【レポート】

第39回静岡自治研集会
第9分科会 SDGs×生活×自治研

地域保健(国保)と職域保健(社保)の連携
および使用方法

京都府本部/京都府国民健康保険団体連合会職員労働組合 西山 新吾

1. 情 勢

 糖尿病等の生活習慣病が増加しており、生活習慣病は、日々の生活習慣の積み重ねがその発症に大きく関与することが明らかになっています。これを予防するためには、個人の主体的な健康づくりへの取り組みが重要で、保健事業による生涯を通じた継続的な健康管理の支援が必要です。
 一方、老人保健法や労働安全衛生法、健康保険法等の根拠法令によって目的や対象者、実施主体、事業内容がそれぞれ異なっています。制度間のつながりがないことから、地域全体の健康状況を把握できなかったり、退職後の保健指導が継続できないといった問題が指摘されています。このような問題を解決し、継続的な保健事業を展開していくためには、地域保健と職域保健が連携し、健康づくりのための保健事業を共有していくことが重要となります。
 こうしたことから、厚生労働省においては、1999年度より3年間、生活習慣病予防を目的とした地域保健と職域保健の連携の在り方について検討し、地域保健と職域保健の連携を推進するため、2002年度及び2003年度に地域・職域連携共同モデル事業が実施されました。また、2004年度には、地域・職域連携共同モデル事業の成果をもとに、地域保健及び職域保健の連携を全国的に普及するため、ガイドラインが作成されました。
 地域保健と職域保健が連携した保健事業を二次医療圏単位で展開することを推進してきました。
 その後、高齢化の急速な進展、健康経営等の社会情勢の変化、医療保険者の保健事業の変化等を踏まえ、2019年9月にガイドラインが改訂されました。改訂のポイントは、地域保健と職域保健が連携した幅広い取り組みの促進、支援が不十分な層(退職者、被扶養者、小規模事業場等)への対応、「実行」を重視した柔軟なPDCAサイクルに基づいた事業展開等です。

2. 地域・職場連携が必要なのか

 生活習慣予防などの健康づくりは若年期から継続的に取り組む必要があります。若年期からの肥満、運動不足、喫煙、健診未受診、不十分な生活習慣病のコントロール、中高年期の糖尿病や循環器疾患の発症、重症化に影響、高齢期の認知機能への影響があります。国民健康保険の重症化予防事業の分析から、自治体は若年期からの予防の必然性を実感しています。
 生活習慣は、生活環境や風潮などに影響を受けます(環境要因)。健康的なまちづくりは住民全体へ波及します。
 連携により地域保健情報に、職域保健情報を加えて検討することにより、地域全体の健康課題がより明確となります。

【メリット一覧】
① 生涯を通じた継続的な健康支援を受けることができる。
② 健康課題に沿った、個人のニーズへの幅広い対応が可能となり、対象者にとって保健サービスの量的な拡大になる。
③ 生活の場である地域を核として、就業者を含めた家族の健康管理を、家族単位で共通の考え方に沿って指導ができることにより、保健指導の効果を上げることができる。
④ 地域保健と職域保健が共同で事業等を行うことにより、整合性のとれた保健指導方法の確立ができ、保健事業担当者の資質の向上につながる。
⑤ 地域保健における保健事業の活用により、事業者による自主的な健康保持増進活動の推進がより容易になり、就業者の健康の保持、増進が図れるようになり、生産性の向上に寄与できる。
⑥ 地域と職域が共通認識を持ち、健康づくりを推進することは、健康日本21の推進に資すると共に、生活習慣病が予防できることにより、将来的に医療費への影響が考えられる。

3. 健康づくりは地域の活力につながる

 自治体にとって、住民の健康を守り、企業の安定的な経営を守ることが、税収増にもつながり、さらに健康障害の発生による退職を防ぐことは、本人にとっても事業所にとっても、さらには社会保障上にとってもメリットになります。

4. 医療保険者の役割(保険者機能)

 医療保険者は、被保険者・被扶養者のために①良質な医療の確保、②保険料の効率的な活用、③保険事業による健康づくりの推進を果たすことを使命としています。データヘルス計画、特定健診・特定保健指導の他、加入者の健康増進のために、がん検診の補助、情報誌発行等の保健事業を行っています。各医療保険者が一同に集まって保健事業推進に関する協議を行う場(保険者協議会)を国が推進しています。

5. 保険者協議会とは

 都道府県ごとに置かれた保険者横断的に健康増進や医療費分析等を実施するための組織があります。保険者は加入者の健康増進と医療費適正化について、行政や医療関係者等の協力を得ながら、保険者同士が同じ意識をもって共同で取り組んでいく必要があります。
 このため、保険者が都道府県ごとに保険者協議会を組織するよう努めていくこととされ、特定健診の実施や関係者間の連絡調整、医療費の調査分析等を行うように定められています。保険者協議会は各保険者のデータヘルスの底上げに資する取り組みを実施、保険者間での課題の共有やそれに基づく取り組みの推進を図っています。

6. 地域保健と職域保健の連携推進にかかる課題

 法律や制度に関する知識不足だけでなく、職域保健における関係者の役割に関する知識不足に困っています。具体的には「職域に関する法律や制度の知識が不足している」「それぞれの関係者が職域保健において担う役割について知識がない」などがあります。また、現在、京都府では地域保健(国保)と職域保健(社保)を連携していますが、職域保健が一部の使用にとどまっています。また、分析した内容を提供していますが使用までに至っていません。

7. これからの連携方法

 一部の職域保健だけでなく府内の単一健保や総合健保等の調整をすることができれば、各自治体において特定健診の対象となるすべての住民の健診データがそろいます。これを分析することにより、地域の特徴や課題がより明確となり、市区町村が被保険者の健康増進活動支援を進めるための仕組みづくり、関係機関や企業との関係づくりに役立ちます。自治体が企業に対して地域・職域連携推進事業を行う準備があること、具体的な支援内容を広く周知・啓発していく必要があります。
【方法】
① リーフレットやホームページを用いて情報を公開
② 事業主が集まる商工会議所の会合や研究会、事業所に出向いて直接説明を行う
③ 直接、被保険者へ健診案内やアンケート等による調査
④ 他県の先進事例をとりいれる




参照 地域特性に応じた地域・職域連携推進事業の効果的な展開のための研究会