【自主レポート】
男性の育児休暇の報告
広島県本部/布野村職員労働組合 熊谷 匡修
|
1. はじめに
今まで、広島県内の各単組では、男性職員の育児休暇取得者が少ないという実体があります。私の報告を聞いて、あるいは読んで、1人でも多くの方が男性の育児休暇取得に興味を持ってもらえたらと思います。若い世代の人はもちろん、課長クラスの人にも男性の育児休暇取得について少しでも理解が広がればうれしいことです。
今になって思うことですが、今まで先輩組合員ががんばって運動してこられた成果として男性も育児休暇を取ることができると感謝しています。私の親の年代は初めて育児休暇という制度ができ、「まず誰が取るか」という時代だったそうです。私の子ども達の時代は「当然のように」男性も育児休暇を取っている時代だと思います。その過渡期にある私達は、子ども達のために少しでも育児休暇が取りやすい環境を作っておく責任があるように思います。そういう意味で私達はとても重要な時代に生き、組合運動をしていると思います。
2. 育休を取得するにいたった経緯
1番大きな理由は、妻から育休をとってみたらといわれたことです。
2番目は、職場の先輩にあたる男性職員が「自分も育休取ってみようかなー」といったことです。
3番目は、私自身が新しいもの好きだったということです。
職場の中でも育休を取るという話が出るほど、私の職場では、男性が育休を取るということが「普通」だったため、あまり深く考えずに育休を取得してしまいました。
3. 育休中の家事・育児について
育休に入る前は、仕事に行かなくていいし、自分の時間はあるし、子どもと遊べるし、いいことばかりで、「育休なんて楽勝」と甘いことを考えていましたが、その考えは本当に「甘い」考えで全く間違っていました。家事や育児というのは、大変な重労働です。
実際には、買い物に行ったり、洗濯や掃除などの家事をしたり、子どもの離乳食を含めて、朝、昼、晩のご飯を作ったり、子どものおむつを替えたり、服を着替えさせたりと盛りだくさんです。ただ、掃除については、子どもを1人なげておくわけにいかないので、妻の休みの日にしかできませんでした。専業主婦(夫)といっても家事がすべてできるわけではありませんでした。
4. 育休中に感じたこと
まず、1番感じたのが、子どもの成長がとても楽しみになるということです。つたい歩きができたとか、「バー」と言いだすとか、私の真似をしてくれるとか、一歩歩いたとか、普通に生活していて大人から見ると何でもないことでも、子どもとずっと一緒にいるときはそんなささいな成長にとても興味がわいてきます。
育休に入って2日目、天気がいいので、子どもと散歩をしていたら近所の美容院の中から「男の人が赤ちゃん見よってよー」という声が聞こえました。僕には「何でかねー。リストラかねー。」と言われているような気になり、なんだか恥ずかしくなりました。ただ、これも慣れで、買い物などと同じように1週間もすると気にならなくなりました。
それから、買い物に行ったときに、お店の人がとても親切だと感じました。子どもと一緒にいると、買い物袋に商品を入れてくれたり、笑顔で話し掛けてくれます。子どもというのは、社会の潤滑油になる大切な存在なのです。
それから、主婦と言われている人はとても孤独だろうなと感じました。家にいるというのは社会から遮断されているように感じます。私の場合は、仕事の連絡などで、職場とのメールのやり取りがありましたが、初めから主婦(夫)の人はそれすらもないのでさらに孤独感を強く感じると思います。
今までは、近所付き合いはほとんどなく、朝晩の通勤時等にあいさつをする程度でしたが、育休を取って初めて近所付き合いの大切さを感じました。
まず、第1に、話し相手になってもらえるということです。育休とか、主婦(夫)として家にいるということは少しオーバーですが、一般社会から孤立するということです。育児をされたお母さん方は感じられたと思いますが、自分の時間がないので、新聞・テレビを見る時間がなく、社会で何が起きているのか全く分かりません。そこで、近所の人との世間話は、大変ありがたいものでした。私には今まで近所付き合いがなかったので、その機会を作るために極力外で、子どもを遊ばせるようにしました。一般的に子どもは外で遊ぶことが好きといわれますが、親も外に出なさいという意味ではないかと感じました。それに、子どもがいると知らない人でも結構声をかけてくれます。私の場合は、ちょうどいいことに4ヵ月遅れで生まれてきた女の子が隣にいて、そのお母さんが育休中で、子どもの話を主にしました。
第2に遊び相手になってもらえるということです。先ほども話をしたように隣に同じような月齢の女の子がいて一緒に遊びました。子どもだけでなく、私の遊び相手でもあったように思います。最初は、それぞれが自分のベビーカーに乗っているだけでしたが、1人が歩けるようになると近づいていって触るようになり、次第に、2人でおもちゃをかまって遊んだりしました。夏だったので、水遊びもしました。
第3にちょっとの頼みごとができるということです。トイレに行く間ちょっと子どもを見ておいてもらう。ちょっと買い物を頼む。雨のとき洗濯物を入れてもらう。などです。
それから、育児というのは、とてもストレスが溜まります。自分のためにも子どものためにもストレス解消は必要です。ストレスを溜めているとちょっとしたことで、すぐ怒るようになります。このストレスが、幼児虐待の原因だと思います。
それから妻の残業がとても嫌でした。子どもにとって「お母さん」は特別で、お父さんでは、どうにもならないことがあります。例えば、外が暗くなって寂しくなり泣いてしまったときは、抱っことかをしても全くダメでした。
保育所探しについてですが、共働きの家庭にとって子どもをどこへ預けるかは重要な問題だと思います。朝起きて朝食、身支度、仕事、帰宅、晩ご飯、寝るという生活をしていると子どもと関われるのは朝2時間夜3時間の5時間で、寝ている間9時間、保育所にいる時間10時間で、子どもが起きている時間の大部分は保育所にいるということになります。保育所探しというのは、子どもが生活する場所を探すということなのでとても悩みました。7ヵ所を実際に見学して決めました。
職場の状況が分からないというのもとても不安です。私の場合は、仕事のやり取りをメールで行ったり、後任の人がどうしてもわからないということがあれば実際に職場まで行ったこともありました。職場と全く関わりがなくなったわけではなかったのでその点は良かったと思います。「育休中に仕事?」と妻からいわれたこともありますが、全く離れてしまうよりは関わりがあったほうが私にとっては落ち着けたような気がします。
職場復帰にあたってはやはり不安でした。3ヵ月という短い期間であり、さらにメールなどで職場とのつながりを保っていたにも関らず不安でした。女性の場合は産後休暇も含めて1年間の育休であり、職場とのつながりもほとんどないので、不安はさらに大きいと思います。組合としてもこの辺は考える余地があると思います。
5. 今後について
まず、育休についてですが、今回育休を経験してみて、第2子のときも、ぜひ育休を取得したいと思います。加えて育休が3年に延長になりました。今回はさすがに取れませんが、次回はぜひもっと長く取りたいと思います。育休は実際大変なものでしたが、自分の子どもと関われるというのは、それ以上に楽しいものです。
次に組合活動についてですが、布野の単組で、「自分も育休取ってみようかなー」と話していた男性組合員は、家に子どもを見る人がいるという理由で育休の取得をあきらめました。女性の場合には家に人がいるいないに関らず育休が取得できるので男女平等の時代に反していると思います。何とか改善したいと思います。
職場とか仕事についてですが、子どもが生まれるまでは、家庭のことを職場に持ち込まないでほしいと思っていました。例えば子どもを見る人がいないから残業できないとか、子どもが熱を出したから休む、早く帰るということなどです。子どもが生まれて実際自分がその立場になってみると、ほんと大変だと言うことが分かりました。特に子どもの風邪や熱はどうすることもできません。このことは、子どものいない若い組合員に伝えていきたいと思います。
また、職場の配置・仕事の分担も考えたらよいと思います。私は生涯学習センターの勤務だったので、夜や日曜に講座があることが多く、妻に大変な負担をかけたと思っています。子どもが3歳になるまでは、全く残業をしてはいけないというくらい踏み込んだ制度が必要だと思いました。
|