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【代表レポート】
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羽咋市における男女共同参画社会推進について
─市民参画による条例策定への取り組み─
石川県本部/羽咋市教育委員会・生涯学習課 三星 正紀
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1. はじめに
羽咋市は人口2万6,000人の市で石川県能登半島の入口にある小さな市であります。
羽咋市における男女共同参画社会の推進に向けての取り組みは、平成12年に始まりました。
市民参画による男女が共に輝くまちづくり推進懇話会を軸として幅広い市民の意見を取り入れるため、平成12年6月に市民意識調査を実施いたしました。また、8月より全地区公民館によるまちづくり会議を実施したところ多くの市民から男女共同参画推進にかかる意見が出され、推進懇話会で協議を重ねました。平成13年1月に推進懇話会から意見書が提出され、それらを参考にして平成13年3月「羽咋市男女が共に輝く21世紀のまちづくり条例」を制定しました。
この条例制定まで市民参画を基本に進めて来た経緯について、取り組みを述べます。
<取り組みスケジュール>
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12年
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5月22日 |
男女が輝くまちづくり策定推進委員会(市長、助役、収入役、教育長 課長10名) |
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6月15日 |
男女共同参画意識調査(市民1,200名) |
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6月22日 |
講演会(ドメスティック・バイオレンスって何?) |
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6月26日~ |
ワーキング会議(庁内職員) |
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7月10日 |
意識調査回収(501名)集計作業 |
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7月30日~ |
男女が共に輝くまちづくり推進懇話会(全5回) |
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8月27日~ |
市内11全公民館でまちづくり会議 |
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13年
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1月22日 |
男女が共に輝くまちづくり懇話会意見書提出 |
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2月15日 |
第2回男女が共に輝くまちづくり策定推進委員会 |
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3月 |
3月定例議会条例案提出 |
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3月18日 |
男女が共に輝くまちづくりシンポジウム |
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3月27日 |
条例制定 |
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4月 |
DV相談所開設 |
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5月 |
女性の仕事アイデア募集 |
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7月 |
各課ヒアリング |
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7月~9月 |
DVサポートボランティア養成講座開始 |
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7月22日 |
女性の仕事アイデア審査 決定 |
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9月~1月 |
行動計画策定男女共同参画推進委員会 |
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14年
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3月 |
羽咋市男女が共に輝くまちづくりプラン策定 |
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5月 |
各課ヒアリング数値目標設定 |
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6月 |
空店舗を利用した女性の起業家募集 |
2. 意識調査
平成12年6月市民男女1,200名による意識調査を実施しました。回収率40%で501人から回答を得た。その結果、社会通念・習慣・しきたり面や、家庭、職場、政治面などでは、男性が優遇されているとの回答が多数ありました。
また、夫婦や恋人の一方が、もう一方から身体的・心理的な暴力を受けた、あるいは暴力をふるうDV(ドメスティック・バイオレンス) については、見聞きしたことも含めると45%があると回答がありました。次に、「子供を産まなくなった理由」についての回答では、経済的負担が大きいが1位で、子育てと仕事の両立が困難が2位で、少子高齢化の進展など社会情勢の急速な変化に対応する課題として、経済的支援と子育て支援が急務であることなどが意識調査で判明しました。
3. まちづくり会議
意識調査だけでは、市民の生の意見が反映したとは言えないため、また幅広く市民の意見を取り入れるため、平成12年8月から9月にかけて市内に11ある全公民館で「まちづくり会議」を開催しました。この会議には全部で男性121人、女性151人の参加がありました。参加者は、PTA、婦人会、町会、公民館運営審議会委員などで、当初は他人の目を意識してなかなか意見が出なかったが徐々に「男も家事育児をするべきだ」「夫に殴る蹴るの暴行を受けていることは許せない」といった意見が出ました。その反面、「女性が家事育児をするのは当然」とか「女はやはり男をたてなければ」などの意見も出て年代によって意識の違いがあることがわかりました。
4. 男女が共に輝くまちづくり推進懇話会
平成12年7月に市民の各種団体代表(13名)や、公募委員(5名)、学識経験者(2名)から構成した「羽咋市男女が共に輝くまちづくり推進懇話会」を発足しました。意識調査やまちづくり会議の結果をもとに、地域、家庭、職場、学校、人権など羽咋市の男女共同参画社会を推進するために何が必要かを熱心に討議しました。その結果、条例の必要性がまとまり、意見書として平成13年1月22日市長に提出した。
5. 条例制定
市長は、この意見書を受けて平成13年3月「羽咋市男女が共に輝く21世紀のまちづくり条例」を議会に提出し、可決された。
この条例では、 本市において、ここ数年来人口の減少とともに、活力が失われつつある現状から活力があり、魅力あるまちづくりを目指すため女性のエンパワーメント(力をつけること)を向上させ、女性の積極的な社会参加と労働人口の増加を目指すために起業支援をしていくこととしました。そして、女性の人権を著しく侵害しているドメスティック・バイオレンス(夫や恋人からの暴力)に対し、その対策と防止のために市として相談所を開設し、取り組むことなどが盛り込まれました。
6. 行動計画
条例を機能的にしていくためには、個別の事業施策や行動計画が必要であり、まちづくり会議の意見や、推進懇話会の意見を入れた市民との協働の行動計画を作成しました。
この中では、下記の基本目標と重点課題を挙げています。
① 男女が共に輝く意識づくり……男女共同参画意識の推進 固定的な性別分担意識の解消
② 人権を尊重する意識づくり……男女共同参画の視点に立った人権擁護
③ 男女でつくるまちづくり……意志決定への参画 男女共生の視点を生かしたまちづくり
④ 男女が共に働きやすいまちづくり……いきいきとした職場と家庭の環境づくり 子育て支援推進
⑤ すべての人の自立を支えるしくみづくり……豊かな高齢社会の実現 健康づくりの推進
<施策としては>
・家庭、地域、職場、学校における男女平等教育の推進。市民講座、出前講座の推進。
・審議会、委員会等の女性委員比率目標を定める。公的委員や自治会委員等に女性枠設置の促進。
・空き店舗を利用した女性の仕事アイデア募集し起業家支援。
・農業経営における家族経営協定の導入促進。
・ドメスティック・バイオレンス相談所の開設。
などがあり、すでにDV相談所を開設しました。また女性の仕事アイデアなどは、全国から108件の応募があり、現在空店舗を利用して仕事をしてくれる女性起業家を募集して、元気あるまちづくりを目指しています。
7. おわりに
「羽咋市男女が共に輝く 21世紀のまちづくり条例」は市民との協働で策定した条例です。その中では、男女共同参画とまちづくりは一つのものとの考え方です。女性と男性、それぞれの持つ能力を十分活かせるような羽咋市にして行きたいと考えています。
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