【代表レポート】
地 域 づ く り と 学 校
自治労/学校事務協議会 中村 文夫
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1. 課題の設定/ナショナルミニマムからシビルミニマムへ
地域の経済的・文化的な自立と教育政策とが強く結びつくことが必要である。教育は常に、国家との関係でしか論じられて来なかった。戦前は臣民として、戦後は日本国民としての教育というように。ナショナルミニマムが一義的な要素であったが、バブル経済以降、インターネットに象徴されるグローバルな経済・文化と地方分権に示される地域の自立とが重要視されてきた。教育においてもこのようなシビルミニマムという要素を入れた視点が求められている。これまでローカルな地域教育という発想の蓄積がないため、個人対国家という近代的な図式の中でしか枠組みが組めなかった。
地域という場合も、過疎化の波にさらされている地域と大都市部への人口の流入による集中という2極分化の現実を見据える必要がある。それぞれの地域を活性化する課題と教育の在り方とをリンクする新たな発想が求められている。この実現には多様な選択が重んじられなければならない。学校評議会による市民参加と学校機能の複合化がポイントであると考えている(自治研地域教育政策作業委員会「教育を地域に取り戻すために 15の提言」1998/12発行、月刊自治研1988/9を参照)。地域の豊かさ、活性化を目指す学校の多様な道の選択を模索していきたいと思う。(学校事務協議会のホームページhttp://www.gakuro.com)
2. 地域ごとに多様化する教育の実態
地方分権は教育分野においても徐々に浸透してきている。文部科学省の政策変化を一言で言えば、「横並び統制から特色による競争の部分導入」である。2002年度から始まった総合的な学習を含む指導要領を最低基準とする姿勢や教職員配置・定数への考え方の変更(2001年度からの義務制第7次、高校第6次改善計画では一律改善から特色を出した改善へとシフトを移した)などにその姿勢が現れている。
地方独自の教育へのアプローチも少人数学級や通学区の自由化など新聞報道が盛んにされている部分に目が奪われがちではあるが、試みは多様である。(注1)
多様化する教育や学校への変化は、教育委員会自からの変化とともに首長からの発案で行われるケースが多々ある。これが従来にない特徴である。教育においても総合行政としての発想が求められている。地域活性化のマスタープランの作成と地域教育政策とが連動することが望まれている。多様化する教育政策への評価は様々である。例えば、通学区の自由化についても、生徒や保護者の学校選択の保障との視点以上に、少子化する中で行政としての狙いが学校統廃合の促進にあるのではないかとの疑念も出されている。しかも、学校選択が可能なほどこれまでの個々の学校教育に相違があったのかという問題も出されている。また、自治体にひとつの学校しかない地域ではそもそも選択ができないなど多岐に渉る意見が出されている。しかし、様々な批判が出されることも含めて自治体ごとに試みが始まったことは推進の視点で評価しなくてはならない。(注2)
市民参加の視点から具体的な事例を挙げてみたい。例えば、校舎建築への市民参加である。「学校は、コミュニティの核としての役割も担う。市民参画により、学校のあるべき姿を考えていくことができれば」との視点から東京都多摩市教育委員会は市立多摩第一小学校の建て替えについて、市民公募による検討会設置を決めた。設計段階から住民の提案を反映し、学校作りでの建設手法や、新校舎に必要な施設、機能などのアイデアを募ることにした。
このような個別課題への市民参加だけでなく、学校運営そのものへの市民参加が始まっている。文部科学省が音頭を取って進めている学校評議員制度である。これからの教育を考えるポイントのひとつである。諸外国で実施されている学校評議会制度の限定的な実施である。限定的とは私立の理事会のように意志決定機関である学校評議員会ではなく、校長の諮問委員としての学校評議員制度の導入だからである。島根県の県立学校評議員の意見では県の学校再編成計画で取りざたされている小規模校や農業系学校、定時制など生徒数の減少を踏まえ、学校の特色づくりや「スクール・アイデンティティ」の確立を望む声も出てきている。(注3)
市民参加が地域の課題と結びつく可能性は高い。多摩市は学校を地域のコミュニティ拠点としている。学校の統廃合は少子化や過疎化という社会現象とつながっている。例えば、沖縄県国頭村では全7校あった中学校を1校に統合する(廃校となる6校の全中学生は45名)。このように急激に義務教育諸学校での統廃合が進んでいる。身近に子どもたちの声が聞こえなくなった地域で活性化を望むことはなかなか難しいことだ。対応策としてはコミュニティ拠点として地域のいろいろな機能を併せ持つ「学校」として生まれ直すこともひとつである。
同様に県立学校も統廃合の波が襲っている。県立学校の統廃合は生徒が自宅から通える距離に高等学校がなくなる可能性をはらんでいる。従って、諮問委員としての学校評議員であっても学校の生き残りを掛けた「スクール・アイデンティティ」への関心は強烈である。諮問委員から学校運営の根幹である経営方針、教科書、人事、学校予算全般に渡る責任を負える学校評議会制度へ発展の道は、地域活性化への切実な要請によって拓かれていくと思われる。学校運営への意志決定への参加は、その責任も問われる。行政的な責任が曖昧な場合も道義的な責任は自覚しなくてはならない。そうでなければ地域の長老・名望家支配はなくならない。
3. 背景としての地方分権の浸透
近年、状況を規定している要因は情報化と自治体合併である。地方自治体は、自主的な生き残りを賭けた分権自治の取り組みが重要となっている。この取り組みのなかに教育行政や学校をビルドインする視点が望まれる。大都市及び近郊ベッドタウンでは、社会的な人の流動化によって地域の豊かさを維持発展させる世代間の受け渡しとしての機能の側面よりは、教育は個々人の社会的な生活を得るための手段と捉える傾向がある。大都市周辺では多様な教育欲求に基づく多様な教育機会の設定が行政需要としてある。他方、過疎地域では、地域活性化と連動し、次世代の育成が急務となっている。人材を大都市へと送り出す代わりに国家からの行政経費を引き出すという社会的な取引は成り立つのが困難な状況に追い込まれている。思考方法の変更が求められている。
「教育活動を学校だけが行うのではなく、地域社会総体で行う」という命題は、(道徳的なスローガンに終わらすのでなければ)地域の将来と結びついた教育活動が望まれる場合に重要となる。例えば、高等学校の再編成である。少子化の中で、統廃合が進めば自宅から通える学校が無くなる地域も想定される。このことは先ほどの島根県の学校評議員制度でも問題として出されていた。特定地域の少人数の高等学校を存続させる理由を特定地域の活性化と関連させて説明できなければ、統廃合を止められない。若者が学習機会を得るために親元から離れれば、過疎化に拍車がかかる。
文部科学省の音頭で、多様な公立学校が作られつつある。中高一貫高校に始まり、スーパーサイエンスハイスクール(注4)。さらに、公教育の範囲で、公立学校ではないコミュニティ・スクールなど学校設置基準の緩和が進んでいる(注5)。このように文部科学省が改革の音頭を取るのは、地方教育委員会が文部科学省と直結した戦後の歴史的な経過が抜けないからである。また、国による規制緩和の範囲が行政裁量に委ねられるため、枠の範囲内での多様化が実現しやすい、との理由が考えられる。
文部科学省の施策のみならず、国の施策に連動して多様化を進めようとする自治体もある。例えば、群馬県太田市は、全教科の授業を英語圏の外国人教師が英語で行う小中高一貫校を、民間活力を利用して設置する「太田外国語教育特区構想」を明らかにした(注6)。
4. 次のステップとしての教職員給与財源問題
教育は子ども、保護者、地域の願いを受け止めるマンパワーで成り立っている。国は従来、義務教育費国庫負担制度と定数法によって教職員の全国的な均一化を図ってきた。しかし、地方自治体が独自の教育政策を実施しようとすれば、それを担う教職員の人事配置を独自に設定できなければ実体化できない。地方分権が税財源をも課題とする中で、地方自治体職員へのこのような国家的な規制が問題として取り上げられてきている。教育内容のみならず、教育サービスを行う教職員の配置、そして経費を独自で検討する必要が出てきている。
6月17日、地方分権改革推進会議は小泉首相に中間報告を出した。義務教育費国庫負担制度そのものの廃止と経過処置としての交付金措置を答申した。義務教育費国庫負担制度について都道府県と政令指定都市間の県費教職員制度の見直し、学級編成基準の設定権限の移譲を「直ちに検討・措置すべき課題」としている。さらに、10月の最終答申では踏み込んだ提案をするように小泉首相は求めている。
2004年度から始まる国立大学の独立法人化に関連し、地方の教員給与の根拠が失われる事態が引き起こされる。これに対処するため文部科学省は6月7日「公立学校教員の給与制度等に関する検討会議」を設置。委員は小川正人東京大学院教授、天笠茂千葉大教授他東京、京都、香川、宮崎の各都道府県教育委員会給与担当者も含まれている。2003年1月には関連法の改正案を国会に提出するため今夏に中間報告、今秋に最終報告をまとめる予定。(注7)全国一律の教員給与体系が崩壊しようとしている。
地方公務員の人事配置について国の規制があるのは、警察、消防とともに教職員がある。教職員定数についても国の関与をなくす方向が地方分権改革推進会議の中間報告で打ち出されている。現状では義務制諸学校の定数の決定権は都道府県教育委員会に与えられている。区市町村では、独自の教育政策を実施する場合のネックとなっている。(注8)
「最大の問題は小中学校の教員人事。人事権は給与を出す県にあって、市町村職員なんだから勝手にやるといいたい」と犬山市・石田市長が語れば志木市・穂坂市長は「校長の任命権だけでも市町村に与えるべきだ。本来は新規採用試験でも、市町村の教育長が面接した方がいい。」と応えている(「朝日新聞 2002年6月30日」)。5月、東京都の特別区議長会は「道徳教育の充実並びに県費負担教職員の人事権の委譲に関する要望書」を石原知事に提出した。都教委が持っている公立学校の教職員の人事権を23区に委譲し地域特性を生かした教育の展開を行いたいとの思いからである。
文部科学省もこれらの動きに柔軟な対応を一部行い始めた。従来は存在さえ認めなかった市町村負担の教員(約800名)については任命権を市町村に委ねるという。2004年度からの実施が検討されている。この対応に見られるように、人事権の委譲は教職員給与費を自前で払うことが前提である。教職員が区市町村職員であることを強調するならば、当然給与も区市町村費とすることになろう。税財源の課題を抜きに地方分権は成り立たないことは教育においても強く認識されなければならない。
5. 中長期的な展望を持って
これまでのように全国一律の教育水準の維持が一義的な要請であり、地方独自の教育行政が展開できる余地が全くなかった時代から、地方分権の進展によりある程度の自由裁量が地方自治体で発揮できるように変わりつつある。しかし、まだ、文部科学省の動向を見ながら慎重に裁量幅を図っているのが現状である。他方、このような地方の自由裁量の拡大は憲法や教育基本法が保障するナショナルミニマム(マクシマムでもあった)が失われ、教育における格差が拡大すると危惧する意見も根深い。重要なのはシビルミニマムから始まる視点であって、その要素としてナショナルな基準をどの程度設けるかという展開ではないだろうか。
文部科学省も義務教育費国庫負担制度の全廃を地方分権改革推進会議から迫られる中で、どのような妥協ができるか重要な局面にたたされている。「義務教育費国庫負担制度は憲法に示された教育を受ける権利を保障している」との発言まで飛び出している。また、文部科学省としては慎重な対応を行っている総合規制改革会議(注9)が打ち出している「特区構想」にも、先に紹介した太田市のように積極的に首長が反応するケースも出てきている。ちなみに自治体が提案した特区構想には「コミュニティ・スクールなど学習指導要領にとらわれない教育内容の設定。小中一貫教育。教員免許のない企業人、外国人を常勤教員に任用。学校経営への株式会社参入。教育切符制(バウチャー)導入。」いずれもすでに様々な場所で提案されてきた内容である。
このような教育特区の提案が地域の活性化とどのように関連づけられているかの総合的な視点が必要である。この点に関しては不十分であり、この「地域づくりと学校」において示してきた多様な教育行政の試みを踏まえて、総合行政の輪を結ぶ作業をが必要だ。地域作りの焦点のひとつはデジタルデバイド(情報格差)の解消であり、この基盤整備なくしてグローバルな世界の動きに対応した地域の在り方の模索もあり得ないと考えている。教育においても最大の課題は同じくデジタルデバイドと考えるが、残念ながら十分に意識されていない。(注10)
国立大学の独立法人化は、ミニ東大を目指してきた多くの新制大学に地域密着型の研究教育施設への転換を迫り、また少子化によって100から200校規模で経営破綻が起こると予想される私立大学の生き残り方も、地域の活性化を(あるいは生涯教育への視点)抜きにはあり得ないと思われる。
高等学校においても文部科学省による中高一貫校やスーパーサイエンスハイスクール構想にノミネートすることを自己目的とするのではなく、多様な教育システムが地域の要請として発想されることなしには将来展望はあり得ない。(注11)
義務教育においては、より小さな単位の自治的な生活集団の将来と密接な関係を持つ。(注12)複合的な機能を持つコミュニティ拠点の学校が、運営を含めて責任を担う学校評議会のもとに地域の活性化への対応を実践していく中長期的な展望を持つことが望まれる。
<資料・注>
(注1) いくつか事例をあげる。子どもの権利に関する条例(川崎市)、教育行政の首長部局へ統合(出雲市)、教育長(三春町、逗子市、浦安市)の公募制や校長(広島県、東京都、埼玉県)の民間人登用、学級規模の自主判断(志木市)、学区の自由化(品川、江東、豊島区)、自治体独自で中高一貫校を標準とする(千代田区)、英語教育に特化した小中高一貫校の設置構想(群馬県太田市)、デイケアサービスセンターとの併設(宇治市、横須賀市、川越市、中央区、杉並区など)。東京都市町村自治調査会は21世紀型コミュニティのあり方を模索する「地域と学校の融合で町づくり」調査報告書をまとめるなど全体計画の策定も行われている。
川崎市では、子ども権利条例が市議会で可決。2001年4月施行が実現した。国連の児童の権利条約の理念を川崎市の実情にあわせて18歳未満の子どもを対象に「安心して生きられる権利」「ありのままの自分でいられる権利」「自分で決められる権利」など7つの権利を規定。この条例を上程するまでには子どもも参加した研究委員会を設置して審議を重ねてきた。このような地方ごとの取り組みこそが教育を21世紀に生きる子どもの立場に立ったものにする。
2001年11月に全国初めてのケースとして一般公募で選ばれた福島県三春町教育長前田昌徹埼大名誉教授は県ブロック別教育長会議で指示連絡事項ばかりではなく「教育現場の課題を議論してほしい」と注文を付けたところ会議後の挨拶で名刺を出しても無言の拒否にあった(NIKKEINET20011217)。2001年12月15日、大分市議会は地方自治の観点から「市教委が教育長を任命しようとするときは市長の意見を求める」との条例を採択した。文部科学省は政治的な中立を保つ制度の趣旨に反するとの見解を県教委を介して伝えたが、市長は「分権の新しいルール」として事前に人選をチェックする構え。全国市長会も制度の研究に入った。中央と地方のせめぎ合いがはじまった。
(注2) 2001年4月から機構改革で生涯教育関係部署を市長部局へと移した島根県出雲市の西尾市長は「教育委員会制度の歴史的使命は終わった」と断言している(日本教育新聞 2001/4/27)。生涯教育関係を首長部局へ移したり、子ども課などの名称を付けて子どもへの対応を総合的に行う自治体も生まれてきている。
(注3) 島根県教委高校教育課は、2001年度から県立の高校や養護学校など全51校に本格的に導入した「学校評議員制度」の実施報告概要をまとめた。評議員の意見で最も多かったのは「進路指導や将来設計」の38校。そのほか生徒数の減少を踏まえ、学校の特色づくりや「スクール・アイデンティティ」の確立を望む声が多く、とりわけ、県の学校再編成計画で取りざたされている小規模校や農業系学校、定時制などでその傾向が強かった。
(注4) スーパーサイエンスハイスクール趣旨: 科学技術、理科・数学教育を重点的に行う学校をスーパーサイエンスハイスクールとして指定し、高等学校及び中高一貫教育校における理科・数学に重点を置いたカリキュラムの開発、大学や研究機関等との効果的な連携方策についての研究を推進し、将来有為な科学技術系人材の育成に資する。実施は40都道府県77校から応募があり、札幌北高等学校など23都道府県26校を指定。
(注5) 文部科学省は2002年度、地域住民や保護者が学校に密接にかかわり、予算や人事面で学校の裁量権を拡大することにより、地域主導の学校運営を目指す「コミュニティー・スクール」を以下の通り指定した。千葉県習志野市立秋津小学校、東京都足立区立五反野小学校、津市立南が丘小学校、京都市立御所南小学校、和歌山県新宮市立光洋中学校、岡山市立岡輝中学校、同清輝小学校、同岡南小学校、広島県尾道市立土堂小学校。このうち秋津小学校は学校と社会教育の融合を掲げた実践が有名である。
(注6) 太田市によると、小中高一貫校は「太田国際アカデミー」(仮称)とし、2004年4月の開校を目指す。一貫校は、太田市民、NPO(非営利組織)団体、企業経営者などによって事業実施主体を設立し、出資金など30億円を集めて運営。キャンパスは同市有地を無償貸与する計画だ。市の構想によると、校長、教頭を除く教師すべてを英語を母国語とする外国人とし、法的問題が解決できれば、教員免許状の有無を採用の条件とはしない方針。外国人教師が、英語、数学、化学、音楽など全教科を英語で教える。
(注7) 内容としては文科省前川喜平財務課長が5月24日、全国連合小学校長会総会で「国は教員給与の大枠を示すだけ」としており俸給表など具体的な中身は都道府県の条例に委ねられる見込み。行政職給与表に一定の指数を乗せて(人確法によって教員給与の優遇が保障されている。)教員給与の基準の具体的な検討の方向がある。さらに、公務員制度の改正に合わせて、時間外手当みあいの教職調整額4%、と義務教育特別手当などの見直しが検討されている。見直しで必要なのは職種間の賃金差別を助長した人確法の廃止である。
(注8) 「保護者や住民からしばしば語られるのは、教員の目は地域に向かず、都道府県教委や国に向いているという不満がある。保護者や住民が、教員は数年のうちには他校に転校するもので、腰掛け状態にあることをよく知っているからである。」(日本教育新聞社説02/6/28)。地元を考慮せず、人事対策として広域人事を行う都県がある。
(注9) 総合規制改革会議の中間まとめでは医療・教育分野への株式会社の参入が打ち出されている。国や地方公共団体、学校法人に限定されている学校経営を株式会社にも認める。資金調達の多様化、教育サービスの向上、経営の効率化など期待できるとしている。
(注10) 日本アイ・ビー・エム(IBM)と1980年代に「情報都市モデル地域」に選定された東京都三鷹市は2002年5月13日、同市立の全小学校15校において「三鷹市・学校・地域連携教育プロジェクト」を展開すると発表した。CATVインターネットやADSLといったブロードバンドネットワークを活用し、学校と家庭を結ぶイントラネットを構築。学校行事や授業の風景などを動画で配信するほか、保護者・地域支援者と学校がコミュニケーションできる掲示板を設置し、「開かれた学校」「地域に根付いた教育」を目指す。
埼玉県より人口の少ないフィンランドはモバイル産業のノキア社がある。先導的な通信技術の確立で国を成り立たそうとしており、教育においてもOECDの学力調査で読解力が1位。数学、科学の上位を占めた。
(注11) しまなみ海道の開通などで、島外への進学者増に悩む広島、愛媛両県の島しょ部の高校の校長、保護者らによる「しまなみ海道 高校PTA連絡会議」が2002年7月13日開かれ、広島県の瀬戸田、因島と、愛媛県の大三島、伯方、弓削、大島の各高校から約20人が参加。「2000年度に島内の2つの中学を卒業した84人のうち、入学者は7人」(愛媛県立大島)、「今治市の高校への進学をステータスと思い、子供を今治の進学塾に通わせる保護者もいる」(愛媛県立大三島)などの厳しい現実が報告がされた。現実を克服する学校活性化の取り組みとして「進学面での不安解消のため、大手予備校の衛星放送の授業を導入」(因島高)、「町内のデイサービスセンター訪問などを通じた地域との交流」(弓削)などが示された。
(注12) 地域のコミュニティは地縁、血縁のみならず、社(会社)縁、電脳縁(インターネットを介したコミュニティ)、NPO縁、子(子どもを媒介とした)縁など多様なネットワークによって成り立っている。自治会や町内会など旧来型の縁だけではなく多様なネットワークを大切にした地域の将来ビジョンを描くことが求められている。地域が自立して政治・経済・文化を築くために教育の分野は最重要分野となっている。
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