【自治研究レポート(個人)】

公共ホールのバリアフリー化とは?

バリアフリーシアタージャパン 高島 琴美

【集会施設のユニバーサルデザイン化に向けて】

 バリアフリーシアタージャパン(以下BFTJと記載)は「多様な価値観や意見の共存」をテーマに、1999年8月に活動を開始した。観客、劇場スタッフ、演劇映画の創り手などとの意見のネットワーク形成、ノウハウの創造と交流・展開をしながら活動を進めた。その中で、シアターのバリアフリー化のノウハウは、集会施設のバリアフリー全体に共通していること、そして、集会施設において行われるコンテンツによって、かなり違いがあることがわかってきた。また、「ユニバーサルデザインされた集会施設とはなにか」を論じることや、「サポートシステムの概念整理」の必要がある。ユニバーサルデザインあるいはバリアフリーという、今後、どの行政分野についても重要になっていくことを、集会施設においても具現化してほしいと考えており、集会施設一般や多様なコンテンツについて実効性のある提案をしていく所存である。
 この論文では、BFTJの取り組んでいる事例を3例と、表によるバリアフリーシアターの基本的な考え方を紹介する。
※注1 集会施設 ここでは、バーチャルではなく、「他の観客と空間を共有し、1つのコンテンツを享受する現実の場所」をさす。小規模の会議室からドームまで、また、コンサートホールからライブハウスまで、条件は多様である。
※注2 コンテンツ ここでは、集会施設において行われている内容をさす。ロックコンサートと、室内楽の演奏会、大規模なミュージカルと、緊張した場面の多いストレートプレイ、サッカーとテニスなど、コンテンツの違いによって、必要なサポートも違ってくる。

実例1. 公共ホールバリアフリー化のための研修モデルケース

 BFTJは、2002年2月12日、「第2回都区合同自主研究フォーラム」(主催:東京都職員研修所 特別区職員研修所)において、「公共ホールのバリアフリー」をテーマにした研修を実施した。都区職員の自主研究グループをサポートするための研修として行われたプログラムの1つである。この研修全体については、自主研フォーラムのホームページhttp://tonet.com/jisyukenf/ に詳細が掲載されている。

<自主研フォーラム報告>
(1) BFTJ自身の参加の目標
   「『受講者自身が自分の中の何かが変わる、できないことができるようになり、考えなかったことを考えるようになる』という、本来の研修の目的を達成してもらう。」
   このため、分科会と発表会の時間の重なりを利用した、参加者の参加意欲に応じた展開を考えた。
   都区職員にとってなじみが薄いであろう「劇場のバリアフリー」についての理解を深め、かつ、自分自身の職場に戻ったときの課題の発見につながるような体験にするよう工夫。展示、発表会、分科会のすべてに、流れを作りながら参加した。

(2) 全体構造
   自主研フォーラム総体を「展示に始まり、発表会、分科会を経て、パネルディスカッションに到達するというひとつの流れをもった全体構造」と見立て、その中で、それぞれが効果を持つように設定。
   対象者を以下のとおり想定し、それぞれに響く内容を伝えるよう工夫。
  ① 展 示
    都庁展示  偶然通りかかった市民。
    研修所展示 バリアフリーシアターを初めて知った都区職員。
  ② 発表会
    バリアフリーシアターについてまったく知識がない都区職員。
  ③ 分科会
    概要が聞ける発表会よりも、分科会を選んだ意欲的な参加者。
    ただし、バリアフリーシアターについての知識はないと予想される。
  ④ パネルディスカッション
    発表会、分科会のどちらかに参加し、バリアフリーシアターについて、ある程度の理解をした参加者。

(3) 当日の状況
  ① 展 示
    都庁展示では「ポスター展示」を主に、視覚に障害がある観客への対応実例を示した。
    研修所での展示では、それに加え、視覚に障害がある観客のアンケートを掲示。
  ② 発 表
    テーマ「研修所講堂をバリアフリーに!」
     進 行:映画の視覚障害者へのバリアフリーに取り組んでいる稲葉千穂子さん
     発表の中心:すべての人が劇場を楽しむためのハードのあるべき姿
     発表者:劇団昴の三宅均さん(視覚障害者のための音声ガイド付上演をしている。)
      内容 「バリアフリー操作室」の設置 実際の音声ガイドの事例を流しながらの、具体的な説明。
     発表者:堀越滋樹さん(車イスを使用する観客として多くのホールに足を運んでいる)
      内容「車椅子使用者の他の観客との動線の一致」の必要性と障害当事者自身の意思を聞くことの重要性。

発表会場での参加者の声(アンケートより)
・午前中の研究発表会の中で、一番わかりやすかったです。同じ職場に重度の車イスの方がいる関係もあり、興味深く聞きました。この活動を彼女にも紹介してみようと思います。
・さきほど、車イスの方を舞台に上げるとき、どうしよう、手伝ったほうがいいのかなと思いつつ、じっと見ているだけになってしまいました。
・発表時間が少なく、もう少し詳しく聞きたいです。障害者本人の話を聞き、理解できることもあるが、すべてがあの人のような考えを持っているだろうか、本人に聞きたい。
・私の子どもは保育園に通っていますが、同じクラスに、視覚と聴覚の両方が弱い子がいます。また、私の夫が足を骨折したときに、松葉杖で映画を見に行って、とても苦労した思いがあります。劇場のバリアフリーを望んでいる人はとても多いと思います。活動、これからもがんばってください。応援しています。

  ③ 分科会 参加者数 15名
    都区職員6名(うち公共ホール職場2名)・BFTJ招聘者と発表者7名・視覚障害関係メディア記者2名

   <前半 事例報告 10:00~11:00(発表会と重なった時間帯)>
    報告者:世田谷パブリックシアター 長原理江さん
       [内容] 公共ホールとして視覚障害のある観客への「舞台説明会」を実施している状況や課題報告。
    受講者が、じっくりと報告を聞き、質疑応答。それぞれの職場の状況や現在持っている課題と引き比べながら、公共ホールのバリアフリーについて、共通理解をした。

   <後半 グループ討議 11:20~12:30(発表会を終えた人が合流)>
    一定の共通理解と課題の検討を終えた参加者が、実際にバリアフリーに向けて活動している人々と、討議。
  討議テーマ「公共ホールのバリアフリーにむけて」。
   (進 行)
   ア 全体を3グループに分ける。
     自分の体験を語りあうグループ、ハードをもちながら情報提供方法に悩んでいるグループ、「舞台説明」の詳しい状況を聞くグループに分かれた。
   イ 自己紹介
   ウ 各グループ内で、今感じていることをフリートーク
   エ まとめ それぞれのグループから報告
    ・安定的に観客に来てもらう方法、情報提供などのノウハウが不足している。今後、NPOの役割や、ボランティアのシステムの充実が課題。行政から、NPOに委託するということも考えられる。
    ・バリアフリーはハードも大切だが、視覚障害者を案内する方法のように、運営ソフトも大事である。ちょっと手を貸すことで、ハードの不足も乗り越えられる。財政難の折、職員の研修は、少しの費用で大きな効果を生むのではないか。
    ・障害のある観客に対して、ホールの対応の程度を示せる何かが必要。それは、紙に書いた基準ではなく、口コミで伝わるようなものかもしれない。信頼関係をつくる、ということに近い。
   ④ パネルディスカッション
     BFTJ代表がパネリストとして出席。分科会での各グループのまとめを報告。また、発表会会場で配布・回収したアンケートに答え、理解の深まりを促す。発表会、分科会の内容を踏まえることで、午前中の経験を再確認し、発言内容に興味を持ちやすいように工夫。

実例2. 集会施設ユニバーサルデザイン研究
       =多様な価値観や意見の共存する空間のサポートシステム=

 BFTJでは、集会施設ユニバーサルデザイン研究を行っている。この部では、研究の概要として、基本的な意識や理解を提案し、具体的な手法を紹介し、今後の方向性に言及する。

(1) 集会施設の「何を」ユニバーサルデザインするのか?
  ① 劇場などの集会施設における、デザインされた呼吸・空気
    劇場で、コンサート会場で、携帯電話が鳴る。これは、ぜひとも避けたい事態であることは、観客、主催者、アーチストに共通に理解されている。携帯電話の音が鳴り響かないため、主催者側は場内の注意喚起アナウンスなどに心を砕いている。さて、では、その携帯電話の音は、いったい「何を」壊すのだろうか?
    基本的に、携帯電話の音によって、せりふや演奏が聞こえなくなることが問題なのではない。「コンテンツの内容が観客に伝わらないこと」は携帯電話の音問題の本質ではない。静かな会場に鳴り響く携帯電話の着信音が壊すのは、「会場を満たしている、異空間としてデザインされた呼吸・空気」である。
    緊迫した演技者の演技とその呼吸に、観客席は固唾を呑み、水を打ったような静けさが空間すべてを満たす。その呼吸はステージの上にも伝わり、演技者と呼応する。そして、静けさが破られる瞬間が訪れ、観客は演技者とともに、驚き、泣き、笑う。すばらしい演奏が行われるときには、観客席から掛け声がかかり、拍手が起き、感動した観客は立ち上がって演奏者をたたえる。スポーツを観戦しているとき、大きなホームラン、芸術的なゴール、思いがけない展開やファインプレーに客席全体が沸く。観客の期待がこもった応援、拍手と歓声に選手は緊張し、力づけられ、それにこたえるプレーをする。「観客席という現場」に足を運び、体験するということは、用意されたプログラムを理解するということではない。観客席からも発信し呼応すること、現場で起きるそれらのすべてを楽しみ、ともに呼吸・空気をつくりだすことである。
    観客席全体の空気をユニバーサルデザインにすることとは、そのユニバーサル化の条件整備をすることである。「劇場などの集会施設に到達し、内容を理解し、呼吸・空気の形成に参加する。そのすべてを、ここちよく行える。それがすべての人に開かれている」。これが、ユニバーサルにデザインされるべきことがらの本質である。
  ② ユニバーサルデザインのためのシステム
    条件整備に必要なポイントは数多くある(添付「バリアフリーシアターの基本的考え方」参照)。それらをクリアし条件を整備することの総体が、ユニバーサルデザインのためのシステムと言える。また、システム整備により「映画、演劇という言葉の意味が今と違ってくる」はずである。現在多くの人に信じられている「映画は視聴覚に不自由のない人が見るもの」ということが「視聴覚が不自由な人もともに見るもの」と変化する。これによって、演劇映画教育の内容も当然変わるはずだ。演劇概論のテキストの項目に「すべての人が見る演劇デザイン」が出現する。そして、創り手側の意識や世界観に何らかの影響がでてくる。これは大変興味深いテーマである。

(2) 視聴覚障害にかかわるコンテンツのユニバーサルデザイン
  ① ユニバーサルデザインに必要な要素
    集会施設のユニバーサルデザインには、来場方法、コンテンツ、上映・公演情報提供、など、複合的な要素がある(添付資料参照)。その中の視聴覚障害にかかわるコンテンツのユニバーサルデザインに焦点をあててみたい。
    視聴覚に障害にある観客のために様々なサポート手段があるが、時間の経過を追って状況を理解していくためのサポートがない場合、視聴覚障害者には、コンテンツの理解にバリアがある。「同行者が隣の席で、視覚障害者には小声で、聴覚障害者には手話、そして難聴者の場合には時としてやや大きな声で、舞台の説明をする」などの隣席でのサポートはそれほど目立つ状況ではないが『声がうるさい』『感興をそがれる』などの他の観客とのトラブルも発生している。観客席はステージ等と一体化し、感動を創り出す場所である。静かなシーン、緊張するシーン、などではすべての観客が集中できる環境が必要になる。
  ② コンテンツ理解の手法
    現在、日本においては視覚障害者のうち90%以上は点字が読めないが、その多くは中途障害者である。手話や点字を短期間に体得することは困難であるため、音声や文字によるサポートシステムが必要になってくるだろう。この視点から、超高齢社会の中での新しい「集会施設のユニバーサルデザイン」「障害者、高齢者、外国人をサポートする、多様性に向けたユニバーサルデザイン」の総体を考えるべき時にきている。

(3) あるべきコンテンツ理解システム
   集会施設で必要な情報伝達機能は、駅や商業施設とは基本的に異なる。他の観客やアーチストへの影響を少なくし、情報を確実にライブに伝達する必要がある。この場合、障害を持つ人にとって使いやすいかどうかに加え、障害がある人とない人との間にも関係が生じることを前提として、サポートシステムをデザインする必要がある。また、説明的状況翻訳とアートとしての状況翻訳という2つの方向性を持つコンテンツが存在する。状況翻訳手法の確立、要約筆記と日本語字幕の違いや音声による状況ナビゲーションとアートとしての音声ガイドの違いについても、より深い研究が必要である。
  ① 集会施設の観客席で使用する情報伝達に必要な基本条件
   ア 空間を共有するステージや観客全体への影響、演出効果への配慮
   イ 情報伝達機器が持つべき機能 
    a リアルタイムなオペレーション機能
    b 他の観客に影響を与えない情報伝達機能
    c コンテンツに応じた伝達方法選択機能
    d 視覚障害、聴覚障害、外国人、など多様な観客への対応機能
    e 中途障害者などを含むすべての人にとって直感的に使える機能
    f 非常災害時の避難誘導に活用できる機能
  ② 「バリアフリー操作室」の設置についての国への提唱
    実例3で述べる提唱の実現も、ユニバーサルデザインシステムにはかかせないものである。

(4) 演劇上演中の「ことば」をユニバーサルデザインする。現代演劇協会 劇団昴 三百人劇場の場合
  ① 「ハードよりハートを! ハートのあるハードを!」
    演劇上演中のバリアの代表的なものは
   a 外国語公演の場合、言葉の意味。
   b 聴覚障害者の場合、音。
   c 視覚障害者の場合、舞台上の状況。
    これらを取り除けば、より多くの人と、ともに演劇を楽しむことができる。
  ② サポート方法
   ・外国語公演に日本語字幕
   ・日本語公演に日本語字幕
   ・音声ガイドによる視覚サポート状況翻訳
   ・海外での日本語公演に外国語字幕
    字幕機材も様々な研究がされている。
    異文化の、言語の壁、感性の違いを、どのように字幕で表現するかという問題もある。
  ③ 字幕の表示について
    舞台の進行に合わせた字幕表示ができるしくみがあり、本番でのアクシデントや、台詞の飛ばし・戻りなど役者のミスに対応できる。
    観客が演劇を見ながら字幕を読み取れる文字数には、制約がある。また、表示装置の位置は、極力、演技エリアに近いのが 望ましいが、演出・美術・照明・音響による総合芸術の邪魔にならないことを基本とする。
  ④ 昴音声ガイド
    視覚障害をもつ観客にせりふや状況把握の手助けをするための解説。手のひらくらいの受信器を首から下げ、片耳にイヤホンをする。解説者が、逐次、舞台の進行状況や舞台装置や衣裳の説明など、せりふだけではわからないことを言葉で伝える(状況音訳)。舞台の雰囲気を感じるための最前列の席を用意している。
   <作成の原則>
   ア 演技者及び演出家に、ガイドの為の特別な間は要求せず、思うように創ったものをサポートする。
    a 舞台上の流れを妨げないように、役者の息をつく間や、小さなアクションの合間に、言葉を入れる。
    b 台詞の聞き取りを妨げないように台詞と解説を重ねない。
   イ 対象の観客は、声だけで登場人物を識別するので、役者の最初の登場で、声と人物を結びつける。
     原則(ア)(イ)により、おのずから解説を入れる時間は限られ、「解説のための言葉探し」をしている。観客の側にも視覚を失ってから今までの時間差、経験差、感受性の個人差がある。現在のところ、衣装の色や小道具の形、物の大きさ等々、伝えきれないことは山ほどある。
     今日まで20を越す作品に、毎公演つけているガイドの平均値は、上演時間約2時間半の作品、平均200箇所。単純で密度の高い言葉、誰にでも判り、しかも、聞く人のイメージをかき立てる言葉を探すのが、これからの課題。 
   (実例2詳細を国際ユニバーサルデザイン会議(http://www.ud2002.org/jp/index.html)に発表予定)

実例3. 国土交通省への提唱 2002年2月19日

 『高齢者・身体障害者等の利用を配慮した建築設計標準』の改訂に向けて行った提唱の内容。
1. 日本語字幕・音声ガイド操作オペレーターが使用する「バリアフリー操作室」の設置
2. 車椅子使用者が、ロビーも含めた劇場内を自由に移動できるハード整備

 現在、国土交通省では、「高齢者・身体障害者等の利用を配慮した建築設計標準」の今年度内改訂に向けた作業を進めている。これは、「高齢者・身体障害者に配慮した設計を進める際の留意点、参考になる事項を国土交通省の立場で示すもの」。改訂は、平成6年のハートビル法制定時以降初めて。
 上記2点を盛り込むことができれば、劇場のバリアフリーが大きく進む。
 ハードが、人を育てます。そして、「多様な人がともにいる劇場」の実現を。

(1) 日本語字幕・音声ガイド操作オペレーターが使用する「バリアフリー操作室」の設置
   調光室や音響室、映写室と同じように、「操作オペレーター等が使用する部屋」は、視聴覚に障害がある観客が劇場を楽しむために、必要なハードである。
  ① 可能となること
   ア 音声ガイド、日本語字幕の操作室として、プロのスタッフの使用
   イ 同行したガイドヘルパーによる、観客席の視覚障害者へイヤホンガイド
   ウ 劇場付きの、音声ガイド、日本語字幕ボランティアの育成
   エ 非常災害時の音声ガイド、日本語字幕を使用した避難誘導
  ② 「バリアフリー操作室」の条件(監修 日本舞台音響家協会理事 山北史郎)
   ア 音響室、調光室と同様に、舞台が正面からよくみえること。
   イ 機器操作の配線などが可能なこと。
   ウ 車椅子使用者も使用可能なこと。
   エ 音響的に観客席と分離することが可能な上で、日本語字幕操作室と音声ガイド操作室は、それぞれ専用の室であることが望ましい。
  ③ 他の観客との共存
    事例2の(1)(2)であげたようなトラブルなどが今後、観客の増加に伴い、増える恐れがあるが、「バリアフリー操作室」の設置は、この問題の有効な解決策である。

(2) 車椅子使用者が、ロビーも含めた劇場内を自由に楽しめるハード整備
   劇場の楽しみは、観客席につく前に、始まっている。
   劇場にスムーズに着き、「いらっしゃいませ」と迎えられてロビーに入り、飲み物やパンフレットなどを手にすること。偶然出会った知人とおしゃべりをし、ざわめきのなかで開演のベルを聞き、周りの観客といっしょに、開演・上映の時を待つこと。公演が終わり、「楽しかったね」「来てよかった」と満足し、同行した友人たちと、会話を楽しむこと。
   これらの「普通の劇場の楽しさが、すべての人の楽しみになること」が、劇場のバリアフリー。
  ① 「劇場の楽しみ」のための条件
   ア 車椅子使用者に、他の観客と同じ動線が確保されていること。
   イ ロビーカウンター、チケットブースなど、劇場内の観客対応設備が、車椅子対応であること。
   ウ 出演者やスタッフなどとして、車椅子使用者を含む障害者が想定されていること。
  ② 可能となること
   ア 車椅子使用者の「普通の劇場の楽しみ」の享受
   イ 非常災害時を含むスタッフの対応の充実
   ウ 観客のボランティア活動の活性化
  ③ 動線の確保の重要性
    現在は、劇場入り口からロビーをとおったスムーズな動線が確保されていないことが多いため、日常使わないエレベーターを使う、荷物運搬用の通路を使うなどの方法で観客席に案内する状況。これはスタッフと観客の双方にとって、負担になっている。今後、観客の増加にしたがい、人的に対応しきれないことも考えられる。また、非常災害時には、スタッフの対応は、不可能と思われる。

おわりに

 以上、3つの事例を示した。これらのほか、「映画上映ネットワーク会議」(9月6日7日、岐阜市で開催http://www.acejapan.or.jp/artg/filmg/news/index.html)においては、バリアフリー映画上映の分科会パネリストとして、バリアフリー上映会のノウハウの概要を説明するなど、各方面への働きかけを精力的に行っている。
 今レポートでは、事例の紹介に終始した。今後は、ユニバーサルデザインという概念をどのように生かすことが必要か、地域に多くある多目的ホールの有効活用とリンクした具体的提案、地域におけるホールの役割とボランティアの活躍の方向性など、具体的な提案をしていきたいと考えている。