【自主レポート】
自治体の全ての事務事業にエコオフィスを拡大しよう
大阪府本部/大阪市職員労働組合・都市環境局支部
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1992年6月、ブラジルでの地球サミットで採択された「アジェンダ21」以降、自治体活動の中に環境主義が確立するよう、各地で様々な取り組みが行われ、多くの自治体職場ではエコオフィス率先行動が実施されています。
大阪市職は「“環境自治体おおさか”づくり」をスローガンとして環境問題への取り組みを行うとともに市当局への申し入れなどを行ってきました。大阪市は「環境先進都市おおさか」の実現を図るため、行政の率先した環境保全行動の推進を盛り込んだ「環境基本計画」を96年に策定し、「大阪市庁内環境保全行動計画(エコオフィス21)」に基づいた職場で身近にできる省エネルギーや省資源などの庁内行動に取り組むこととしました(表1・表2)。また、「エコオフィス21」を確実に進めるために、本庁舎内職場で環境マネジメントシステムを構築し、国際環境規格ISO14001を認証取得しました(99年11月)。
表1 エコオフィス21の主な行動指針と目標(97年策定・2001年改定)
温室効果ガスの排出抑制
消灯可能な照明に使用する電気使用量を、2005年度に8%以上削減する。
資源の節約
コピー用紙使用量を、99年度実績を基準として2005年度に5%以上削減する。
廃棄物の減量/再使用/リサイクルの促進
事務所から発生する紙ごみのうち、再生可能な紙ごみを50%以上リサイクルする。
グリーン購入の推進
古紙配合率100%、白色度70%以下のコピー用紙を使用する |
表2 エコオフィス21の取り組み実績
項 目
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単 位
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96年度
(基準)
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97年度
|
98年度
|
99年度
|
00年度
|
電気使用量
|
千kWh
|
31,618
|
32,066
|
34,125
|
34,805
|
35,309
|
照明用
電気削減量(率)
|
千kWh(%)
|
―
|
133(4.6)
|
118(4.0)
|
147(4.8)
|
177(5.4)
|
コピー用紙
使用量
|
千枚
|
102,536
|
99,833
|
105,853
|
108,859
|
117,968
|
古紙配合
コピー用紙利用
|
所属数
|
2/48
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6/48
|
26/49
|
31/49
|
36/49
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低公害車導入
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台数
(総数約四千)
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74
|
824
|
1,011
|
1,234
|
1,563
|
自治体の事務事業として「庁舎内事務活動」のほか、さまざまな「庁舎外事業活動」が行われています。表3に示す「所属別活動量」は、大阪市の全ての事務事業活動(公共工事など間接的なものは含まれていない)にともなうデータを集計したものですが、電気使用量合計は「エコオフィス21」の取り組みで把握している値の約40倍です。
表3 99年度所属別活動量
所 属 名
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電気使用量
(kWh)
|
都市ガス使用量
(m3)
|
自動車走行量
(㎞)
|
温室効果ガス総排出量
(t-CO2 )
|
環境事業局
|
50,404,355
|
2,271,231
|
12,280,267
|
563,496
|
交通局
|
514,966,943
|
1,472,789
|
32,180,912
|
231,092
|
下水道局
|
257,389,170
|
1,776,894
|
941,476
|
212,519
|
水道局
|
198,952,767
|
396,970
|
3,016,324
|
72,823
|
学校小計
|
60,291,284
|
6,088,534
|
0
|
35,923
|
市立大学事務局
|
60,574,344
|
5,213,374
|
51,138
|
35,878
|
環境保健局
|
38,006,013
|
5,891,149
|
307,012
|
30,399
|
建設局
|
75,570,746
|
140,908
|
1,412,357
|
28,392
|
花と緑の推進本部
|
9,011,555
|
2,876,752
|
676,041
|
10,509
|
教育委員会事務局
|
19,064,707
|
1,228,651
|
512,852
|
9,959
|
民生局
|
17,937,574
|
758,203
|
127,984
|
9,390
|
消防局
|
10,042,390
|
822,155
|
2,172,287
|
7,509
|
港湾局
|
1,086,672
|
0
|
546,928
|
7,438
|
区役所小計
|
13,779,588
|
524,790
|
156,235
|
6,809
|
総務局ほか
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14,622,650
|
338,874
|
469,014
|
6,375
|
中央卸売市場
|
12,793,799
|
319,068
|
32,066
|
5,717
|
都市整備局
|
12,200,040
|
318,405
|
15,636
|
5,124
|
市民局
|
3,500,091
|
489,242
|
23,481
|
2,428
|
経済局
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2,766,454
|
79,993
|
27,659
|
1,194
|
合 計
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1,372,961,142
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31,007,982
|
54,949,669
|
1,282,974
|
最も多くの電気を使用している交通局は、地下鉄輸送などに伴うもので、市全体の約38%を占めます。2番目と3番目に多く使用している下水道局(当時。現在は都市環境局)と水道局は汚水処理と浄水に伴うもので、水環境一体とすると4.6億kWh(市全体の33%)です。「日本の水資源」(国土交通省発行)によると99年度における上下水道合計の電気使用量は140億kWhで、同年度の国内総電気使用量(9,573億kWh)の約1.5%でした。
温室効果ガス総排出量は、燃焼や自動車走行・船舶航行などの直接排出だけでなく、電力会社より供給された電気使用に伴う排出なども加算されたものですが、最も多く排出しているのはごみの収集運搬や焼却などを行っている環境事業局(市全体の約44%)、2番目はバス輸送も行っている交通局(市全体の約18%)です。3番目は、汚水処理で発生する汚泥焼却も行う下水道局で市全体の約17%ですが、4番目の水道局と合わせて水環境一体とすると5ポイントアップの約22%です。
自治体が発注する公共工事に伴う環境への影響も多大だと推測されますが、請負者の責任施工のため、エネルギー使用量や温室効果ガス発生量などは発注側の大阪市では把握していないのが実情です。しかし、工事現場から発生する土砂や産業廃棄物などの建設副産物については、利用の現状を含めた実態調査が国土交通省により全国規模で行われ、2000年度の建設発生土搬出量284,000千m3(東京ドーム230杯分相当)の内、公共土木工事分は約88%の252,000千m3(大阪市分は1,086千m3)でした。発生土搬出量全体の約30%が建設工事で再利用され、これは建設工事での土砂利用量(156,000千m3)の約54%に相当します。
自治労の提起する環境自治体の概念では「自治体が展開する事業や活動のなかに環境主義を確立すること」をエコオフィスの形成としています。「オフィス」という名前からエコオフィスの取り組み対象を「庁舎内事務活動」に限定しがちですが、「庁舎外事業活動」による環境影響が相当大きいことを認識するとともに、自治体の事務事業すべてに取り組みを拡大させなければなりません。
大阪市では、「エコオフィス21[事業編]」の具体化に向けて取り組まれているほか、各種事業に対して事業計画の段階から環境配慮を盛り込むためのシステムを検討するとしています。また温室効果ガス排出抑制についても当該所属作成の抑制計画(表4)に基づいて取り組みが推進されています。事業所系施設の環境マネジメントシステム構築・環境ISO取得認証も進められ、3つのごみ焼却工場(全10工場中)と1つの下水処理場(全12処理場中)で認証取得されました。
表4 温室効果ガス排出抑制の主な取り組み
廃棄物処理等の事業(30,570(t-CO2 )抑制)
廃棄物焼却量の減量化、助燃燃料を都市ガスに転換
公営交通事業(2,440(t-CO2 )抑制)
市バス車両の低公害化、地下鉄車両の省エネ化、駅舎照明の省エネ化
下水道事業(5,750(t-CO2 )抑制)
発生汚泥の減量化、未利用エネルギーの有効利用、設備の省エネ化、新エネルギーの導入
水道事業(460(t-CO2 )抑制)
設備の省エネ化、新エネルギーの導入
道路管理事業(1,030(t-CO2 )抑制)
道路照明の省エネ化 |
しかし、ごみ焼却工場や下水処理場、浄水場など市民需要に応じて稼働する施設では、自治体の内部努力による取り組みだといずれ効果に限界を生じるでしょう。抜本的な解決に向け、大量生産・大量消費・大量廃棄型社会を変革し、自立的・安定的・循環的な仕組みを取り入れたエコポリスの実現を追求する必要があります。これは公共工事に伴う環境影響の削減についてもいえることです。
上水道・下水道は独立採算による運営を行っている自治体も多いため、使用水量の削減や水のリサイクル利用、雨水利用などに取り組むとなると、自治体会計の中に環境会計を導入し公営企業会計と連携を行うなどの会計制度改革も必要です。上水道・下水道の民間経営・包括的民間委託などの検討が政府内で進みつつありますが、営利目的による運営では環境自治体の実現につながるとは思えません。
これまでのエコオフィスは「庁舎内事務活動」を主な対象としていたため、自治体単独の取り組みにより一定程度の効果を生じてきたでしょうが、事務事業全般への拡大やエコポリス実現をめざすとなると、自治体間の情報交流・協力が必要不可欠であり、労働運動の観点から自治労内部の連絡体制の整備も求められるところです。
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