【レポート】

第39回静岡自治研集会
第9分科会 SDGs×生活×自治研

地域特性を活かした環境拠点の役割
マンパワーによる新しい事業の創出に向けて

京都府本部/自治労京都市職員労働組合・清掃支部 林  竜一・松岡 孝之・奥本 泰弘

1. はじめに

 京都市環境政策局では、2010年4月1日より、地域における総合的な環境行政の拠点窓口として、「エコまちステーション」を各区役所・支所内(14か所)に開設。ごみ収集業務で培った経験や3R等の知識を活かし、地域と連携したごみ減量を目的に、上流対策(3R)を推進してきた。
 開設から13年目を迎えるが、とりわけここ数年で我々を取り巻く環境や生活様式は大きく一変している。時代や市民ニーズに沿った更なる事業展開が必要になるなか、2020年度より実施している、各エコまちステーションの独自取り組みについて報告する。

2. 普段の業務内容

(1) ごみの減量・分別リサイクルの推進
 ごみ減量相談、コミュニティ回収助成事業、資源物回収拠点の拡大 など

(2) 「世界一美しいまち・京都」の実現
 まちの美化住民協定の締結推進、友・遊・美化パスポート事業 など
 不法投棄監視カメラの貸与事業

(3) 「京・資源めぐるプラン ―― 京都市循環型社会推進基本計画」の推進(プラごみ削減・食品ロス等)
 しまつのこころ楽考(環境学習会)、ECOバスツアー(施設見学)

(4) 総合的な環境行政の推進
 エコドライブの推進、エコ学区の推進

(5) その他
 防鳥用ネットやごみ収集福祉サービス等、各種申請書の受付 など

3. 発足のきっかけ

 家庭ごみ袋有料化の推進に当たり「啓発班」を発足。有料化に伴い、市民へ「お試し袋」を配布していたが、ある委託業者の従業員の不当な行動により配布されていないことが、有料指定袋での収集開始前日に発覚。各まち美化事務所において、問い合わせの電話が途切れることがない状況であったが、「啓発班」や事務所が一体となり対応した。「啓発班」は発展的解消をするが、マンパワーが評価され「共生推進員」を発足し3Rの推進をめざすこととなった。
 そして、各区役所・支所内に「エコまちステーション」(以下エコまち)を開設することとなるが、当初の業務内容は明確でなく、まずは地域に入ってごみ減量を進めていた。そのなかで、各エコまちがそれぞれの活動を実施し、エコまち間で情報共有を図ることで業務を確立してきた。

4. これまでの活動例と成果

(1) 小学5年生を対象とした環境学習会を実施
 ごみ分別・減量の推進、収集作業時の危険性などの啓発に努めた。そのような流れから、ごみの行方を学習する社会勉強の一環として、施設見学を各小学校が実施し始めた。

(2) 廃食用油のバイオディーゼル燃料化
 京都市では、全国に先駆けて1997年から、家庭から出る使用済てんぷら油などの廃食用油を精製し、ごみ収集車や一部の市バスの燃料として利用している。地域住民や保育園、スーパー、マンション管理者等との共汗により、使用済てんぷら油の回収事業を拡大し、2020年度には年間約41万リットル利用した。

(3) 「新・京都市ごみ半減プラン」の目標達成
 エコまち発足当初は、公衆衛生の観点から保健協議会を窓口として活動していたが、現在では地域の代表団体である自治会と協働して活動している。また、地域団体、大学、区役所と連携するなど高度な活動を展開することで、「新・京都市ごみ半減プラン」のなかで目標としていた、年間のごみ量(市受入量)を、ピーク時の82万トン(2000年度)から半分以下の39万トンまで減らすことを、2020年度に達成。

5. 新たな独自取り組み

 普段の窓口業務や、地域との協働、環境学習を通じて得た学校や保育施設との連携などを活かし、職員のアイデアにより独自に事業を展開している。各エコまちにつき予算10万円以内と限られた予算内で、創意工夫しながら取り組む内容を紹介する。

エコまち

取り組みタイトル

主な内容

プラスチック製容器包装、
分別強化啓発

プラごみ収集日に資源ごみ定点を巡回し、プラ製品などの不適正排出物に啓発シールを貼ることで、ごみ分別の啓発・周知を行う。

上京

排出する本のリユース

不要となった本を市民に持参してもらい、エコまちで本を点検後、窓口横の本棚に陳列する。本の持ち帰りを希望される方へ、リユースする。ある程度本が集まれば普段区役所に来所する機会が少ない方を対象に土日にリユース会を開催する。

左京

引っ越しダンボールの回収

区内へ転入された学生、留学生を中心に、引っ越し後不要になったダンボールを直接訪問し回収する。併せて紙ごみの適正な排出方法の周知と、ごみの相談に対応する。

中京

年末臨時移動式拠点回収

年末の大掃除で燃やすごみの中に入れてしまいがちな資源物を、中京区役所西側スペースへ持参していただき回収する。

右京

右京エコまち広場

各種相談や、防鳥用ネット等の申請受付、資源物回収を行う。併せて未就学児でも作成可能なオリジナルマイバッグを作成していただき、ごみ減量啓発につなげる。

山科

地域住民が主体となる
資源物回収

地域団体が実施する使用済てんぷら油の回収拠点において、地域住民が主体となり、対象品目の資源物を回収して、ごみ減量を図る。

醍醐

まちかど小型家電回収

支所内の小型家電回収ボックスを多くの市民が利用されている。しかし、利用客は支所近隣地域の方に限られており、醍醐地域を巡回することにより正しい排出啓発と拡大した回収を実施していく。

東山

臨時陶磁器回収

資源物回収の中でも陶磁器に特化して回収し、リユースすることで、2Rの促進とごみ減量の周知啓発を行う。ごみの相談窓口や地域ごみ減量団体ブース出展等も併せて実施していく

下京

継続的に使用できる
移動式拠点回収看板の作成

市政広報板等への掲示を主流とした、繰り返し使用できる看板を作成し、回覧ビラの部数削減と早期の情報提供をめざす。その後は、ポスターでの周知に移行できるよう推し進め、QRコードを活用し、紙ごみの削減を図る。

資源物の回収及び
環境啓発活動の実施

資源物として回収している18品目から回収品目を絞り、臨時資源物回収を行う。出し方がわかりにくい品目に絞ることで、理解を深めていただく。さらに、移動式拠点回収を実施できていない地域で実施することで啓発効果を拡大する。

西京

エコリユースマーケット

区内の児童館で、「子ども服」・「絵本」・「おもちゃ」等を回収し、各地域において「エコリユースマーケット」を実施し再利用する。併せて小型家電の回収とリユース、ごみの減量・相談も受け付ける。

洛西

若年層を対象とした
環境意識の向上

大学生を対象に河川周辺を清掃していただき、海洋プラ問題や使い捨てプラスチック削減について考えるきっかけとする。しまつのこころ楽考とエコバスツアーにも参加していただき、その他のごみ問題についても考えていただく。その後、環境問題やごみ減量について学生同士で考えていただき、地域や児童に環境学習という形でアウトプットしていただくことで、環境意識の向上につなげる。活動のまとめとして、「西京区民ふれあいまつり」で環境啓発のパネルを作成してもらい、エコまちステーションと協働して啓発活動を行う。

伏見

エコまち
子どもクローゼット

本所管内の保育所や児童館で回収した、子ども服や子ども用品を、本所管内の区民で共有するための「リユース会」を伏見区役所や、地域イベント、児童館などで実施する。

深草

出張 資源物回収

支所から離れている藤城学区を対象に、普段から利用されている資源定点に乾電池、蛍光管などの簡易ボックスを設置して回収状況を調査する。また、地域の公園に「ミニエコまちステーション」拠点を設け、ごみの出し方や相談、防鳥用ネット交換などを受け付ける。


6. まとめ

 2021年5月には、京都市は「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」に選定された。この選定を受け、『京都市SDGs未来都市計画~千年の都・京都発 SDGsとレジリエンスの融合 しなやかに強く、持続可能な魅力あふれる都市を目指して~』を策定し、本市ならではの市民力・地域力・文化力を生かして、しなやかに強く、持続可能な都市づくりのため、SDGs・レジリエンス・地方創生の一体的な推進に、より一層力を入れて取り組んでいくこととなった。
 とりわけ、地域力はエコまちがこれまで獲得してきた強みである。より市民に必要とされる窓口として、今後は資源循環の取り組みだけでなく、脱炭素社会への転換も重要課題となるなか、現在は各エコまちが独自に取り組んでいるが、エコまち間での情報やノウハウを共有しながら、全市に展開できる事業の創出をめざす。