【自主レポート】

市町村合併に対する宇城地区支部・松橋町職の取り組み

熊本県本部/松橋町職

1. 地域の概要

(1) 宇城地区
  ① 熊本県の中央に位置し、北は熊本市、南は八代地域、東は九州山地、西は有明海、八代海(不知火海)及び天草地域に隣接しており、宇土市、宇土郡(三角町、不知火町)、下益城郡(城南町、富合町、松橋町、小川町、豊野町、中央町、砥用町)の10市町で構成されている。
    面積は463.18K㎡で県全体の6.3%、人口は141,761人(2000年国勢調査)で県全体の7.6%を占め、宇土市、城南町、松橋町で増加傾向にあり、この3市町を除く7町では減少ないし横ばいの傾向が続いており、地域全体では1995年度から2000年度にかけて1.6%の増加となっている。
  ② 市町村合併の動きが、県内でも特に進んでいる地域で、2002年1月に宇城西部5町(三角町、不知火町、松橋町、小川町、豊野町)が任意協議会を設置し、同年4月に法定協議会に移行している。また、宇城東部2町(中央町、砥用町)が2002年2月1日、宇土市と富合町が2月13日にそれぞれ任意協議会を設置し、同年7月に法定協議会へ移行している。城南町については、町長が熊本市との合併を指向しているが(熊本市とは隣接しておらず飛び地合併となる)、議会・町民との意識のずれがあり、町民アンケートを実施している。

(2) 松橋町
  ① 宇城地区の中央に位置し、町の東部が丘陵地で、西部は八代平野に続く平坦地である。また、JR鹿児島本線、国道3号・218号・266号、九州自動車道が南北・東西に走り、交通の要衝となっている。さらに、熊本、八代両市から20㎞内外の距離にあるため、住宅地の開発がめざましく人口が増加している。宇城西部5町で合併すると考えた場合、中心地となることがほぼ確定しているのではないかと思われる自治体でもある。

  ② 財政状況、人口構成などのデータ(2000年度現在)
団体名
(2001.3.31 住民基本台帳)
就業人口(1995国調)
面積
人口
世帯数
65歳以上
高齢化率
第1次
第2次
第3次
(K㎡)
三 角 町
10,305人
3,519
2,970人
28.8%
33.6%
18.5%
47.9%
48.30    
不知火町
9,804人
3,105
2,280人
23.3%
23.5%
25.5%
51.0%
28.83    
小 川 町
13,808人
4,050
3,520人
25.5%
27.1%
27.7%
45.2%
41.69    
豊 野 町
5,041人
1,534
1,401人
27.8%
24.7%
33.6%
41.7%
31.54    
松 橋 町
25,010人
7,743
4,602人
18.4%
13.4%
28.1%
58.5%
38.15    
合 併 後
63,968人
19,951
14,773人
23.1%
22.5%
26.3%
51.2%
188.51    

団体名
基準財政
需要額
基準財政
収入額
地方交付税
財政力指数
経常収支比率
公債費比率
地方債
現在高
地方税
地方譲
与税
普通
特別
三 角 町
3,060,580
731,659
2,327,315
278,792
0.239
92.1%

15.0 

4,784,508
731,093
75,521
不知火町
2,372,628
671,228
1,728,919
202,076
0.283
84.7%

18.9 

4,933,412
668,151
40,808
小 川 町
3,191,906
1,084,957
2,105,274
213,897
0.340
84.6%

15.3 

5,854,423
1,102,805
94,549
豊 野 町
1,628,711
355,663
1,271,878
150,260
0.218
78.3%

8.2 

2,595,986
318,628
36,057
松 橋 町
4,396,287
2,087,903
2,306,077
278,428
0.475
78.5%

14.6 

9,331,686
2,250,790
97,092

合 併 後

14,650,112
4,931,410
9,739,463
1,123,453
0.337
83.5%

 -

27,500,015
5,071,467
344,027

  ③ 5町で比較すれば、人口の将来推計は、松橋町以外は減少が予想され、また、65歳以上人口比率も松橋町が一番少なくなっている。しかも、財政状況のデータを比較しても松橋町が合併するメリットがどこにあるのか疑問である。将来の「まちづくり」のビジョンがはっきりしないまま、合併が急速に進められていくことについては不安感を持っている。(後述4(2)職員アンケート結果参照

2. 地区支部合併対策委員会

(1) 発足の経過
   県本部の方針で、各地区支部に合併対策委員会の設置が提起され、宇城地区支部においても、当局の動きがどんどん進められている状況のなかで、対応がおくれてしまうのではないかという懸念があった。そういうなか、中球磨5ヵ町、福岡県宗像市などへ地区支部・単組が研修に行き、交流するなかで対策委員会の必要性を強く感じ、取り組みが始まった。

(2) 体制・会議の内容
  ① 体 制
    委員として、各単組より委員長・書記長・執行委員・現評代表の4~5名選出し、枠組み毎に3つの部会に分ける。その中でそれぞれ部会長を選出する。
部会
   ア 三角町、不知火町、松橋町、小川町、豊野町
   イ 宇土市、富合町、城南町
   ウ 中央町、砥用町
  ② 会議の内容
    対策委員会は、2ヵ月に1回開催し、その間に適宜各部会で議論してもらう。内容としては「賃金・労働条件」、「まちづくり」、「組合組織」の3分野を検討する。
  ③ UKI-pressの発行
    組合員向けに、対策委員会での議論内容などを伝えるため、対策委員会後に発行している。現在、2号まで発行している。

3. 「市町村合併を考える」セミナー

(1) 開催の趣旨
   県本部の方針で、自治労だけでなく、勤労者・市民とともに、市町村合併を議論していくということが提起され、連合熊本に対し、地協でシンポジウム等を開催するよう働きかけが始まった。宇城地域においては、行政主導により進められているが、勤労者・市民の立場で、自治体のサービス・地域づくりがどう変わっていくのか、変わるべきか考えようという視点で、セミナーを開催することになった。

(2) 当日の状況
   日 時……2002年7月4日(木)午後6時~8時
   場 所……ウイングまつばせ(松橋町)
   主 催……宇城労働者福祉協議会、連合宇城地域協議会
   参加者……180名(連合組合員、労福協、勤労協、自治体議員、市民)
   資 料……講師からの講演資料のほか、部会で作成した「まちづくりに関する基礎調査票」のうち、宇城西部5町分を参考として配布した
   内 容
   講 演 小泉和重(熊本県立大学助教授)
        現在の状況をサッカーのロスタイムに例え、「今の時間の使い方で将来の自治体の姿が決まる」と話があり、質疑中にはフロアに降り「合併についてどう思うか」、「合併したらどんなまちになってほしいか」など参加者に質問する場面もあった。
   参加者代表からの意見 鯛瀬優一(三角町議会議員)、上村雄二郎(元宇土市議会議員)、小川ひとみ(宇城そよ風ネットワーク)
        特に、小川さんから、障害者支援の立場でいろんな議論ができる場を行政で作ってほしいという要望があった。
   参加者アンケートの主な意見
       ・講演については、わかりやすい説明で身近な問題としてとらえることができた。
       ・参加者代表の意見については、違う立場の方だったので非常に参考になった。
       ・行政はもっと、住民に対し説明責任を果たし、情報公開により、合併のメリット、デメリットを出してほしい。また、組合としてもその検討内容を示してもらえないか。

4. 松橋町職としての取り組み

(1) 学習会の開催
   全体学習会、組織部会、女性、医療評等で学習会を開催し、組合員の合併に対する意識向上を図った。
   松橋町の当局による職員に対する合併の学習会は、2001年に住民説明会を当局が行った際、そこに参加するよう指示があっただけであった。そのため、春闘の交渉時に組合から職員研修の実施を要求したところ、5月になって職員研修会が開かれることとなった。

(2) 市町村合併等に関する職員意識調査
   自治研部会において、4月から法定協議会が設置されているが、管理職も含めて職員の率直な意見を聞き、今後の活動に活かしていくために実施した。
   <結果分析>  結果から特に言えることは、現在の枠組みだけではなく合併そのものへの疑問の声の多さである。
   設問1「宇城西部5町合併について適当と考えるか」では、「はい」と答えたのが28%に対し、「いいえ」と答えたのは66%にのぼった。これにあわせ、設問4「合併の是非も含め、理想の組み合わせの姿は」では、「松橋町単独」が33%に達した。
   また、設問7・8で「職員として合併に期待すること」「町民への行政サービスで期待できること」「合併全体への意見・要望」を自由記入で聞いたところ、合併に対する賛否両論が聞かれたが、合併に対する不安や疑問が多いこともうかがえた。主な意見は以下のとおり。
    ・現在効率的でない業務、これからの重要施策部門等に職員を重点的に投入して、抜本的な事務改善や、固定的になっているサービスの見直し、プロジェクトチームを作って重要施策に対し多角的な検討を行い、強力な推進体制を確立することができる。
    ・合併に対しての期待はそれほどありません。合併したとして、どこに役所があるかで、周囲の地域人が満足できるサービスをうけられるかどうか、ちがうように思います。
    ・三角町と合併すれば、合併後、三角地区が新市のネックになることは容易に推測できる。三角の再開発に強力なビジョンがあるのなら、合併の不安を解消できるように当局に情報を公開してもらうよう働きかけをお願いしたい。
    ・松橋町民に限っていえば、他の4町との合併の協議の中で必ずしも期待できる点は多いとはいえないと思う。今の財政状況等を比べてみても、松橋町が他の4町に足を引っぱられるような形になりはしないか心配される。合併を急ぐあまり犠牲を後回しにしてしまわないように気をつけたい。
    ・合併による行政サービスの向上はありえない。広域的なサービスで対応できる部分についての受皿が広域連合であり、そちらを検討すべきである。
    ・隣接町の合併により、従来のような各町においての箱物建設が不要となり、現存施設の有効利用が図れる。又、議員・職員等の人件費の削減が図られる一方、専門職の雇用等も可能となり、より高度な住民サービスが期待できる。
    ・いい意味での他町職員との競争、サービスに対しては接客の点で向上できたらと思う。
    ・合併後のグランドデザインをもっと積極的に公開して、住民参加の合併協議会にしてほしい。それでないと、財政的な問題や、国の指導だから合併する(補助金ほしさ)のであれば、松橋町単独でいいような気がする。
    ・町より市に移行できるのは誰しも歓迎するところと思うが、住民サービスの向上については現時点ではよくわからない。
    ・誰のための合併なのか疑問。
    ・合併のメリット、デメリットがわからないので合併の必要性が感じられず、積極的に推進していく気にもならないし、かといって自分から反対を唱えるほどでもない。反対派がいればそれにのっかるかもしれません。
    ・1人ひとりの職員が何らかの形で合併についての協議に係わる中で、常に住民の視点で調整に臨むという事を念頭においておく必要があると思う。自治体の規模が拡大すると民意が反映されにくいというデメリットをどうカバーし、効率のよい行政運営をしていくか大変難しい問題だと思う。
    ・財政面からは必要なのかもしれませんが、サービスそのものをみると質の低下にならないか心配。町によってバラつきがあるし、住民へのサービスのバラつきがあってもいけないのではないか。
    ・財政的な合併ばかりの協議はやめて欲しい。
    ・松橋町は、合併しなくてもやっていけるから合併には反対と言う意見があります。たしかにそうでしょう。しかし、近隣の町には、合併なしにはやっていけないところもあるはずです。果たして、松橋町だけが良ければいいのでしょうか、私は疑問に思います。そこには、「自分さえよければ」と言う考えがあると思います。
    ・財政面を考えると、合併論議はさけて通れません。しかし、あまりにも急ぎすぎのように感じます。国の合併特例法の期限はあるものの、合併の是非を含めて、議論(理想は住民を交えて)すべきと思います。合併はしてみないと、どうなるか分からない。しかし、合併しないと……という考えがあります。合併後"しまった"と思っても、法的には離れることはできるかもしれませんが、現実としては無理だと考えられます。
    ・合併の是非について町民から十分な意見を聞いていないのが気がかり。合併後にいざこざが起きないよう、もっと今のうちから町民と話し合いの場をもつべきだと思う。合併後は松橋が何かと中心になるだろうが、おごりを捨てて他町のいいところは取り入れるような柔軟な考えを職員には持って欲しい。
   結果について個別のデータ…別紙

5. 今後の課題

(1) 合併協議会に対する要求書の提出
   賃金労働条件に関し、協議会事務局でも検討が進められている現状を踏まえ、早急に提出する必要がある。そのためにも、各部会での議論を活発に行っていきたいと考えている。また、「まちづくり」の課題についても、要求書に盛り込んでいけるよう努力する。

(2) 各単組の取り組み
   労働組合の合併(組織、組合費、積立金など)について、論議していく必要がある。また、自治研部会を活性化させ、将来の自治体像について。検討を早急に始めていきたいと考える。

(3) 地域住民への情報提供
   行政側からの情報だけでは、合併を進める立場での説明なので、不十分ではないかと感じる。そこで、いろんな問題点も含めて、ビラ作成し、配布する取り組みやシンポジウム、集会等を実施し、民意を反映する論議の場を作っていく必要がある。

市町村合併等に関する職員意識調査