【自主レポート】

「公務労働の拡大」・「共同作業」の実践に向けて

広島県本部/福山市職員労働組合 平川 富章

1. はじめに

(1) 私たちを取り巻く情勢
   私たち公務員労働者を取り巻く情勢は、「行政改革・公務員制度改革・市町村合併」などの議論を見れば分かるように、将来不安を扇動しながら、現業職場を公務職場(労働)の範囲から切り捨てる攻撃が一段と強化されています。その中でも一般部会は、少数分散職場であるがゆえに、常に、職場の統廃合や民間委託への攻撃の危機にさらされており、公務労働(公務員)として住民に必要とされる「仕事と体制」の確立は、喫緊の課題であるとともに、将来展望へ向け避けて通ることのできない課題でもあります。

(2) 一般部会(職場)の構成
   福山市職労現業評議会一般部会は、多種多様な「職場(職種)」(競馬場・市営渡船・緑化センター・支所公務連絡・福山城・運動公園・図書館・土木・公用自動車運転・福祉施設職場)で、58人の組合員により構成され、しかも市内全域に分散して存在しています。したがって、共通した職務内容は少なく、意思統一ひとつとってみても非常に困難な状況にあり、全体での議論もままならない状況の中におかれています。こうした実態を反映し、今日までの運動の中で、「職場・職種の違い」を強調したり、個的「利益・エゴ」の優先に走ったりなどの繰り返しなどの中で、よくよく見ると「すばらしい『スローガン』」のみを大切にした運動に陥っていたのではないかと反省しています。

2. 一般部会(職場)の具体的な「公務労働拡大」の取り組み

(1) 地域支部である土木職場(松永建設課)の取り組みについて
   「与えられた仕事をこなすだけでは、他職場と統合されかねないし、すべての業務を業者委託にされかねない。」「地域の要望に適切に応えられるのは、その地域に依拠する職場をおいて他にない。」などの情勢から、実施可能なものはすべて実施(具体的には、道路舗装・補修、樹木の剪定、枯れ木の伐採、不法投棄物の処理など)し、順次取り組みを積み重ね、委託費の削減と、「すぐやる課」の位置づけの確立につなげています。
   また、2000年7月~9月の3ヵ月間、業務実態(草刈り)をふまえ、職場から勤務時間の変更(早朝5時45分~14時30分)を提起をし、いわゆる「サマータイム制」を試行導入も行いました。
   この「公務労働拡大」のきっかけとなった取り組みも、当初は、「職場(生活)が守られれば?・現業活性化につながれば?」程度の思いで始めたものであり、今日のような「公務労働拡大」=「本来業務の充実・拡大を図る」といった明確な方針を持ち得たものではありませんでした。とにもかくにも「実践」あるのみということで取り組みを重ねましたが、今日では、自信を持って「合理化反対」をたたかえるところまで成長しています。

(2) 公文書送達業務の取り組みについて
  ① 98年より、それまでの各施設単位、支所単位で行われていた公文書送達業務を地域的な重複をさけ市内を6ブロックに整理し、効率的な公務連絡体制の見直しを取り組みました。 
  ② また、公務連絡の充実を図るため、小中学校・保育所へ送達する文書の到着日数を短縮、物品(蛍光灯など)の送達、郵便物の収集及び投函、市内4ヵ所ある図書館の書籍の物流業務(2000年10月30日より実施)などの取り組みを実施しています。
  ③ 2001年4月1日から、より効率的で充実した公務連絡体制に向け、部会から当局に対して、市内5ブロック体制などを逆提案する中で、安定的な文書送達業務ができつつあるとともに、さらなる「充実・完成」をめざして取り組んでいます。
   ※1998年3月31日現在 施設数 252  担当職員数  135人
    2000年7月1日現在   〃  318    〃     19人
    2001年4月2日現在   〃  318    〃     16人

3. 一般部会「総体」としての「公務労働拡大」(共同作業)の取り組みについて

(1) 今日までの一般部会総体としての「公務労働拡大」の取り組みについては、一部の職場での取り組みを除き、ほとんどの職場において職場(個人)の都合や、縦割り行政への埋没などにより、具体的な「実践」に踏み切れていませんでした。そこで、組合主導のもと共同作業(福山城・福寿会館の剪定作業)に参画することとなりました。
   具体的には、学校技術員部会(用務員部会)を中心とした清掃部会を含む作業に、一般部会の仲間が「協働・協力」して参加する形で、部会全体としての「公務労働拡大」の取り組みの第一歩がスタートしました。今日では学校技術員部会の女性ブロックが取り組んでいる花づくり(プランタン1,000鉢)の共同作業にも参加しています。
(2) この共同作業への参加については、初めての取り組みという「戸惑い・不安」のある中で、部会員全員での意思統一ができないまま、役員会における「役員だけでも頑張る」という確認をもとに、部会員に対しては一人ひとりの自主的・主体的な取り組みによる参加を要請したうえで、共同作業へ入りました。
(3) 共同作業に参加した役員からは「とてもしんどかったがやり甲斐があった」「職場・職種の違いによる受け入れが不安であった」「充実感があった」「一緒に作業をするうちに人間関係ができた」「今まで気づかなかった仕事が見え、やってみようと思った」など、やる前と実際にやってみてからの意識は変わってきています。まだまだ全部会員の取り組みにはなり得ていませんが、部会としても学習会を重ね「まずやってみよう」「実践してから考えよう」と提起しながら、これまでの取り組みの「成果・課題」を「総括」しながら、引き続き、実態を積み上げていきたいと考えています。

4. まとめ

 一般部会の「公務労働拡大」の取り組みは始まったばかりです。したがって、「自分たちは8/8の仕事をしている?」「自分の仕事があるのに何故他の職場へ?」など、「自分優先」「職場優先」「やっているつもり」などに基づく「不平・不満」の意見は克服できていません。反面、少数職場なるがゆえの弱点(1人や2人でできないこと)も、みんなでやればできるし、大きな仕事もできるという成果もあります。
 そのためには、「職場や職種」の違いを強調するのではなく、その違いを認め合いながら、今日まで「縦割り行政」の中でしか考えられなかった仕事のあり方を見直し、「所属を越え・部会を越え」ともに取り組み、市民が必要とするサービスの提供が不可欠であるということを、共同作業に参加する中から学ぶことができました。
 引き続き、本来業務の充実と「公務労働拡大」の「充実・拡大」に向け、また、その延長線上にある「市民から必要とされる公務職場(仕事)の確立」へと、さらなる取り組みの積み上げることを確認し報告とします。