【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第2分科会 まちの元気を語るかよ~町ん中と山ん中の活性化~

 急激な人口減少下で、様似町の特性や産業を活かした移住・定住政策の実践と課題。



人口減少社会をどう生き抜くか
―― 地域産業を活かして人口減少を食い止めろ ――

北海道本部/日高地方本部・自治研究推進委員 逢山 康弘(自治労様似町役場職員組合)

1. はじめに

 様似町は北海道の南東にある日高管内でも南東に位置し西には浦河町、東にはえりも町があり、高山植物でも有名な日高山脈の麓にある町で、中でもアポイ岳は高山植物群落が特別天然記念物に指定され植物学上とても貴重な存在となっています。
 主産業としては漁業、農業、軽種馬産業といった1次産業となっています。北海道でも太平洋側に面しているため年平均気温が8度前後で夏場の最高気温が30度になることはほとんどない町となっています。

2. 人口推移

 様似町の人口推移ですが、1980年当時は7,986人となっていましたが、10年後の1990年には7,159人、さらに10年後の2000年には6,210人、そして2010年には5,114人となり、現在(2018年7月末)では4,357人となっています。
 1980年に比べ3,629人減少しており約45.4%の減少となっています。

3. 移住定住の促進

 前段でも書いているとおり、様似町の人口減少は近年急速に進んでいます。どこの田舎町でも同様の問題を抱えていることだとは思いますが……
 わが町でも町の特色を活かしながら町のPRや移住者確保等を行っていますが、やはり生活基盤が無いと若い世代の移住者を取り込むことが難しいのが実状です。
 年金暮らしの世代をターゲットとしても大きな病院もなく、交通機関が整備されている訳でもない……。
 しかし、生活基盤といっても漁業については権利や漁組等との兼ね合いから簡単に就業することは難しく、軽種馬産業への就業を考えると多額の資金が必要となるため非常に厳しい……。
 そこで農業(施設野菜)での就業を町として推進することとなりました。北海道でも雪が少なく、夏場の気温が冷涼であることを活かして本州方面で夏場に端境期を迎える夏秋どりイチゴでの就農者を募ることといたしました。

4. 町の就農支援

 様似町では2013年度に夏秋どりイチゴを隣町の浦河町、ひだか東農協と協力しながらイチゴ生産農家の増進をはかり、生産量の拡大をめざしました。
 移住者の確保をすることを目的に町がリースハウス建設を開始しました。
 リースハウスを建設することにより、初期投資が少なく、資金の無い方(40代~50代の子どもにお金のかかる世代)でも気軽に就農をめざせる仕組みを構築していきました。
 それにともない農家研修生に対する研修資金、住宅費等の補助金も連動するように町として補助事業を開始しました。
 2018年度現在で新規就農者は13組17人、研修生が5組8人となっています。
 町が建設した、リースハウスは2013年度から2017年度までで51棟で単身者に対しては3棟、家族経営については4~5棟をリースしている。ここ4~5年で夏秋どりイチゴ生産量が急増しているため、浦河町の共同選果場での処理が間に合わない状況となり、2017年度に様似町に新たに選果場が建設されています。
 選果場が建設されたことにより、町内で働く場所が新しくできましたが、期間雇用パート(6月~11月)で通年でのパート雇用ができないのが大きな課題となっています。
 また、夏場は昆布の陸回りでパート従業員も取り合いとなり、繁忙期だがパート従業員が少なくなることもよくあります……。
 新規就農者が増加して人口増にはなっていますが、人口減少(亡くなる人、就職、進学により転出している人)の数には程遠い……。
 ここ数年で感じたことは、若い移住者を確保するには、絶対条件として収入が確保できる仕事がなければ人を呼ぶことは厳しいということです。都会であれば働き口がいくらでもあり、移住者を確保するための努力は必要ないのかもしれませんが、田舎町で人を呼び込むのは非常に厳しいのが実状です。

5. 今後の課題

 全然知らない町に移住してきて就農して生活できるから、「あとは自分たちで頑張って」「移住してきたからそれで良い」とはなりません。
 人を呼んできたからには持続したサポートが必ず必要となります。
 その人の話や思いに耳をかたむけて「何ができるのか」「どうしてあげなければいけないのか」……今後の住む場所、イチゴをどうしたい、働きやすい環境づくり(給食など)、すべてに対応できる訳ではありませんがサポートするという意味では、話しやすい環境だけは継続していく必要があると感じています。