【自主レポート】

合併問題についての取り組みについて

熊本県本部/苓北町職員組合

1. はじめに

 私たち苓北町職が属する天草地区では、1999年7月に天草広域連合が発足しました。同年11月、天草市町長会が「天草はひとつ」ということで、天草地域合併研究会を設置しましたが、2000年途中に大矢野町等が近隣4町で合併することを表明し、2001年4月、上島4町と2市9町の2つの任意協議会が発足しました。
 合併について様々な協議検討がなされ、最後まで法定協議会への参加を検討していた苓北町も本年4月から法定協議会へ移行し、合併特例法期限切れとなる前の2005年3月の合併をめざすとしました。
 苓北町は、火力発電所を抱えており、今でこそ財政的には若干豊かですが、発電所設置にいたるまでには、数多くの混乱と重苦しい経過を乗り越えてきています。また、住民サービスは天草地域ではもっとも充実している自治体ですが、合併後にその水準を新市全体として確保することは困難と考えられ、住民サービスの質の確保が合併の重要な条件の1つとなっていました。そのため、法定協議会に対し、合併後も苓北地域に財政的な優遇措置を設けるよう、町としての要望を申し入れていました。しかし、法定協議会からの回答はゼロ回答でした。そのため、町長は町内4ヵ所で住民説明会を開催し、8月28日の苓北町臨時議会において、正式に法定協議会からの脱退を決議し、単独でのまちづくりをめざすこととしました。

<天草2市9町概要>

団体名
(2001.3.31 住民基本台帳)
就業人口(1995国調)
面積
人口
世帯数
65歳以上
高齢化率
第1次
(%)
第2次
(%)
第3次
(%)
(K㎡)
本 渡 市
41,090人
14,456
9,171人
22.3%
9.2%
21.0%
69.8%
144.81
牛 深 市
18,284人
7,042
5,306人
29.0%
28.0%
22.9%
49.1%
89.75
有 明 町
6,378人
2,189
2,077人
32.6%
30.0%
25.2%
44.8%
59.63
御所浦町
4,097人
1,461
1,259人
30.7%
50.2%
14.4%
35.4%
20.14
倉 岳 町
3,861人
1,320
1,235人
32.0%
30.9%
27.5%
41.5%
25.57
栖 本 町
3,011人
892
992人
32.9%
29.8%
29.5%
40.7%
32.87
新 和 町
4,357人
1,345
1,368人
31.4%
36.9%
24.8%
38.2%
55.20
五 和 町
10,717人
3,393
3,554人
33.2%
26.8%
27.1%
46.1%
50.05
天 草 町
4,676人
1,884
1,598人
34.2%
22.5%
30.0%
47.5%
85.46
河 浦 町
6,436人
2,314
2,158人
33.5%
31.3%
24.5%
44.2%
119.30
苓 北 町
9,436人
3,228
2,717人
28.8%
22.2%
25.8%
52.0%
66.99

 

団体名
A 基準財政
需要額
B 基準財政
収入額
地方交付税
財政力
指 数
経常収支
比  率
公債費
比 率
地方債
現在高
C 普通
交付税
D 特別
交付税
(B/A)
(E/D)
本 渡 市
8,573,976
3,485,745
5,083,732
853,036
0.407
85.9%
17.3
15,290,708
牛 深 市
5,525,140
1,157,129
4,370,286
825,121
0.209
93.3%
19.4
10,847,173
有 明 町
2,770,153
453,777
2,319,092
172,799
0.164
77.5%
12.1
4,659,209
御所浦町
1,996,040
225,815
1,756,921
229,398
0.113
98.2%
18.0
4,244,857
倉 岳 町
1,773,088
231,934
1,540,224
144,064
0.131
88.7%
15.0
3,157,638
栖 本 町
1,600,698
199,672
1,400,186
162,518
0.125
85.8%
14.4
2,977,626
新 和 町
2,051,691
204,213
1,846,402
185,425
0.100
87.8%
13.3
3,136,116
五 和 町
3,127,018
594,957
2,530,420
252,102
0.190
91.3%
14.5
7,084,622
天 草 町
2,306,614
306,618
1,998,786
187,141
0.133
89.8%
14.5
4,345,882
河 浦 町
3,192,004
381,261
2,809,068
295,856
0.119
84.0%
15.1
8,121,921
苓 北 町
3,013,923
2,324,972
687,370
219,073
0.771
75.4%
12.0
5,735,392

2. 町職としての対応

(1) 合併問題研究会の発足
   2001年7月の定期総会での意見を受ける形で、代議員会を招集し9月には合併問題研究会を発足させました。壮年会・青年部・女性部・執行部で研究会のメンバーを選出組織し、活動をしてきました。
   しかし、つくったのはいいのですが、最初に何をやったらいいのかということで頭を悩ませました。職員の身分、権利、賃金関係もあり、自治研活動のまちづくりの方もあると思います。どういうことを研究して、どういう形で組合員に伝えるのか、前例もなく、決められたものもありませんでした。
   話し合った結果、賃金・権利面については基本組合の方で取り組む。この合併問題研究会については、まちづくり、及び自治研活動の方で力を入れるという、おおまかな方針を立てました。
   まず、組合員がどういう意識をもって、どんなことを考えているのかを把握しようじゃないかということで、組合員アンケートをしたわけであります。アンケートをみますと、合併問題に対してあまり意識が高くない、知識も不足しているという集約がありましたので、BS放送で賛成派と反対派とで討論しているビデオがありましたものですから、それを借用して、青年部、女性部、壮年会、それぞれ各部でビデオを視聴いたしまして、その後意見交換会をしてきて認識を深めてきました。

(2) 住民アンケートの実施
   この合併問題は私たち自治体労働者にとっても大きい問題ですが、それ以上に住民の方々にとって非常に大きな問題であるという認識を基本として持っています。そのため、地方自治の主人公である住民の意識というか考えを確認する必要があると考え、住民アンケートを昨年12月に実施しました。
   町内有権者の中から20歳代から60歳代の男女500名を無作為に抽出し、返信用封筒を添えて郵送しました。住民の関心は割合に高く37%の回収率となりました。
   その結果については、住民向けビラを作成し新聞折り込みで住民の皆さんに結果をお知らせしました(資料)。また、同時に町長に対しても申し入れを行っています。アンケートの主な結果を見ると、「合併についてのメリット・デメリットを含めその情報が不足している」が79.5%、「合併の結論は住民投票などを実施し、その結果を尊重すべき」が82.7%、また2市9町の枠組みについては、「広域的すぎる」「合併そのものが必要ない」という項目が併せて72.5%と出ているのに対し、「天草全体で合併」「2市9町で合併を進める」という項目を併せても24.3%と大きな差が出ています。また、合併後の暮らしに大きな不安を抱えておられるようです。

(3) 講演会の開催
   住民アンケート結果の中で情報不足という意見が多かったことや、シンポジウムの開催要望があった点を踏まえ、苓北町職でどういう形で対応すべきか等を検討していた時に、県本部から合併シンポジウム開催の打診がありました。
   しかしながら、町議会全員協議会では2月4日に法定協議会参加の意向を決めることになっており、遅くとも2月3日までには開催しなければならなくなり、パネルディスカッション形式では準備に要する時間が足りないということで、講演会を開催することにしました。
   講師には(財)地方自治総合研究所の研究員である島田恵司さんをお願いし、「天草2市9町の合併を考えよう まちとくらしどうなるの」と演題で町のコミュニティーセンターで開催しました。出席者は来賓として町長を招き、管理職を含む町職員、町議会議員、区長、一般住民、そして町外からも多数参加されました。参加された方のアンケートからでもわかるとおり、「わかりやすい話だった」と大変好評でした。
   講師の島田さんは講演の中で「国の権限・財源が市町村におりてきていない状況で合併が進められるのは、地方分権にとってよいとは思わない」また、2市9町の合併については、「範囲が広く住民全体の公平性をどう保つのか、さらに近い将来生産人口と高齢者人口が逆転する目の前の課題にどう取り組んでいくのかが最重要課題」と提起され、「そのためには今の人口流失をどうくい止めていくのかが問われている」と話されました。さらに、「議員という地域の代表者がいることの大切さも重要。最後は住民が決めること」とこの問題については、住民が主体であることを強調されました。
   講演会終了後の私たち組合役員との反省会の中で、島田さんは「まちづくりはいかに町の職員が将来についてのビジョンを持っているかにかかっている。住民を先導するのは町職員である」と話されたのがたいへん印象的でした。

3. 今後の苓北町職の取り組み

 現在の合併問題研究会を、情勢が一区切りしたことを受け、合併をしないことを前提としたまちづくりを研究するための「自治研推進委員会」へと移行することとしました。メンバー・検討内容などの詳細については、現在執行委員会で議論中です。
  私たち自治体労働者にとって、自分たちの賃金・権利要求は重要です。しかし、それと同時に行政のプロとして住民と共に町の将来を真剣に考えて行かなければならないと思います。そのことを各組合員にはっきり認識させたのが、今回の合併問題であり、この機会が苓北町職の自治研活動の新たなるスタートとなるように今後もがんばっていくことを表明し、活動報告とさせていただきます。