【レポート】

第39回静岡自治研集会
第9分科会 SDGs×生活×自治研

 SDGsやESDの視点から学校で取り組む4R・5R活動について理解を深めると共にそれらの問題解決に向け、自ら行動できる児童の育成を図るための学習支援を行う。また、日頃の業務の見直しをしながら地球環境の負荷を軽減する行動に繋げ、これからの業務のあり方を確立するとし、この様な学習支援を積極的に行う事で「教員が子どもたちと向き合う時間を確保する」となり未来を担う子どもたちの育成に寄与できる。



SDGs(持続可能な開発目標)に関する学校での取り組み
―― 積極的学習支援で学校職場の働き方改革 ――

宮崎県本部/宮崎市役所職員労働組合・現業評議会 野島 邦彦

1. はじめに

 宮崎県では豊かな環境を持続させていくために、小・中学校や高等学校において「持続可能な社会づくりの創り手を育む教育(ESD)」の視点から、地域の資源や人材を活用した環境学習を推進することにより、主体的に行動できる児童・生徒の育成を図るとしている。
 県教育委員会では「持続可能なみやざきづくりを実現する環境教育推進事業」として、次のように定めその取り組みを推進している。
① SDGsやESDの視点を取り入れた4R活動を中心に環境学習に取り組むことで、環境に関わる問題を身近なこととして捉えるとともに、家庭や地域において実践していくことができる児童・生徒を育成する。
② 環境学習等での活動の様子や成果を保護者や地域に向けて発信していくことで、家庭・地域への啓発を図る。
 また、これらに関する具体的な活動計画を下記の通りとして活動補助金の交付を受ける事ができる。
 ア 環境教育に関する学習
  ・「SDGs」や「ESD」、「4R」の基本的な内容及び身近な環境問題
  ・自分たちにできる活動について
 イ リサイクル、美化活動の推進
  ・各学年における教科等と関連付けたリサイクル、美化活動
  ・4R活動を意識した委員会活動、朝のボランティア活動
 ウ 家庭・地域との連携
  ・学校ホームページや通信、リーフレット等による日常的な取り組みや成果等の発信
  ・家庭や地域でのリサイクル、清掃活動等
 これらを踏まえ、本校は2021年度に本事業を環境教育の一環とし4学年を中心に取り組むこととした。

(1) 事業活動計画
① 活動のねらいとしてSDGsや4R活動の趣旨を理解し、環境教育やその学習を生かした地域貢献活動を展開することによって環境問題に対する関心を高めるとともに、環境教育の視点で自ら考え行動できる児童を育成する。
② 環境教育推進事業に関する取り組みや成果を保護者や地域に発信することを深めていくと共に環境教育への意識を家庭でも高め学校・家庭・地域が連携し取り組みの充実を図る。

(2) 具体的活動計画
① 委員会を中心に、朝のボランティア活動(除草・落ち葉清掃)など児童の提案による活動を実施し、環境美化やリサイクル活動等への関心を高める。
② 地域にある施設を見学したり、地域の方々のお話を聞いたりすることにより、環境に関する理解を深めるとともに、自分たちが出来る事を考え行動できる資質や能力を育成する。
③ 児童の実践の場である家庭・学校・地域との連携による4R活動の推進を展開し、環境学習の基本を学習体験することで創意工夫する習慣を身に付ける。
④ 学校ホームページや学校だより等で、環境に関する学習や日常的な取り組みについて発信し、SDGsが身近なものとする意識づけを図る。
 上記の取り組みを進める中で4R活動における学校での取り組みについて、学校廃棄物処理に関する質疑を受けることになった。学校用務員の業務の一つに学校内外の廃棄物処理がある。学校施設は、教育機関における事業所と位置付けされ一般家庭との違いを理解する必要がある。各学校の廃棄物処理はそれぞれに主体者を置き、児童・生徒・教職員の協力のもと適正な処理に努めている。

2. 4学年・3学年への学習支援

(1) 4学年の学習【学校での4R活動】
 4学年においては、学校での4R活動についてその取り組みを具体的に説明した。
 まず、学校の廃棄物は「事業系一般廃棄物」と「事業系産業廃棄物」に大きく分けられる。
 校内における事業系一般廃棄物は、児童・教職員の飲食に伴う廃棄物と再利用できない紙屑、落ち葉や木切れ等非常に限られたものになる。
 一方で、古くなった児童の学習教材や清掃用具、壊れて使えなくなった環境整備品・体育用具等は、そのほとんどが事業系産業廃棄物として取り扱われ、どの学校もその量は多大なものとなる。
 事業系一般廃棄物は、週2回又は月2回といった定期収集にて搬出され、事業系産業廃棄物は年1回、多額の予算を消費しながら収集運搬される。2020年度は市内72校の小中学校で約300万円の予算を費やした。これらの事を基に、学校の廃棄物を減らす工夫として4R活動の推進を説明した。
① Reuse(リユース):繰り返して使う
 各家庭では洗剤やシャンプー等は、その容器を廃棄せず詰め替えを行っていることが多い。学校ではボールペンは替え芯を活用し、糊は大容量のものから小分けにするなどしている。また、燃やせるごみ袋は隙間なく使用することでその枚数を減らせることを確認した。
② Recycle(リサイクル):再資源化
 プラスチック包装容器やペットボトルは、リサイクル製品として回収し新たに生成され循環型社会を形成している。ごみとして捨てていたものの中には、リサイクルできる資源物が含まれていることを認識し、廃棄する物の中に資源物が混入していないかなど確認し大切に活用、分別を正しく理解実践していく事とした。
 また、教材として使用したプリント類、新聞や段ボール等はリサイクル有価物として回収され、学校の環境整備費として活用されている。
 家庭では不要になった洋服等は形を変えた新しい商品に生まれ変り、回収されたものの一部は必要とする国々に譲渡するなどして人と環境にやさしい取り組みを行っている。
③ Refuse(リフューズ):断る
 レジ袋有料化に伴いマイバッグ持参での買い物は常態化している。しかし、商品の中には過剰な包装や環境に配慮していないものが多く存在する。
 レジ袋有料化の意義を正しく理解し実践する必要があり、飲食店へのマイ箸持参やごみとなる包装紙や梱包材はその場で断るなどとした事例を紹介し、学校では教材・事務用品などは環境にやさしいエコマーク商品を選択するなどグリーン購入を推進している。
④ Repair(リペア):修繕・手直し作業
 学校の施設に関する軽微な修理や日常点検は、学校用務員の業務の一つである。義務付けられている安全点検による不良個所の修繕をはじめ、大規模な改修については学校管理者とともに安心安全な環境整備に努めている。
 教室の扉やドア等は使用頻度が高く修理依頼を多く受けるが、部品を交換すると同時に、新たに壊れにくい対策を講じるなどしている。また、折損した足の学習椅子や天板が剝がれた机においても、溶接や天板の張替えをするなどして出来るだけ長く大切に使用している。トイレや水道等の水漏れ補修は安価な部品交換で対応できるため、それらとともに学校の予算縮減に取り組むこととしている。

(2) 3学年の学習【SDGs開発目標14・15】
 環境教育推進事業は、4R活動やSDGsの視点を意識した取り組みが必要であることから3学年の総合的な学習の時間においてSDGsについて学習した。
 SDGsは17の開発目標が設定されている。貧困問題や世界平和等問題解決には困難を極めるものもあるが、その中で「14.海の豊かさを守ろう」、「15.陸の豊かさも守ろう」については、身近な環境問題として3学年においても取り組み易い事項としたことから、それらに関し重点を置き学習を行った。
 「14.海の豊かさを守ろう」では、サブタイトルとして海の生き物や海の資源を守るとあり、どのような海の生き物がいるかという質問に対し、サメやクジラ、ホタテといった魚介類の発言が多かったが、プランクトンや昆布、ワカメといった回答をする児童もおり、改めて児童の知識の広さを再認識させられた。
 そのような海洋生物が、人間が作り出した汚染水や化学物質の放流により死滅する様子や、いま現在非常に大きな課題である海洋プラスチックごみについて、魚類が捕食したマイクロプラスチックはその後の捕獲により人体に取り込まれる可能性があることを説明した。
 また、乱獲により海洋生物の生態系に影響を及ぼし魚介類が激減するとあらゆる食材料の供給ができず、その結果、開発目標「2.飢餓をゼロに」も達成出来なくなることを学習した。
 「15.陸の豊かさも守ろう」では、森林と呼ばれる場所にはたくさんの動植物が生息しているが、様々な問題によりそのほとんどが絶滅危惧種に指定されている。
シカやウサギといった哺乳動物、クワガタムシなどの昆虫類は小学生では皆、興味を示す生き物の一つであり、また里山地域では小川に生息する魚介類、緑葉種にもその影響が広まっている。
 森林や里山が乱開発されることにより、本来そこに生息する大型動物が市街地を徘徊することで「11.住み続けられるまちづくりを」には繋がらず、森林の違法な伐採や消失はCO₂削減効果を阻害するとし「13.気候変動に具体的な対策を」にはカーボンニュートラルを早急に実施しなければならないとした。

3. まとめ

 学校現場では、教職員の働き方改革が推進されあらゆる面で改善が進められているが、教職員不足に伴う過酷な労働が原因で病休者や早期退職者が増え働き手も減る悪循環に陥っており、教職員への希望者が減少する現状がある。
 この学習支援に際して、事前準備や資料調達等で自己知見を広める事が出来たと同時に、達成感とやりがいを再確認できた。
 学校用務員も農薬や除草剤の使用に関して子どもへの身体的影響や生物多様性基本法等に配慮しながら創意工夫し必要最低限の容量とし4R・5R活動にも積極的に関与するとともに、常に子どもの人権を尊重し環境教育のファシリテーター(促進役)を意識する必要がある。


 この報告書を書くきっかけとなった写真である。授業に参加した全児童に段ボールで作製したSDGsバッジをプレゼントしたところ大切にランドセルに縛り付けてくれていた。
 教員へのあらゆる支援を行い「教員が子どもたちと向き合う時間を確保する」この事で、学校用務員の職の確立と未来を担う子どもたちの育成に寄与できると確信する。