【自主レポート】
自治体情報化と民主的地方自治確立
広島県本部/新市町職員労働組合 新谷 昌亮
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1. 地方自治研究活動の意義・目的(自治労綱領より)
中央集権的な自治体支配と自治体合理化によって地方自治の破壊をもくろむ独占資本とその政府の攻撃に対して、民主的地方自治を確立する運動をみずから展開する必要性を痛感した自治労は、1957年4月、甲府市における第1回地方自治研究全国集会の開催を皮切りに、全国集会、地方集会や職場自治研究活動を積み重ね、「地方自治を住民の手に」をスローガンに運動を展開してきた。 |
独占資本とその政府は、資本主義の政治的経済的危機を勤労国民の生活破壊と民主主義の抑圧を軸としてのりきろうとしている。 |
本来、地方自治は、地域住民が共同の社会生活を営むために、民主的に共同事業を行うものであり、住民みずからの基本的人権を守るものとして、住民自治によってつくりあげられるべきものである。そして、地方自治体はそれを具現する場でなければならない。
しかし、わが国の地方自治体は、住民を抑圧する国家機構の一部となり、独占資本とその政府は、地方自治体を権力的な行政機関として住民支配を強化する道具としている。そのため、独占資本とその政府の施策は、住民の生活要求や自治権確立の運動と、自治体行政の場で衝突することになる。
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しかし、われわれ自治体労働者は、みずからの生活と権利を守り、さらに独占資本とその政府のために奉仕するのではなく、住民自治のために働く労働者であることを自覚し、その産業別団結体である自治労へ結集している。したがって、自治労は、地方自治体を民主主義運動の拠点として重視し、住民自治と自治体の民主化のために、みずから積極的に行動するとともに、その運動の必要性と具体的な運動課題、運動方針を全勤労国民に提起する。 |
支配機構の末端に位置づけられている自治体労働者は、総評運動、自治労運動の推進にあたって、権力的な制約、保守的な圧力をうける。この制約や圧力をはねのけるための自治体労働者の不断の努力が、全国的な自治労運動、総評運動の基盤を拡大し、より確固たるものにしている。
自治体労働者は、従事している業務のなかで、独占資本とその政府の住民抑圧政策の本質を直接体験することを通じ、それと対決して民主的地方自治と民主的政治経済体制の確立にむけての運動方向を、自治労に結集して追求する。
自治労は、自治体労働者の生活向上、労働条件改善、権利拡大を中心的な課題にすえ、独占資本とその政府による勤労国民の搾取と収奪、抑圧に反対し、全勤労国民の生活向上のためにたたかう。住民自治権確立をめざす自治体民主化と民主的地方自治を保障する国家制度の確立のためにたたかう。
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民主主義と地方自治の破壊および労働者、住民支配をめざす中央統制的な制度改悪、政策実施に反対し、国民生活を向上させるための民主的な自治体確立のためにたたかう。
そのために大きな力となる革新首長の実現、議会および地域における革新勢力の拡大をめざすとともに、革新自治体の民主的諸政策と民主的な地方行財政制度の確立のためのたたかいを支持し、推進する。
自治労は、以上のたたかいを地方自治研究活動を通じて積極的に提起し、県評、地区労をはじめ全労働者、地域住民、民主団体などとともに、その中軸となってたたかう。
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2. 自治体情報化とは
2002年8月5日からすべての国民は11桁の背番号(住民票コード)で管理される。
(1) 国のIT国家実現のための施策
① 経 過
1999年
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第145回通常国会成立法
分権一括法、情報公開法、
ガイドライン関連法、国旗国歌法、通信傍受法、憲法調査会設置規定
住民基本台帳法改正(住民基本台帳ネットワークシステム導入決定) |
2000年
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7月
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IT戦略会議、情報通信技術(IT)戦略本部設置 |
8月
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IT革命に対応した地方公共団体における情報化施策等の推進に関する指針 |
11月
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IT基本法成立 |
12月
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自治事務等に係る申請・届出等手続きのオンライン化の推進に関する政府の取組方針
地域IT推進のための自治省アクションプラン策定 |
2001年
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1月
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e-Japan戦略策定:5年以内に世界最先端のIT国家 |
3月
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e-Japan重点計画策定 |
6月
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e-Japan2002プログラム策定 |
10月
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電子政府・電子自治体推進プログラム策定
全都道府県・政令指定都市接続 |
12月
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高知市2002年11月の市長選での電子投票見送り決定
理由;投票結果の集計への反映具合などのチェック方法未確立。
国の2分の1の補助を受けても現行より9,000万円余計な費用。
国政選挙は従来どおり紙のため混乱が生じる可能性がある。 |
2002年
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2月
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地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録を用いて行う投票方法等の特例に関する法律、同施行令施行 |
4月
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総合行政ネットワークへの参加の促進について
(遅くとも2003年度までに全自治体接続要請)
LGWANと国の霞ヶ関WAN相互接続 |
6月
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新見市で初の電子投票実施予定 |
8月
5日
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住基ネットワーク一次稼動 市町村、国、県、指定情報処理機関での本人確認情報の通知提供開始 |
2003年
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8月
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住基ネットワーク二次稼動 住民票の写し広域交付、住基カード配付 |
2001年4月1日現在の自治体のホームページ開設率 83.3%(広島県67.4%)
② 具体的推進事項
2003年度までに電子情報を原本とし紙情報と同等に扱う行政を実現する。
申請・届出等手続きのオンライン化 地方自治体の行政事務のうち、2002年度までに59%(3,055件)、2003年度までに95%(4,914件)のオンライン化を目指す。
主にはインターネットを利用した行政手続きの電子化で行政機関間の文書のやり取りはほとんどが電子データで行われる。
住民はほとんどの行政手続を24時間いつでもインターネットでできるようになる。
(例)
ア インターネットだけでできるもの
婚姻届等の出生・死亡以外の戸籍の届出、確定申告、介護保険申請等
イ 申請はインターネットだが受け取りは窓口
戸籍謄本等の戸籍証明、国保証、印鑑証明、道路専用許可証、所得証明等
ウ 自治体の職場は出勤したらパソコンの電源を入れ出勤簿システムの入力から仕事が始まる。スケジュール管理システムで予定の確認、メールチェック・回答、文書管理システムで稟議に電子決済で次の人へ転送、回覧システムで回覧チェック次の人へ転送、会議室予約システムで会場確保、公用車の予約、会議開催の案内をメール送信、時間外勤務入力、休暇届、出張命令簿、年末調整等 ぜーんぶパソコン
③ 電子自治体の実現スケジュール
第1段階 国と地方の情報基盤の推進
住民基本台帳ネットワーク整備(2002年)、LGWAN整備(2003年度中)
職員の一人1台パソコン整備
電子調達・入札開始(2002年度)
第2段階 インターネット上での本人確認の仕組みづくり
公的認証サービス運用開始(2003年度中)
第3段階 地方公共団体の電子窓口サービスの推進
都道府県(2002年度)、市町村(2003年度以降順次)で電子申請システムの運用を開始し拡大していく。
④ メリット
住民が必要とする行政情報の提供、手続きの簡素化、政策への住民参加(パブリックコメント制度)、情報公開の促進による透明性の確保の手段として有効。
⑤ 課 題
ア 個人情報保護対策
イ セキュリティポリシーの確立
ウ 情報公開
エ デジタルデバイドの是正
オ 知的所有権
カ 費用対効果の検証
キ システム監査、行政評価
情報化とは一言でいえば情報の共有化といえます。
自治体の情報化は住民のための行政施策推進のための多くの手段のうちの一つの手段(道具)であって、情報化することが目的ではない。確実な個人情報保護を大前提としたうえで、住民自治に基づく民主的行政運営により住民福祉が向上する手段としての有効活用を基本に対応することが必要です。
厳しい労働条件の中で、「自分達の業務が短時間ですめばよい」「住民にとって有益なことでも仕事が増えるのはいやだ」と大切な住民自治の確立という基本を忘れてしまいがちになることはないでしょうか。私達は今は「たまたま自治体労働者」ですが、退職し一住民になった後は、あたりまえのことですが行政サービスを受ける側になります。労働運動を強化発展するなかで住民の意見が反映された地方自治体や国の施策を実現することは平和で安心し暮らせる社会の実現につながると思います。
3. LGWAN(総合行政情報システム)とは
国、都道府県、政令指定都市、市町村全てを結んだネットワークで2003年度までに全ての市町村の接続が要請されている。当初は行政機関間だけのネットワークですが、インターネットとの接続により行政機関の総合窓口として国民が電子申請等に利用する予定となっています。
2002年4月1日現在のLGWAN参加団体数:都道府県47、政令指定都市12、その他市町村26団体となっていますが自治体情報化の基盤として活用するため2003年度までの接続を要請しています。
4. 住民基本台帳ネットワーク経過と課題
(1) 概 要
2002年8月5日住民票に11桁の住民票コードが記載され国、都道府県、市町村、地方自治情報センター(総務省外郭団体)がオンラインで情報交換を開始する。2003年8月から住民票の広域交付、転入転出の特例処理、住民基本台帳カード(ICカード)の交付が始まる予定。
構築費用320億円、毎年の運用経費180億円といわれています。
導入目的を国(総務省)は「住民の利便を増進するとともに、国及び地方公共団体の行政の合理化に資するため、市町村の区域を越えた住民基本台帳に関する事務の処理及び国の行政機関等に対する本人確認情報の提供を行うための体制を整備しあわせて住民の本人確認情報を保護するための措置を講ずる。」と説明しています。
(2) 経過(表現は旧省庁名)
総背番号制の動きは1968年に大蔵省を中心とする七省庁会議の「行政統一コード」構想と自治・警察省・法務の「戸籍コンピュータ」構想の2派があり省益のため主導権を競っていました。1980年代に大蔵省のグリーンカード制が総合課税への移行と合わせ導入されようとしましたが、国民総背番号制への懸念や行政による国民の監視社会化への反対と自治省の抵抗によって廃案となりました。その後大蔵省は厚生省の基礎年金番号の利用を検討していましたが、自治省は戸籍から導入しやすい住民票をベースとした構想に転換し、今回の住基法の改正にいたりました。
(3) 導入の課題
① メリットとされている住民票の広域交付の住民票はパスポートや免許証には使えない。
② 転入転出時も事前の通知(付記転出届)やカードの返還作業がある。
③ 住基法改正時に付則で追加された「法律の施行にあたって政府は個人情報の保護に万全を期すため、速やかに所要の措置を講ずる。」が実行されないままシステムの稼働日は決定された。
また、現在審議されている個人情報保護法も多くの課題(後述)がある。
④ 国の情報機関等への情報提供は10省庁の93事務類型と限定されていたが法が施行される前に早くもその拡大のための再改正案が示されようとしている。
法律で定めた事務以外に利用してはならない→法律で定めればなんにでも利用できる。総背番号として活用される可能性が高い。
⑤ 本来住民基本台帳法は地方自治法に基づいた住民の居住関係を公証するための地方自治体の制度であるにもかかわらず国がその制度で収集した個人情報を目的外利用することとなる。
⑥ 国から完全に独立し権限をもつ監視機関がない。
⑦ 住民登録制度が国民登録制度化され分権推進法の理念はむなしく自治体は国の出先機関的になる。
(4) 住民基本台帳カードの課題
① 住民基本台帳カードはICチップとマイクロアンテナを組み込んだ非接触型に決定され8,000字(新聞1ページ分)の情報を書き込める。自治体で自由に活用でき、印鑑証明発行、施設予約、図書館、健康診断記録、所得、納税記録等多くの個人情報が集積される。
② カードの発行は本人の任意にまかされるとされていますが、カードがある場合と無い場合で差異が生まれたり、提示が日常的に求められるようになり、結果的にその所持が強制されることになる可能性がある。携帯電話を持っていなければ珍しがられるように。
③ 他人が個人コードを聴きだすことは違法ですがカードの提示を求めることは違法ではない。
④ 民間利用は禁止とされていますが、納税者番号として利用された場合は民間利用が必須となる。
⑤ カードの名前が使われ通称名はつかえなくなり戸籍名が絶対化されます。
(5) もっとも懸念される課題
国家危機管理、治安維持の名のもとに国民統制利用にされる。
総背番号制・有事法制→抵抗勢力(組合等)つぶし→憲法改悪→国による国民統制→民主主義の崩壊→いつかきた道へ……
(6) 労働組合の取り組み
2001年8月 第71回定期大会自治労運動方針より
住基ネットワークシステムの構築にあたっては、市民、職員にシステム及びシステム構築にかかわる内容を公開し、個人情報保護制度の確立、システムリスクの回避、セキュリティ対策、システム管理責任の明確化、自治体の財政負担の縮減、自治体業務への影響説明など、引き続き解明要求と改善に取り組みます。 |
所得税の総合課税課による公平な税制を目的に、住民基本台帳に基づく付番方式による納税者番号制度の実現を目指します。 |
キャピタルゲイン(総合課税制度)を導入する場合には納税者番号は必要になりますが現時点でその現実的な具体案について審議もされていない中で納税番号だけを先行して認めるべきではなかったのではないかと思います。さらに納税者番号のためなら納税者だけを対象とした専用の番号を付すべきです。出生届と同時に強制的に11桁の背番号を背負わされるリスクの重大さに対する課題認識が不足していた。
自治労も連合も不公平税制の是正のための総合課税という方針があり、むしろ民間利用につながる住民票コードの納税者番号化を求めている。「住民票コードはいつでも変更できる(履歴もしっかり残るのに)」というごまかしにより抵抗できなかったのではないかと思います。
ガイドライン関連法、国旗国歌法、盗聴法などの議論の中で単組でも不十分な取り組みとなった。
(7) 今後の取り組み
① 杉並区住民基本台帳に係る個人情報の保護に関する条例の取り組み(2001年9月交付)
自治事務である住民基本台帳事務について、地方自治体の立場で、住民票記載事項の不適正利用等により住民の基本的人権が侵害されるおそれのあるときには必要な措置をとるなど、主体的な姿勢を示す内容となっています。
住民の基本的人権を擁護する立場から、地方自治の本旨にのっとり、主体的な取り組みを行うことが必要です。
② 各自治体で真に自己コントロール権を保障した保護条例の制定が必要です。
検討段階からの組合参加、チェック機能を有する第三者機関の設置と組合参加
③ 抜本見直しに向けた国民世論の形成
5. 個人情報保護法の課題
① 基本原則に憲法で保障された基本的人権の尊重の視点が欠落している。
② 社会的差別につながる事項や思想信条、労働組合への加盟等のセンシティブ情報の収集も活用も禁止していない。
③ 国民の個人情報の自己コントロール権の定義があいまい。→保障されていない。
いかなる情報がいかにして収集され、いかに管理され、加工され、いかに利用されているかを公表し、開示・訂正・削除の権利を国民に保障すべき。
④ 本人同意の取り方が甘い。本人通知の厳格化が必要。
⑤ 行政分野における個人情報保護の不備がある。
⑥ 民間に対する主務大臣の権限が大きい。与党政治家の不正隠しにつながる。
⑦ 言論・報道の自由が脅かされる
6. 電子投票
(1) 概 要
① 2002年6月岡山県新見市で全国初の電子投票実施予定、広島市も積極姿勢
② 投票の方法
ア 投票所でICカードを受け取り、投票機に挿入
イ 画面に表示された候補者名に指で触れ投票
ウ ICカードは投票所の出口で職員が回収、初期化して別の有権者に渡す。
エ 全投票が終了後、選管職員が投票機からデータ記憶媒体を取り出し開票所に運び集計
(2) 今後の予定(電子機器利用による選挙システム研究会の中間報告より)
第1段階 指定された投票所の電子投票機で投票(新見市)
第2段階 都合の良い投票所の電子投票機で投票
第3段階 個人のパソコンでどこからでも投票
(3) メリット
①投開票時間の効率化、②無効票・疑問票の削減、③投票率が上がるかもしれない。
(4) 課 題
① 民主主義の根幹の崩壊につながる恐れがある。
バックアップのため誰が誰に投票したかが特殊な方法で記録される(行政職員ではなく電算委託会社の専門知識を持った人が操作)→秘密投票の崩壊
② 機械の故障・長時間停電、投票データの改ざん、障害を持つ有権者の参政権の保障
7. 労働安全衛生対策
(1) VDT作業における労働安全衛生管理のためのガイドラインの改定
2002年4月5日付け厚生労働省労働基準局長通達(1985年以来の改定)
① 背 景:VDU作業者の激増(一般化)、ノート型パソコン・携帯情報端末の普及、マウス等入力機器の多様化、様々なソフトウエアの普及、VDU作業者に心身に疲労感が多い(厚生労働省実態調査結果:身体的疲労を感じている者;77.6%、精神的疲労を感じている者36.3%)
② 改定概要:幅広い作業と作業者を対象、ノートパソコン等の選定基準、作業の種類と作業時間に応じた健康管理の実施、メンタルヘルス等健康相談の努力義務、高齢者・障害等を有する作業者及び在宅ワーカーへの配慮事項
(2) テクノストレス症候群
コンピュータが一般にも広く普及するにつれて急増している新しい精神不健康状態で2つに分けて考えられている。更に最近はインターネット症候群ともよばれる症状も増えてきている。
① テクノ不安症:コンピュータになかなかなじめない人が無理に使いこなそうと悪戦苦闘するうち、学習拒否、肩こりやめまい、どうき、息切れなど自律神経失調の症状や、うつ病などが現れるようになるもの。
個人予防策:自分の他の能力にも目を向け自信をもつ
対 策:事前の研修、教育を習熟度に応じて確実に時間をかけて実施させる。
② テクノ依存症:コンピュータに適応しすぎてパソコンなしでは不安を感じる、対人関係を嫌う、思いやりが欠如する、はい/いいえのどちらかといった機械的で単純な考え方になり曖昧な考え方が受け入れられなくなるようになる、自分の限界が分からなくなる、時間の感覚がなくなる、邪魔されるのが我慢できなくなる、人を見下すようになるもの。
→協力ではなく競争する人事評価制度に矛盾を感じない。
個人予防策:休暇を多くとる、人との交流を多くする、思いやり優しさの重要さを再認識する。
対 策:衛生委員会を設置・活性化する。
労働者がいつでもプライバシーを守られた状態でカウンセラーに相談できる仕組みをつくる。
ポイント:名称を「メンタル相談」ではなく「ストレス相談」とする。
医療機関と委託契約を結び労働者が直接予約し相談できるようにする。(第三者が介在しない)
家族も相談できるようにする。
心療内科、クリニックのほうが行きやすい。
8. この間の単組での取り組み
自治体情報化は1990年頃までは臨調行革路線に基づく人員削減・合理化攻撃と位置づけ住民の個人情報保護や労働安全衛生の対策の不十分さから反対闘争を行ってきた。しかし、当局から総合住民情報システム導入の事前協議を契機に、職場協議を行う中で「人員確保が不十分な中で急増する業務に対応できない」「住民サービスの向上にもつながるのではないか」等の意見もある中で、単組全体で議論を行い、「OA導入に当たっては、自己処理による自治体責任の貫徹」「組合参加による職場民主主義の確立」「住民参加による自治体民主主義の確立」の自治労三原則に基づき対応する。電算導入検討委員会に組合推薦委員を加えるとともに、個人情報保護、住民参加システム、情報公開制度、労働安全衛生の確立を協議していくことを加えることを条件に合意し、組合参加のもと独自導入をしてきた。
具体的には個人情報保護検討委員会の中に3名の委員を組合選出し参画する中で紙文書も対象とした、自己コントロール権を保障する保護条例の施行と個人情報保護審議会への労働者の代表の参加。VDU作業基準の策定により、OAチェア配置(5本キャスター、肘宛付)、OAデスク配置、タイマー設置、VDU作業者用の健康診断、健康相談の実施。
また、情報化については、計画等を事前に情報提供をさせ、導入目的が人員削減ではないことを確認したうえで必要な人員体制を確立し独自導入するとともに、事前研修の計画的な実施、マニュアルの整備、統一的なオペレーション、セキュリティ対策の実施、個人もちパソコンを完全廃止し必要な端末の設置、ワープロ・表計算ソフトの統一と習熟度別研修の実施を行ってきた。現在、情報公開制度を前提に文書管理の改善作業を行っている。
新たなシステム導入を行う場合は必ず事前協議により団体交渉で課題を整理し職場協議を踏まえ導入の是非の決定を行っている。最近では、電子メール取り扱い要領、インターネット運用基準の策定をし、機器の配置についても当局に報告を義務付けている。
労働組合としても事務のパソコン処理とは別に組合員や住民への双方向の情報伝達手段としてホームページやEメールの活用を協議する時期だと認識しています。費用の都合によっては、当局への情報漏えいが前提となるが、当局側の整備した機器とシステム(グループウエア)の有効活用も検討する必要があると考えています。
9. 合併時の電算システム統合の課題
合併時の電算システムの統合は本当に大変です。理事者の中にはコピーすれば済むとくらいにしか考えていない人もいます。みずほ銀行の事故は必然であり教訓にしなければなりません。
10. おわりに
分権推進法の理念とは程遠く、政治の右傾化と中央集権化が加速し、権限や財源ではなく業務だけが移譲されている感は否めない状況があります。
わたしたちは一部の資本家とその代弁者の政府のために奉仕するのではなく、住民自治のために働く労働者であることを自覚し、政府や当局の施策の本質を見抜き、受身ではなく政策提言を積極的に行えるよう自治研活動を強化・発展させなければなりません。
単組では自治研専任の執行委員を配置し、自治研部会で定期的に学習活動を行っています。
大きな津波が押し寄せてくる中で単組だけの力ではどうにもならない課題も多いですが、みんなで決めた方針を基本に最大限努力することは大切だと考えています。結果だけでは判断できない経過が運動を継続・発展させて行く力になると思います。
情報化だけにかかわらず当局に事前協議制を遵守させ、住民の立場に立った労働組合としての政策を反映させて、民主的地方自治確立のため、ともに悩みともに行動する中で単組の団結を強化し自治労に結集する中でがんばっていきたいと思います。
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