【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第3分科会 どうする? どうなる? これからの自治体

 「学校給食」は、子どもたちの心身の成長に不可欠な大切なものである。2000年以降、総務省が推し進めた行政改革により、「財政健全化」・「民間企業の活用」の名の下で「学校給食」の委託・民営化が進められた一方で、近年、「地産地消」・「食育」の重要性が認識されている中で、「学校給食」が果たすべき役割が大きくなっていることから、これからの「学校給食」のあるべき姿(理想)を考えていきたい。



「学校給食」のあるべき姿を考える
―― 行き過ぎたコスト重視の行政改革への疑問 ――

新潟県本部/自治研推進委員会・第1分科会(自治体財政分析)

1. 研究の概要

(1) 学校給食をめぐるトピックス
① トラブル続き? 学校給食
 給食業者に委託する「デリバリー方式」による学校給食での残食(食べ残し)率の異常な高さが全国的に話題となり、その後、異物混入問題もあり、委託事業者との契約解除となった神奈川県大磯町をはじめ、虫やプラスチック片などの異物混入事案は、日常的に報道されている。
 また、横浜市で導入された「ハマ弁」は、利用のしにくさや金額の高さがネックとなり、利用率が1%前後にとどまっている。

(2) 本研究の概要
① ねらい
 さまざまな形態で運営されている学校給食の実態を把握するため、新潟県内の市町村を研究対象とした。特に特徴的な運営をしている市町村を取り上げ、学校給食のめざすべき姿を検討する。
② 調査方法
 新潟県教育委員会で公表している「学校給食要覧」(新潟県教育庁保健体育課)により運営状況を把握した上で、一部の市町村等への調査を行い、それぞれの特徴を見出していく。

2. 学校給食とは…?

(1) 学校給食の法的位置づけ
 学校給食法に規定する「学校給食」は、義務教育諸学校(学校教育法に規定する小学校、中学校、中等教育学校前期課程、特別支援学校の小学部・中学部)において、その児童又は生徒に対し実施される給食(学校給食法第3条第1項・第2項)であり、義務教育諸学校の設置者は、当該義務教育諸学校において学校給食が実施されるように努めなければならないとされている(学校給食法第4条)。
 また、国及び地方公共団体は、学校給食の普及と健全な発達を図るように努めなければならないとされている(学校給食法第5条)。

学校給食法<抜粋>
(定義)
第3条 この法律で「学校給食」とは、前条各号に掲げる目標を達成するために、義務教育諸学校において、その児童又は生徒に対し実施される給食をいう。
2 この法律で「義務教育諸学校」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部若しくは中学部をいう。
(義務教育諸学校の設置者の任務)
第4条 義務教育諸学校の設置者は、当該義務教育諸学校において学校給食が実施されるように努めなければならない。
(国及び地方公共団体の任務)
第5条 国及び地方公共団体は、学校給食の普及と健全な発達を図るように努めなければならない。

(2) 学校給食の提供方式
① 調理方式
 大きく3つの方法で調理されている。

単独調理方式
(自校方式)
学校に給食室を設置して校内で給食を調理する方式長所 ○自校内で調理するため配送コストが不要
○食中毒発生時に最小限の影響に食い止めることができる。
○給食の適温提供ができる
○調理者との交流や調理過程の学習ができる
○学校運営(短縮授業等)への柔軟な対応
○停電や断水など非常時の被害発生時があっても最小限に食い止めることができる
○災害時に炊き出し拠点として利用
短所 ○設備投資のための多額の初期投資が必要
○人件費や維持管理費などに多額の費用
○給食室の運営管理の事務負担
共同調理場方式
(給食センター方式)
複数の学校の給食を1つの調理場で調理し、専用の配送車で各学校へ配食する方式長所 ○施設・設備・人件費や給食事務の合理化による経費抑制
短所 ○給食施設が大きく、施設設備に費用・時間がかかる
○各校までの配送経費が必要
○配送車両の積載室、配送中・配送先での衛生管理が必要
○各校への距離と配送時間の関係から調理時間・献立に制約
○給食を食べるまでの温度管理が難しい
○各校の献立に対する要望が反映されにくい
○食中毒が発生した場合には広範囲に及ぶ
外部委託方式
(デリバリー方式)
外部の給食業者に委託し給食業務を分散して行う方式長所 ○既存の民間企業の施設の利用により、設備投資費用や人件費を抑制できる
短所 ○各校までの配送経費が必要
○配送車両の積載室、配送中・配送先での衛生管理が必要か
○弁当で提供する方式の場合、副食をいったん冷却する必要がある

② 提供方式
 学校給食法施行規則第1条で定められている区分により、大きく3つの方法で提供されている。

完全給食給食内容がパン又は米飯(これらに準ずる小麦粉食品、米加工食品その他の食品を含む。)、ミルク及びおかずである給食。
補食給食完全給食以外の給食で、給食内容がミルク及びおかず等である給食。
ミルク給食給食内容がミルクのみである給食。

(3) 学校給食と飲食店の違い
① 給食費
 学校給食は、食材費に相当する、いわゆる「給食費」を保護者が負担し、それ以外の学校給食に必要な経費は、義務教育諸学校の設置者の負担であるが、給食費の「無償化」や「一部無償化」・「一部補助」により保護者の負担軽減を図っている一部の自治体もある。

学校給食法<抜粋>
(経費の負担)
第11条 学校給食の実施に必要な施設及び設備に要する経費並びに学校給食の運営に要する経費のうち政令で定めるものは、義務教育諸学校の設置者の負担とする。
2 前項に規定する経費以外の学校給食に要する経費(以下「学校給食費」という。)は、学校給食を受ける児童又は生徒の学校教育法第十六条に規定する保護者の負担とする。

② 飲食店との違いは……?
 「食事」を提供する飲食店の違いは、支払う対価の範囲である。飲食店では、食材費(原価)に人件費のほか、水道光熱費・家賃・減価償却費などの店舗経費に「利益」を上乗せしたものを「代金」として支払うのに対して、「給食費」は、食材費として支払うものである。
 学校給食では、食材費以外の人件費(委託料を含む)・水道光熱費・施設設備費等は、義務教育諸学校の設置者の負担である。地方交付税を算定するための基準財政需要額の基礎となる単位費用等に当該経費が含まれていることにより、一定程度自治体の財源保障がされていることになる。

3. 新潟県内の現状

(1) 学校給食の規模
 ほぼすべての小学校・中学校で完全給食が実施されている。

 完全給食補食給食ミルク給食 合 計
学校数児童・
生徒数
学校数児童・
生徒数
学校数児童・
生徒数
学校数児童・
生徒数
小学校478110,73800112479110,750
中学校22956,7340011423056,748
中等教育学校51,20600259071,796
特別支援学校312,3100000312,310
定時制高校003195003195
合計743170,98831954616750171,799

(2) 施設状況
 新潟県内の学校給食は、「単独調理場方式」と「共同調理場方式」がほぼ同程度である。

 単独調理場方式共同調理場方式その他の調理方式 合 計
学校数児童・
生徒数
学校数児童・
生徒数
学校数児童・
生徒数
学校数児童・
生徒数
2016年度新潟35647.9%33044.4%577.7%743100.0%
2014年度全国12,09142.4%15,54254.5%8693.0%28,502100.0%
※「その他の調理方式」とは、単独調理場方式及び共同調理場方式に該当しない、民間の調理場等による調理方式が該当する。2016年度からは、市町村の調理場から配食されている県立校(11校)も計上している。
※ 全国数値は公立学校(小・中学校)を対象としている。

(3) 給食費
 1食当たりの平均単価は、小学校で279円、中学校で328円である。

 小学校低学年小学校中学年小学校高学年中学校
1食1か月1食1か月1食1か月1食1か月
2016年度新潟280円4,879円278円4,881円279円4,877円328円5,665円
2015年度全国248円4,286円249円4,306円250円4,310円289円4,921円
※1食当たりの平均単価=平均月額×11か月÷年間実施予定回数
※全国は、公立学校(小・中学校)を対象としている。

(4) 学校給食の運営形態(直営・委託)
 学校給食の根幹となる調理業務は、単独調理場方式では3分の1、共同調理場方式では半数が委託となっている。比較的規模の小さい単独調理場方式は、直営体制が維持されている。

委託内容単独調理場方式共同調理場方式
小学校中学校学校数
(356)
委託割合施設数
(84)
委託割合学校数
(330)
委託割合
調理764412033.7%4756.0%20361.5%
運搬2020.6%7285.7%30893.3%
物資購入・管理32174913.8%1416.7%7322.1%
食器洗浄764412033.7%4756.0%20361.5%
ボイラー管理33225515.4%2428.6%11033.3%
◎その他の調理方式 7.7%=その他の調理方式学校数57校/完全給食実施学校数743校

4. 新潟県内の事例

(1) 新発田市(旧紫雲寺町)の地産地消給食の取り組み
① 新発田市(旧紫雲寺町)の概要
 2005年5月1日に、新発田市と合併した旧紫雲寺町は、総面積26.7km2、北西に日本海を臨み、隣接の聖籠町、中条町(現胎内市)とともに広大な砂丘地を形成している。歴史的には、享保20年(1735年)の紫雲寺潟干拓事業で知られ、東南部には豊かな水田が広がっている。町の花は「レンギョウ」で町が苗木を全戸配布するなど栽培に力を入れ、現在でも旧町の主要幹線である県道では3月下旬から4月上旬まで、沿線の住宅の庭先や垣根を黄色い花が鮮やかに彩り、「レンギョウ街道」として親しまれている。
 町のほぼ中心部には県営の紫雲寺記念公園があり、82.4haの広大な敷地内にはバーベキューやキャンプ施設の他、複合施設「紫雲の郷」ではスポーツ、飲食、温泉、宿泊施設を備えており、近隣の地域住民はもちろん、県内外から多くの利用者が訪れている。
 基幹産業である農業では前出の水稲をはじめ、砂丘地園芸として多様な根菜類や新発田市の特産品であるアスパラガスも栽培されている。また、畜産業ではブランド鶏卵を展開する養鶏場や、「パイオニアポーク」というブランド豚も飼育されている。
② 昭和年代の給食事情と為政者の哲学
 学校給食は、欠食児童対策やアメリカの余剰農産物消費という歴史的背景の影響もあり、調達の安定性・効率性の観点から食材のほとんどは学校給食会を通じて供給されていた。そのため、食材は全国規模の流通網から調達されることとなり、昭和後期には輸入食材も多く使われるようになった。また、日本全体の米の消費量が減ったことによる余剰米(古米、古古米)の消化のため、米飯給食が始まった。このような状況の中でスケールメリットが生じにくく、1食あたりのコストが割高になる地元食材が使われることはほとんどなかった。
 1981年に紫雲寺町長に就任した鬼嶋正之氏はこの状況に「これでいいのか」という想いを抱いた。鬼嶋氏は町民の健康、次世代の子どもたちの成長に責任ある為政者の哲学として「地産地消」と「医食同源」、「二里四方のものを食べよ」を掲げた。
 特に、当時はまだ新しい言葉だった「地産地消」には、自分たちの子どもに安心して、胸を張って食べさせられるものを作っていかなければ地域農業の未来はないという農業生産者に対するメッセージも込められていた。
③ コメからはじめよ
 「給食で古古米を食べさせられた子どもが、大人になって自分から米を食べようと思ってくれるだろうか?」鬼嶋氏はまず、紫雲寺産米(コシヒカリ)導入から取り組んだ。岩盤規制の当時、伝手を駆使して食糧庁買入課長と折衝をした結果、給食会の古古米と紫雲寺産コシヒカリの交換という形で地元産の米を使用できることになった。しかし、ここには安い古古米とブランド米コシヒカリの価格差という問題があり、鬼嶋氏は価格差補てんについて町と折半するよう当時の地元農協に提案した。提案を受けた当時の組合長は、地域農業の未来を考えれば、それを提案するのは農協の仕事であるという想いから「ありがとうございます」と感謝したという。こうして1989年、紫雲寺町は全国に先駆けて地場産米の給食をスタートさせた。
④ 町民の反応―NPO法人の設立―
 当時は食糧管理法(1995年廃止)により、米は政府の管理下にあった。前例のない町の取り組みに「町が法律違反をしている」と一部町民が騒ぎ、教育委員会で問題視される事態に発展した。鬼嶋氏は一つ一つの声に丁寧な説明を心がけ、児童の保護者たちにその意義を理解してもらうため、古古米と地元産新米の食べ比べをする試食会も行った。食べれば、取り組みの意味を誰しも自分自身の体で知ることになる。なぜならば、「自分の体は、自分の食べたもので出来ているから」である。結果として、町民の中に協力を申し出る理解者が現れた。精肉店、農家、豆腐屋、役場OB。皆、「子どもたちは地域の宝」という想いを町長と同じくしたのだ。米から始まった地産地消給食は、様々な食材に広がりを見せ始めた。
 農家は子どもたちのため、低農薬で野菜を作るので当然、虫がつく。農家の大変さを同じ地域で見ているから、調理員は面倒な異物混入チェックを面倒がらずに行う。それが当たり前になった約10年後、2000年以降に国全体を覆った「官から民へ」の流れの影響もあって、「子どもたちのため、地産地消を進め、営利を目的としない」有志たちが、NPO法人こころを2003年に設立した。鬼嶋氏の挑戦は「市民協働」という形で結実したのである。
⑤ 合併-新発田市の給食の取り組みと紫雲寺の現在
 「平成の大合併」で豊浦町、紫雲寺町、加治川村を編入し、人口10万人規模の市となった新発田市は、合併当初の市長である片山吉忠氏が食品加工会社の経営者であったこともあいまって「食」への取り組みに力を注いでいた。2009年度からは「食の循環によるまちづくり推進計画」を策定し、教育面においても「食とみどりの新発田っ子プラン」が策定され、教育の中心に食育を据えているところに特徴がある。その意味では、新発田市は紫雲寺町の取り組みを包含的に継承するのに適した合併先だったという見方も出来る。
 実際、合併後から現在まで変わらず、旧紫雲寺町地域の学校給食を担っているのはNPO法人こころであり、2011年には新たに「新発田市学校給食紫雲寺共同調理場」が整備され、栄養士の配置基準やコンパクトサイズで地産地消給食にジャストフィットした調理場に、今日もすぐ側の畑で採れた食材が地域の農家から搬入されている。
⑥ まとめ
 2018年7月現在、地産地消給食は教育現場において、当たり前のスタンダードと言って差し支えない。昭和年代において紫雲寺町長・鬼嶋氏の抱いた想いはその先、全国に波及し今日までつながる行政課題の先駆けであった。一方、その合併先となった新発田市においても「食育」を重要な行政課題としていたことから、両者はグランドビジョンと具体的取り組みを補完し合う形となって今日に至っていると言えよう。
 食育に注力する新発田市では、NPO法人こころの他に給食残渣を有機資源化するNPOも活動しており、食育授業では実際に生徒が有機資源化する堆肥センター等も見学し、食の循環についての理解を深めている。このレポートの作成のため、ご多忙の中で快く時間を割いてインタビューに応じてくれた元紫雲寺町長鬼嶋正之氏及び新発田市役所並びにNPO法人こころに、心より感謝の意を表し、新発田市の食育と地産地消給食の更なる推進を期待してまとめとしたい。参考として、地産地消率と給食残渣量の推移及び新発田市食育実態調査で改善成果の見られた数値を下に示した。

表1 現在の新発田市の地産地消率  
 2016年度2017年度
新発田市全体50.0%(4月~12月)47.8%
新発田市(米)100.0%100.0%
紫雲寺(野菜)53.6%59.4%
紫雲寺(米)100.0%100.0%
※いずれも国が掲げる目標値(30%以上)を大きく上回る。

表2 1人当たりの給食残渣量(単位:g)
2006年度48
2012年度32
 
 
新発田市食育実態調査で改善が見られる数値(%)
 2008年度2016年度
一人で弁当が作れる(小6)46.183.2
給食残渣から肥料が作られると知っている(小6)68.585.8
家であいさつをして食事する(中3)48.167.1
 

(4) 給食フェアの取り組み
① 給食フェアとは……?
 1985年「学校給食業務の運営の合理化」を求める通達が発出されたことを皮切りに、それまで自校式が主流であった給食調理現場において、センター方式による合理化(集中化)が進み、平成に入ってからは小泉政権下の所謂「小泉改革」によって民間委託・指定管理者制度の導入が加速し、2000年時点で10.3%だった外部委託率が2012年には35.8%にまで達した。このような背景の中、現業調理員は退職不補充の厳しい攻撃にさらされた。
 新潟県北部の4市1町の職員労働組合で構成される「岩北(岩船・北蒲原の略)ブロック」の現業部は、重要な闘争課題である「給食調理の直営堅持」のため、単に自分たちの生活・職場を守るための主張ではなく、直営の調理員である自分たちの存在意義を、一般市民に理解してもらう取り組みを始めた。これが、「給食フェア」のはじまりである。

学校給食法第2条(目的)
1 適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図ること。
2 日常生活における食事について正しい理解を深め、健全な食生活を営むことができる判断力を培い、及び望ましい食習慣を養うこと。
3 学校生活を豊かにし、明るい社交性及び協同の精神を養うこと。
4 食生活が自然の恩恵の上に成り立つものであることについての理解を深め、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
5 食生活が食にかかわる人々の様々な活動に支えられていることについての理解を深め、勤労を重んずる態度を養うこと。
6 我が国や各地域の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること。
7 食料の生産、流通及び消費について、正しい理解に導くこと。

 上に掲げたように、学校給食とは単に就学日における昼食の提供ではない。義務教育の一環であり、給食を通じて生徒たちの人格の形成と関わり、その成長を見守ることに従事者の使命がある。なかでも第2条第6号に謳われている「地域の優れた伝統的な食文化」を伝えることは、効率・利益重視の営利企業のマインドでは困難であり、地域に愛情を持つ自治体職員(給食調理員)こそが担い手として相応しいと考える。
② 岩北ブロックでの「給食フェア」(初期)
 単独開催では集客が困難であるとの予想から、当初は構成自治体のイベントのブースとして出展する方式を取った。「給食」に対するノスタルジアもあり、どのイベントにおいても好評を博し、毎回完売となった。要因として「あげパン」等、昭和の給食の代表的なメニューを取り入れつつ、各自治体の食文化や特産化食材を取り入れたことが来場者に受け入れられたことがあげられる。

◎2014年 新発田市開催の場合
 新発田市の保健イベント(「健康づくりフェスティバル」)に出店という形態
【メニュー】
 ○アスパラグリーンカレーライス(新発田市)・鮭のパン粉焼き(村上市)
 ○手作りこんにゃくのピリ辛煮(阿賀野市)・糸うりの炒め物、揚げパン(胎内市)

③ 現業フェアの単独開催へ
 2014年までの開催で手応えをつかんだ岩北ブロック現業部は2015年の単独開催をめざして実行委員会を設置した。イベントの目的である「現業職場の堅持」の観点からは、分かりやすい「給食」を目玉に掲げつつも、日ごろ市民の関心を惹かない道路維持作業や、保育園・小学校の維持にかかせない用務員業務の重要性を知ってもらうため、「雪つり講座」や「働く車試乗会」等も内容に盛り込まれた。イベント名は実行委員会の検討を経て、「はたらきingフェアin胎内」に決定した。

◎ねらい(抜粋)
 ○四市一町の現業職員が合同で実施することによる連帯
 ○地元食材を使用した学校や保育園で人気のメニューを提供し、地産地消への取組を知ってもらう

 市直営の観光施設が使用できることから、開催地は胎内市となり、折衝の結果、会場は合宿施設である胎内アウレッツ館に決定した。元は国民宿舎だった施設であり、レストラン・厨房の設備が揃っていることが選定の理由であったが、デメリットとして、山奥に立地し、主要幹線である国道7号線から20分程度かかるアクセスの悪さをどう克服するかが当初から課題となった。開催地単組である胎内市職労執行部は市民への周知、広告媒体の掲示等で市当局側と協議を行ったが、現業職場を縮小し民間移行を推進する当局からは「一切協力出来ない」という回答があり、市内の公共施設掲示板の使用やチラシを置くことも出来ないことになった。各単組の広報媒体(胎内市の場合「市職ニュース」)で周知を図ったものの手応えは薄く、開催月が11月ということもあって自治体等の地域振興イベントとのバッティングも各所で起こり、改めて一般市民に訴求する困難さを痛感させられた。開催地単組である胎内市職労も交流のあるFM番組に告知出演した他、各単組の代表的ゆるキャラの着ぐるみを揃える等、集客につながる可能性のあることを全て試した。
④ イベント当日
 開催日となった2015年11月15日は、冷たい秋雨が落葉を濡らす肌寒い日となった。しかし、アウレッツ館の厨房では5つの単組から集まった調理員の熱気にあふれ、お互いに協力し合って準備する姿が見られた。各ブースとも現業職員たちの手慣れた仕事ぶりでスムーズに準備が完了していった。

◎2015年 胎内市開催「はたらきingフェアin胎内」
【メニュー】
 ○ヘルシー鶏ごぼう丼(新発田市)・朝日産豚肉とやわ肌ねぎのカレー南蛮(村上市)
 ○地元農家の野菜たっぷりミートソースの米粉ソフト麺(阿賀野市)
 ○ルレクチェと白桃のゼリー和え(聖籠町)
 ○米粉とべにはるかのかき揚げ丼、米粉揚げパン(胎内市)

 集客が心配されたが、岩北ブロックの各単組の家族を中心に、ラジオ放送の効果もあり500人を超える来場者があった。食堂には大行列ができ、ゆるキャラは子ども達に囲まれ、中に入っている現業職員も汗だくで奮闘した。結果として逆境をはね返し、イベントは成功を収めることができた。
⑤ まとめ
 私たちがこの活動をとおして得たものには「組合員」・「自治体職員」の両面がある。
 5つの単組の給食が一堂に会したことによって、どの自治体も特産化・ブランド化に取り組む食材を取り入れており、農林水産業や商業といった地場産業の発展と密接に関連していることが明らかになった。これは、教育の一環である学校給食において、それぞれの地域の次代の担い手を育てる意味があると「自治体職員」の目線で考えられる一方で、「組合員」としては、地産地消給食を追及すればコスト面の効率性は落ちるという現実を踏まえて、「直営だからこそ出来る給食」の形が見えてきたといえよう。地産地消給食に不可欠である地元生産者との連携こそ、効率性の追求からは得られない直営ならではの、行政と市民の協働でつくる学校給食であるとして、本レポートのまとめとしたい。

5. まとめ

(1) 「学校給食」が果たすべき役割
 「学校給食」は、子どもたちの心身の成長には不可欠なものであり、学校生活における「楽しみ」の1つである。季節感を意識しつつ、栄養的にも十分なものであることが求められるだけでなく、近年食材費の高騰が続く中で保護者からの給食費で食材を確保さなければならないというのは、非常に難しいことである。
 また、O157・ノロウィルスなどをはじめとした食中毒対策のほか、「食物アレルギー」を持つ子どもたちが増えていることもあり、食品衛生への配慮もこれまで以上に求められていることから、「学校給食」の現場は、常に細心の注意を払い続けなければならない。
 一方で、2000年以降自治体財政が厳しさを増している中、自治体は、国(総務省)・議会・市民などから行政改革を求める「圧力」を受けた。自治体は、「効率化」を追求するために「学校給食」の単独調理場方式から共同調理場方式への移行のほか、委託・民営化を積極的に推し進めたことから、子どもたちと学校給食の現場との「距離」が広がったことも否定できない事実である。
 近年、「地産地消」や「食育」の重要性が認識されている中で、学校給食の現場のみならず、生産者との「距離」をいかに縮めていけるかが、子どもたちへの「食」に対する意識づくりにおいても非常に重要なことである。
 そのためにも「学校給食」に携わる方たちが持つ「意識」が非常に大切であり、その「意識」は、「子どもたちへの『想い』」とも言えるではないか。
 そして、「学校給食」を通じて地元の食材・行事を学ぶことにより、「郷土愛(誇り)」を醸成することにつながり、大学などの進学で一時的には地元を離れることがあっても地元に帰ってくる(Uターン)1つの「きっかけ」になり、長期的には、どの自治体も抱える「人口減少」の抑制に寄与する可能性が十分にあると考えられる。

(2) 「お互いの『立場・想い』を理解する『努力』」が「協働」につながる
 2000年以降の行政改革は、「コスト重視」、「まずは委託」が非常に色濃く出でいたことは否定できないことであり、行政から受託事業者へ対しては、行政優位の「上意下達」になりがちである。
 また、行政において「協働」ということが頻繁に使われるようになって久しいが、「委託」との違いをきちんと理解しているとは言えないのも残念ながら事実である。
 そして、「学校給食」は、単に「食事」を提供するだけでなく、「地産地消」・「食育」にも寄与することが今日求められている役割であることから、行政だけでなく、生産者・栄養士・調理員、そして子どもたち・保護者も「学校給食の『当事者』」として、「主体的」に関与していくことが求められている。
 これは、単に「効率」だけの追求や、「上意下達」の意識のままでは、絶対に成し得ないことであり、お互いの『立場・想い』を理解しようする『努力』が必要であり、『当事者』が「共通の認識」(=「子どもたちへの『想い』」)の下で「協働」することで初めて成立するといえる。
 「学校給食」に携わるすべての方たちが「子どもたちへの『想い』」を抱き、それぞれの「立場」で「学校給食」のあるべき姿(理想)を追求し続けることがよりよい「学校給食」につながると考える。