【自主レポート】
1. 都市宣言の経緯
(1) 経 緯
全国的に少子化が進んでいるが、徳島市においても、合計特殊出生率が平成10年には1.29まで低下し、過去最低を記録した。
少子化は、子ども同士のふれあいが少なくなるなど、子どもの健全育成に対する影響だけでなく、労働力人口の減少など社会全体にも様々な影響を与えることが指摘されている。
また、核家族化や都市化の進行によって、一人で育児に取り組む母親が、不安や孤立感に悩まされたり、女性の社会進出、就労形態の多様化などにより、仕事と子育ての両立に悩む保護者も多くなっている。
そこで、「子育て支援都市宣言」を行い、子どもや子育ての環境、価値観の変化などを認識したうえで、地域社会と行政が一体となって、「安心して子どもを生み、ゆとりを持って健やかに育てる」ことを緊急の課題として総合的に取り組むものである。
宣言は、小池正勝市長の三選後の平成13年6月徳島市議会定例会において、議会の同意をいただき行った。
(2) 宣言文
子育て支援都市とくしま宣言
未来に築く子どもたちの幸せと
ふるさと徳島の発展を願い
安心して子どもを生み
ゆとりをもって健やかに育てることができるまちをめざし
「子育て支援都市とくしま」を宣言します
1 子どもに優しいまちづくりを推進します
1 子育てに優しいまちづくりを推進します
1 子育てを支援するまちづくりを推進します
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なお、詳細は、「広報とくしま」平成13年7月15日号(http://www.city.tokushima.tokushima.jp/annai/koho/kotoku/010715/01071501.html)を参照していただきたい。
2. 子育て支援推進本部の設置等
子育て支援都市宣言を推進するため、推進組織の整備を行うとともに、関連事業の予算化(平成13年6月補正予算)を図った。
(1) 子育て支援推進本部の設置
子育て支援を全庁的体制で推進するため、第一助役を本部長に、各部局長で組織される推進本部を平成13年5月に設置した。推進本部は、宣言文の検討や子育て支援事業の調整において、大きな役割を果たしている。
(2) 子育て環境に関するアンケート調査の実施
子育て中の保護者の意見・要望等を今後の施策展開の参考にするため、子育て環境などに関する満足度調査を実施することにした。(調査結果の概要は後述)
(3) 親子ふれあいプラザの開設
在宅で育児をされている家庭に対しては、保育園併設型の地域子育て支援センターや保育園・幼稚園の園開放を通じて、支援に努めてきた。これらは、都市化などを背景に、子どもや親の交流の場として盛況に利用されているが、週に1日程度の開催で通年型の専用施設の整備が望まれていた。
一方、本市は体の健康づくり、暮らしの健康づくり、心の健康づくりを進める拠点施設「ふれあい健康館」の整備(平成13年11月開館)を進めており、この施設の一角に、在宅で子育て中の家庭のためのスペース(250㎡)を確保することができた。遊戯室2室、事務室、授乳室、トイレからなる地域子育て支援センターは、子ども同士、親同士の交流を願い、「親子ふれあいプラザ」と命名された。
ふれあい健康館には駐車場が200台完備されていること、また、乳幼児の健康診査や予防接種を行う保健センターや夜間休日急病診療所などが併設されていること、さらには、親子ふれあいプラザが月曜日と年末年始を除いて開館し、毎日午前・午後に行われる絵本の読み聞かせや、子育て講座、月例行事が好評で、1日平均で85組程度、多い日には120組を超える親子に利用されている。
親子ふれあいプラザについては、ホームページ(http://www.city.tokushima.tokushima.jp/guide/kokyo/sonota/oyako/oyako.html)を参照していただきたい。
(4) 育児環境整備事業の実施
子ども連れで外出時に困るのはトイレである。最近でこそ、多目的トイレが整備され、そうした問題が解決されつつあるが、過去に整備された施設は十分な対応ができていないのが現状である。そこで、不特定多数の人に利用されて本市の公共施設(文化ホール、コミュニティセンター、市民病院、公園、体育館など56施設)のトイレに、ベビーシート(59台)、ベビーキープ(69台)の整備を行った。一部スペースの関係で取り付けが困難で見送ったところもあるが、おおむね全施設に整備が完了したといえる。こうした取り組みが、民間施設にも広がり、子育てにやさしいまちづくりの実現が期待される。
3. 子育て環境に関するアンケート調査結果の概要
(1) 調査の概要
子どもの育ちや子育て環境について、子育て中の保護者の意識と要望を把握し、今後の子育て支援推進の基礎資料とするため、「0歳児から小学校低学年の子どもを主に世話をしている保護者」を対象に、平成13年8月下旬から9月上旬にかけて実施した。調査件数は1,500件(対象世帯の10世帯に1世帯を対象)、回収率は、787件(52.5%)であった。
(2) 回答者の属性
回答者の93.5%が母親で、主婦専業が50.8%ともっとも多かったが、仕事をしている方とそうでない方の割合は概ね同数であった。
1世帯あたりの子どもの数は、2人の割合が52.0%、1人(一人っ子世帯)は25.7%となっている。このほか、祖母の同居割合は22.1%、祖父は15.1%と、核家族化の進展がうかがえる。
(3) 子育て環境の満足度
子育て環境に不安や不満を感じている割合は、「少し感じている(51.6%)」と「かなり感じている(22.1%)」を合わせて73.7%と高い。
その内容を選択肢(複数回答)で求めたところ、「雨の日や、暑いとき、寒いとき等に子どもと出かけられる場所がない」が56.9%、次いで、「安心して子どもが遊べる場所がない」が55.5%、「乳幼児の遊び場がない」が36.3%と遊び場に関するものが多く、「近くに子どもの遊び相手がいない」も28.3%と高い。
このほか、「緊急時や一時的に子どもを預かってくれるところがない」が32.7%、「子育てに関する情報が少ない」「親子で知り合う場所がない」などが続いている。
(4) 悩みの相談相手
「親や親類(76.8%)」「配偶者(71.7%)」「友人、近所の人(66.7%)」が多く、専門家や公的機関は少ない
(5) 子どもが病気時、働いている保護者の対応
「母親が仕事を休む」が76.0%ともっとも多く、次に「別居の家族に頼んだ」38.5%が続いている。「父親が仕事を休む」は9.8%と少ない。
(6) よく利用する遊び場
「公園、広場」が55.6%ともっとも多く、次いで「子どもの友人宅」が41.0%と続いている。一方、「よく利用する遊び場はない」が20.9%、「商業施設」も19.0%と多い。
(7) 子ども連れで外出した時不便な施設
「スーパー」「病院」「市役所」「デパート」などの指摘が多い。これは、駐車場の不足、オムツ替え・授乳施設の不備をはじめ、子どもが退屈しないようプレイコーナーの設置を望む声も強い。
(8) 力を入れてほしい子育て支援策
「身近な遊び場をもっと整備してほしい(66.9%)」「子育ての経済的な負担の軽減や経済的支援を拡大してほしい(62.0%)」が特に多かった。また、「緊急時や一時的に子どもを預かってくれる、一時保育の定員や実施園を増やしてほしい(36.9%)」「公共施設を遊び場として開放してほしい(33.2%)」「小さな子どもたちが集まれる場所や乳児をもつ母親が集まれる場所がほしい(28.5%)」が続いている。
(9) 調査結果への対応
子育て支援関係課からなる子育て支援推進本部幹事会を開催し、調査結果への対応について詳細に検討を行った。子育て支援推進本部においては、幹事会の検討結果に基づき、平成14年度の主な取り組みを審議するとともに、対応が十分でない部分については、関係課にさらなる検討を指示した。
4. 平成14年度の主な取り組み
(1) 市立保育所の充実
延長保育のモデル実施(2園)と乳児保育の拡大(1園)の2本柱である。延長保育に関しては、民間保育園ではほとんど実施されている中、市立では初の取り組みである。一方、乳児の受け入れ拡大については、産休・育休明け時等の入所の円滑化などのため、拡大を図るものである。
(2) 子育て情報提供の充実
徳島市も様々な子育て支援サービスの充実に努めているところであるが、都市化や核家族化が進むなか、先のアンケート調査において、関連情報が子育てに悩む親等にうまく伝わっていないところが見受けられた。このため、各種制度や施設の利用案内等を網羅した子育て支援総合冊子(子育てハンドブック)を作成するとともに、携帯電話対応ホームページの充実を図り、各種行事などの旬の情報を提供することとしている。
(3) 児童館の午前中開館
現在、市立児童館(16館供用中)は小学生の放課後の遊び場として中心に運営しており、午後から夕方まで開館している。もちろん、保護者同伴であれば、就学前の児童も利用可能であるが、運動量の激しい小学生と幼児が一緒に同室し遊ぶのは危険な側面があることから、乳幼児を持つ保護者からは現在閉館している午前中開館を要望する声が強かった。
アンケートの中でも、雨の日や寒い時、暑い時の遊び場に困るという意見、また、安全な遊び場を望む声が多く、午前中開館を決定したところである。
実施に向けては、職員の勤務体制の見直しや、乳幼児向け遊具の整備など厳しい財政状況のなか多額の予算を伴うものであったが、「子育て支援都市宣言後」の目玉事業として打ち出された。
親子ふれあいプラザの地域展開版として、事業成功が望まれる。
(4) 子育て応援団出前事業
親子ふれあいプラザを拠点に、子育てを応援・支援したい保育士等を子育て応援団として登録し、児童館や子育てサークル等の要請に応じて、遊びの指導や子どもの健康管理など様々な分野で出前講座を開催するものである。
(5) 子育てにやさしいまちづくり
上記は旧児童課所管の事業を取りまとめたものであるが、以下は旧児童課以外の所管の新規子育て支援策である。
(1) 出産費資金貸付事業
国民健康保険加入者で出産前の希望者に、出産育児一時金(30万円)の8割(24万円)を貸し付ける制度を創設する。
(2) 小児救急体制の充実
小児科医師を増員(4→5人)し、夜間・休日等の小児救急体制の充実を図る。
(3) プレイコーナー設置事業
乳幼児連れの来庁者のために、本庁舎1階に、プレイコーナーを設置する。
(4) 徳島中央公園園路改善事業
中央公園の砂利敷き園路を、ベビーカー等が通行しやすいよう改善する。
(5) 東富田公園トイレ改築事業
トイレの改築を行い、多目的トイレ、女子トイレ、男子トイレ内に、ベビーチェアを設置する。
(6) 推進体制の整備・充実
子育て支援の推進体制を強化するため、平成14年4月1日に、旧児童課を子育て支援課と保育課に組織分割した。保育課は保育行政の推進、子育て支援課は保育行政以外の児童館、学童保育、児童手当、児童扶養手当、母子福祉のほか、子育て支援全般を担当することとなった。
新しく誕生した子育て支援課では、これまでの取り組み経過を踏まえ、本市の子育て支援に係る施策の全体像を明確にすることとしている。
以上、平成14年度子育て支援策については、ホームページ(http://www.city.tokushima.tokushima.jp/annai/koho/kotoku/020415/02041501.html)を参照していただきたい。
5. 民間団体等の動向
(1) 子育て応援イベント「おぎゃっと21」の開催
出産や育児に夢が持てる社会づくりをめざした産学官共同の催し、「心とからだ、より豊かに、より健やかに」をテーマに昨年から開催されている。詳しくは、地元新聞社ホームページ(http://www.topics.or.jp/rensai/ogyato/)を参照。
(2) 子育てサークル
先駆的役割を果たし、NPO法人を認証取得しているサークルもあるが、市内の子育てサークル数はあまり多くない。サークルと行政の関わりはこれまでほとんどなかったが、今後、親子ふれあいプラザや児童館午前中開館、子育て応援団出前事業などを核にその活動を支援していく必要がある。
(3) 子育て情報交換広場「ワイヤーママ」
月刊誌とホームページ版があり、ホームページ(http://www.wire.co.jp/mama/)では、さまざまなテーマで活発な情報交換がされている。月刊誌はホームページの投稿をもとに作られている。
6. 今後の取り組み
徳島市は県庁所在都市として都市力の培養をこれまで政策の中心に据えてきたといえるが、今後、子育て支援都市宣言を軸に、「安心して子どもを生み、ゆとりをもって健やかに育てることができる」まちづくりの一層の推進に努める必要がある。
職員労働組合連合会としても、重大な関心をもって、また積極的に「子育て支援都市とくしま」の推進に対応していきたいと考えている。
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