【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第3分科会 どうする? どうなる? これからの自治体

 日本は諸外国と比べて労働時間が長いと言われている。長時間労働は過労死のリスクを高め、うつ病などの精神疾患患者の増加といった社会問題の原因となる。政府もプレミアムフライデーの導入や、2016年8月には「働き方改革担当大臣」の設置など労働時間の短縮にむけた体制作り、法整備が進められているところである。松江市役所において「時短」にむけて労使双方が協力して取り組んでいる内容について述べていきたいと思う。



総労働時間短縮にむけた取り組みについて


島根県本部/松江市職員ユニオン・本庁支部

1. 松江市役所における労働環境の推移

 下図表のとおり、一人当たり年間勤務時間については減少傾向、一人当たり休暇日数については、増加減少を繰り返しながらも横ばいの状況である。

年度 一人当たり年間
勤務時間数(H)
一人当たり休暇
取得日数(日)
H28 1,843.0(▲3.4) 16.6(0.0)
H27 1,846.3(0.0) 16.6(0.3)
H26 1,846.3(5.3) 16.3(▲0.6)
H25 1,841.0(0.2) 16.9(▲0.3)
H24 1,840.8(▲16.1) 17.2(0.9)
H23 1,856.9(3.4) 16.3(▲0.9)
H22 1,853.5(5.6) 17.2(0.5)
※(  )内は対前年度増減
※休暇日数は夏季特暇等を含む。

2. 労働協約と36協定について

 松江市職本庁支部では、労働組合(現業部)と市長との間で労働協約を締結している。協約の中では、団体交渉の原則、労働条件の変更があった場合の事前協議の原則、組合活動を行ったことに対する不利益処分の禁止等が謳ってある。この労働協約に則り、組合員の労働条件に係る事案についてはもちろんのこと、様々な行革提案についても、すべて賃金・労働条件等に関わってくることから、労使双方で協議を行い、組合としても市政の発展の一翼を担っている。
 また、労働基準法第33条3項「公務のために臨時の必要がある場合においては、第一項の規定にかかわらず、官公署の事業(別表第一に掲げる事業を除く。)に従事する国家公務員及び地方公務員については、第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。」で定める別表第一に該当する職場については36協定を締結している。本庁支部では、保育所職場や観光公社(出向)が該当する。

3. 総労働時間短縮推進委員会の設置

 時間外勤務の短縮、休暇の取得促進を目的として、組合執行部と人事当局とで構成される総労働時間短縮促進委員会を1994年8月から設置している。年に約2回開催しており、年間時間外勤務時間実績、休暇取得日数の報告、年間時間外協定時間の締結を主な議題としている。年間時間外協定時間については、36協定の代替措置として各職場の年間時間外勤務時間を労使双方で定めるものである。労働基準法で定める「時間外労働の限度に関する基準」の限度時間である年間360時間を遵守すること、協定時間によらず可能な限り時短に努めることを確認している。また、月60時間の時間外勤務が発生した場合は、保健師による面談等の措置を行っている。
 最近の委員会の中では、ワークライフバランスの推進、業務のスクラップについて労使双方で意識を持ち、新たな取り組みを行っている。昨年度は休暇取得促進のためのメモリアル休暇の導入、今年度は振休についての取得徹底と未取得累積分の解消などが成果として挙げられる。

4. 時間外協議について

 協定時間を超える超勤が発生した場合については、労使で協議を行い、対応を図っている。協議から確認に至るまでの流れは以下の通りである。

(1) 協定時間を超過する見込みの組合員について、所属長から人事当局へ協定時間の変更協議を行う。原則、残協定時間が20時間を下回る以前の時期に行う。
(2) 人事当局が協議内容を確認し、必要と認められる場合、人事から組合に協議が行われる。組合としては、①「協定時間変更の必要性」②「業務の平準化やスクラップの可否」③「所属長としての今後の対応」について確認を行い、受理できる内容であれば、職場へのヒアリングに入る。
(3) 当該組合員本人及び所属長にヒアリングを行う。内容は別紙1の通りであるが、特に体調・精神面についての問題の有無を含め本人の意向に沿わないものではないかを確認している。本人の了承が得られた場合は、人事当局に協議内容の了承を申し渡し協定時間変更へといたる。

5. 人員確保・組織機構人員体制の取り組み

 総労働時間短縮にむけては、職場環境の改善が必要不可欠である。特に業務量に対する人員数や病休等による欠員対応は労働時間に直結してくる。松江市職本庁支部では、4月1日の組織機構人員体制の変更に併せて、年間スケジュールとして人員確保の取り組みを行っている。
 全体の流れとしては、翌年度の人員体制を検討する時期に合わせて人事当局と交渉を行い、各職場の現状を踏まえた体制構築や採用計画を求めている。その後、4月1日組織機構人員体制の変更について提案を受け、各職場で所属長交渉を含め検討を行う。全職場の提案内容に対する了承をもって、初めて組織機構人員体制が決定する。新体制から一定期間後に検証を行い、再度人事当局と来年度以降の体制について交渉を行う流れとなる。
 近年の成果として、育休代替任期付職員制度の設立が挙げられる。これは、育休代替として正規職員が補充されていなかった職場の窮状を当局に訴え続けた成果である。また今年度は、退職者数に対して採用予定者数が不足することにより、年度途中で必ず欠員が発生していた状況を改善するために、「採用候補者名簿」への補欠合格枠の設置を勝ち取ることができた。これは、各職場で取り組んだ分会交渉や当局の配置換えに伴う着任交渉の実施など、定期的な各職場状況の把握と継続した交渉が結実したものである。

6. おわりに

 これまでに述べたように、労使双方の努力もあって1人当たりの年間勤務時間数は減少傾向にあるが、依然として超勤時間が多く、休暇が取得しづらい職場があるのが現状である。このような中、当市の春闘結果では、時短推進委員会において今後の具体策を検討することが労使双方の確認書で交わされるなど、時短推進委員会に求められる役割は重大なものとなっている。
 しかしながら、業務量削減にむけた突破口となるような具体策を実行することができていない。不払い残業の未然防止や総労働時間短縮推進委員会の開催回数の拡充、情勢に併せた新たな取り組みの創設、組合員・管理職の意識改革など検討課題は数多くある。
 今後も組合員のワークライフバランス実現にむけて一層取り組みを強化していく。

別紙1 協定時間変更協議者について