【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第2分科会 まちの元気を語るかよ~町ん中と山ん中の活性化~

 道内の空き家は年々増加傾向にあり、2013年の国の住宅・土地統計調査によると、空き家戸数は388,200戸、住宅総数に占める割合は14.1%となっています。
 増加する空き家に対応するため、宗谷管内の自治体においても空き家等対策のための条例を制定して対策に取り組んでいる市町村がありますので、宗谷管内の自治体がどのように取り組んでいるのかレポートします。



宗谷地域の空き家対策について


北海道本部/宗谷地方本部・自治研推進委員会

1. 空き家等をとりまく現状・課題

(1) 空き家戸数は増加し続けている
 北海道では、1968年頃から住宅総数が世帯総数を上回り、その後も空き戸数は年々増加しており、2013年には38万8,200戸となっています。

(2) 宗谷管内の人口・世帯数動向
 北海道の人口は、1998年の約570万人をピークに減少傾向が続いており、2010年の国勢調査人口は約551万人まで減少しています。宗谷管内においても同様の傾向となっており、人口は、1985年から2015年には3万7千人が減少し、世帯数も3,535減少しています。正式な数字は示されていませんが、人口と世帯数が減少しているので、空き家戸数については増加傾向にあることは間違いありません。

(3) 課 題
① 老朽化した空き家が適切に管理されていないことにより、安全性の低下、公衆衛生の悪化、景観の阻害などの問題を生じさせ、地域住民の生活に深刻な影響を及ぼしています。今後、空き家が増加すると問題が一層深刻化することが懸念されます。

老朽化が進行している空き家 雪の重み等で倒壊した空き家

② 空き家の中には住宅だけではなく、改修を行えば地域交流や地域活性化の拠点として活用できる物件がありますが、宗谷地域では、宅地建物取引業者などの事業者が少なく、空き家等の流通が進みにくい状況です。

2. 課題解決にむけた取り組み

(1) 宗谷管内市町村の取り組み状況
 こうした状況の中、宗谷管内の3市町村で「空き家等の適正管理に関する条例」が制定され、5町村で「空き家バンク」が設置されるなど、空き家等に対する取り組みが推進されています。

① 宗谷管内市町村における空き家等の適正管理に関する条例
  市町村名 条例名 施行年月日 内 容 備考
勧告 命令 公表 罰則 代執行  
稚内市 稚内市空き家等の適正管理に関する条例 2015    
豊富町 豊富町空き家等の適正管理に関する条例 2016  
中頓別町 中頓別町空き家等の適正管理に関する条例 2017  
② 宗谷管内市町村における空き家バンクなどの設置状況
  市町村名 名 称
稚内市 稚内市まちなか居住ポータルサイト
猿払村 猿払村空き家バンク
浜頓別町 浜頓別町空き家バンク
中頓別町 空き家情報登録制度
枝幸町 枝幸町空き家バンク
利尻町 利尻町空き家情報バンク

(2) 取り組みの内容
① 空き家等の適正管理に関する条例の制定〔表の①〕
 条例を制定しているのが、①図に記載のとおり稚内市、豊富町、中頓別町で、住民や地域の安全確保と生活環境の保全を図るため、空き家等の適正な管理に関し所有者等の責務を明らかにするとともに、管理不全な状態にある空き家等に対する措置について定めています。
 ア 条例の主な内容
   ・所有者の責任    ⇒ 空き家の所有する者の管理責任を明確化
   ・住民による情報   ⇒ 管理不全な状態にある空き家等があると認めた時は、市や町に情報を提供すること。
   ・行政による指導等  ⇒ 不適正な管理状況が明らかな場合、指導・勧告・氏名の公表・命令を受けた管理者が履行しない場合の代執行や、国の「空き家等対策の推進に関する特別措置法」第16条に定める過料に処することなど。(※過料を定めているのが豊富町、中頓別町)
 イ 空き家等対策計画の策定
  空き家等の適正管理に関する条例の中で「空き家等対策計画」を定めることができるとしている豊富町では、2018年の1月に「豊富町空き家等対策計画」を策定し公表しています。
  管理不全な状態の空き家等の増加の抑制を基本的な方針に掲げ、計画の実施期間を2017年度から2021年度までの5年間とし、毎年雪解け後に町内全域を巡回し、把握している空き家等の状態や発生した空き家等の確認を行うこととしています。空き家等の実態調査は2013年度から2015年度に実施しており、200を超える専用住宅の空き家があることが確認されていて、これらの空き家について、空き家等の適正管理に関する条例で定めている立入調査、助言、指導及び勧告の措置を検討するとしており、管理不全空き家等の認定及び措置については、豊富町空き家等対策協議会の意見を踏まえて対応するとしています。
② 空き家バンク制度等について〔表の②〕
 ア 空き家バンク制度
  猿払村、浜頓別町、中頓別町、枝幸町では、町村内に存在する空き家の有効活用を通して、定住促進による地域の活性化を図ることを目的とし、「空き家バンク」制度を創設しており、下記の内容で町村役場ホームページや広報誌で町村内外の住民に周知しています。
【登録の流れ】
■空き家を貸したい人・売りたい人
 ・空き家バンク登録申込書に記入のうえ、物件の間取図を添付し、役場に提出する。
 ・登録申込みをした物件は、担当職員が調査して、敷地や家屋の間取り等の確認を行う。  
 登録に支障がない物件は、空き家バンクに登録し、ホームページや広報紙に掲載して情報発信する。
 ※ 公開情報は、登録番号、売却・賃貸の別、所在地、間取り、外観写真など
■空き家を借りたい人・買いたい人
 ・「空き家バンク」に登録された物件について、空き家を借りたい人・買いたい人は、空き家バンク利用申込書に記入し、役場に提出する。
■紹介・交渉・契約
 ・空き家登録者に、利用希望があったことを役場が連絡する。
 ・空き家登録者が利用希望者に直接連絡を取り当事者間で交渉し、まとまれば契約。
■注意事項
 ・町村は情報提供についてのみ行い、あっせん、仲介、交渉や契約には一切関与しない。
※ 北海道においても、移住定住の促進や住宅ストックの循環利用を図るため、市町村の空き家バンクの取り組みと連携しながら、広域の「北海道空き家情報バンク」を開設し、普及と啓発を行っています。また、技術職員が不足している市町村に対する技術的な助言や法の運用状況、国の事業の情報提供など市町村への支援を行っています。
※ 宗谷総合振興局地域創生部地域政策課が運営する宗谷地域移住情報ポータルサイトでは、利尻町においても空き家情報バンクが創設されているようですが、利尻町に確認したところ、現時点では移住を検討している町外の人向けに、お試し暮らし用として空き家情報を提供しているということです。ホームページで公表されている空き家情報は、元は商店兼住宅という物件を利尻町が所有者から借用して、お試し暮らし住宅として貸出しを行っており、移住定住促進に特化した利用となっています。

【お試し暮らし住宅】(利尻町公式HPより)
・北海道利尻郡利尻町沓形字神居36番地
・建築年 1993年 木造2階建
・延べ床面積:199.26m2
・利用料金
期間 借用料 時 期
1日 1500円 夏期(5月~10月)
1日 2000円 冬期(11月~4月)

※ 料金に消費税及び地方消費税、電気、ガス、上下水道及び灯油、ごみ処理手数料を含む。
イ 稚内市まちなか居住ポータルサイト
  稚内市では、郊外に大型小売商業店舗の出店が相次ぎ「都市の郊外化現象」が顕著となっています。中央地区の商店街では空き店舗が目立ち、周辺地区では、更に空地や空き家が増加してきたため、まちなか居住推進計画を2007年9月に策定し、従前「まち」と言われた中心市街地の賑わいと再生をめざし、中央地区・宝来地区・港地区・開運地区の住宅(アパート含む)と土地に関する物件情報を市内外の住民にインターネットで情報提供しています。

3. まとめ

 以上、管内市町村の取り組みについてレポートしてきましたが、昭和60年代以降、宗谷管内すべての市町村で人口減少が続き、相当数の空き家が発生しています。
 人口減少対策として、すべての管内市町村が移住定住促進をはかる施策を講じており、使い道のある空き家を長く放置させないためにも「空き家バンク制度」を創設して広く内外に情報提供することや、国の「空き家等対策の推進に関する特別措置法(空き家対策法)」が2015年5月に全面施行されているので、すべての自治体において「空き家等の適正管理に関する条例」の制定が必須となるのではないでしょうか。
 空き家を放置すると所有者責任を問われ、防犯、景観、衛生などの観点から危険や害があると判断されると「特定空き家」に認定され、固定資産税の軽減措置は見直され増税される可能性があることや、修繕、撤去命令のほか、最終的には行政代執行で建物が解体され、その費用は所有者負担になることを広く住民に伝えるなど、いかに空き家を発生させないかを考えた予防啓発が今後ますます重要になっていくと考えます。