【自主レポート】
東城町職労の市町村合併に向けた取り組み
(単独町政を選択して)
広島県本部/東城町職員労働組合 藤井 皇造
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1. 今、なぜ「市町村合併」なのか
東城町まちづくり懇談会資料より抜粋
市町村合併は、地方分権の一環として打ち出されました。国から地方への分権が進めば、それだけ地方自治体が行う住民への行政サ-ビスが増えますので、それに対応するためには、行財政基盤の強化を図らなければなりません。その対応策としての手段が合併というわけです。ただ、市町村の分権への受け皿づくりが必要なことはいうまでもありませんが、合併が急がれる最も大きな理由は、国・地方を通じて深刻な財政危機にあるといわれています。
(略)
1. 合併の必要性(広島県市町村合併推進要綱から)
① 地方分権の推進
② 日常生活圏の拡大
③ 少子・高齢化の進行
④ 新しい行政課題
⑤ 国・地方の厳しい財政状況
2. 市町村合併の効果と課題(広島県市町村合併推進要綱から)
(1) 合併の効果(メリット)
① 地域づくり・まちづくり
② 地域のイメ-ジアップ
③ 住民サ-ビスの向上
④ 行財政運営の効率化と基盤の強化
(2) 合併に向けた課題(デメリット)
① 中心になる地域は整備されるが、周辺部は取り残されるおそれがある。
② 人口が増えたり行政組織が大きくなって、住民の声が届きにくくなるなど行政と住民の結びつきが薄れるおそれがある。
③ 役場など公共施設への距離が遠くなり、住民にとって不便になるおそれがある。
④ 行政サ-ビスが低下したり、公共料金などの住民負担が増加したりするおそれがある。
⑤ 従来の歴史、文化、伝統といった特徴や個性が失われるおそれがある。
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2. 町職労でのこれまでの取り組みについて
(1) 取り組み当初における方向づけ
町職労では、昨年10月18日に開催した定期大会において、この市町村合併の問題について、次のことを確認しました。
それは、国や県からの強制によるものではなく、自主的合併と住民合意が基本でなければなりません。しかし、「現状は地方交付税の見直し」「段階補正の削減」などが打ち出され、国や県の支援策・誘導策で小規模自治体や財政上厳しい自治体は、合併せざるを得ない方向にあります。
東城町においても、合併する・しないの議論が行われていますが、合併するにしてもしないにしても現状の財政状況からみれば、労働条件・雇用条件に大きな変化がおとずれるものと思われます。勤務・労働条件に関わる問題であるだけに当局交渉により十分議論するよう取り組みます。
また、時代の流れだから市町村合併するのではなく、自治研部会を中心に組合員相互の学習の場を設け、市町村合併とはなにか、今なぜ市町村合併なのか、町の方向はどうあるべきなのか、町職労としてこの問題にどう取り組むのか、本当にそれでいいのか、みんな納得するのか、など十分な論議を重ねるという観点で、これまで取り組みを行いました。
(2) 取り組み状況
・2001.10.15 町長、合併する方向の考えを職員へ報告
・ 10.18 町職労定期大会(方向づけ)
・ 10.31 代議員会(職労としての今後の取り組みについて協議)
・ 11. 7 全体職場集会(代議員会の決定事項について報告)
・ 11.12 自治研部会(部会としての今後の取り組みについて協議)
・ 11.13~16 職場集会(意見・考え方の把握)
・ 11.20 当局交渉(町長の考え方について)
・ 11.22 代議員会(当局交渉結果について協議)
・ 11.30 自治研部会(アンケ-ト内容などについて協議)
・ 12. 5~10 アンケート調査の実施
・ 12.13 当局交渉
・ 12.18 代議員会(庄原市職労対策などについて)
・ 12.26 自治研部会(アンケ-ト結果の集約)
・ 12.27 アンケート結果を組合員へ周知
・2002. 1. 9~11 職場集会(アンケ-ト結果に基づいた学習会)
・ 1.15 自治研部会(職場集会で出された意見などについて協議)
・ 1.18 庄原市職労定期大会(自治労復帰ならず)
・ 1.28 代議員会(「考え方・運動の展開方針」決定)
・ 2.22 当局交渉(組合としての考え方を伝えるとともに、町民アンケートの結果等に基づいた町長の決定に対する考え方を聞く)
・ 2.26 郡協幹事会(ブロック合併対策会議に向けた協議)
・ 3. 4 東城町議会地方分権調査検討委員会結論(単独町政で)
・ 3. 7 東城町議会結論(単独町政で)
・ 3. 7 町長、議会で意思表明(議会議決を重く受け止め、熟慮した結果当面、「単独町政を推進する・合併しない」という方向で決断。今後は、単独町政を基本に行政運営にのぞむ。)
・ 3.11 代議員会(合併問題の総括)
・ 3.12 比婆・庄原・総領ブロック合併対策会議(状況報告、オブザーバーとして協力)
(3) アンケ-ト結果について
① 組合アンケ-ト(抜粋)
組合員数:136人 回収数:95人 率:69.9%
1. 合併についてどう思うか。
(1) 比婆郡・庄原・総領で合併すべき 3.2%
(2) 神石郡と合併すべき 2.2%
(3) 福山市等備後地方と合併すべき 2.2%
(4) 合併は将来やむを得ないと思うが、今は範囲や時期を考えるべき 55.9%
(5) 合併はすべきでない 33.3%
(6) わからない 3.2%
・……………………………………・………………………………
(1)+(2)+(3)= 7.6% 合併賛成
(4)+(5) =89.2% 現在のところ合併反対
2. なぜ合併すべきでないか
・中央部(庄原市)だけが発展し、周辺部は取り残される。
・膨大な区域となり、住民の意見が反映されにくくなるとともに、効率的な行政運営が出来にくくなる。
・地域の個性が失われ、文化伝統が消滅すとともに、行政区域内での一体感が生れない。
・市役所の所在地が遠くなり、不便である。
・地域格差を補うため、税金が高くなる。
・足腰が弱いもの同士が合併しても、過疎化や厳しい財政状況からの脱却をはかることは不可能であり、より一層東城町の過疎化に拍車がかかる。
・その他
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② 町当局のアンケ-ト結果に対する組合としての分析
回収率75%という有権者を対象としたアンケート調査としての高い回収率は、それだけこの問題への町民の関心の高さがうかがえます。
・合併賛成:31.9%、合併反対:39.9%
・年齢別では、70歳以上合併賛成:35.4%、合併反対:34.8%
それ以外の年齢層では、合併反対が賛成をすべて上回りました。
20歳代の差:16.5%、30歳代の差:20.4%
40歳代の差:17.6%、50歳代の差:10.1%
60歳代の差:6.9%
このことは、青年層、中年層において、自分や子、孫などの将来を考えると現在の東城町の姿が望ましいことの選択であり、またこれまで町長を中心に職員が一丸となって本町において取組まれてきた行財政改革や各種事業の一定評価の表れであると考えます。
しかし反面、単独でいく場合の予想される厳しい財政運営や各種事業を乗り越える決意もうかがうことが出来ます。
特に町づくり懇談会や区長文書、さらには議会における町長の熱心な合併推進の説明にも関わらず、このようなアンケート結果が出たことは、やはり切り詰めるところは切り詰め、汗や血を流すところでは流し、住民参加によるまちづくりの推進の表れであると考えることが出来ます。
そのような町民の選択にも関わらず、町長が合併推進の方向性を出されたことにたいしては、理解しがたいものがあります。
(4) 町職労としての考え方(2002.1.28 代議員会決定)
国・県が進めている2004年度末までという期限を切ったかたちでの合併推進は、町内に混乱をもたらし、自治の停滞を招くことになる。合併するということは、まちづくりのための事業や予算、福祉の制度などの決定権(自治権)が現在の町域から無くなり、新市の中心市街地を中心としたものになる。
合併問題は、町民の生活基盤や地域コミュニティーの形成、自治の手法などに深く関わる問題であり、東城町の将来のあり方について、正確かつ十分な情報が町民に公平に提供され、自らが真剣に議論できる場を保障し、よって自主・主体的に町民の合意に基づいて決定されるべきである。さらには、今後どのような町づくりを進めていくのか、その理念や具体的な施策・事業を示した中での議論が重要である。
これまでの自治研部会を中心に実施した「市町村合併に関するアンケート」結果や職場討議内容を考えるとき、国・県が進めている期限までの合併は短絡的かつ時期尚早であり、到底賛成できるものではない。
したがって、東城町職員労働組合としては、合併反対の意思表示をする。 |
3. これからの課題
東城町においては、「当面、単独町政」ということになりました。このことは、職員労働組合の決定どおりであるとともに、町民のアンケ-ト結果、さらには議会の議決によるものです。市街地の形成状態や産業・経済の状況、インフラの整備状況、さらには歴史・文化・伝統の形成状況、商業圏・経済圏の形成状況からいえば当然の結果といえます。
これからより一層、町民参画による町づくりを進め、参加と協働による住民自治の確立が重要です。
しかし、今後国・県の各種補助金の削減や地方交付税などの減少が十分予想され、予断を許されない状況です。
現在、町当局においては、事務・事業の見直しや財政の見直し、さらには職員の賃金・諸手当の見直しなどが進められようとしています。色々な問題点を想定する中で、単独町政の推進を決定したのも職員労働組合です。
これから勤務労働条件の変更などの提案が予想されます。さらには単独町政推進のもと議会や町民からの組合や職員への各種攻撃が予想されます。単独町政を選択したことによる勤務・労働条件の変更をはじめとした行財政改革の推進といった極と、自分たちの生活と権利を守る極、この両極への取り組みが、これからの大きな課題であるとともに、組織討議を重ねる必要があります。
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