【レポート】

第39回静岡自治研集会
第7分科会 まちおこし ~持続可能な地域づくりの取り組み~

清掃工場自由見学の取り組み
―― 新施設が繋ぐ環境啓発 ――

京都府本部/城南衛生管理組合労働組合・執行委員長 窪田 真二

1. はじめに

 城南衛生管理組合労働組合は、地方自治法第284条の2に定められている一部事務組合(特別地方公共団体)城南衛生管理組合に従事する者で組織化している労働組合です。
 城南衛生管理組合は、京都府南部にある宇治市・城陽市・八幡市・久御山町・宇治田原町及び井手町で構成され、し尿の収集・処理・処分、ごみの処理・処分・再資源化及びその事務を行っています。

2. 城南衛生管理組合の基本方針と施設見学

 城南衛生管理組合では3つの基本方針を掲げています。1つに、「住民感覚に沿った行財政改革」。2つに「安心安全な工場運営」。3つに「更なる循環型社会の構築」です。これら3つの基本方針のもと、いかに住民に理解いただき、信頼され、循環型社会を実現していくためには、この方針に沿った私たちの取り組みを知っていただく機会が必要と考えています。
 まず、住民感覚に沿った行政改革のためには、私たち自身が、その感覚を知ること・養うことが大切です。そのためには、住民と接する場が必要です。次に、安心安全な工場運営を理解してもらうためには、運営内容を説明する場が必要です。そして、循環型社会の構築には、環境への負荷低減を進め、その取り組みを啓発する場が必要です。この3つの場が「施設見学」であると考えています。

3. 清掃工場の見学について

 施設見学については、城南衛生管理組合の各工場において、団体や行政視察の受入れをはじめ、資源化施設による夏休み親子体験教室や、環境啓発イベントの「環境まつり」時に施設見学会を同時に開催するなど、より多くの機会で知ってもらう取り組みを進めています。他にも、小学生の環境学習として、管内全小学4年生の社会科見学の受入れを行っており、その見学の案内をボランティアガイドスタッフが行い、地域住民も参加した啓発活動に努めているところです。

4. 最新の清掃工場(クリーンパーク折居)について

 このような中、2018年に折居清掃工場の老朽化に伴い同敷地内に更新されたのが『クリーンパーク折居』です。この新しい清掃工場では、おもに宇治市、八幡市、久御山町の家庭から排出される可燃ごみを焼却処理しています。最新の画像認識システムなどの導入により安定燃焼を実現し、また、清掃工場としては日本初の膜構造煙突の採用により、耐震性向上を図っています。焼却により発生する熱を発電や隣接する山城総合運動公園への温水供給に利用するほか、屋上・壁面緑化を行うなど、地球環境に配慮した施設となっています。
 また、ごみの発生から最終処分までの流れや、人とごみの歴史、施設での受け入れから残渣排出までなど、「見て」「触って」「動かして」楽しくごみについて学び、体験することができる、周回型の見学動線が設けられました。

5. 新たな施設での見学・見学者受入れの拡充について

 クリーンパーク折居については、竣工時、旧施設の解体跡地整備が行われており、工場周辺整備も整っていなかったため、当初は団体・行政視察の受入れのみでしたが、クリーンパーク折居の施設見学のために設けられた周回型見学動線は、視察に来られた団体・行政の方々にも好評を得てきました。
 一方で、安全に配慮し一般住民や小学校の受入れについては停止していましたが、その後の解体跡地整備の完了に伴い、安全な見学受入れ体制が整ったことから、2020年に一般住民や小学校見学の受入れを開始することになりました。これに先立って、新たな見学方法や見学者受入れの拡充が模索され、その中で次のような意見について検討を行いました。
① 新施設クリーンパーク折居のさらなるアピール
② クリーンパーク折居を通じての啓発活動
③ 団体や行政視察だけでなく、個人としても見学してもらいたい
④ マイペースで自由な見学を楽しんでもらいたい
 これらが議論された結果、「個人見学」という新たな見学方法・受入れ方法の案がまとめられ、小学校見学等と併せて開始に向け準備が進められていました。しかし、新型コロナウイルスの蔓延により、小学校見学をはじめすべての見学を休止することとなりました。

6. コロナ禍の施設見学

 コロナ禍によって、エッセンシャルワーカーが注目を集め、私たちの仕事に対しても、着目されるようになりましたが、同時に、世の中の活動が停滞したことで、施設見学等が休止を余儀なくされ、住民と接し、運営内容を理解していただく機会を失ってしまうことになりました。しかし、個人見学用の解説等を含めたパンフレットを作成するなど質の向上に努め、見学が再開された時のために、個人見学をよりよく有意義にするための準備期間としました。
 このような中、新型コロナ感染拡大が収まりつつあった2020年10月に、名称を「自由見学」に変え、新たな見学方法としてスタートしました。
 自由見学はコロナ禍において
① 少人数のため、感染リスクを低く抑え、マイペースに見学できる
② 少人数のため、展示物等やゲームに触れる機会が持てる
③ 少人数のため、質問・意見等も気軽にできる
 これらのようにソーシャルディスタンスを保つことにつながり、少人数かつマイペースに見学をすることから展示物等に触れる機会が多く持てたことによって、より理解を深めることができるというメリット・効果を見出すことができました。

7. 自由見学の案内・実績・利用者の声

 現在、自由見学の案内は、当組合ホームページや広報紙で案内し、電話による事前申し込み制で受付を行っています。当初は平日のみの受付でありましたが、11月からは月に1回、土曜日にも拡充して実施しています。
 自由見学開始以降、コロナ禍ではありましたが、2020年度は、10月、11月、1月、3月で18組54人の利用。2021年度は、長引くコロナの影響により、ほとんど開催することができませんでしたが、2022年の年明けから再開し、1月に3組8人の利用がありました。
 利用いただいた方々からは、「とても整備された施設で驚いた」「ゆっくりと見ることができて、とても興味深かった」「子どもがごみ焼却施設に興味を持っていたので見学できて喜んでいた」「ゲームがあり子どもも楽しく見学できた」などの感想をいただき、大人も子どもも楽しみながら施設見学を身近に感じていただきました。

8. 今後への思い、ウィズコロナの施設見学

 今回、自由見学という見学方法にて、コロナウイルス等の感染機会を軽減する見学を行うことができました。現在、ホームページ・広報紙において、見学や工房教室等の案内を行っていますが、動画やSNSなども活用し、こちらから広く発信していくとともに、このような施設見学などによる啓発によって、城南衛生管理組合の3つの基本方針「住民感覚に沿った行財政改革」「安心安全な工場運営」「更なる循環型社会の構築」に沿った取り組みを知っていただき、より一層、住民の皆様の関心と環境意識の向上に繋げていかなければなりません。
 2021年度の環境啓発イベントにおいては、クリーンパーク折居にて、普段味わえることのない夜の清掃工場ナイトツアーを実施しました。参加された方々には、夜も止まることなく処理を続けている施設を実感してもらい、施設見学とともに、美しい夜景をご覧いただき、環境について考えるきっかけにしていただきました。今後は、新事務所棟がクリーンパーク折居隣接地へ移転することに伴い、工房施設が新事務所棟内に併設することから、より一層、環境に対する施設見学をはじめとした啓発や工房施設による体験を一体化した取り組みが求められるところです。また、見学や工房体験教室に参加された方からの「プラの出し方がわからない、どうやって分けているの?」といった疑問に答えることや、ニーズに対応した見学の取り組みを進め、クリーンパーク折居の見学設備環境を活かしつつ、施設見学がそうした住民との繋がりをつくる一つのツールとして、住民と職員が双方向で意見交換を交わしていく場、繋がりの場として、組合施設がその役割を担っていくことを期待しています。