【レポート】

第39回静岡自治研集会
特別分科会 今、必要とされる公共サービスと自治

 新型コロナウイルスの発生により、マスクの着用、三密の回避、不要不急の外出の自粛といった新たな生活様式が求められるようになり、それに伴って全国的なマスク不足、各業界における売り上げ減少など様々な影響を及ぼしています。こうした状況の中、邑南町職員連合労働組合では「新型コロナウイルスに対して地域にできること」をテーマに青年部・女性部を中心に取り組んだ活動について報告します。



新型コロナウイルスに対して地域にできること
―― 地域の福祉現場に手作りマスクを ――
―― 町内でお中元の購入を ――

島根県本部/邑南町職員連合労働組合・青年部・女性部

1. 新型コロナウイルスの発生

 2019年12月に中国湖北省武漢市にて新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生して以降、瞬く間に感染が拡大していき、2020年3月11日に世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的流行)相当との認識を示しました。日本においても2020年1月に国内初となる新型コロナウイルスの感染が確認されて以降全国的に感染が拡大していき、2020年4月には緊急事態宣言が発令され、同月島根県内初となる感染者が確認されました。
 新型コロナウイルスは職場や生活面においても大きな影響を与え、マスクの着用や三密の回避、ソーシャルディスタンスを保つなどの新しい生活様式が求められるようになりました。特にマスクについては感染拡大し始めた数ヶ月の間全国的に品薄でどの店舗でも仕入の見込みが立たない状況となりました。
 また、飲食業、宿泊業については外出、歓送迎会等懇親会の自粛により利用者が減少。それに伴い小売店についても売り上げが減少するという悪循環により町内消費は低迷、停滞していました。
 こうした状況を踏まえ2020年4月14日、本庁大会議室にて「新型コロナウイルスに対して青年部として活動できること」をテーマに青年部会を開催して意見募集したところ、次のような意見が挙がりました。
(意見)
 ・手作りマスクを作って地域の事業所などへ寄付する 
 ・青年部内でのコロナウイルス学習会を開催する。
 ・職員が休日に出勤して代休を取る体制を推進する。   など
 これらの意見の中から、感染リスクが特に高い町内の福祉施設に対して少しでも支援ができるよう、毎年保育所の節分ボランティアで交流のある社会福祉法人瑞穂福祉会と社会福祉法人石見さくら会の2団体に50枚ずつ手作りマスクを作って寄付することに決定しました。
 女性部においては、お中元に目を付け、新型コロナウイルスにより低迷している町内の消費喚起を図り、町内の商店を応援するためお中元パンフレットを作成することにしました。

2. 青年部によるマスク作り

 2020年4月16日、青年部役員会を開いてマスク作りをする上での課題と解決方法について話し合いました。
【課題】①
 自作布マスクの普及により、全国的に布、ガーゼ等の素材が品薄状態で入手が困難。
 →(有)のだきゅう(町内呉服店)に素材について相談する。
【課題】②
 青年部員の裁縫経験が浅く、制作工程の多いものを作るのが難しい。
 →Youtubeやインターネットを参考にしながら簡単に作れる布マスクの作り方を考案する。
【課題】①について
 2020年4月30日、(有)のだきゅうへマスクの素材の相談をしました。素材は品薄であまり量がなく、価格が高騰しているため大量に購入するのはおすすめできないとのことでしたが、布団カバーなどの既製品を切って代用してみてはどうかとの助言をいただき、布タイプのカバーと二重ガーゼのカバーを購入しました。
 2020年5月9日、購入した布を切る作業を行いました。布タイプのカバーを大きめに、二重ガーゼタイプのカバーは小さめに切り分けました。

【課題】②について
 全国的に不織布マスクが入手しにくかったことから手作りマスクの作り方がインターネット上に多数掲載されるようになり、それらを参考にしながら作成手順が簡単でかつ短期間で複数作ることができる方法を考案しました。女性部にも協力を依頼したところ快く引き受けていただいたため、青年部はミシン掛けまでの作業を、女性部はミシン掛けから梱包までの作業に分担して取り組むことにしました(作成方法は下記「マスクの作り方」のとおり)。マスクは子どもから大人まで使えるように大・中・小の3つのサイズを作り、5月中に合計100枚のマスクの完成をめざして部員1人あたり3枚のノルマをお願いしました。

マスクの作り方

 2020年5月27日、女性部にご協力いただき青年部で作ったマスクのミシン縫いと紐通し、梱包作業を行い、寄贈用のマスクが完成しました。
 2020年5月31日に瑞穂福祉会、2020年6月1日に石見さくら会にマスクの寄贈に伺いました。施設からは「マスクが不足していたので助かります」「さっそく使わせていただきます」といった感謝の言葉をいただき、後日ホームページや広報誌でも寄贈の様子を紹介していただきました。

3. 女性部によるパンフレット作り

 女性部では、新型コロナウイルス感染症の影響により経済的に打撃を受けた町内企業の売り上げに貢献するため、組合員のお中元購入を促進するパンフレットを作成しました。これは、毎年商工会から発行されているお中元の商品パンフレットに添付する形で、A3両面刷りの購入促進パンフレットを作成したものです。あわせて、例年はお中元パンフレットを課内で回覧しているところを、2020年は全組合員への配布としました。
 購入促進パンフレットには、お中元とは何か、誰に贈ればよいか、公務員の贈答禁止規定についての解説に加え、町内企業の現状や応援する意図について記載しました。また、お中元を注文したことがない人にも頼んでもらいやすいよう、頼み方モデルや注文用紙の記入例を記載しました。
 組合員からは、「公務員の贈答禁止の範囲について、勉強になった」「お中元に限らず、町内企業の応援をしていかなければという気持ちになった」などという声がありました。





4. まとめ

 手作りマスクを作成した当時は、安全策として組合活動も含め、あらゆる活動を自粛するという風潮のあった時期であり、このような時に本当にマスク作りをするべきなのか、初めての試みを最後までやりきれるのか、といった悩みや不安を感じながらではありましたが、そのような中でも青年部が一体となり、女性部にも活動に賛同していただいて協力を得ながらマスクを寄贈するという1つのまとまった活動ができたことは大きな自信に繋がりました。また、寄贈した様子を施設の方が紹介してくださったことは大変嬉しく、組合活動へのやりがいを感じました。
 パンフレットを作成する準備段階で商工会に話を伺いに行った際、地元企業は精神的にも金銭的にも疲弊しているということ、その中で公務員が敵視されている部分もあるという話を聞くことができました。先が見えない不安の中で、自営業者からは、生活が安定している公務員に不満を抱いたり、行政からの支援をより充実させるべきだという意見が大きくなっていたようでした。当時、役場職員が昼食を町内飲食店からテイクアウトする取り組みを行っていましたが、こういった取り組みも町内飲食店にとっては大して効果はなく、もっと根本的な対策を講じてほしいと詰め寄られました。今回のパンフレット作成をするなかで、こういった非常事態の際の町民の不安や精神的負担を目の当たりにし、改めて、庁舎の中で対策を講じることに加え、地域に出て「会って話を聞く」ことの大切さを実感しました。
 今後も邑南町職員連合労働組合は地域を取り巻く様々な課題と向き合いながら解決に向けて取り組んでいきます。



【参考】
 マスク作り、レポート作成をする上で、下記のインターネット情報を参考にしました。
 【手作り布マスクの作り方】10分でできる簡単布マスクを動画とイラストで紹介 大人用&子ども用。グッディでも話題(3月11日)