【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第3分科会 どうする? どうなる? これからの自治体

 「地方分権」の大合唱からどれほど時間が経過しただろうか。その言葉とは裏腹に都道府県や政令市が国から「副知事」や「副市長」を招聘するケースは多々見られる。しかし、近年は一般的な地方自治体においても特別職、特に「副市町村長」を他の自治体(特に都道府県)から充てる傾向が強まってはいないだろうか。分権とは逆行するその対応は、ややもすれば地方自治体にとって不要な財政負担に繋がりかねない。



「特別職の退職手当」と自治体財政への影響
―― 他の自治体から就任した特別職の退職手当の考察 ――

大分県本部/日田市職員労働組合 家永 一生

1. 考察の範疇

(1) 対象とする「特別職」~一般職と特別職~
 初めに考察の対象とする「特別職」を限定する。地方公務員法第3条では地方公務員は一般職と特別職に分けると規定され、同条第2項には「一般職は、特別職に属する職以外の一切の職とする」と規定し第3項では特別職の「職」を規定している。例えば、非常勤の消防団員や農業委員などがこれに該当するが、考察の対象は第1号の規定により、議会の同意を得て就任(地方自治法第162条)する特別職のうち「副市町村長(以下「副市長等」という)」とする。

(2) 対象とする「財政」
 次に対象となる財政を考える。財政とは「国または地方公共団体などが行政活動や公共政策の遂行のために行う、資金の調達・管理・支出などの経済活動」と辞書にある。聞き慣れた言葉を用いるなら「歳入」「歳出」と言える。表題にもあるように「歳出」の中でも「退職手当」を対象として考察を進めていきたい。
 考察の範疇として形式ばって記してきたが平たく言えば「副市長等の退職手当が自治体の財政にどう影響しうるか」ということを以下で考察していく。

2. 考察する事例

(1) 副市長が県からやってきた
 考察の範疇を「副市長等の退職手当」としたが、これではあまりに一般的過ぎるため、さらに対象を絞り込みたい。
 「地方分権」という言葉がスポットを浴びどれくらいの月日が経過しただろうか。政府として地方分権推進をはじめたのは、その名を冠した「地方分権一括法」正式には「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」が公布された1999年とするならば20年近くが過ぎようとしている。地方分権の中身やその功罪などについてはここでは触れないが、少なくともその方向をめざすのであれば、自治体のナンバー2を他の自治体職員から選任することが、その手段として有効といえるかは疑問が残る。さらにふみ込むなら垂直的関係にも見える自治体からであればその疑問は増すだけである。誤解を恐れず言うならば、地方自治法第5条2項で「都道府県は市町村を包括する」と規定され、対等・協力の関係と捉えられているが、それを超越した関係を迫る姿をしばしば目にすることがある。市町村自治体職員の多くがこうした姿を目にしたことがあるのではなかろうか。
 甚だ疑問の残るこの人事は決して地方分権創世期のことではなく、今も脈々と存在している。県内自治体でも7市が副市長に県職出身者を選任している。その一が日田市でもあり、考察の事例として次のケースを示したい。

(2) ケース
ケース① 副市長が退任時にいわゆるB県職員としての定年に達しておらず、再度B県職に復帰した場合。
ケース② 副市長が退任時にいわゆるB県職員としての定年をこえており、B県職に復帰しない場合。

 上記2つのケースを考察するとき、「特別職の退職手当に関する条例」として多くの自治体で制定されている条例として下記の例を示す。

(趣旨)
第1条 この条例は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第204条第3項の規定に基づき、市長、副市長及び教育長(以下「特別職」という。)の退職手当に関し必要な事項を定めるものとする。
(退職手当の支給)
第2条 この条例の規定による退職手当は、特別職が退職(任期満了を含む。以下同じ。)した場合に、その者(死亡による退職の場合は、その遺族)に支給する。
2 特別職の退職手当は、任期ごとに支給する。
(退職手当の額)
第3条 退職手当の額は、退職の日におけるその者の給料月額に在職月数を乗じて得た額に、次に定める割合を乗じて得た額とする。
(1) 市長  100分の48.3
(2) 副市長 100分の38.7
(3) 教育長 100分の19.3
2 前項の在職月数は、特別職に就任した日の属する月から退職した日の属する月までを計算する。この場合における月数は、暦によって計算し、1月に満たないときは1月とし、1月に満たない端数を生じたときは切り捨てる。
(特別職以外の在職期間を有する者に係る退職手当の特例)
第4条 他の地方公共団体の職員が、退職手当の支給を受けないで引き続いて副市長となった場合は、他の地方公共団体の職員としての引き続いた在職期間は、当該副市長としての引き続いた在職期間に含まれるものとする。
2 他の地方公共団体の職員から引き続いて副市長となった者が退職した場合に支給する退職手当の額は、前条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる額の合計額とする。
(1) 前条の規定により計算した額
(2) 副市長を退職した日における他の地方公共団体の職員を退職した日にその者が受けていた給料月額に相当する額及びその者の他の地方公共団体の職員としての引き続いた在職期間を基礎として、A市職員の退職手当に関する条例(昭和36年条例第45号)の適用を受ける職員の例により計算した額
3 前項に規定する者が退職した場合において、その者が退職の日又はその翌日に再び副市長となったときは、前条第2項の規定による在職期間の計算については、引き続いて在職したものとみなし、当該退職に係る退職手当は支給しない。
4 第2項に規定する者が退職し、引き続いて他の地方公共団体の職員となったときは、この条例による退職手当は支給しない。ただし、副市長を退職した日から30日以内に副市長としての在職期間に係る退職手当の支給を受ける旨を申し出たときは、当該退職手当を支給することができる。

 条例第1条から第3条までの規定は、金額などに差異はあるもののいずれの自治体にも共通する内容であり、誰が特別職であろうと適用される。
 問題となるのは第4条の規定である。「他の地方公共団体の職員から引き続いて副市長となった者」でかつ「退職手当の支給を受けていない者」が就任し、退任した場合である。第4条第2項は(第3条を否定したうえで)、第2号で他の地方公共団体の職員であった期間を退職手当を支給する期間に含むと解釈できる。つまり、過去に在籍した自治体から支給されるはずだった退職手当を副市長として迎え入れた自治体(以下「A市」という)が負担することになる。
 考察の例として挙げた上記のケースでは、
 ①については、第4条第4項の規定に該当し、本人からの申し出がなければ市は退職手当を支給する必要はない。
 ②については、第4条第3項に該当しない限り、A市に(県職員在籍期間を含めた)退職手当の支給が必要。

3. 「特別職」の退職手当

(1) 条例制定自治体と退職手当組合
 では、他の自治体職員在職期間に係る退職手当を支払う規定はA市固有の条例なのか大分県内の自治体の退職手当の条例制定状況を確認する。
 県内自治労加盟17(市町)単組のうち、11単組が自治体独自で退職手当条例を制定し、6単組が大分県市町村職員退職手当組合(以下「退手組合」)に加入している。退手組合は複数の自治体の連合体であり、独自条例に比べ条例の改廃などは自治体首長等の恣意的な意向が反映されにくいと推測される。一方、独自条例を持つ自治体はその逆も考えられ得る。そういった意味では議会のチェック機能は重要であり、組織内議員の必要性を改めて感じる。

(2) 県内自治体における特別職の退職手当条例
 次に県内自治体における特別職の退職手当条例についてみていくが、前述のケースにおいて「問題」と記載した、他の自治体から副市長を選任しているケースが大分県内でどの程度存在するか確認したい。
 6月30日時点における県内の状況は、由布市・別府市・豊後高田市・日田市・竹田市・豊後大野市・佐伯市の7市で副市長が大分県から就任している。また、6月28日に新聞報道では大分市の副市長に経産省の課長補佐が就任するという記事が掲載されていた。県内の自治体における副市長等の退職手当の規定については以下の3類型に分類される。
① 他の地方自治体及び国からの出向について規定がない。
 この類型に該当する場合は、その多くが一般職の例や規定に準ずるものが多数。
② 他の地方自治体及び国からの出向についていずれも規定。
 独自条例体では③と二分される。退手組合の条例は引き継ぎ規定を整備している。
③ 「他の地方自治体」などの規定がある
 独自条例では②と二分される。「大分県」とする条例と「他の地方公共団体」とする条例に分かれる。ただし、大分市は国家公務員に限って規定がある。
 また、根拠条例としては「特別職の退職手当条例」を規定している自治体と、「特別職の給与等に関する条例」で規定する自治体に大別される。従って、前述した7市の中にもケースのような事例が生じる可能性は否定できない。
 以下では現実に起こった日田市の事例を検討する。

4. 日田市における「特別職の退職手当」の事例

(1) 日田市特別職員退職手当支給条例
 日田市における特別職の退職手当に関する条例は1984年に「日田市特別職員退職手当支給条例(以下「条例」という)が制定されている。現行の条例はケース同様の内容が規定されているが、「問題」とした第4条の規定は2015年12月議会に改正案が提案され上程・議決を経て施行された。制定から30年を経てなぜ、新たな規定が追加されたのか。その理由は大分県職員が副市長に就任したことで、追加の必要性が生じたからだ。12月議会の総務環境委員会において議員から改正理由について質問が出された。これに対し当局は「他の自治体でも同様の条例制定をしている。該当職員の身分保障としての意味合いもある」という趣旨の回答を行っている。
 当局の回答には、地方自治法第166条第2項で地方公共団体の常勤職員と副市長等の兼任は禁止されており、副市長は県職を「退職」したうえで就任しているという意味も含まれているのであろう。
 したがって、これまでの職員として在職していた期間に係る退職手当をどちらかの自治体が担保しなくては副市長の前職期間に係る身分保障の安定が崩壊してしまう。そのような意味では当局の回答の後段には一理あると言えよう。第4条前段「(他の地方公共団体の職員が、)退職手当の支給を受けないで引き続いて副市長となった場合」の規定はこれに該当する。
 このような条文をふまえると、ケース同様の条例を制定する日田市においては、他の地方自治体の職員が退職手当を受けずにやってき、3年程度で副市長を退任した場合はその者の前歴分の退職手当まで日田市が負担をすることになり、不要な財政負担を日田市が強いられてしまうのか。
 このような事態を防ぐため条例は同条4項で一定の制限を設けていることはケースで示しており、日田市も同様の条文になっている。
 このように条例の構成を鑑みれば、他の地方公務員の前歴を持った人物が副市長としてやってきても、迎え入れた自治体が常識上負担すべき金額以外の退職手当を支給しなくてもよい条例となっており、当然送り出した方もそうするのが社会通念上の運用といえるのではなかろうか。
 さて、なぜこのような規定が2015年12月ににわかに制定されたのかを次項で検証したい。

(2) 日田市特別職の変遷
 条例が制定された1984年以降の日田市特別職は市長、助役、教育長、収入役が存在したが、2007年の地方自治法改正で収入役が削除され、助役が副市長に改められた。この間、日田市では助役・収入役には市役所OBなど市と所縁の深い人物が、教育長は教職員退職者を中心に選任されていた(最後の助役は県職を定年退職後就任)。副市長制に移行してからは、市職員OBが佐藤市政及び第1期原田市政で選任されている。
 さて、条例改正時に当局が「該当者の身分保障として条例を改正したい」と説明したことを思い出して欲しい。実は県職員を「退職」して副市長に就任した事例は今回が初めてではない。佐藤市政時代に1度県職員が副市長に就任している。しかし、この時は先ほどの条例改正が行われていない。このあたりに恣意的な何かを感じてならない。なお、この副市長は就任半年(2010.9~2011.3)で辞任し県職に戻っており、退職手当の支給については把握していない。

(3) 日田市副市長の退職手当に関する事例
 ここからは、日田市の事例について考察していく。
【経過】
 2015年9月議会、再選を果たした原田市長は「副市長の定数を定める条例」の改正案を提案したものの条例改正案は否決され、副市長に選任されたのが、当時大分県の職員であった「大塚勇二(58歳)」現副市長である。大塚氏の人事案件については全会一致で承認され、10月1日に大塚氏は副市長に就任し、同年12月議会において「日田市特別職員退職手当支給条例」に第4条を追加する議案が提案され、可決した。
 その後、2017年度に副市長が県職員としての定年年齢60歳を迎えたが、2018年度も引き続き副市長として在任している。

 はじめに、2015年は統一自治体選挙が行われた年であり、日田市では市長選挙が7月に実施され、原田市長(以下「市長」)が2回目の当選を果たした。当選した市長は市議会9月定例会に副市長の定数を1人から2人に改める条例改正案を提出した。副市長2人制については選挙期間終盤から既に公言していたようであり、議会開会前から市民の関心事となっていた。市民の声の多数は2人制に「反対」であった。市議会も市民の声を汲んでか、議案の付託を受けた総務環境委員会で反対多数、さらには本会議でも反対多数となり、条例が改正されることはなかった。
 2人制をめぐる情勢は議決を待たずに否決の方向へ傾いていた。そのことは必然的に「誰」が副市長に就任するかに関心事は移っていった。2人制を提案した以上2人の人物に白羽の矢が立てられており「1人のままならどっちが?」「適任者の方が副市長か?」といったところが興味の的になっていた。
 混沌とした中、選任されたのが県職を退職し迎えられた大塚氏であった。経過の中で全会一致により承認されたと記したが、地方議会において人事案件について否決されることは珍しいことであり、よほどのことがなければ全会一致で承認されるのが全国的にも圧倒的多数ではなかろうか(このことが後に日田市の混乱を招く遠因になってしまったが…)。
 そして、同年12月議会で条例が改正され、副市長は退任後県職に戻らずとも県職在職中の退職手当の保障が可能になった。
 就任から2年を迎えた2017年の9月・12月議会においてもその去就は明らかになることはなく、市役所・市議会・市民の中にあった「普通は県職で定年退職するだろう」あるいは「県職員時代の退職手当は常識からいえば県が支払うだろう」という認識は現実となるのかという猜疑心が芽生えていた。
 この間、市職労は当局に対し副市長の退職手当の支給についてことあるごとに確認を行っていた。当局からは「県に確認したところ日田市は心配しなくてよいと回答があった」との報告を受けていた。念には念を入れ県本部に対しても、過去に県職から来た副市長の退職手当を自治体が負担した事例があるか確認したところ「把握している限りでは事例はない」との回答であった。このような報告をふまえ、市職としては「副市長の退職手当は県が支払う=副市長は県職に年度内に戻る」という認識を有していたが、2018年3月市議会定例会でそれは一変した。
 3月議会の総務環境委員会において予算に関連して副市長の退職手当の支給について議員から「仮に副市長が定年を迎え、県職員として退職をせずに副市長のままであった場合は、日田市が市職員の退職手当条例を基礎として、副市長が県職員だった期間に応じて支払うのか」という趣旨の質問がなされた。
 これに対し当局からは「仮に副市長が3月31日以降も副市長でいた場合でも、副市長を退任した後に県から退職手当を支給するということで確認している」との回答がなされた。
 では、大分県の条例ではどのような規定があるか確認したい。まず「退職職手当の支給」について第2条で常勤の職員が退職(死亡を含む)した場合に支給されると規定され、第2条の3で退職した日から一月以内に支払わなければならないことが規定されている。加えて、第19条では職員が退職した後に引き続き職員となった場合等には退職手当を支給しないことが規定され、その一つに「職員が引き続いて職員以外の地方公務員等となつた場合において、その者の職員としての勤続期間が、職員以外の地方公務員等に対する退職手当に関する規定又は退職手当の支給の基準により、職員以外の地方公務員等としての勤続期間に通算されることに定められているときは、この条例による退職手当は支給しない」と規定されている
 県の条例を素直に読めば、副市長が県を退職して一月以上経過しており、当局が説明するように退職の時点(一月以内)で退職手当を受けていなければ、今後支給を受けることは通常不可能である。また、日田市の条例では、副市長が退職後、引き続き他の地方公共団体等の職員にならない場合は日田市が前歴分の退職手当相当額を支払うことになり、県条例第19条に該当し、県は退職手当を支給しなくてもよいことになる。
 以上のことをふまえれば、当局が回答した方法は明らかに条例に則していない可能性が高く、甚だ疑問である。しかし、3月31日以降も副市長は変わることなく在任している。

5. 結 び

 公務員の退職手当は「勤続報償」「生活保障」「賃金の後払い」の3つの要素が複合した「手当」であることから、他の公務員としての在職期間を考慮する規定自体を否定するものではない。
 その上で日田市の事例から見える2つの問題を提起したい。
 1点目は「条例主義」を逸脱した退職手当の支給が行われかねないことである。
 自治体当局との交渉に参加された方は当局が多用する「条例主義」という言葉を耳にしたことがあるだろう。これは地方自治法に規定されており、地方公務員の勤務労働条件を定める原則の一つであり、特別職や非常勤職員についても規定がある。
 前述の日田市の事例において考察すると当局が委員会で行った発言は条例に規定された支給方法ではなく、条例主義に則った対応ではないと考えられる。
 一方、支給(するであろう)大分県についてはどうか。県条例と日田市条例の不整合性についての疑問を前段で示したが、この疑問について県市町村振興課に確認したところ「条例の規定はなく行政的運用」という趣旨の回答を得た。
 すなわち、今後副市長が退任した際に県から県職在職期間に係る退職手当が支給される場合には「条例主義」を逸脱した行為として疑義が残る。
 2点目は、不要な財政負担が日田市又は大分県に生じることである。
 事例における当局の回答はおそらく口頭での確認であり、条例にも正確な規定がない方法であることから「反故」になることも考えられる。この場合、条例に沿って日田市がその退職手当を負担すれば、日田市でのわずかな勤務年数に対して、その年数を大きく上回る退職手当の負担を強いられ日田市にとって莫大な財政負担が生じることになる。
 また、「約束」どおり県が支給するとすれば、副市長は退任後に一度県職に復職する必要があるが、既に大塚氏は60歳を超えている。通常の職員として県に復職することは困難であり、何らかの手法を用いる必要がある。どのような手法かは県のみぞ知るといったところであるが、雇用する期間は給与を支払う必要があり、県にとっても不要な財政負担が生じると言えよう。
 加えて、このような方法がはたして県の条例の趣旨に則しているか甚だ疑問であると同時に政治的運用としての色合いが濃厚としか思えない。
 最後に3つのキーワードを示したい。「財政が厳しい」「条例主義」「住民の理解」。これらは当局が交渉で多用する言葉(特に日田市では)である。日田市の事例、そしてそこから導き出される2つの問題点にその言葉を重ねると明らかな矛盾が見えてくる。
 さらには、「財政が厳しい」中での不要な財政負担、「条例主義」を無視した運用、「住民の理解」を得られない退職手当の支給を行おうとする首長の姿は職員に、議会に、そして住民にどのように映っているのであろうか。さらには、職員のモチベーションの低下や議会の首長に対する不信感、そして住民活力の低下などに起因する「自治体の疲弊」がそれを映し出す鏡に思える。
 さて、日田市における副市長の退職手当支給についての事例とそこから見える問題点を記してきたが、このような事例は決して日田市だけの事ではなく、他の自治体にも起こりうることではなかろうか。日田市以外にも同様の条例を整備しているところは多く、そのような自治体の中には他の地方公共団体などから副市長が就任している現状も確認できる。もちろん、副市長の年齢も要因の一つではあるが。
 今回の事例は現副市長が退任するその時までどのような形で幕引きとなるかは確認ができないであろう。しかし、市職労は組織内議員と連携し市議会や県議会とも問題意識を共有し、最後まで成り行きを監視していかなくてはならない。そのためには住民との意思形成も必要になってくる。