【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第3分科会 どうする? どうなる? これからの自治体

 全国で急速に進められた「平成の大合併」から10年余が経過し、そのインセンティブとなった国による財政支援措置は、終わりを迎えようとしている。自治体はこの間にどのように歩んできたのか。また、どのような姿をめざすべきであったのか。そして今後、どのようにして自治体経営に臨むべきなのか。本稿では、いくつかの財政指標から、それらについて分析を試みるものとする。



「平成の大合併」への財政支援措置終了を見据えて
―― 「合併自治体」白山市の歩みと今後の課題について ――

石川県本部/白山市職員組合 板井 尚憲

1. はじめに

 石川県白山市は2005年2月に、いわゆる「平成の大合併」により誕生した自治体である。
 構成自治体は従前の松任市、美川町、鶴来町、河内村、吉野谷村、鳥越村、尾口村及び白峰村の1市2町5村で、合併によって市域面積は県下最大(754.93平方キロメートル)に、また人口は県都金沢市に次いで県下第2位(113,447人(2018年5月末現在))の規模となった。
 このような「平成の大合併」と呼ばれるほどの全国的な動きの推進力となったものは、他でもない国による手厚い財政支援措置、具体的には合併特例債の発行と地方交付税の合併算定替を主たるものとして挙げられよう。
 合併特例債は、「市町村の合併の特例に関する法律」(昭和40年法律第6号)の下で合併した市町村が行う市町村建設計画に基づく事業に対し特例的に認められる起債で、当該事業費に対する充当率は95%、しかもその償還に対しては70%が交付税措置されることにより、事業費に対する実質的な負担は33.5%(=100-(95%×70%))になるという「有利(※単純に財政負担が少ないという意味で)」な地方債である。
 ちなみにこれと同等かそれ以上に有利な起債としては、過疎対策事業債(充当率100%、交付税措置70%)や、辺地対策事業債(充当率100%、交付税措置80%)、そして緊急防災・減災事業債(充当率100%、交付税措置70%)などを挙げることができるが、前2者は対象事業の実施可能箇所が極めて限定されていること、後者は対象事業が限定されること及び今のところ2020年度までの時限措置であるという点において、合併特例債ほど「使い勝手のよい」起債ではない。
 また、地方交付税の合併算定替とは、通常自治体が合併した場合は、交付税の算定も一つの自治体として行われる(これを「一本算定」という。)ところ、合併年度とそれに続く10年度については、合併関係自治体がなお合併前の区域をもって存続した場合に算定される額の合計額を下回らないように算定することとし、その後5年度についても激変緩和期間として、段階的に一本算定に移行するという取扱いである。
 白山市もまた、そうした財政支援を最大限に利用して多くの大型建設事業を積極的に進めてきたが、合併から10年余を経て、交付税については合併算定替の逓減段階に入り、合併特例債についてもその発行可能額は残すところ5億円を切るまでとなっている。
 このような状況を踏まえ、本稿ではまず合併後の白山市について、年度ごとの財政指標から考察を加え、これを通じて今後対応が避けることのできない諸課題を整理するとともに、その展望について触れることとしたい。

2. 予算規模の推移(普通会計歳出決算ベース)

(1) 白山市の状況
 白山市においては、合併後実質最初の年度である2005年度において510億円を超える規模となった後、数年は400億円台後半で推移したものの、その後2009年度からは増加に転じ、特に2012年度からの3年間においては、2013年度の549億円余をピークに、合併以降最大規模の決算額となっている。
 まず合併後しばらくの間においては、合併時点で11億円を超える額にまでのぼっていた観光事業特別会計の前年度繰上充用金の解消が、新市の大きな課題となっていた。
 白山市の観光事業特別会計は、合併前自治体の特別会計を引き継いで集約する形で設置されたものであったが、この中で経理する5か所のスキー場と1か所の観光宿泊施設において、過去からの赤字が累積していたものである。
 この赤字解消のため、一般会計から特別会計への繰出しを行う必要があったことが、予算編成上の大きな制約となっていたことは想像に難くない。
 なお観光事業特別会計の資金不足額については、5か所で営業していたスキー場を2か所にまで削減したことや、第3セクター改革推進債の活用など様々な方法を駆使することによって、2012年度にようやく解消されることとなり、また同年度をもって観光事業特別会計は廃止された。
 これと時期を前後して、前述したように予算規模は拡大の方向へ舵を切ることとなったが、これはちょうどこの時期に「地域の元気臨時交付金」や「がんばる地域交付金」といった、政府主導の大型景気対策の影響もあったと考えられる。
 加えて石川県にあっては、2015年3月のいわゆる北陸新幹線の金沢開業という、地域に対し極めて大きな影響を与える出来事があり、金沢市はじめ県内自治体においてはこの節目に照準を合わせ、様々な形で資本投下を実施したものと見られる。
 白山市においても、北陸新幹線関連の道路付け替え事業や、JR松任駅周辺の土地区画整理事業などに複数年にわたって多額の費用を投じたほか、小・中学校の耐震化及び改築や、福祉ふれあいセンターの新設、そして公立保育所の民営化と併せて実施した法人保育園への施設整備補助などを、積極的に実施してきたところである。
 ただ、その後2015年度以降については、後述する交付税の減少等もあり、徐々に予算規模は縮小し、現在に至っている。

(2) 県内他自治体の状況との比較
 ここで、県内他自治体の状況にも目を向けてみたい。
 石川県内では市町村合併を行わなかった団体として、類似団体でもある小松市と、自治体としての規模こそ差はあるが、白山市同様県都金沢市に隣接し生活圏も共通するところの多い野々市市(白山市合併当時は、野々市町)があるので、この2市の状況を比較対象として考察を加える。
 まず小松市については、2005年以降、普通会計ベースの歳出額は概ね410億~430億円代から大幅に乖離することなく決算額が推移しており、白山市のように最大年度と最少年度の差が18%近くになるようなことは起こっていない。
 例えば、決算ベースで最高額となっているのは2010年度であるが、この年度においては小・中学校の改築・耐震化に予算ベースで14億円余を計上しているほかは、単一の事業に大きな金額の予算計上は行われていないようである。
 他方2012年度においては、小松製作所小松工場の跡地に建設された「サイエンスヒルズこまつ」の整備費用として17億円余が計上されるなど、一見かなり積極的な予算計上が行われているようであるが、当該年度ですら決算額は420億円余と、決して他年度の計数から著しく乖離したものではない。
 他方2005年度以降の野々市市の状況に目を向けると、白山市同様若干の「波」があるようで、最大年度となった2010年度で17億9千万円余、最少年度の2005年度は11億9千万円余と、その差は約50%にも及んでいる。
 もっとも野々市市は石川県内でも数少ない、人口が堅調に増加している自治体であり、2011年には合併を経ることなく単独で町制から市制に移行するなど、自治体としての発展著しいことが予算及び決算額にも反映されているものと推測される。
図1 歳入歳出決算額の推移
 今後の白山市にとっては、類似団体でもある小松市の動きが参考になると考えられる。すなわち、必要であれば単年度(あるいはその後2か年程度)において、単一の事業や施策に集中的に資本投下することも厭わないが、その分他の事業を前後年に分散配分し、複数年度間において事業量及び予算総額の規模を平準化することである。

3. 地方債残高及び実質公債費比率の推移(普通会計決算ベース)

(1) 白山市の状況
 白山市の市債残高は合併当初710億円余であったが、以降ほぼ増加の一途をたどり、2015年度末においては過去最大となる876億円余にまでのぼっている。率にして、20%以上の増嵩である。
 しかしながら、実質公債費比率に目を向けると、合併後しばらくは20%前後から10%台後半で推移したものの、2012年度には初めて起債に許可を要する水準である18%を下回り、2016年度においては11%まで低下している。
 このような状況について考察を加える前に、比較のため再び小松市及び野々市市の状況について分析を行うこととする。

(2) 県内他自治体の状況との比較
 まず小松市の市債残高については、白山市合併初年度である2005年においては727億円と、白山市と大きな差は見られない。実質公債費比率についても、白山市の19.8%に対し、小松市は19.4%であり、文字通り類似団体という数値であった。
 ただし小松市の場合は、その後概ねその予算規模とも連動するように、市債残高についても大幅な増減なく推移した後、近年は650億円台まで減少している。
 また実質公債費比率については、2007年度の算定方法見直しに伴い一旦下がったものの、その後一時的に許可団体の水準である18%を超えたが、市債残高の減少と連動するように、減少傾向を示している。
 こうした小松市の状況は、新発債の発行抑制や、積極的な市債繰上償還の実施が大きく影響しているとみられる。
 野々市市についても、市債残高こそ近年やや増加の傾向を示しているが、実質公債費比率については2005年度の13.4%から10年連続の減少となり、直近で5%台という、類似団体の平均値を下回る極めて低い水準で推移している。
図2 地方債残高及び実質公債費比率の推移
 これら2市と比較して白山市において特徴的な傾向、すなわち、地方債残高が増加しているにもかかわらず実質公債費比率が下がり続けているというのは、主として他ならぬ合併特例債の影響である。
 先にも述べたように、合併特例債は合併により発足した自治体に特例的に起債が認められる地方債で、特筆すべきはその元利償還金の70%が交付税措置されるという点である。
 実質公債費比率という指標は、端的に「実質的な公債費に費やした一般財源の額が標準財政規模に占める割合を表すもの」と説明されるものであるから、償還に要する費用の7割もが交付税措置される、すなわち公債費に対し大部分の特定財源が保障されている合併特例債については、その膨大な発行額にもかかわらず、実質公債費比率を増加させる方向への影響は、他の交付税措置の無い起債に比べて限定的なものとなる。
 白山市はこの合併特例債を495億円余発行することが可能であったところ、2017年度末までにそのほとんどを利用し、2018年度をもって発行可能額全額を使い果たす見込みである。
 いかに交付税措置があるとは言え、495億円のうち7割を除いた残り3割ともなれば、単純計算で実に148億円余にも及ぶ。この額は一般財源をもって償還を行わなければならない額であり、小松市にしても野々市市にしても、市債残高や実質公債費比率の推移を見る限り、これだけ一般財源に大きく影響を与えるような起債は行っていない。
 市債の発行による事業資金の調達は、年代間の負担平準化という観点からも直ちに否定されるべきものではなく、折しも昨今の歴史的な低金利のもとにあっては、そのようなメリットを最大限に享受できるとも考えられる。
 しかしながら白山市としては、北陸新幹線総合車両所を活用した産業・観光振興事業をはじめ、今後も大規模な財政出動を伴う事業が複数予定されていることから、市債の発行なくしてそれらを実現することが困難である以上、将来的な公債費の負担も念頭に置いて、より有利な起債を厳選し、必要最小限を発行するという姿勢で財政運営に臨むことが肝要であろう。

4. 積立金残高の推移(普通会計決算ベース)

(1) 白山市の状況
 白山市の積立金については、合併当初の2005年度に19億円余であったものが、2015年度には85億円余まで増加し、一見堅調に基金の積み立てが進んでいるように見えるが、この内の40億円は「合併振興基金」として造成されたものであり、財政調整基金や他の特定目的基金とは性質が異なることに注意したい。
 合併振興基金とは、合併特例債を原資として造成することが認められた基金であり、他の事業に充当する場合と同様、積立額の95%に対して起債充当が可能(残り5%は一般財源)とされているものである。白山市のみならず、合併自治体にとってはまさしく「虎の子」といえるだろう。
 ちなみに、通常の基金とは異なり、取崩しが可能なのは、前年度末までに基金造成のために起こした合併特例債の償還が終わった範囲の金額までに限定されており、白山市については現時点までに約10億円を償還していることから、今後仮に年間2億円ずつ取り崩すとして計算すると、単純計算でも20年間は利用可能ということになる。
図3 積立金残高の推移

(2) 県内他自治体の状況との比較
 合併自治体ではない小松市及び野々市市においては、合併振興基金の造成はできないため、これら自治体との比較検討を試みるうえでは、そうした特例的な要素を排除すること、つまり白山市の積立金残高からは合併振興基金の額を除いた額に着目する必要がある。
 このようにして比較すると、白山市は類似団体である小松市のみならず、自治体としての規模において差がある野々市市と比べても、この合併振興基金を除いたその他の基金の残高が少ないことが明らかとなる。
 小松市については2005年時点で44億円余を積み立てていたところ、2009年度に一旦30億円台を割り込むまでに減少するが、その後は増額に転じ、2016年度末時点では43億円余までに回復させている。多い年では5億円に迫る額の市債繰上償還を行いながら、このように堅実に基金を造成する財政運営の手腕は、他自治体としても大いに参考にするところがあろう。
 また野々市市の積立金についても、この10年ほどについてはおおむね一貫して増加の傾向にあり、2016年度末の時点では小松市をも凌ぐ47億円余を確保している。
 一方の白山市であるが、合併振興基金「以外」の部分については、2010年度末に一旦15億円を割り込むまでに減少した後、2015年度末時点では45億円余まで積み立てたところであったが、翌年には財政調整基金だけで約9億円も取り崩しを余儀なくされ、直近2018年度予算においては、財政調整基金7億6千万円余を取り崩すのみならず、ついに「虎の子」の合併振興基金まで取り崩して収支均衡を確保する状況となっている。一般的に、財政調整基金の積立額は標準財政規模の10%程度が目安とされているところ、白山市の標準財政規模は約300億円であるので、すでに目安を下回る状況となっていることになる。
 なお、先に合併振興基金は2億円ずつ取り崩せば、この後20年間使用可能と述べたが、今後の財政状況によってはそれを上回るペースで基金が枯渇することも考えられる。
 このような状況について、一旦交付税の状況について触れたのち、それと合わせて改めて検討を行うこととする。

5. 交付税の合併算定替終了について

 「平成の大合併」に対する財政支援措置において、合併特例債の発行と並んで重要なものが、交付税の合併算定替であろう。
 前提として、交付税は、人口や面積などから算出した自治体の標準的な財政需要である基準財政需要額が、当該規模の自治体の標準的な税収額である基準財政収入額を上回る場合に、その不足する財源を手当てするものとして国が自治体に交付するものである。
 そして通常自治体が合併すると、スケールメリットによって基準財政需要額が下がると考えられるため、基準財政需要額と基準財政収入額との差が減少することとなり、その差を埋める交付税の額は減少することになる。
 これに対する財政支援措置が合併算定替であり、先にも述べたようにこの取扱いによって、合併した自治体であっても、それを構成した自治体がなお合併前の区域をもって存続した場合に算定される額の合計額を下回らない額の交付税を受け取ることができたのである。
 そしてこれも前述したように、この財政支援措置はあくまで合併後10年間のみの時限措置であり、この後更に5年をかけて段階的に一本算定に移行することとなる。
 白山市は2005年2月に合併したため、2015年度から既に合併算定替の段階的縮減期間に入っている。2017年度においては、市税の増収などの影響もあってのことであるが、普通交付税と臨時財政対策債を合わせたいわゆる実質交付税は、実に84億円余にまで減少している。これは、合併以降最高額となった2012年度の140億円余からすると額にして56億円余、実に4割もの激減である。
図4 地方交付税の推移(白山市)
 しかし、こうなることは分かっていたはずなのだ。であるからこそ、合併後10年という時間は、その後に控える財政的な打撃に対しての備えを充実させるための時間、換言すれば、ソフトランディングのための準備期間としなければならなかった。
 この間の白山市の取組みに目を向けると、前述したように合併振興基金をはじめ、可能な限り基金の残高を増やすよう腐心してきたことは窺える。
 一例を挙げると、2016年度には公共施設整備基金条例を制定し、公共用地の売却金などを原資として将来的な施設整備に対する財源確保に努めている。
 一方で、財政調整基金については2015年度をピークに、毎年その残高を減少させている。
 そして合併算定替の段階的縮減措置についても、2019年度をもって終了することとなるため、その後はこれまでの期間にどれだけ備えを厚くすることができたかが問われることとなる。
 貴重な財源である合併振興基金については、今後更に厳しさを増すであろう財政状況を見据え、ソフトランディングのため計画的な有効活用に努めなくてはならない。

6. 今後の課題について

 ここまで、市町村合併以降の白山市の財政状況について、他市とも比較しつつ、いくつかの指標から分析を行ってきた。
 その結果、合併自治体の特典ともいうべき財政的な支援措置を受けながら新市の建設を推進してきたものの、支援措置終了後に対する備えは必ずしも十分とは言えないのではないかということが示された。
 引き合いのようにして例示するのは恐縮ではあるが、結果的に備えが十分とは言えなかったがゆえに財政危機に陥った事例が、近年奇しくも石川県の両隣の県において発生している。
 合併自治体、北陸新幹線開業など、白山市と類似する要素も多く見られたのは、富山県高岡市の事例である。2018年度予算の編成段階においては40億円近い財源不足が見込まれるという状況が報道でも取り上げられ、最終的には市長給与の40%減額なども余儀なくされたという。
 また、これから北陸新幹線延伸を控える福井県福井市も、昨冬の豪雪などによって大幅に基金を目減りさせ、不足する財源補てんのために職員給与の10%削減が提案されたというニュースは記憶に新しい。最終的にこの削減率は平均5.8%になったということであるが、財政運営が立ち行かなくなった際、まず目を向けられるのが人件費であるという現実が如実に示されている。
 将来的な財源の不足に対する「特効薬」というものは存在し難い。
 まして、来年には消費税の増税も控え、ここまで堅調に推移してきた市税収入についても、減少基調となることは避けがたいと見られる。
 こうした中、政府は地方創生をスローガンに、地方活性化のためさまざまな施策を講じているところではあるが、「地方の時代」などという言葉は1970年代には既に世に出てここまで久しい。
 そして爾来50年にも及ぼうという年月の間に、地方はその自律性のもと持続可能な基盤を整備することができたかといえば、甚だ疑わしいところである。
 このような状況に鑑みると、白山市、ひいては全国的にも地方は今、壮絶な「撤退戦」に直面する覚悟を迫られていると考える必要があろう。
 ただ、このような視点に立脚した行財政運営は、必然として緊縮的なものとなる傾向があり、それが住民に対し行政サービスの低下という印象を与えることを避けがたいことから、歴代の首長も実施をためらってきたきらいがある。
 しかしながら、住民に対して聞こえのよい話ばかりではなく、場合によっては「我慢」を強いるようなことであったとしても、それを丁寧に説明して理解を求めていくことを避けては通れない段階に至っているというのが、白山市の現状であり、そのことはここまでに分析を行った財政指標からも明示されている。よく言われることであるが、起案・発案は誰でもできるのに対し、やめる決断はトップにしかできないのである。
 実際のところ、市町村合併が行われた際に、その後もそれまでと全く均質な行政サービスを、将来にわたって享受することができると考えた住民はどれほどいただろうか。多かれ少なかれ、サービスの低下に甘んじなければならないということは、理解も納得もしていなかったとしても、覚悟(あるいは、「諦め」)はしていたのではないか。
 それゆえ、膨大な財政支援によって推進された市町村合併と、その後の新市(町)建設は、そもそも避けることができなかった地方・地域の消滅へのソフトランディング策としての側面もより明確にした上で実施されなければならなかったと思われる。
 例えば、白山市は合併後も本庁のほかに従前の自治体区域ごとに支所または市民サービスセンターを設置し、現在に到るまで存続させている。しかしながら、人口規模で約4倍もある金沢市の「市民センター」の数が14か所であることからすると、単純比較はできないものの、白山市における支所ないし市民サービスセンターの数は、現在の7か所を3か所以下に削減するべきではないだろうか。
 そして未だに従前の自治体区域ごとで実施しているさまざまな行事についても、ある程度集約していくことが必要であろう。「市域における一体感の醸成」が合併における理念であり、大きな課題でもあったはずであるが、この分野は特に遅きに失している部分が多い。
 まずはこうした単独の自治体内部の問題を解決しなければならないことは論を俟たないが、このハード・ソフト両面のスリム化にあたっては、将来的に地理的・経済的・文化的に密接な複数の自治体が連携・協力し、また相互に役割分担することで基礎自治体としての機能を補完しあう関係の形成をも見据えて取り組む必要があろう。
 現に、石川県内においては金沢市と白山市他4市町が、連携中枢都市圏「石川中央都市圏」形成のため連携協約を締結し、小児初期救急医療の共同運営も実現している。
 そこで例えばであるが、法律に基づいて全国一律で実施されるような類の行政サービス(例えば児童手当など)に係る申請書などを当該圏域の中で統一し、受付についても相互に行うことが可能となれば、白山市内での窓口が減少したとしても、他自治体へ通勤しているような方にとっては利便性が向上するとも思われる。
 政治的には暗い将来を提示するよりも、明るいそれを描いてみせなければならないということも理解できなくはないが、住民の生命と安全を守るという行政のもっとも基礎的な役割について、将来にわたって責任を果たすことこそが最も重要と認識し、財政支援措置終了後の自治体経営にあたることが求められている。