【レポート】

第39回静岡自治研集会
特別分科会 今、必要とされる公共サービスと自治

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、小学校の休校等により家庭が受けた影響を明らかにし、関係機関への要望につなげることを目的としている。



新型コロナ感染症拡大による小学校休校等の影響調査


徳島県本部/公益社団法人 徳島地方自治研究所

1. 調査の概要

(1) 調査目的
 新型コロナウイルス感染症(オミクロン株)の感染拡大で、小学校の休校等により家庭が受けた影響を明らかにし、関係機関への要望につなげることを目的としている。

(2) 調査内容
① 調査対象
 第6波(2022年1~3月)の間、休校等(一斉休校、学級・学年閉鎖)で小学生の子どもが登校できなかった家庭の保護者。なお、子ども自身が濃厚接触者等となり登校できなかった場合も含める。
② 調査方法
 グーグルフォームを活用し、インターネットで回答をお願いした。QRコードを載せたチラシを作成し、連合徳島の加盟産別や学童保育(徳島市・藍住町)で該当する保護者に配布していただいた。
③ 調査期間
 2022年3月24日~4月30日
④ 回答状況
 442人

(3) おもな調査項目
 ・労働環境に関すること
 ・オンライン対応など教育に関すること
 ・休校等で困ったことや要望

2. 調査結果(回答数442人)

① お子さん(小学生)との関係
 回答者のうち、母が336人(76.0%)と多く、父は101人(22.9%)、祖父母3人(0.7%)、無回答2人(0.4%)だった。
② 雇用形態
 回答者のうち、正規職員が297人(67.2%)と多く、非正規職員112人(25.3%)、その他19人(4.3%)、無回答14人(3.2%)だった。【図1】

【図1】


③ 勤務形態
 回答者のうち、フルタイム勤務が313人(70.8%)と多く、パートタイム勤務は103人(23.3%)、その他14人(3.2%)、無回答12人(2.7%)だった。【図2】

【図2】


④ 小学生のお子さんの人数
 回答者の子どもの数は、1人が272人(61.5%)ともっとも多く、2人は136人(30.8%)、3人以上は27人(6.1%)、無回答7人(1.6%)だった。
⑤ 小学生のお子さんの学年
 回答者の子どもの学年では、2年生が140人(31.7%)ともっとも多く、つぎに1年生136人(30.8%)、3年生86人(19.5%)となった。4年生77人(17.4%)、5年生67人(15.2%)、6年生49人(11.1%)だった。(複数回答)【図3】

【図3】


⑥ 小学生の休校等で回答者が仕事を休んだか
 回答者のうち、小学校の休校等で仕事を休んだのが259人(58.6%)、仕事を休まなかったのは178人(40.3%)だった。5人は無回答(1.1%)だった。【図4】

【図4】


⑦ 小学校休校等により回答者が取得した休暇と日数
 仕事を休んだ回答者(259人)が取得した休暇のうち、有給休暇116人(44.8%)がもっとも多く、特別休暇119人(45.9%)、無給休暇55人(21.2%)だった。取得日数については、いずれの休暇においても「1~3日」が多かった。(複数回答、割合は該当回答者数259で除した)
⑧ 回答者が仕事を休まなかった方で、お子さんの休校等の対応
 休校等で仕事を休まなかった回答者(178人)で、多かったのが「子どもだけで留守番させた」64人(36.0%)であり、「回答者以外の保護者が仕事を休んだ」46人(25.8%)、「親戚などに預けた」34人(19.1%)、「保護者等が自宅待機になった」14人(7.9%)、「学童保育に預けた」13人(7.3%)、「保護者等の職場に連れて行った」3人(1.7%)となった。「その他」37人(20.8%)は、「在宅勤務になった」8人(4.5%)などがあった。(複数回答)【図5】

【図5】


⑨ 子どもの小学校の休校等で困ったこと
 小学校の休校等で困ったことについて、もっとも多かったのが「仕事を休むと職場に迷惑をかける」306人(69.2%)であり、つぎに「子どものストレス」228人(51.6%)、「子どもの学習低下、運動不足」220人(49.8%)となった。他に、「食費や生活費が増えた」158人(35.7%)、「子どもの預け先がなく留守番させなければならない」115人(26.0%)、「仕事に行けず収入が減った」70人(15.8%)、「家族の協力がえられなかった」37人(8.4%)、「有給休暇がないので仕事を休めない」22人(5.0%)。「とくにない」は20人(4.5%)だった。
 「その他」25人(5.7%)では、「学級閉鎖というだけで濃厚接触者ではないかと詮索された」「学童保育が受け入れ不可になった」「国の助成金があるのに職場が許可しなかった」「子どもがいるなかでの在宅勤務」「テレワークは対応していない職場」などの記述回答があった。(複数回答)【図6】

【図6】


⑩ 子どもの小学校の休校等で要望すること
 「子どもの学習・運動機会の確保」236人(53.4%)がもっとも多く、「休暇をとりやすい職場の雰囲気」187人(42.3%)、「緊急時の預け先の確保」185人(41.9%)、「休校判断の緩和」184人(41.6%)、「職場の休暇制度の拡充」167人(37.8%)、「収入減に対する助成や休業補償」149人(33.7%)、「テレワークができる働き方」79人(17.9%)となった。「とくにない」は15人(3.4%)だった。「その他」11人(2.5%)では、「濃厚接触者の早期把握と早期連絡」「学校のオンライン授業のスキルを上げてほしい」「子どもが家にいる分、食費が増えるので何らかの補助があれば助かる」などがあった。(複数回答)【図7】

【図7】


⑪ 休校等の間、学校とオンラインでつないだか
 休校等の間、小学校とオンラインでつないだのは196人(44.3%)、オンラインでつながなかったのは240人(54.3%)となった。無回答は6人(1.4%)だった。(複数回答)【図8】

【図8】


⑫ 学校とオンラインでつないだ方で、どのように対応したか
 オンラインでつないだと回答(196人)したうち、「子ども(本人)だけで対応した」「保護者等が家庭でいる時に対応した」が同数で79人(40.3%)となった。「保護者等が仕事を休んで対応した」は62人(31.6%)、「きょうだい、祖父母等が手伝った」は21人(10.7%)となった。「その他」3人(1.5%)では、「保護者が仕事中に子どもとつなぎ一緒に学校とつないだ」「初回のみ時間休で対応し2回目からは本人が対応した」などがあった。(複数回答)【図9】

【図9】


⑬ オンラインで実施されたもの
 オンラインでつないだと回答(196人)したうち、実施されたのはホームルーム(朝の会など)が141人(71.9%)、家庭学習用の課題は108人(55.1%)、授業は84人(42.9%)だった。「その他」6人(3.1%)では、「体調確認」「ZOOMやTeamsがつながるか確認」などがあった。(複数回答)【図10】

【図10】


⑭ オンライン使用にあたり、パソコンやタブレットなどの機材は支給(貸出)されたか
 オンラインでつないだと回答(196人)したうち、オンラインを使用するにあたり、パソコンやタブレットなどの機材が支給(貸出)されたのは185人(94.4%)、支給(貸出)されなかったのは5人(2.6%)、家庭の機材を使用するので辞退したのは4人(2.0%)、無回答は2人(1.0%)。【図11】

【図11】


⑮ オンラインのつなぎ方などについて事前の説明
 オンラインでつないだと回答(196人)したうち、つなぎ方などについて「小学校で子どもに説明があった」のは162人(82.7%)がもっとも多く、「家庭に書類で説明があった」のは143人(73.0%)、「家庭にオンラインで説明があった」のは7人(3.6%)となった。「説明がなかった」は0人だった。「その他」3人(1.5%)では、「マチコミメールでの説明」「個人懇談で担任と話した」「休校前に毎朝の健康チェックをオンラインで行った」があった。(複数回答)
⑯ オンラインでつながなかった理由
 オンラインでつながなかったと回答(240人)したうち、「学校から指示がなかった」220人(91.7%)がもっとも多く、「家庭等にパソコンやタブレットなどの機材がなかった」は8人(3.3%)、「家庭等にインターネット環境がなかった」は3人(1.3%)、「操作できる人がいなかった」1人(0.4%)だった。他に、「子どもが学童保育などの家庭外にいた」6人(2.5%)、「子どもが体調を崩していた」3人(1.3%)、「子ども(本人)だけしかおらず対応できなかった」2人(0.8%)だった。「その他」12人(5.0%)では、「タイミングが合わなかった」「パソコンやタブレットが修理中だった」「忘れていた」などがあった。【図12】

【図12】


3. 考 察

(1) 調査の結果から
 本調査は小学生の子どもがいる保護者に、グーグルフォームを活用したアンケート形式で回答をいただいた。臨時休業等になった小学校は公表されていなかったため、まず調査対象となる保護者等にどう協力依頼するかが課題となった。そこで、連合徳島にご協力いただき、加盟産別等に調査の周知を図った。また、県内でもっとも感染者が多かった徳島市にも協力を依頼し、学童保育や児童館へ回答を呼びかけるチラシを配布させていただいた。藍住町にも依頼したところ、同様の対応を図っていただくことができた。
 そして、約1ヶ月間の調査期間を経て、442人の保護者等から回答をえることができ、調査結果から以下のような問題点や課題が明らかになった。
① 家庭への負担
 父よりも母が休校等で仕事を休んでいるが、非正規職員やパートタイム勤務も多く、無給休暇を取得した割合も高かった。自由回答に「家庭にすべてを押し付けるようなやり方には憤りを感じている」とあったように、臨時休業を行っている学校の対応に戸惑ったり、預け先の確保に苦労した保護者もいた。父母とも休暇をとりやすい職場の雰囲気や、子どもの学習・運動機会の確保を要望する回答が多かった。
② 雇用形態による差
 非正規職員の7割が休校等で仕事を休み、4割が無給休暇を取得している。収入が減ったり、食費や生活費も増えたことで、収入減に対する助成や休業補償を要望したのも半数を超えた。他に要望することとして、子どもの学習・運動機会の確保が多かったが、これは新型コロナ拡大前から指摘されている、親の就業状況と子どもの教育機会の確保が関係しているのではないか。また、正規職員で仕事を休んだのは半数だったが、休暇をとりやすい職場の雰囲気を望み、その割合は非正規職員を超えていた。
③ 子どもの年齢で異なる要望
 子どもの学年が低いほど回答者が仕事を休み、緊急時の預け先の確保を要望している。オンライン対応についても、低学年の4割は保護者等が仕事を休んでおり、自由回答にも「子どもだけでは学校指定の時間にオンラインにつなぐのは困難」との意見があった。また、高学年は子ども本人だけでオンライン対応をしたのが6割を超えたが、他の学年に比べると学習・運動機会の確保を要望したのが多く、学年が上がるほど学習などの教育支援が求められている。
④ 自治体間で対応の違い
 県内でもっとも感染者が多かった徳島市では、徳島市以外に比べると回答者が仕事を休んだり、子どもを留守番させた割合が高かった。また、子どもの学力低下や運動不足を懸念しており、半数が休校判断の緩和を要望した。学校とオンラインでつないだのは7割を超えたが、そのうち8割がホームルームであり、授業は4割にとどまった。一方、徳島市以外でオンラインにつないだのは2割弱であり、自由回答では「徳島市はタブレットを持ち帰り自宅で学習できていたのに、藍住町ではタブレットを持ち帰っての学習がなかった。対応に差がありすぎる」との意見があった。

(2) 教育支援と労働環境の充実が課題
 文部科学省の調査によると、第6波のオミクロン株による感染拡大で、2022年1~3月に県内の公立小学校(166校)は休校22校、学級・学年閉鎖43校(いずれも延べ数)だった。この間、教育現場ではICT支援員などを配置し、GIGAスクール構想に基づくタブレットの活用などが進められてきたが、オンラインの実施内容や家庭へのタブレット持ち帰りの可否など、本調査では教育現場の対応に差がみられた。
 しかし、家庭でのオンライン対応については、毎日のタブレットの持ち帰りに疑問を感じる保護者がいる一方、オンライン授業の実施や機器のスペック向上、教員のスキルアップなどを要望する保護者もいるなど、回答者側にも大きな差がみられた。学校の臨時休業に備えるためにも、タブレットの活用などオンライン授業の定着が図られているが、本調査によると保護者の意識や家庭環境によっても、子どもが受ける教育に差が生じているのではないか。
 それは、休暇制度があっても休みづらく仕事を優先してしまう状況や、有給休暇がないために無給休暇をとらざるをえないなど、労働環境の問題が社会の根本にあるのも原因と思われる。県内の自治体では、学校の臨時休業による特別休暇が認められ、家庭への影響に配慮した対応が図られた。しかし、特別休暇が認められていない民間企業では有給または無給休暇で対応しなければならない現状があるほか、収入減に対する助成や休業補償を要望する非正規職員が多数いることも本調査から明らかになった。なお、国も小学校休業等対応助成金を創設し、保護者が休暇を取得できる環境を整えるよう企業に助成金の活用を促したが、記述回答に「国の助成金があるのに職場が許可しなかった」とあるように、制度の周知不足や事務の手間などから積極的に活用されていないと推察される。
 また、2020年国勢調査の調査結果で徳島県と全国を比較すると、徳島県は全国平均よりも農業・林業、医療・福祉など在宅勤務が困難な産業の人口が多く、逆に情報通信業など在宅勤務が可能な産業の人口は少ないことから、一律に在宅勤務を推奨するのではなく、地域性も考慮した労働環境の改善が必要である。今回の第6波による小学校の臨時休業等で明らかになったのは、保護者の意識や家庭環境によって、子どもたちが受ける教育に差をつけてはならないということだ。そのためには、第6波の相次ぐ臨時休業のような不測の事態に備えて、平常時から人員の配置を工夫するなど労働者の家庭環境に配慮できる職場をつくることや、休暇制度の充実と非正規職員も含めた賃金水準の維持・向上に努めなければならない。
 新型コロナ感染症は社会の脆弱性を浮き彫りにしたと言われるが、労働環境と教育現場においても多くの問題や課題を生み出した。将来を担う子どもたちは、この変化の激しい予測不能な社会で生きていく力をつけなければならず、まずは「子どもの最善の利益」を最優先にした教育支援と、その子どもたちが生活する家庭にも配慮できる労働環境の充実が求められている。




≪参考資料≫
・小林美津江(文教科学委員調査室)
「学びの保障と教育格差 ―― 新型コロナウイルス感染症をめぐる取り組み ―― 」(立法と調査No.428、2020年10月)