【自主レポート】

環境自治体づくりの実現
~ISO14001の認証取得に向けて~

広島県本部/広島県職員労働組合・環境問題研究会 梅村 幸平

1. 環境問題の現状

 21世紀は、環境の世紀と言われる。地球温暖化、熱帯林の減少・砂漠化、野生生物種の減少などは、地球規模で緊急に取り組まなければならない課題であり、このような地球環境問題を解決するために、1980年代から様々な国際的な取り組みが進められています。
 一方、国内レベルでは、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済システムにより、廃棄物処分場の逼迫、不法投棄の増大や廃棄物による環境汚染が社会問題となっており、循環型社会の構築が求められているほか、微量化学物質による水質・土壌汚染等早急に解決すべき環境保全上の課題が山積しています。
 これら環境問題に対応するためには、経済社会活動のあらゆる局面で環境への負荷を減らす必要があり、広範囲な部門で行政施策を展開する自治体の取り組みは、直接的・間接的に環境保全に計りしれない大きな影響を及ぼすものであります。
 このような中で、最近、自治体では、施策の実行過程に環境マネジメントシステムを取り入れて、行政が関わる領域の中で環境負荷を減らすことを意図し、環境保全の取り組みに対する国際規格「ISO14001」の認証を取得する自治体が増えています。本県においても、この認証を取得し、県全体の環境行政を総合的に発展させることが望まれます。

2. ISO14001とは

 ISOとは「International Organization for Standardization:国際標準化機構」の略です。ISOは、幅広い産業分野で国際規格づくりを進めている国際機関(民間団体)であり、その中の環境ISOは、企業活動が環境に及ぼす影響を最小限に食い止めることを目的として、環境に関する国際的な基準を定めたものです。
 ISO14001は、「環境マネジメントシステム」の基準であり、「自らの環境方針及び環境目的を考慮して、自らの活動、製品またはサービスが環境に及ぼす影響を管理することによって、健全な環境パフォーマンスを達成し実証すること」と規定されています。
 ISO14001では、まず組織の最高責任者が環境方針を立て、それを実現するための計画を立案し(Plan)、その計画に基づいて実施・運用し(Do)、その結果を点検(Check)、 さらに問題があれば見直す(Action)というシステム(PDCAサイクル)を構築します。この規格が求めているものは、「環境関連法規の遵守」のもとに、自ら「汚染の予防」を含めた環境目的・目標を定め、それを組織的に実現し、さらに、「継続的な改善」を行う仕組み(マネジメントシステム)を構築し運営することにあります。

環境マネジメントシステム概念図

3. ISO14001認証取得の状況

 国内における認証取得は、約7千件(2001年7月末現在)であり、これは世界的に見ても多い水準です。このうち本県での取得は140件で、全国18位です。
 全国の自治体では、約200以上の機関で取得されていますが、県内では現在のところ取得している自治体はありません。なお、広島市が現在、取得を目指しています。(広島市は一般廃棄物焼却工場での取得を予定)。
 都道府県では、県庁としての取得が24自治体あり、6自治体が取得に向けた取り組みを行っています。中国四国地方では鳥取県、岡山県、山口県、徳島県及び高知県が取得しており、愛媛県が取得中です。

ISO14001審査登録推移状況、自治体等の審査登録取り組み状況

 

4. 自治体におけるISO14001の意義

(1) 認証取得に関する議論
   企業が認証を取得する理由は、国際取引で重視されるとか、省資源・省エネルギーを通じた経費節減等が一般的と考えられるが、自治体の場合、公営企業のような現場を抱えるところは別として、生産活動が少ないため、一般的に環境に直接的に与える影響は小さい。しかしながら、自治体では事業部門ごとに行政施策を展開しており、気がつきにくいが、計り知れない大きな影響度を持つと考えられます。
   ISOの取得と取得後の運営には相当の事務量が必要であるため、環境への直接的な影響が少ない自治体の場合、認証取得をどのように意義付けるか、所謂メリットは何かが問題となります。

(2) 認証取得の意義
   既に認証取得している自治体の主な取得の目的は次のとおりです。
  ① 姿勢の明確化(率先行動)
    自治体の姿勢は、企業や住民に大きな影響力を持っており、自治体が認証取得し、環境問題解決の姿勢を率先して示すことによって、企業や住民の活動を刺激します。
    また、具体的な環境目標等に基づき、企業や住民に環境負荷低減を働きかけることによって、環境に配慮した事業活動や住民の行動を促進させます。
  ② 環境負荷低減の実効性向上
    自治体も環境に影響を及ぼしており、オフィスなどの事務活動や病院や研究センターなどの施設業務といった直接的に影響を及ぼす活動から、公共事業など間接的に影響を与えるものまであります。これら、自治体の各部門が実施する事務・事業の定められた目標の実現に向けて、実施・点検の仕組みの整備など環境マネジメントシステムを導入することによって、自治体の活動における環境負荷の低減を確実なものとします。

(3) 本県における意義
   認証取得について、本県が全国的に消極的な立場にある理由は定かでないが、認証を取得し、環境問題に率先して取り組む姿勢を示すことが環境行政の発展の鍵となるでしょう。
   例えば、廃棄物問題を解決するための循環型社会の構築に向けた取り組みのためには、行政のみならず、生産者である企業、消費者・排出者である企業、住民の事業活動やライフスタイルの変化が求められています。企業や住民の意識を変え、本格的なごみの排出抑制を図るためには、行政が率先して姿勢を示し、事務所のごみ減量化に取り組むとともに、間接的に、事業活動や家庭で排出されるごみの減量、リサイクル等を促すことで、問題解決の大いなる促進が期待されます。

5. 具体的な提言

(1) 広島県で2004年度を目途にISO14001の認証を取得すること。
〔認証取得の目的〕

持続可能な発展をめざす社会の構築に向けて、広島県の姿勢を明確にします。
環境マネージメントの導入により、県の環境基本計画の実行を確実なものとします。
企業や住民の環境意識を高め、環境に配慮した活動を促進します。

(2) 認証取得に当たっては、全庁的な協力体制を必要とするため、認証取得の検討と作業を行うための全庁をあげての組織(「ISO14001取得プロジェクトチーム(仮称)」)を早急に設置すること。