【自主レポート】
住民がヒーロー・ヒロイン
徳島県本部/佐那河内村職員組合 梶本 佳史
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佐那河内村は徳島市の西側に隣接し、人口が3,200人あまりの過疎が進む小さな村です。
現在村行政では、農業振興や福祉の充実とともに、重要施策に位置づけられている住環境整備面では、簡易水道改良工事と農業集落排水事業の推進、合併処理浄化槽設置、ごみ分別収集の取り組み強化などのため、ボランティアグループや住民との関わりを密にとりながら行政運営を進めています。
現在大きな社会問題となっているごみ問題や環境問題については、佐那河内村でも同様に環境の悪化や、財政面での負担が大きな問題となっています。
これらの課題を解決していくために、佐那河内村で進めている環境行政の取り組みを報告します。
1. 資源ごみ分別収集の取り組み
佐那河内村では一般廃棄物を処理する施設がないために、村内で処理することが出来ず、県外の許可業者へ廃棄物を運搬し、焼却処分や最終処分を行っています。収集している廃棄物の中には、リサイクルできるペットボトルや白トレイなどが混ざっていて、ごみの減量化とリサイクルの徹底をはかることで、環境への配慮と財政支出を抑えることが課題となっています。
平成12年の容器包装リサイクル法の施行により、佐那河内村でもスムーズに法を運用するために、村内に47ある各常会から分別収集推進委員を2人選出していただき、分別収集推進委員会を組織し、推進委員会を開催しました。
リサイクル法の主旨や制度の内容、佐那河内村での分別方法などについて説明を行い、平成12年6月に村での完全施行に向けて取り組みを進めました。また、推進委員と職員との間で連絡調整をしながら、全常会で説明会を開催したり、生活改善グループや婦人会組織に対しても細かな分別方法について説明してきました。
この分別収集を進めるうえで、特に力を注いでいることは、家族全員で取り組んでもらうことです。田舎にありがちな「家事は女性がするもの」という封建的な考えをなくすことに重点を置き、各家庭へ持って帰って議論してもらえるよう、あらゆる機会を使って話すこととしています。現在、常会に集まる人のほとんどが男性であることから、「ビールを飲んだ後始末は誰がするのか、また、缶の中にタバコの吸い殻を入れるのは誰か。その缶を始末するのは誰か。」という話をしています。逆に、生活改善グループや婦人会は女性で、「ビールの空き缶は誰が飲んだのか。タバコの灰が入った空き缶は誰が処理しているのか」という話をして、資源ごみのリサイクルやごみを減らすため、女性だけの仕事とはせず家族全員で話し合いが出来るような仕方としています。
リサイクル法が施行されて2年が経過し、まだ私たちの取り組みが不十分なため、飛躍的にリサイクルされる量が増えたわけではありませんが、少しずつごみを減らすため、リサイクルするための意識づけができているようです。
今後の課題としては、分別収集をより徹底していくために、行政と住民をつなぐ推進委員会での取り組みをより充実させていくとともに、子どもの時から実践できる取り組みを考え、ごみの減量とリサイクルの徹底が当たり前となる意識づくりをしていきたいと考えています。そうすることにより、ごみを捨てない、ごみを減らそうという意識づけができると思います。また、その模範を示す父母、祖父母の意識向上にもつながることが期待できます。
2. ごみ分別収集モデル地区
33品目の資源ごみ分別収集の先進的な取り組みを進める上勝町に、新町常会という集落組織の中の女性が中心となった「新町嬢会」が視察を行いました。職員も同行し、集積所の職員の方から分別の方法について説明を聞きながら、また、佐那河内村と上勝町との分別方法を比較しながら、分別収集の徹底されている状況を見学しました。
後日、見学したことを嬢会の中で話し合う中から、実践できることを見つけるということで、佐那河内村内でのごみ収集方法は各地区にある集積所に排出方法をとっていますが、この地区には集積所がないので、地区の集会所の軒下で毎月廃ビニール収集の前日に、ごみを持ち寄り、「このごみはどのコンテナに入れるのか」、「このごみはどのようにリサイクルされるのか」など一緒に考え、話をしながら村が用意したコンテナの中に入れていく作業を全員で行っています。単調な作業ですが、みんなで考え話し合うことで、ごみの減らし方や出し方などについて創意工夫しながら取り組め、地域での結束が高まっていっていることがよく分かります。
現在村の資源ごみの分別は11種類でビニール袋や村が作成した麻袋で各地区の集積所に排出してもらっていますが、新町嬢会では21種類のコンテナ分別と、その他の可燃ごみや不燃ごみの分別を行っています。この新町嬢会での取り組みを広報「さなごうち」に掲載し、また、分別収集説明会を開催している地区でその内容を報告し、新たに別の地区でも取り組みが広がるよう進めています。現在モデル地区は1箇所ですが、非常に環境問題に対する意識の高い地区からの要望があり、今後上勝町の分別収集の状況を見学し、その地区で話し合いながら取り組みをしていくことが確認されました。
今後多くの地区で、このような取り組みを広げ、資源ごみの分別徹底とリサイクルできる品目を増やして、環境にやさしい村づくりをすすめて行く必要があります。
3. 農業集落排水事業・合併処理浄化槽設置の取り組み
田舎である佐那河内村では、汲み取り式のトイレから単独浄化槽の普及に伴って、トイレの汚水処理は飛躍的に改善されていますが、台所や風呂などの雑排水はそのままの状態で放流していました。このころの家の周辺の側溝には、ご飯粒や野菜くずなどが腐り、ヘドロとなり、水質汚濁は相当ひどい状況で、また、夏の暑い時期には、蚊・ハエの発生や異臭がするなど、生活環境の悪化と近所の住民とのトラブルなどもありました。また、流された排水は、農業用水にも影響し、洗剤や油などが流れ込むなど農業面でも大きな影響力をもっていました。
このような状況に対応するため、佐那河内村における汚水処理の取り組みは、1990(平成2年)度に生活排水処理計画、続いて1991年度には農業集落排水整備計画を立て、合併処理浄化槽の設置及び農業集落排水事業で汚水処理100%をめざし取り組みを進め現在に至っています。集落排水事業は村全体の80%の人口をカバーし、残りの20%を合併処理浄化槽設置によって100%となるよう現在事業が進んでいます。
合併処理浄化槽は平成2年度から、農業集落排水事業は平成4年度から事業を開始しています。合併処理浄化槽は個人設置のため、村と個人とのやりとりですが、農業集落排水事業を取り組むにあたって、現在多くの自治体が問題を抱えている供用後の接続について議論が繰り返されました。この間、開催してきた農業集落排水事業関係者説明会では、住民に対して事業の説明はもちろんのこと、供用開始したときの加入や維持管理について丁寧な説明を行い、排水事業の同意を得ています。
まず最初に完成した寺谷地区では、処理場の機械の保守点検以外の日常管理を委託者が行うのではなく、加入者が当番制で行っています。このことは、台所や風呂から食べ物のカスやその他のごみなどが処理場に流れてくるのがよくわかり、流してはいけないものなどが十分理解されることとなりました。
農業集落排水事業は、寺谷地区(平成5年)・中辺地区(平成8年)・仁井田地区(平成9年)・嵯峨地区(平成11年度末)・宮前地区(平成13年度末)の5地区が完成し、速やかに接続されている状況です。現在は寺谷地区で94.3%、中辺地区で94.3%、仁井田地区で96.1%、嵯峨地区で75%の家庭が接続を完了、高い接続率を確保しています。
徳島県の下水道整備率は全国ワースト1ですが、合併処理浄化槽の設置と農業集落排水加入により、佐那河内村での汚水処理率は平成13年度末で59.8%となっています。先日完成した宮前地区集落排水も既に接続が始まっていることから今年度末には、約70%の人口の汚水を処理する予定です。また、今年度から最後の集落排水事業根郷地区が建設を開始し、平成16年度はじめには全地区が完成する予定となっています。
この2つの事業の取り組みにより、大きな問題となっていた、家の周りの側溝や小河川がきれいになり、異臭もしなくなりトラブルは少しずつ解消されてきました。
村内で1地区が完成したときから、住民の中からも次に建設する地区にしてほしいとの要望が高まるなど、事業を望む声が上がり、当初20年計画の整備計画を立てていましたが、13年間で村全体の完成をめざしています。また、完成後は、未接続世帯の接続と集落排水区域外の合併処理浄化槽の設置の推進をしていきたいと考えています。
4. 環境ボランティア
佐那河内村では、多くのボランティアグループがあります。特に活動を活発に行っているのが、環境美化に取り組む環境ボランティアです。国道438号や県道沿いの空き地や公共施設内の花壇を利用した花づくりや空き缶・空きビンなどのごみ拾いなどが行われています。
(1) 空き缶十字群
佐那河内村を愛し、住み続けることに誇りを持っている方々や村の職員が集まった環境美化グループで、主な活動としては、国道438号沿いに落ちている空き缶や空きビン、ごみの清掃と園瀬川の清掃活動です。
毎月1回ペースで取り組みが行われていて、結成されて間もない頃は、園瀬川の清掃活動でサビだらけの空き缶や朽ち果てた発泡スチロールやビニール類などがめだち、なかなかきれいにならなかったのが、約3年間の活動の結果、サビだらけの空き缶がなくなり、見違えるように園瀬川や国道沿いからごみがめだたなくなりました。
また、環境美化活動の一環として、講師を招いて環境問題の講演会なども開催して、住民への問題提起なども行われています。
(2) 河川一斉清掃、道路愛護デー
今年で31回目となる河川一斉清掃は、約30年前に青年団活動の一環で村と連携をとりながら、川や道路に落ちているごみを拾い集めたことから始まりました。当初の活動は4、5年くらいでポイ捨てされるごみは無くなるだろうと予想されていましたが、現在の取り組みに至っている状況です。青年団活動が衰退し、この取り組みを村が引き継ぐこととなりましたが、毎年4月の日曜日に園瀬川、嵯峨川などの草刈りやごみ拾いを行っています。また、国道438号や県道勝浦佐那河内線などの道路も一緒に草刈りが行われ、この時期の村の環境美化のため早朝から活動されています。
8月の第1週日曜日に行われている道路愛護デーは、国道や県道、また身のまわりの道路の草刈りとごみ拾い、近くの小河川の草刈りが主となっていて、この取り組みは河川一斉清掃よりも早く昭和初期には始まっていたそうです。
(3) 佐那河内村クリーン対策協議会
クリーン対策協議会は、JAや自動車整備工場、小売店などの村内で商売を営まれている方々と、ごみ収集ボランティア、村で組織されている団体です。このクリーン対策協議会では、村が廃プラスチック収集を行う際に、ボランティアとして毎月1回の収集の前日の準備から当日の収集作業、後片づけに至るまでお手伝いをしていただいています。
このクリーン対策協議会は、廃ビニール収集時のボランティア活動だけにとどまらず、警察と行政の3者が一体となって、村内の不法投棄の防止のために林道や河川などのパトロールを強化し、未然に一般廃棄物や産業廃棄物の不法投棄を防ぐために、立て看板の設置や広報活動、また、悪質な不法投棄が確認された時には警察からの摘発などが即時に対応できる態勢をとっています。
家電リサイクル法や食品リサイクル法、また、今年度に完全施行される建設リサイクル法など、リサイクルに関係する法律や廃棄物処理法の強化などの規制が強まる中で、村内でも不法投棄が年々増え続け、バスや車の部品やタイヤ、解体された家の瓦や廃家電などが林道沿いの山林や空き地に捨てられています。この協議会の村内巡視により、不法投棄者に対する行政指導や警察からの摘発が進んでいて、最近ではめだった不法投棄は少なくなってきました。しかし、小さな不法投棄は絶えない状況であることから、より一層の監視活動の強化や住民への周知徹底が求められています。
5. 最後に
ごみを処理するのは行政が行うものだという住民の意識を変えていくことが、今一番求められていると思います。ごみの減量化やリサイクルを徹底するためには、住民が主役となることが大切で、行政はそのバックアップと適正な運搬や処理をすることではないでしょうか。今後もますます環境問題への関心が高まり、また法律の規制も厳しくなると思いますが、住民との関わりを積極的に持ちながら、行政と住民に温度差が生じないように取り組みを進めていきたいと考えています。
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