【自主レポート】

ふくい市民共同発電所を作る会

雪国における太陽光発電普及の取り組み

福井県本部/福井市職員労働組合

1. 福井市の環境行政とNPO、市職労の関わり

 京都議定書が今年6月にようやく批准された。京都議定書では日本に対して2008年から2012年の5年間平均で、1990年比6%の削減をすることを義務付けている。しかし、このままでは2010年には90年比で約7%増加する見通しもあり、差し引き13%もの削減が必要となり、目標数値の達成が容易なことではないことが予想される。今後は各地方自治体が独自性を生かした具体的な取り組みを展開し、さらには結果を求められることになりそうだ。
 環境への取り組みは行政、事業所、市民によるコラボレーション(協働)が重要だとされる。すでに、福井市においても2002年3月に環境基本計画が策定され、推進母体としてパートナーシップ会議が発足した。
 NPO組織「エコプランふくい」は1998年のアースデイの時に作られたが、目的は市民による環境基本条例を策定し福井市に提案することにあった。結果として、環境審議会の公募委員を従来の審議会に較べ増員したことに始まり、条例案にも一部市民案が取り入れられ、協働作業は今日に至り発展形にある。福井市の家庭版ISOの推進では、「エコプランふくい」が重要な役割を果たしている。
 福井市環境基本条例ができたことにより「エコプランふくい」は具体的な取り組みの1つとして「ふくい市民共同発電所を作る会」を別組織として立ち上げ、地域のエネルギー問題を取り扱うことになった。
 福井市職労の役員、OBが自主的に「エコプランふくい」、「ふくい市民共同発電所を作る会」の事務局に参加している。そして、環境部局とNPOを繋ぐ役割を積極的に担っており、そのような取り組みに福井市職労としても自治労福井県本部とともに全面的な支援を行っている。
 今後NPOが数多く生まれるものと思われるが、課題として、①NPOの自主性を尊重しながら活動に継続した関わりを持つこと、②市職労自らも研究し当局に政策提言を行うこと、③NPOへの財政支援する公平な判断根拠を持つこと等がある。
 自治労運動は市民とともに歩まなければならないので、自治体労働者として賃金・労働条件のたたかいを進めるのと同時に、積極的に街に出かけることだ。

2. 福井県の太陽光発電普及と市民共同発電所の取り組み

 福井県は太陽光発電に関して後進県である。冬期間に屋根の積雪が長期化することと日照時間が短い(13%程度)ため、太陽光発電に向いていないと先入観になっていたのである。併せて、一般家庭用の太陽光発電が1993年で約1,100万円、1997年でも約300万円と非常に高価だったことも大きな理由だ。
 しかし、地元の福井工業大学の研究では、夏にスモッグの影響がないため日射量は東京と遜色ないとの結果が出ている。
 福井県内からNEF(新エネルギー財団)への1999年度(平成11年度)補助申請数はたったの16件に止まっている。全国総数が17,396件だから、0.1%にも満たない。要は関心がなかったのである。
 「ふくい市民共同発電所を作る会」の発足は2000年5月、同年10月に1号機「文殊山」が3.48kWのスペックにて発電開始した。そして、福井県や福井市、北陸電力に働きかけたこともあり、福井県と各市町村が2001年度に上乗せ補助をすることになった。今立町の「丹南市民共同発電所」が県の補助金第1号と言って差し支えない。いずれも、県内のマスコミで大々的に取り上げられることになった。
 現在、昨年12月に発電開始した敦賀市の市民共同発電所「サンダンス1号」、今年3月に発電開始した「ふくい市民共同発電所を作る会」の2号機「にこにこ」とあわせて福井県内の市民共同発電所は4機を数えることになった。

3. 福井県の補助制度と実績

 福井県は、2000年に「福井県地球温暖化対策地域推進計画」を策定し、太陽光発電等の新エネルギーの導入を方針化した。それに基づいて、県施設に太陽光パネルの設置のほか、一般家庭が設置する太陽光発電に対して国(新エネルギー財団)の補助金に上乗せする、補助制度を新設した。補助制度の内容としては、県と市町村が半々で最高20万円/kWの補助を行うというもの。
 2001年度のNEFの補助金は対象件数を増やすことを目的に12万円に引き下げたので、県と市町村の補助金を合わせると、32万円/kWになる。標準規模3kWで250-96=154万円の自己負担となり、設置しやすくなった。
 福井県は当初100件(福井市の見込み20件)を見込んでいたが、下記のとおり200件を超える実績があり、有利な補助内容もあるが、市民共同発電所が関心を誘発したものと思われる。福井県民は環境問題に関心が高かったのに、行動に結びつけることができなかったのだ。
 この福井県独自の補助金の窓口は市町村であるが、全ての市町村が予算化したのではない。そのため、この補助制度を知り、県民が当該の町村役場に申請をすることにより、初めて行政が動いた自治体も数多くあった。

2001年度福井県の補助金実績

市町村
補助件数
市町村
補助件数
市町村
補助件数
 昨年度、県と市町村の補助金制度が新設され、200件を超える設置がありました。北陸電力との売電契約は3.5倍にもなりました。

合 計 218件

福井市
91
松岡町
1
朝日町
1
敦賀市
38
永平寺町
1
宮崎村
0
武生市
19
三国町
4
織田町
2
小浜市
1
金津町
2
清水町
1
大野市
1
丸岡町
13
三方町
4
勝山市
8
坂井町
2
上中町
2
鯖江市
21
今立町
5
大飯町
1

4. 今後の課題

(1) 補助制度のあり方
   NEFは補助制度を2002年度で打ち切る方針だ。しかし、太陽光発電のコストは充分に下がったわけではなく、理想だと言われている100万円/3kWには程遠い。補助がなくなった途端に太陽光発電の設置が滞る可能性がある。福井県は国に補助制度の継続を陳情するようだ。一方で、各メーカーの開発競争は激化しているので、新製品の開発、コストダウンが進むことを期待したい。
   補助制度は一過性の建設時のものから発電コストに切り替えることが大切ではなかろうか。COを出さない、製造過程で使用するエネルギーを2~3年で回収できる太陽光発電ではあるが、今は発展途上である。地球環境を考えて先行したグループと後発グループを平等にすべきである。また、必ず設置費用を回収できる制度にすべきだ。つまり、発電コストへの補助制度は地球環境の保全のため、地域のエネルギーの重要な一翼として太陽光発電を位置付けすることを意味する。しかし、北面に設置しても仕方ないので、一定の条件は当然だ。

(2) 行政機関に求められること
  ① 研究開発
    福井県には工業技術センターがあるが、太陽電池に関する技術研究を取り組めないだろうか。福井は雪対策等課題も多いので、太陽光発電利用のためのアプリケーション的な技術開発が必要だろう。様々な使用形態が生まれ、普及につながることにより、産業の発展に結びつくだろう。
    併せて、地域に合ったバイオマスや風力、小水力発電の取り組み
  ② 正しい情報の発信
    太陽光発電をすると電気代がタダになるとか、一方で福井は雪があって太陽光発電には向いていないという情報まで飛び交い、内容が混乱している。
  ③ 教育機関や行政機関への自然エネルギーの設置

(3) 市民共同発電所に求められていること
  ① 情報発信
    太陽電池の性能は各メーカによって異なる。設置条件を考慮する必要はあるが、様々なメーカの機種の発電状況を収集し公表する。(公表を行政ではできない。)
  ② 運動の広がり
    自然エネルギーは太陽光だけではない。バイオマス等地域にあるエネルギーを創意工夫して利用すべきだ。風力発電では公的機関が設置した近傍に設置するのも追求可能ではなかろうか。
    太陽光発電でも滋賀県野洲町のように、地域通貨と組み合わせるのも方法だろう。

 日本は原発増設を京都議定書の切り札にしようとしている。それは、エネルギー問題を地域、市民の目からそらすものである。ライフサイクルに言及しない環境政策は結果を得られないであろう。これまで原発は環境と地域の人々の関わりを壊してきたのを見ても明らかだ。
 エネルギー政策を地域から、益々市民共同発電所の役割は重要性を増すだろう。

5. 「ふくい市民共同発電所を作る会」について

  ※これまでの資料から

(1) ふくい市民共同発電所1号機「文殊山」

① 発電電力量  145W×24枚=3.48kW
② 太陽電池   京セラ製R421-1(B)
③ 設置費用   約3,000,000(円)
④ 補助金    約900,000(円)財団(NEF)から
⑤ 設置場所   福井市半田町 大土呂駅前
⑥ 発電開始   2000年10月14目


2000年10月14日 1号機「文殊山」お披露目会

(2) ふくい市民共同発電所2号機「にこにこ」

① 発電電力量  175W×25枚=4.38kW
② 太陽電池   サンヨー製 HIPH552B1
③ 設置費用   約2,960,000(円)
④ 補助金    約1,300,000(円)
         福井県、福井市、財団(NEF)から
⑤ 設置場所   福井市板垣2丁目
⑥ 発電開始   2002年3月6日
⑦ 出資者    計45名、団体
⑧ 会 員    約60名

  
2号機「にこにこ」の共同設置作業の状況

(3) ふくい市民共同発電所1号機「文殊山」の意義
  ① ふくい市民共同発電所「文殊山」は市民の環境への関心、取り組みのシンボルです。出資金の回収は不可能ですが、環境への関心、熱意を表現したものです。また、共同出資により出資者、会員等多くの人たちの財産(1人のものではない)であり、継続、発展した取り組みが可能となります。
  ② 地域エネルギーへの関心を高めることができました。
  ③ 太陽光発電の普及や自然エネルギーへの関心を高めることができました。
    福井は太陽光発電に不向き、経済的メリットなしの世評に対するアピールとなっています。太陽光発電は太陽そのものです。
    製作に必要なエネルギーは約2年で回収、20年以上使用可能です。
  ④ ふくい市民共同発電所「文殊山」をとおした新しいコミュニティの創出ができました。出資者、会員は年齢や性別、仕事、地域に富んでいます。併せて、滋賀県や宮崎県、今立町等同様の取り組みをする市民運動との連携、協力も進みます。
  ⑤ 補助金は取得したが、補助金に頼らない運営ができました。
  ⑥ 「文殊山」の名前の由来は市民の知恵のかたまりという意味で、背景に知恵の山「文殊山」があるところからきています。
    会員には学者、太陽光発電施工業者、建築屋、銀行員、行政マン、発明家、コピーライター、市民運動のベテラン等々がいて、様々な人の経験やノウハウが集まっています。

資料 ふくい共同発電所のしくみ、福井市と太平洋側の太陽光発電比較