【自主レポート】
「危機管理について」ダイジェスト
福井県本部/福井市職員労働組合
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危機管理は現実的であり実践的でなければならない。また、一朝一夕に完成するものでないので、計画性を持たねばならない。そして、1人でできるものではないため、企業局内の各部署を超えて一丸とならなければならない。その上で、市長部局や教育委員会、消防等の行政機関、多くのボランティアや市民との協働が不可欠である。
いざ、災害が発生すると職員は市民生活のライフライン確保のため不眠不休で業務にあたるだろう。しかし、行き過ぎると阪神大震災時の神戸市水道局のように、死亡者が出たりする。このことからも労安上の配慮が必要であることがわかる。また、建物に耐震性が欠如していると、神戸市庁舎のように水道局が入った階が潰れることになる。阪神大震災当時、周辺自治体に較べ神戸市の復旧が一番遅かった事実が、その弊害を物語っている。それまでの膨大な情報を一挙に失ったからだ。幸いに震災発生時刻が勤務時間でなかったことにより、地震直後の人的被害は起きなかった。
そして、危機管理の最大の問題が、人間というものは時間の経過とともに災害を忘れるため、本当に危機に直面した時に混乱に陥ることだ。つまり、ソフト面の充実と、普段からの職員教育やマンネリを排除した訓練を丹念に続けることが危機管理の充実に欠かせない。
私たちは時間的な制約もあり、企業局の危機管理について全てを検討したのではない。災害の収束(復旧)を左右するであろう初動活動と応急活動を検討したに過ぎない。その検討は総務、ガス事業、水道事業の3部門から行い、最終的に統合する手法をとったが、不十分さは否めない。
今後は、福井市企業局の検討プロジェクトを立ち上げていただき、仕事が許す限り個々の職員として参加したいと考えています。
1. 初動体制から復旧作業までのフロー
別紙参照
2. 総務編から
(1) 災害発生直後の初動活動
災害発生直後から、企業局の体制が整うまでの間に行う職員の動員、職員参集後の災害対策本部設置に至る過程を主に取り上げる。
① 災害発生が勤務中 企業局に被害発生
ア 職員の救助・手当て
イ 所属長は職員の安否確認と救助の指揮
② 企業局の被害なし、または軽被害
ア 災害対策本部の設置 職員は待機
イ 庁舎外の職員は所属に連絡、所属長の指示に従う
③ 勤務時間外
ア 自ら被災あり―――自分と家族の生命確保優先
イ 自ら被災なし
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TVやラジオ等にて震度5弱以上確認の場合で自主的に出動
緊急連絡網に従い出動 |
ウ 勤務時間外の動員原則
a 震度5弱以上の震度階で原則勤務先へ直ちに出動
b 地震以外の災害や震度が軽微でも火災等の発生による被害に対し緊急連絡網に従い出動
エ 勤務時間外の出動の留意点
a 服装、携行品
b 情報収集
・出動時に避難所や水道・ガス施設、道路等の状況その他応急復旧に必要な情報収集
・一部職員は指定施設の情報収集(安全優先)
・収集情報は直ちに指定報告書に記入
c 出動手段
・公共交通機関運行ない場合は、単車や自転車、徒歩とする
(2) 災害対策本部の設置
① 災害時緊急体制
ア 災害対策本部設置決定は局長(管理者は福井市災害対策本部詰)
イ 災害対策本部は局長室
ウ 本部員は局長、次長、各課長、ガス主任技術者、水道技術管理者
② 緊急帰宅
ア 家族が被災し予断を許さない場合は所属長に連絡後、帰宅
イ 所属長は課員の身内に関する安否確認状況の把握に努め、確認不明者には一時帰宅の猶予
ウ 自宅に老人や幼児存在の場合、本人の申し出に従い速やかに帰宅させる
エ 帰宅後、適時状況の報告に努め、確認や処置完了後、速やかに所属に復帰する
(3) 班別行動 ※記録を残すことが重要
① 総務班の役割(企業総務課に設置)
ア 職員の把握(動員状況、家族の安否)
イ 外部関係機関への連絡、応援要請
ウ 福井市災害本部との連絡、情報交換
エ 職員及び外部応援者の食料、宿泊の確保
オ ボランティアの対応
3. ガス事業編
※ガスにおける緊急措置基本フロー参照
(1) 防災組織及び活動内容
① 総務班
② 需要家対応班
③ 工場施設復旧班
④ 中圧施設復旧班
⑤ 低圧施設復旧班
⑥ 漏洩処理班
(2) 通信の確保
① 加入電話不通の場合は車載無線
② 災害時優先電話による情報収集
(3) 緊急巡回点検
地震直後の情報と併せて、3~4時間程度以内に救急継続・停止の判断操作を行うため
(4) 即時供給停止判断基準
① 地震計で60カイン以上
② 送出・供給圧の大変動により全面供給停止
③ 主要整圧器の異常や主要導管折損によりブロック供給停止
(5) 緊急供給停止判断基準
地震計で30カイン以上60カイン未満 緊急巡回点検の結果
4. 水道事業編
(1) 防災組織及び活動内容
① 総務班
② 需要家対応班
③ 浄水施設復旧班
④⑤ 水道施設復旧班(1、2班)
⑥ 応急給水班
(2) 通信の確保
① 加入電話不通の場合は車載・携帯無線やTM
② 災害優先電話による情報収集
※全課に災害優先電話が確保されているわけではない 給水管理事務所に災害優先電話なし
(3) 応急給水活動
① 1人1日3リットルを最小給水量とし拠点・運搬給水実施
② 給水方法は広域避難所に設置済の非常用貯水装置及び給水タンク
※応急給水目標 現状では実現困難
福井市地域防災計画の内容はより一層困難
地震発生からの日数
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目標水量
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主な給水の方法
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(1) 3日まで |
3リットル/人・日 |
タンク車による運搬給水、非常用貯水槽からの給水、浄水池からの給水(概ね2㎞以内 福井市地域防災計画1km)等 |
(2) 10日まで |
20リットル/人・日 |
配水幹線付近に配置する仮設給水栓からの給水(概ね500m以内) |
(3) 21日まで |
100リットル/人・日 |
(2)に加え、配水支線上に配置する仮設給水栓からの給水(概ね200m以内) |
(4) 28日まで |
250リットル/人・日 |
仮配管からの各戸給水や共有栓による給水(概ね10m以内) |
5. 資料編
災害時に必要な資料を添付する。
例えば、救急病院や避難所一覧。(主に福井市地域防災計画を参照)
復旧工事の補助申請に必要な書類等。
6. 予防対策と訓練計画
今後の課題が非常に多い。
施設整備を伴う予防対策は財源を伴うことから、現在の経済情勢や企業局の財政を踏まえると困難が予想される。福井市地域防災計画も施設整備をしない限り現実化しない。しかし、施設整備のレベルにもよるが、相当な長期計画となることが予想される。否、実現すら厳しいかも知れない。そのため、ソフトの充実によりカバーすることを考えないといけない。
すでに、市レベルの危機管理は行政機関だけでなしうる時代は過ぎ去った。行政と市民の役割分担、協働の時代に入った。地方分権の現在、市民とともに行政を創造することが肝要だ。
また、1度作成した防災マニュアルは毎年の改訂が必要であることを強調したい。 |
(1) 予防対策の実施
① 企業局庁舎、ガス・水道施設の耐震化
② 応急復旧資機材の整備
③ 図面関係及び緊急対応マニュアルの整備
④ 情報伝達機能の向上、災害対策本部の情報収集等の機能強化
⑤ ガス供給区域、配水区域のブロック化の推進
⑥ ガス工場及び企業局庁舎への地震計整備
⑦ 平常時よりの広報及び訓練
(2) 訓練計画
① 参集訓練
徒歩、自転車、バイクによる参集の徹底と指定された情報の収集について毎年行うこと。
② 総合訓練の実施
参集訓練から始まり、被害状況収集、応急対策(応急給水、応急復旧を含む)までの訓練を指す。ガスについては、即時供給停止、緊急巡回点検、緊急供給停止訓練を行う。3年に1回の割合で行うこと。
③ 机上訓練
被害想定から始まり、情報伝達、指揮命令の訓練を指す。毎年行うこと。
(3) 災害時使用機器の維持管理と訓練
① 非常用貯水装置
ア 維持管理
給水計画課等の職員により定期的に(年1回)に維持管理を行い、災害時に備える。
イ 給水訓練
非常用貯水槽は地域住民主体で給水できるように防災訓練時に給水訓練を行うこと。
② 移動用浄水装置
ア 維持管理
給水計画課等の職員により定期的に(年1回)に維持管理を行い、災害時に備える。
イ 給水訓練 給水計画課職員が操作できるように定期的に訓練を行う。
③ 緊急遮断弁
ア 維持管理 定期的な作動点検を行う。(業者点検)
イ 訓練 給水管理事務所職員が開閉動作訓練を行う。
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