【代表レポート】

「水基本法」で流域自治を

自治労/公営企業評議会

1. なぜ「水基本法」が必要なのでしょうか?

 日本各地でダムや堰の建設、干拓事業や下水道事業など、水に関わる事業で住民の反対や事業の透明性を求める動きが強まっています。
 水源開発についてはダムや堰の建設が主に行われていますが、水利権の転用や事業の見直し、節水や再利用、土地利用の見直しなどの政策を積極的に進めていく必要があります。また、過大な下水道計画によって、環境や財政が破壊されており、地域に合った計画が求められます。
 しかし日本の水行政は、水質・生態系・廃棄物・浄化槽は環境省、水資源・河川・下水道は国土交通省、水道は厚生労働省、農業用水・水産は農林水産省、工業用水・水力発電は経済産業省というふうに縦割り的管理となっており、地方自治体においても中央政府の組織・施策に照応する体制となっていることが多い現状です。
 このため、水源開発、利水・排水施設の整備、治山・治水対策、森林の保全・整備等の水源保全対策、水質保全対策、地下水利用の適正化、排水の再利用の促進等の諸施策が個別的かつ画一的に実施されてきており、水資源管理や水環境保全が適切に行われていない実態です。
 このような現状への反省もあって、近年、各省府の審議会や研究会、関連機関(日本下水道協会等)から、水循環や水環境の視点を重視し、流域単位の総合的水管理を求める意見が多く出されています。また、98年8月には6省庁(当時)の担当課長クラスによる「健全な水環境系構築に関する関係省庁連絡会議」が設置されました。しかし、これらの議論は求心力に乏しく、水政策の新たな展開に至っていません。
 いまこそ、持続可能な共生型社会の形成をめざし、水に関する政策や施策を統合的に実施し、市民・自治体・国・企業などが相互に連携し、責任と役割を分担しつつ協働できるシステムを確立することが求められています。
 その具体化のためには、水に関する個別法を統合する新たな法的枠組みとして「水基本法」(仮称)の制定が不可欠です。

2. 「水基本法」はどんな内容にしたらよいでしょうか?

(1) 健全な水循環
   水は、海洋・大気・陸地を自然の摂理に従って絶えず循環しています。この連続した水循環を総体としてとらえ、この水循環系への負荷を最小化する地域づくりを行い、健全な水循環の保全と再生を図らなければなりません。

(2) 水は公共のもの
   地下水は地表水と一体となって水循環を形成しているにもかかわらず、現在、地下水は土地の権利に属するとされており、健全な水循環を阻害する要因となっています。そのため、地表水も地下水も「水は公共のもの」であるという原則を確立する必要があります。

(3) 流域を単位とする水管理
   陸上の水は自然の分水嶺により区切られた集水域(流域)を単位に循環しています。したがって、水の管理も基本的に流域を単位として行う必要があります。
   また、流域は複数の都府県・市町村にまたがることが多いので、流域の基本的施策は都府県・市町村単位ではなく、流域を単位とすることが必要です。

(4) 統合的な水管理
   森林や水源の保全、利水・排水の施設整備、治山・治水、生態系や水辺環境・地下水の保全と利用、排水の再利用等の諸施策を統合的に行う必要があります。

(5) 自治的な水管理
   各流域は、自然的・社会的・歴史的条件が異なることから、水行政に関わる課題についてもそれぞれ重要度が異なります。このため、全国一律の基準による管理でなく、流域ごとに地域に適合した水政策や水管理を住民合意で作り出していくことができるようにしなければなりません。
   このため、水に関わる国等の権限を分権し、流域単位に自己決定し、自己責任を負えるようにすることが必要です。
   具体的には、流域管理に関わる基本的権限をもつ組織(仮称「流域連合」)を確立する必要があります。
   なお、森林は流域をまたがって存在していることが多いため、森林管理は流域間で十分調整することが必要です。また、海も流域を超えて存在しており、海域としての独自の管理を基本に流域との調整を図る必要があります。

(6) 住民参加による流域自治
   流域自治の基本は住民参加であり、それを保障する組織機構や情報公開が必要です。また、流域自治に関わる国、自治体、事業者や住民の責務を明確にする必要があります。同時に、「流域連合」と都道府県、市町村等との役割分担や負担のあり方を明確にすることも必要です。

【資料】水基本法(自治労案・2001年版)逐条解説