目 次(概略)
はじめに
1. 「障害者」とは
(1) 「障害者」の定義
(2) 「身体障害」の種類
(3) 「肢体不自由者」とは
2. リハビリテーションとは
(1) リハビリテーションの定義
(2) リハビリテーションの援助
(3) リハビリテーションの総合性と専門性
3. 日本の「障害者」福祉の動向
(1) 「障害者」福祉施策の動向
(2) 「身体障害者」の実態
(3) 「身体障害者」福祉サービスの動向
(4) 「身体障害者」施設の現状と課題
4. 茨城県の「障害者」福祉の現状と課題
(1) 「障害者」施設施策の動向
(2) 「障害者」福祉行政の動向
(3) 医療・福祉施設の実態
(4) 「身体障害者」の実態
5. 「県立リハビリテーションセンター」の現状と問題点
(1) 施設の沿革
(2) 「センター」機能の推移と現状
(3) 利用者の推移と現状
(4) 「センター」施設及び設備の現状
(5) 重度身体障害者更生援護施設の現状
(6) 肢体不自由者更生施設の現状
(7) 重度身体障害者授産施設の現状
6. 茨城県における身体障害者福祉のあり方
(1) 茨城県の特色
(2) これからの茨城の福祉
7. 「県立リハビリテーションセンター」のあり方
(1) 県立福祉施設のあり方
(2) リハビリテーション施設としてのあり方
(3) 社会資源としての施設のあり方
(4) 県立・県営施設としてのあり方
おわりに
はじめに
茨城県は行政改革の1つとして、「県立社会福祉施設等のあり方検討委員会」の報告をもとに県立福祉施設の統廃合、民営化を進めています。現に知的障害児・者更生施設「内原厚生園」の平成15年3月廃止を既成事実化し、県立コロニーあすなろ(運営=福祉事業団)内に新たに施設を建設しています。さらに児童養護施設「友部みどり学園」も2003(平成15)年3月をもって廃止提案をしています。
そして昨年、県は「県立身体障害施設整備検討委員会」を設置し、県内の福祉団体、学識経験者、医療関係者、県・市関係者、県関係施設長などが集まり、数回の会議を行ったと聞き及んでいます。それらの意見を集約し、平成14年度中にも茨城県における福祉施設整備計画をまとめることになると予想されます。
その内容については、県がめざす行政改革=統廃合・民営化を基軸とした業務の縮小、人員削減が打ち出されることは想像に難くありません。そこには県当局が福祉から手を引くために型どおりの検討委員会を設け、報告の一部をつまみ食いして茨城県の方針案を作成しようとする意図が見えています。
私たち、茨城県職員組合社会福祉評議会「福祉を考える会」は、これまで「内原厚生園のあり方」、「友部みどり学園のあり方」をまとめ、茨城県当局に対して真剣に「真に県民の福祉に寄与できる県立福祉施設のあり方」を提案してきました。
これらの提言書は、決して組合員の処遇を優先せず、既存の施設の旧い体質、弊害を除き、これからの新しい時代を見据えた施設のあり方を提言しています。しかし、県は全く無視する形でこれらの施設の廃止を決定しています。
今回の「県立福祉施設整備検討委員会」の内容を知ることは不可能ですが、一部からは個人的見解とはいえ、「こども福祉医療センター」と「リハビリテーションセンター」の統合という言葉も聞かれます。しかし、言葉のうえで「身体障害児・者」といわれますが、「障害児」の療育分野と「障害者」のリハビリテーション分野は、基本的に制度上もサービスの上からも、全く異なる支援が必要です。
効率性のみにとらわれ、安易な統合を実行することは、茨城県の身体障害者福祉行政の質を低下させ、ひいては県民の福祉に対する信頼を裏切ることになります。
「県立リハビリテーションセンター」は、創立以来多くの「肢体不自由者」がこの施設を利用し、社会に出て行きました。しかし、施設の現状を見ると、その目的が現在及び将来の「肢体不自由者」のニーズに応えられない状況にあります。
今回、茨城県職員組合社会福祉評議会「福祉を考える会」と県立リハビリテーションセンター分会に所属する組合員が利用者、在宅障害者の意見を聞き、「これからの時代のニーズに対応した県立リハビリテーションセンターのあり方」を検討し、提言書をまとめました。
この間の県立施設の見直し論議では、現場で働く者の視点と施設利用当事者からの視点が軽視されてきました。基本構想から実施に至る各段階に、福祉施設の現場で働く私たちの意見を反映していただくため、この提言書が「県立身体障害施設再編整備検討委員会」の方々や民間福祉施設関係者、県福祉行政担当者、一般県民などに広く読まれ、茨城県民の将来にとって何が必要な施策なのか、県立福祉施設がなぜ必要なのか、十分に議論されることを切に願います。
目次 「7. 「県立リハビリテーションセンター」のあり方」について(概要)
この報告書の根幹である、目次の「7. 「県立リハビリテーションセンター」のあり方」の概要について少し詳細に述べさせていただきます。
この部分は、(1)県立福祉施設のあり方、(2)リハビリテーション施設としてのあり方、(3)社会資源としての施設のありかた、(4)県立・県営施設としてのあり方、という4つの項目にわけ、(2)ではさらに4項目に、(3)では5項目に分けて詳しく述べています。
(1) 県立福祉施設のあり方
(1)県立福祉施設のあり方では、これまで県が打ちだしてきた予算・理念無き旧態依然の施設福祉施策により、極端に言えばセンターが行き場のない障害者の「生活施設」としての機能しか果たしてこなかったことを率直に認め、県内の障害者実態調査を実施し、将来の障害者動向を見通した施設福祉施策を構築することを求めています。
(2) リハビリテーション施設としてのあり方
(2)リハビリテーション施設としてのあり方では、旧来のセンター機能が、利用者にとって不十分且つ中途半端であったことから、トータルなリハビリテーション機能を備えた施設として、センターには全くなかった機能である、①医学的リハビリテーションとしての機能(急性期の高度なリハビリテーション医療を行い、医師をはじめとした医療スタッフが必要となる)、センターでは一部僅かに行われてきた、②社会的リハビリテーションとしての機能(医学的リハビリテーションから移行し、家庭・職場・学校などそれぞれの利用者の最終目標に合わせた支援プログラムのもとに行われるリハビリテーションで、理学療法士、作業療法士、ケースワーカー、生活指導員などが必要)、③職業リハビリテーションとしての機能(医学的・社会的リハビリテーションプロセスのなかで、就労を求める利用者に対し、適切な職業能力評価のもとで個人に合った職業訓練を行うリハビリテーションであり、時代に即応した科目・職業指導員が必要、また他労働関係機関との連携なども重要)などさまざまな機能を併せ持つ総合リハビリテーションセンターとして新たに建設することを求めています。
(3) 社会資源としての施設のあり方
(3)社会資源としての施設のあり方では、他県・政令都市の先進福祉施設では以前から行われていた在宅障害者に対する施設サービスでありながら、これまでのセンターでは施設利用者だけのサービスでほとんど実施さていなかったことをあらため、施設を社会資源として利用できるようにするよう提言しています。
たとえば、さまざまなスポーツ・文化施設を整備して、障害者スポーツや文化・レクリェーションの中核施設として利用できるようにしたり、リハビリテーション工学の研究・開発・研修を行ったり、一般就労や福祉的就労の困難な重度障害者(高次脳機能障害者など)の日常生活や施設内就労を保障したり、常時医療措置の必要な重度の障害者の短期入所を受け入れる施設機能を持つなど、従来センターで行われていなかったもので、且つ県民から要請の多いこれらの事業についてあらたな施設整備の際にいろいろな設備を付加することにより在宅障害者の社会資源としての役割を果たすことができると提言しています。
(4) 県立・県営施設としてのあり方
(4)県立・県営施設としてのあり方では、茨城県の財政が現在もなお危機的な状況にあるなかで、少しでも財政支出を減らすため、県立福祉施設は民間へという方針を打ち立て、確実に進行させています。医療・福祉分野での民間参入はめざましいものがありますが、民間施設はあくまで採算がとれることを目的にしており、不採算の福祉分野では国・自治体が運営しなければならないサービスが多くあることを認識し、県はリハビリテーションセンターの新たな整備計画については、総合リハビリテーションセンターとして、県立・県営の障害者施設運営を堅持するよう強く求めています。
おわりに
今回、私たちは福祉の職場で働く職員の立場から、身体に「障害」を持つ人たちを取り巻く福祉の実態を、施設と在宅の両視点から見つめ直し、茨城県の「福祉」のあり方について一定の見解をまとめました。
この提言書を熟読いただければ、これらの見解は在宅福祉が社会全体の流れになっているなかで、既存の福祉施設の存在そのものを「是」とする、一方的な自己保身という狭隘な視点でまとめたものではなく、新しい時代における施設のあり方を模索したものであることをご理解いただけると確信しています。
茨城県は「全国に誇れる本県独自の手厚い地域ケアシステムの確立、運営」「地域リハビリテーション支援体制の構築」を福祉の基本戦略として掲げ、「障害の種類値程度の多様化、高齢化の振興、障害者を取り巻く環境の変化に的確に対応するため、福祉施設の再編整備、機能や体制の充実を図る」としていますが、真に『福祉のリーディング県』をめざすのであれば、いま進めている施設の再編整備をこの目的達成の絶好の転換機とすべきです。
茨城県に住む「障害者」からは、医療・福祉施策の貧困さと施設環境の劣悪さを指摘する声が多く聞かれます。今茨城県が「施設福祉」に替わる新たなリハビリテーション将来構想を示すことなく、単なる財政上の理由をもって「福祉」を切り捨てることは、県内の「障害者」のみならず、県民すべての未来までも危うくするものです。
「在宅福祉施策」と「施設福祉施策」は対峙する関係ではなく、それぞれの障害者がめざすライフステージで捉えれば、相互補完の関係であり、リハビリテーションの過程で段階的に選択するのは福祉施策を利用する「障害者」個人であります。
茨城県知事をはじめ、福祉施設再編整備に携わる関係者は「障害者」やその家族のニーズ、施設で私たち働く者の視点を軽視せず、21世紀にふさわしい「よりよい福祉施策を構築する」という共通の目標を実現するため、今後とも建設的な議論を重ねられることを強く希望します。
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