【自主レポート】

公 共 事 業 と 環 境 行 政

香川県本部/香川県職員労働組合

1. はじめに

 3年前に県立病院の合理化提案を受け、「誰でも、いつでも、安心して受けれる医療と公共事業を比べ、あなたはどちらを選びますか」と、『急がない公共事業』を切り口とした制度・政策要求の取り組みをスタートさせました。また、同時に自治労香川県本部の自治研推進委員会に公共事業専門委員会を立ち上げ、土木・農業土木・林業土木の課題等について、県だけでなく市町村の立場でも検証し、制度の弊害や政策の矛盾を提起するとともに、県民アピールを続けています。
 公共事業の課題は、本レポートのテーマである『環境破壊』だけでなく、『財政逼迫』『利権誘導』『政治腐敗』など、まさに、『政・官・業の癒着構造』と言われるとおり、様々な様相を呈していると言えます。2年前に、私たちが初めて行った県民アピールチラシを資料として添付することから、この徳島自治研(本分科会と第3分科会)に、これまでの取り組みを紹介するとともに、全国の仲間に呼び掛けることから公共事業にかかる制度・政策の転換を目指したいと考えます。

2. 公共事業執行の課題

 地方自治体に働く者として公共事業の課題などを考える時、一番に問題となるのが補助事業です。『補助金行政って何だろう?』としてチラシに載せたとおり、国は税財源の7割を掌握し、「補助金行政」として地方自治体を牛耳っています。地方分権一括法が施行され、地方に権限を与えると言われても、財源委譲がない限り何にもできません。
 そして、表面上は拒否できるとされながらも、国のあらゆる束縛を受けるのが補助事業だと言えます。より環境に配慮した事業を計画したくても、補助事業の採択基準に合わなければ出来ませんし、「誰のための公共事業」とも言われるとおり、補助事業だから急がなくていいと思う物まで造ってしまう実態もあります。国のお金だから、使わなければ損とした地域エゴがある訳です。また、マスコミ報道などで“無駄な公共事業”“環境を破壊する公共事業”と言われるものの多くに、国直轄の大型公共事業が上げられていますが地方自治体として拒否できなかった理由も同様ではないでしょうか。
 今、補助金行政を廃止・縮小することも検討されている訳ですが、もし、廃止されても地方自治体として、県民に胸を張り事業執行が続けられるような公共事業に、早く転換させることが求められていると言えます。

3. 公共事業と環境行政

 環境行政を視点として公共事業を考えていく時、多くの課題に気がつきます。単に、事業を執行する上で「いかに、環境に配慮するか」とした問題だけでなく、公共工事に使用する材料を確保することが環境にどういう影響を与え、また、公共事業により生み出されてくる廃棄物をどう処理するのかとした点も大切な要素です。公共工事により造り出された構造物には寿命があり、大都会のビルや高速道路・ダムなども、いずれは全てゴミになる訳であり、それらをどうするかということも考えなければなりません。これまでのように、経済性や利便性・安全性を最優先して公共事業を計画するだけではなく、「材料をどうする」「壊す時にどうする」「壊したものをどうする」など、多くの検討事項が必要となってきます。

4. 環境に配慮した公共事業への転換

 また、環境に配慮した公共事業を考えていく上で、大きな課題となるのが「環境を守っても、メシが食えない」と言う実態ではないかと思います。来年度で事業廃止の方向が示されていますが、地域住民の意向を取り入れて公共事業を実施する代表的なものに、ホ場整備事業があります。そして、今までどおり『ホタル』や『ドジョウ』が住め、あぜ道では『ツクシ』が取れ、「ちょっとした水遊びも出来る」、こんな周辺環境に配慮したホ場整備事業も可能な訳です。しかし、土地所有者や地域住民からは、「用排水路は全てコンクリートにしろ」「農道は舗装しろ」と要求され、結果的に実現できないことが多くあります。何故かと言えば、その理由は簡単であり、土地所有者や地域住民にとって、年3~4回もの草刈をしても、また、用排水路の土浚えをしても、何の収入にもなりませんし、負担が増えるからです。そして同様なことは、河川の災害復旧事業などでも見られます。これまでのようにブロック積一辺倒でなく、より環境に配慮した工事も可能となりましたが、土地所有者から拒否されてしまいます。
 こんな状況を見る時、草刈りをしたり、用排水路の清掃をしたり、山の下草や間伐をすることが収入につながる施策が必要でないかと考えてしまいます。現状のシステムでは、減反施策など農産物価格を守るために税金を投入していますが、これを転換し、環境を守るために税金を投入するシステムを構築しなければならないと言えます。公共事業による環境破壊を防ぐには、様々な施策誘導が必要であり、土地所有者や地域住民の協力があって初めて成り立つのかも知れません。

5. まとめ

 公共事業を執行する立場の者が、『急がない』と言うことは、自分で自分の首を絞めることに繋がるのかも知れません。しかし、公共事業を執行するプロだからこそ、その仕事に関する問題の提起が必要と考えます。そう、私たちが訴えなければ、誰も知らないことばかりです。
 今こそ、地方行政に係る私たちが、現在進められている国主導の制度・政策の矛盾を指摘しつつ、地域住民や全国の仲間とともに改善を求め、「真の地方分権」が確立できるまで頑張りましょう。