しむ方法は人によって様々であり、ルールがなく、同じ技でも人によって様々な個性があります。どんな乗り方をするかは創造力次第で無限であり、楽しみ方も無限です。

2. 田辺公園スケートパーク建設について

(1) 経 過
 体育館周辺、駅前広場、一般道路等でスケートボードをする若者が多く、花壇、ベンチ及び道路構造物等の施設を利用してスケートボードを行うため、公共施設が破損されていました。
 また、騒音や通行の支障になり、付近住民から苦情も多く寄せられていました。
 なお、スケートボードをする若者より、専用の施設がほしい要望も寄せられていました。
 このため、スケートボードをスポーツとして認知し、整備計画があった田辺公園の施設として、バスケットやバレーをするのに体育館を計画するのと同様に考えスケートパークの建設計画が2001年始まりました。
 もう一つの要因に、整備計画があった田辺公園は「幼児から高齢者まで、世代を問わず楽しんでいただける施設にする」とのコンセプトがあり、若者が多く利用する公園にしたい思いと合致しました。
 話題性についても、全国的にもスケートパークは当時少なく、市のPRにもなると考えたと想像します。

 -破損した公共施設-

(2) 計画への市民参加
 スケートパークを整備する中で、実際に利用されるスケートボードをする若者の意見を聞き、どのような施設にすれば楽しんでもらえるのかをワークショップ方式を取り入れて、施設計画づくりを実施しました。
 ワークショップの参加は、スケートボードの経験があり、市内在住の中学生以上の方を募集しました。募集方法は市広報、新聞の利用と共に、市内の体育館周辺、駅前広場、一般道路等でスケートボードをする若者へビラの配布も行いました。参加者の意見にて、セクションの種類、配置を決定しました。

(3) 結 果
 2004年に供用開始しました。供用開始後、市内の体育館周辺、駅前広場、一般道路等でスケートボードをする若者に大変喜んでもらうことができ、公共施設の破損等が防げ、苦情の根絶が図られ、スケートパークは若者が多く集まる交流の場となりました。
 なお、市外からも多くの利用者が訪れ、市のPRにもなっています。


3. 現在の状況について

(1) 利用者
 オリンピック種目になったこともあり、未就学児や小学校低学年の子どもを連れた親子が多く利用しています。
 なお、年齢や住んでいる地域が異なる利用者のコミュニティーができており交流の場となっています。
 利用者にヒアリングしたところ市外からの利用者が大多数を占めていました。

 -利用状況-

(2) 利用料金
 特殊なニーズの施設のため、本来は施設の維持管理に伴う費用を受益者負担で賄うべき施設ですが、田辺公園スケートパークは無料で利用することができます。

(3) 問題点
① ごみの散乱
 おかしの袋、ペットボトル等、利用者が持ち帰らず置いて帰ったごみが散乱していることが多々あります。
② ヘルメット未着用
 スケートパークの利用者には必ずヘルメットの着用をお願いしていますが、未着用の利用者が見受けられます。
③ 利用者間のトラブル
 下記のようなトラブルの報告があります。
 ・滑走を邪魔されたことによる言い争い
 ・ヘルメットを被っていない利用者を注意したことによる小競り合い
 ・子どもが無意識に滑走する利用者の滑走路に入ってしまい衝突したことによる怪我
④ 施設の老朽化
 人気の施設のため、耐用年数前に施設が老朽化しています。
 しかし、田辺公園スケートパークが採用している製品はアメリカのメーカーの製品であり、現在、日本で取り扱っている代理店がなく、修繕をすることが極めて困難な状況になっています。

4. 今後について

(1) 施 設
 補助金などを活用することにより市の財政負担を軽減させ、老朽化した施設をコンクリート製の施設に改修し、維持管理がしやすい施設に変えていくべきであると思います。コンクリートにて改修することにより、破損しても簡易に修繕できるメリットがあります。
 また、改修を機会に受益者負担をお願いする検討もするべきであると思います。

(2) 普及活動
 田辺公園スケートパークの利用者で定期的にスクールを開催してもらい、市内に住むスケートボードに興味はあるけれど、やったことがない市民に触れてもらう機会を作り、地域の活性化になるような活動をすれば市民にとって有益な施設に少しずつ変化していくのではないかと思います。
 なお、日々の清掃やマナー向上の協力を呼びかける活動も合わせて行い、活動に必要な道具等は行政が用意し、利用者と行政が協力し合いながら運営していくスケートパークをめざすべきであると思います。